第4試合
A組
耳郎・爆豪・砂藤・瀬呂。
VS
B組
取蔭・鎌切・凡戸・泡瀬。
索敵を耳郎が担当してそのサポートを瀬呂と砂藤が行う。
そして、爆豪が敵陣に攻め入って電光石火で落とす。
モニターを見ながらそう分析する鈴仙。
ちなみに鈴仙の首には全試合通して味方のアシストなどをしていない証明の為に八百万百によって創られた超強力な波長操作妨害装置が防弾ガラスに納められてネックレスのように下げられている。
鈴仙の波長操作を完全にシャットアウトする優れ物である。
波長を感じ取る事や視る事は出来るが操作は一切封じられている。
装置のオンオフのスイッチは相澤先生に渡している為に鈴仙の意思では解除不可の代物だ。
始まって僅か2分でB組の全員を気絶させて牢屋にぶち込んだ……クラスターの精度も格段に上がっており爆速ターボもクラスターを使用、何よりも面制圧重装機動ストレイフパンツァーを利用した火力と『溜めて放つ』事によるクラスターの副作用とも言うべきか……本来は掌からしか出ないニトロが全身の汗腺から溢れるようになる。
こうなると全身が爆発を起こし、ワン・フォー・オールに匹敵するほどのパワーとスピードを出すに至るが、当然自身にも意識消失に至る程の大ダメージを与えてしまう。
しかし流石の反射神経とバトルセンスというべきか、自身への被ダメージを最小限に抑えつつ相手には最大の火力を与えている。
日頃の訓練で鈴仙が指導している事をそれ以上に学んでいる。
爆豪以外の他の3人も決して劣っている訳ではない。
耳郎の索敵は鈴仙とほぼ同じ速度であり、自身の心音を流すハートビートも威力、速度、精度全てが格段に上がっている。
瀬呂も砂藤も当初よりも格段に個性の扱い方が上手い。
ならば今回負けたB組の面々はというと此方も鈴仙のブートキャンプを受けて心折れずに生き残ってきた猛者達である。
個性の扱いや戦術も格段に跳ね上がったがいかんせんB組の選んだ戦術は爆豪の取った電光石火の神速で確保とは噛み合わない。
今回はそれが敗北の一因となった。
爆豪の火力を知っているのならば何度も何度も待ち伏せてミスの誘発をまつのではなく先手必勝で4人で1人ずつ囲んで袋叩きにして迅速な確保を行うべきであった。
まぁ……それを告げるのは私ではなく教師陣だ。
続く5試合目。
2勝2敗の状態。
A組にしてもB組にしても勝ちか敗北かが確定される試合である。
A組。
緑谷・麗日・芦戸・峰田。
VS
物間・柳・庄田・小大。
緑谷を主軸に立ち回ろうとする、彼によれば自分の個性を65%まで引き出せる様になったとか。
超パワー、もといワン・フォー・オールを譲渡されてから目覚ましいものがあるな。
対してB組は物間によるコピーを軸にしていくらしい。
あー……アレは私の個性をずっとストックしてたな、私の個性を軸にして戦闘を優位に保つ気だな、コピーの時間も10分から15分に伸びてストックも4つから5つに伸びたとか言ってたもんなぁ。
緑谷を軸にしたのはまぁ理解できる。
あのメンバーの個性的に先んじて攻めることも出来ない、かと言って攻めてくるまで待てないし……問題は……どうやって私の個性をコピーした物間を止めるか。
その一手に尽きる。
……緑谷さんから漏れ出るあの波長……何かヤバい気がする。
鈴仙は……一抹の不安を感じながらスタートした5試合目を観戦する。
緑谷は爆豪以上の働きをしなければならない。
縦横無尽に動いているとドラム缶が弾丸の如き速度で飛来してくる。
それを見てから避けると物陰には物間が……。
物間寧人はわざとらしく身振り手振りを交えて叫ぶ。
「先の爆豪君の活躍を見た後で同じように動ける君を警戒しない訳がない……だから、僕がこの大役を任された……さて、緑谷君、超パワーは確かに脅威だが……君に勝てる唯一の可能性はコレさ」
そう告げて片手を銃の形にして狙い撃つ様に仕草を取る物間。
その仕草は……A組B組の40人が鈴仙との訓練時に嫌と言うほど見た動きであった。
故に、その判断は速く、緑谷は即座に退避行動を取る。
物間寧人の指先から虹色に煌めくレーザーが射出される。
「鈴仙さんの波長操作⁉︎ くっ……」
鈴仙の波長操作は厄介なんて代物ではない。
