運動場γに集合したA組21人とB組20人。
ワイワイガヤガヤと楽しそうに喋っている。
鈴仙も久しぶりに一佳と話すことが出来ておりとても楽しそうにしていた。
なんせ2週間丸々隔離されており碌に話せなかったのだから。
授業内容や色々な話しを展開している41人だが相澤先生が眼をギラリっと光らせると一斉に沈黙する。
そうして、授業内容の説明に入る。
「今回はこの運動場γで4人1チームの対抗戦を行う」
そう告げられる41人、しかしながら……4人1チームとなると1人余る。
それらの質問が来るのを想定していたのか先んじて告げる相澤先生。
「今回、鈴仙は4人1チームの数に入れていない……全ての試合が終わってから最後に鈴仙1人VSお前ら40人でのマッチアップだ、隻眼隻腕になったとはいえ鈴仙の実力とお前ら40人の実力差を鑑みてこの状況になった、それじゃ授業開始」
相澤先生から告げられる。
それは暗に、お前らと鈴仙の実力差はこれくらいしないと埋められようが無いだろと告げているに等しい。
それを聞いて……40人全員が鈴仙に一泡吹かせようと意気込んでいた。
波長を確認するまでもなく滲み出るソレを見て……鈴仙は更に発破をかけてやる気を引き出す為の追い討ちをかける。
「ま、頑張ってくださいね……精々足掻いて見せて下さい、ブートキャンプやこれまでの地獄よりも地獄の訓練の成果を今、私に見せてくださいね、期待してます……私が負ける道理は欠片もありませんがね」
にっこりと笑みを浮かべてわざと40人全員の地雷を纏めて踏み抜く鈴仙。
40人全員の眼の奥にメラメラと……勝利への貪欲な焔が灯るが鈴仙は一切気にする様子は無い。
寧ろ更に言葉を重ねて煽ってきている。
「実戦形式ブートキャンプでも大怪我上等の訓練でも私を負かす事が出来なかった貴方達がどうやって私を倒すのか……ま、少しは期待してます」
傲岸不遜な鈴仙のその物言いに対して叫ぶ爆豪勝己。
「上等だァ‼︎ 鈴仙‼︎ 今度こそテメェを完膚なきまでに叩きのめしてその調子乗ったツラァ敗北で歪ませる‼︎」
その言葉と同時に底冷えする様な鋭い視線で鈴仙を射抜くのは一佳の氷の様に冷たい眼であった。
一佳は語る。
「体育祭では及ばなかったけど……あの時とは違うってのを思い知らせてあげるよ、鈴仙」
それを聞いて鈴仙は柔和な笑みを浮かべて語る。
「楽しみにしています、あぁそれと、言っておきますが……無様を晒す事がない事を祈っています」
的確に、確実に、40人の地雷を踏み抜いていく鈴仙。
地雷原の上でタップダンスでもしているのかという程に的確に踏み抜き起爆させている。
ここまで言い切ると後々に不和が生じてクラス内にて孤立しそうな鈴仙であるが鈴仙には今までに積み重ねてきた信頼と信用と実績がある。
そして何よりも……この程度の煽りや地雷の踏み抜きはブートキャンプでは日常茶飯事であった。
そして、鈴仙の性格上、無意味に煽る事がないのは40人全員が理解していた。
鈴仙がわざと口を悪くして煽ったりする時は……大概が発破をかける為だというのもしっかりと理解している。
それを1番実感しているのは鈴仙に鍛えられてきた物間寧人と心操人使であった。
2人は無言で目配せして目線で話し合う。
絶対一泡吹かせると。
そうして、授業が始まる。
4人1チームとなりくじ引きでのチーム決め。
第一試合
A組・蛙吹、上鳴、切島、心操。
B組・塩崎、宍田、円場、鱗。
B組のメンバーも鈴仙主導のブートキャンプや合同訓練に参加している為に当然、心操の個性を熟知している。
つまり、洗脳という初見殺しは一切通用しない。
しかし、心操は初見殺しが通用しない相手との戦闘を視野に入れた戦い方をこの数ヶ月ずっと嫌というほど鈴仙から学ばされた。
操縛布の扱いも夏合宿の時からずっと格段に向上し……声帯模写も今では滑らかに、意識せずに一度聞いた他者の声音を模倣できる精度にまで高めた。
今では心操人使という相手は……コミュニケーションを阻害するという面においては何よりもずば抜けていた。
サポートアイテムのマスクも八意永琳によって改良が進められていき今では心操の声音を飛ばす効果を付与した事により拡声器の様な事すら可能となった。
そして、作戦を心操の洗脳、そして上鳴の放電に主軸を置いたA組の勝利となった。
続く2戦目。
A組
八百万、葉隠、常闇、青山。
VS
B組
小森、拳藤、黒色、吹出。
八百万百の創造を軸にして苛烈に攻め立てたA組に対して、小森の個性で徹底的に妨害を行い……果てはスエヒロダケを肺に寄生させて呼吸器不全を引き起こさせてA組の全員がノックダウン。
B組の勝利となった。
常闇が小森を捕まえた所までは言う事なしであった、満点をあげたい。
しかし、その後がいけない……訓練だからと油断でもしたのかは不明だが小森が口の中に隠し持っていたガラスの小瓶に収められたキノコの培養液……それを吐き出して脚で踏んで叩き割った……。
そして、即座に広がる菌糸類。
肺にまで寄生してA組メンバー全員の動きを緩慢にしていき最終的には肺炎を引き起こさせてSPO2の低下により意識が保てなくなって面々はダウンした。
相手を捕縛した際に行う身体検査……見逃しのある身体検査はしていないも同然だから絶対に気をつけろと、いつも口を酸っぱくして教え続けていたんだがなぁ。
「身体検査訓練……やり直すか」
兎にも角にも……スエヒロダケによる肺機能の低下によりA組の全員が意識不明となった。
B組勝利。
続く第3試合。
A組・轟、飯田、尾白、障子。
VS
B組・鉄哲、角取、回原、骨抜。
轟対策に鉄哲が打って出た。
燃えず、熔けず、凍らされず……高温に晒されたら、鉄哲の肉体は熱した金属と同義の状態となる、そんな状態の鉄哲から顔面に1発喰らった轟は衝撃に加えて火傷も負う。
顎と鳩尾に一撃を喰らいふらついたその隙を見逃すこと無く轟に対してクリンチに持ち込む鉄哲。
鉄哲はその個性の都合上、鈴仙が教えた近接格闘術との相性がすこぶる良い。
組み合っている両腕と肩から肉の焼ける音が小さく響き、それと共に顎を打ち抜かれた衝撃で立っているのが限界だったのか膝を突いてよろめいた隙に再度腹部に重い一撃を喰らい轟がダウン。
広範囲攻撃出来るメンバーを失ったのは痛い。
しかし、飯田の蹴りで骨抜と回原の2人を纏めてダウンさせ、そのまま鉄哲へと追撃。
何とか状況を五分以上に引き戻そうとしたが鉄哲の個性、スティールは度重なる圧縮訓練により理外の堅牢さを有していた。
飯田の神速の蹴りを喰らった鉄哲だが金属特有の甲高い音が鳴り響くだけ。
意識外から蹴りを加えた筈の飯田の脚が逆に骨折する。
そして、痛みに悶え動きの止まった一瞬を見逃さずに寝技に持ち込む鉄哲。
鈴仙直伝のグラウンドを余す事なく活用する鉄哲。
バッククラブの体勢を取って的確に飯田天哉を締め落とす。
障子の複製腕から繰り出される大量の手による拳打は脅威だけれど……たった2本の腕を操るのにすら混乱する事があるのに多数を操るのは至難の業である。
鈴仙から見れば……手の幾つかはコントロールできておらず遊ぶ状態になっていた。
結局……上空に浮かんだ角取らB組のメンバーに対して飛行出来る個性待ちがないA組のメンバーでは対処できずタイムアップ。
そうして、B組の勝利となった。
今の所1勝2敗のA組。
……嫌な流れを断ち切れるのか。