レーザーの射出による直接的な攻撃から幻覚や幻聴と言った精神攻撃、果ては神経系に及ぼされる神経伝達阻害。
鈴仙を相手にする場合の対処の苦労と言ったら枚挙にいとまがない。
そして、物間寧人は口を開く。
鈴仙直伝の挑発行為の数々を見舞う。
「なぁ教えてくれよ? 彼女に教えを乞うているなら……彼女は今どんな気持ちでここにいるんだろうなぁ? 平和の象徴を終わらせた張本人がさぁ‼︎」
そう叫ぶ物間寧人。
それに対して、その挑発に対して……緑谷が乗ってしまった。
「鈴仙さんのせいじゃないだろう‼︎ そんな事ッ‼︎」
激情に駆られ、憤怒に染まり……物間寧人を絶対に捕えようと頭が真っ白になる緑谷。
それをモニターで見ている鈴仙。
鈴仙も激怒していた、自身を貶した物間寧人にではない、そっちはどうでもいい、戦術に貴賤はない、使えるものは何でも使えと自身が常に教えてきたのだ……それに対して文句を言うつもりは一切無い。
鈴仙が怒っているのは緑谷に対してだ。
ウサミミが絞られており眼をカッと開いてモニターの緑谷に叫ぶ。
「いつも訓練で口酸っぱくして教えてるでしょうが‼︎ 安易な挑発に乗るなとッ‼︎ 激情に駆られて‼︎ 憤怒で視野狭窄を起こして‼︎ 私から‼︎ 私とのトレーニングで何を学んだのですか愚か者め‼︎ この先、私を出汁にした挑発にずっと‼︎ 安易に乗る気なのですか⁉︎ 皆さんもです‼︎ 今の安易な挑発に乗ろうとしていた一佳‼︎ 耳郎‼︎ 八百万‼︎ 実戦でも貴女達は冷静を欠いて敵の思うがままに動き、仲間を危険に晒す気ですか⁉︎ 実戦には『次』は無い‼︎ 心に留めなさい‼︎ 実戦で仲間を危険に晒したら待つのは『死』です‼︎」
そう怒鳴られてたじろぐ3人。
仲間を貶されて、冒涜されて、怒りを露わにするのは構わない。
しかし、それで敵のいいようにされて思うがままに動かされてしまったら意味がない。
怒りを抑えて冷静に立ち回って勝利を掴めと。
安易な挑発に乗って仲間を危険に晒すのは絶対に許されない行為だと告げる鈴仙。
そして……モニターに視線を戻すと……緑谷の手から黒い鞭のようなナニカが放出されており……実体を伴っているのか配管を破砕しながら全方位に縦横無尽に撒き散らされる。
異常な光景。
そして……被害があまりにも大きい。
敵味方を問わず黒い鞭が追従して捕縛しようとしている。
緑谷自身の意思では止めることが能わないのか何かを叫んでいるも止まらない。
鈴仙は相澤先生に進言する。
「相澤先生、異常事態です……緑谷さん自身もアレを理解しきれていません……波長操作か心操さんの洗脳で止めてきますので……」
それを聞いた相澤先生は少し逡巡したのちに……許可を出す。
装置を停止して……鈴仙に指示を出す。
「緑谷を止めてこい、鈴仙、心操」
それに頷いて……鈴仙は心操人使を抱き抱えて運動場γへと急いだ。
そして、上空から緑谷に向けて波長操作を仕掛ける。
しかし、何か別の意思が介在しているのか普段よりも効きが遅い。
これは……ワン・フォー・オール8人の意思か。
ワン・フォー・オールの中に存在しているのか、継承者の意思が。
自身の波長操作は効きが悪いと察した鈴仙は心操人使に告げる。
「心操さん、洗脳して動きを止めてください……貴方なら出来ます」
そう告げると心操人使は頷くが何を問えばいいのか。
少し迷い……口を開く。
「緑谷‼︎ 俺と戦おうぜ‼︎」
その問いかけに対して……緑谷は黒い鞭を必死に抑えようとしながら叫ぶ。
「応ッ‼︎」
瞬間、洗脳が叩き込まれて意識が飛ぶ。
洗脳された瞬間に収まった。
麗日が平手打ちをして洗脳を解くと我に戻る緑谷。
その後、鈴仙と心操は憂慮していた事態が収まった事に安堵して共に観戦場所に戻る。
一時中断が為され現場に出向いた相澤先生より告げられる。
「緑谷、お前は今の黒い鞭の暴走を再度起こしたら即刻退場だ、それじゃ再度スタート」
中断がされたものの……結果でいえば引き分けであった。
緑谷は物間に押し切られ気絶させられたが緑谷を気絶させた時点で鈴仙の個性のコピー時間を超過して火力の1つを喪失し……妨害に富んだA組の3人を処理出来ずにいた。
また、A組の3人もB組の3人を気絶に追い込む事は出来たが受けたダメージが多く倒れ伏す。
そして、そのままタイムアップとなった。