羽根飾りに花を添えて 作:閖谷
ふわ……ぁ〜〜
大きなあくびをし、腕をまっすぐ上に伸ばす。
ぐいーと全身を伸ばしたらあとはベットから抜け出すだけ。
めんどくさいなぁ……
気だるそうにのそりと脱出を済ませ、ふらつきながら窓際へと向かう。
淡いピンクにベージュのフリルがついたお気に入りのカーテンが、なんだかいつもよりくすんで見える。
眠気を覚まそうと、眩しい朝日を期待してカーテンを開く。けれどもまだ薄暗く、雲に隠れてやる気のない朝焼けにお出迎えされた。
つまんない景色……
しょうもない感想とため息を吐きながらだらだらとドレッサーに座る。
顔を上げると可愛げのない、気怠そうな少女と目が合った。
目の下にクマをつくり髪はぼっさぼさ、表情までもが曇っていて暗い。
ひっどい顔……
寝起きのぼんやりとした頭から自分への言い訳を思い起こす。そうだ、今日はいつもより三時間も早く起きたんだ。
あぁ、それなら仕方がないよね。
――あっ、
早起きした理由。それを思い出したところでようやく目が冴えてきた。
さっとアクセサリーケースを開き、メイクポーチからコスメを並べる。
慣れた手つきで髪を整え、アクセサリーケースから束ねた髪を留めるシュシュを選ぶ。
今日の気分は淡い紫の花がモチーフのシュシュを手に取った。
似合ってるかな。
好きなブランドで固めたコスメ、その中でも選りすぐりの精鋭を使って自分の顔を彩っていく。
すくっと立ち上がり、クローゼットから制服を取り出す。
真っ白いノースリーブのワンピースを身にまとい、トリニティの校章があしらわれた白のボレロを重ねる。
まるでどこかのお姫様のように。そう思って自分で作った自慢のコーディネート。
もちろん着心地はバッチリ、先ほどまで着ていたパジャマが重たく感じた。
うん、よくなってきた。
小気味よい動作でシェルフから大きいリボンが付いたパンプスを取った。それを履いたら最後の仕上げ。とっておきの羽根飾りを翼に添える。
頭からつま先までをお気に入りのもので身を包む。
立ったままドレッサーの鏡を上から覗きこむと、天使のような装いの明るい少女が映り、愛想よく笑いかけられた。
よしっ、行こう。
少女は部屋を出る。先ほどまであった気怠げな少女の面影はもう見えない。
日が差し込まず薄暗い廊下を抜け、約束の待ち合わせ場所へと聖園ミカは向かう。
◇
「……もうっ、聞いてるー?」
私の前でお行儀よく椅子に座って微動だにしない子。真っ黒な、質素な服を着た女の子。
アリウスと和解するきっかけのため、トリニティへ一人転校させたい。っていう私の提案に乗ってくれたのが、錠前サオリって人。それで、その人が選んで紹介してくれたのがこの子。
名前は白洲アズサっていうんだって。
サオリとは情報共有のために度々会っていたんだけど、彼女に会うのは今日が初めて。
編入させるための書類や制服を用意する必要があったから、私が使ってる建物の応接室に来てもらったの。
あっ、建物丸々私が使っているし、わざわざ早い時間に設定したから他の人に会う心配はないよ。
さてここで、私が問い掛けた誕生日はいつ? っていう質問したら無視されちゃって……冒頭の発言に戻るの。
「……もう一度訊くね、誕生日っていつかな?」
「すまない。その、質問の "たんじょうび" というものは何だ?」
「えぇ嘘っ、生まれた日のことだよ。もしかしてわからないの!?」
「生まれた日。なるほど、生年月日のことか。それなら、十二月二十六日だ」
たじろぐ私を意に介していないかのように、背筋をぴんっと張ったまま淡々と質問に答える彼女。
長いまつ毛、端正な顔立ち、感情をあまり感じさせない表情。そういう要素も相まってお人形さんみたい。そう思わされた。
「なんだぁびっくりした……アリウスでは生まれた日もわからないのかなとてっきり……」
生まれた日がわからない。というわけではなく、"誕生日"という単語がわからなかっただけみたい。
「誕生日って言い方しないんだ。じゃあ、生まれた日をお祝いするときなんていうのかな?」
「生まれた日を、祝う? それはアリウスにはない習慣だ」
「……え、と」
予想しなかった返答にペンが指から滑り落ち、コロコロと書きかけの書類の上を転がる。
……そっか、そうなんだ。アリウスでは誕生日すらもお祝いできないんだ。教育がまともに受けれない環境なのは知識としては知っていたつもりだったんだけど、それ以上に……。
今まで自分が過ごしてきた、当たり前が当たり前ではない。その事実が、今になってようやく心に掠めていった。
「えっと……生年月日は十二月二十六っと……おっけー☆これで編入のための書類は作れるよ!」
机の端まで転がっていたペンを取り上げ、書類に走せる。必要な項目を雑に埋めて、立ち上がって宣言する。
「あとは……制服だねっ!」
私は次の目的を示し、そそくさとこの慣れない雰囲気からの撤退を決めた。
◇
廊下に出て彼女を呼ぶと、無言でコクリとうなずきトコトコとやってくる。
黒い服を着ているせいか、動くたびになびく銀髪と白い翼が目を引いた。
「今から制服売ってるお店に案内するね、付いてきて」
少し先を歩いて先導すると、彼女はキョロキョロ周りを見渡しながらついてくる。
落ち着かないのかな? と少し心配になって彼女に視線を向けると、当の本人は落ち着いた様子。何か気になるものでもあるのかな?
「物珍しい? それとも緊張してる?」
「問題ない。ここでなら今戦闘が始まっても、四時間は足止めできる」
「え、どういうこと……?」
「まずは廊下にある資材でバリケードを作る。これだけ物があれば片側は塞げる。万一突破されても……」
「まっ、待て……」
「? どうかしたか」
彼女はピタリと足を止めて私の言葉を待った。
えっ、どうしよう。
「……つ、強いんだね」
会話が噛み合わない。
「ああ、特にゲリラ戦でならアリウスでは右に出る者はいないと自負している。任務は確実に遂行する、安心して欲しい」
ばつが悪いなぁ。
「そうだっ、そんな話じゃなくて!」
パンっと手を叩き強引に話題を変えた。本題を進めないと。
「編入するための制服を作らないとだけど、どうせ作るならとびっきりかわいのがいいよね! ちょうどこの近くに私お気に入りの制服屋さんがあって、ティーパーティーの権限であけてもらっちゃってるんだー。凄くない? お店いっこ貸し切りだよ?? 楽しそうでしょ? あなたはどんなのがいい?」
「……動きやすいのが好ましい」
少しだけ間を置いて無機質な言葉が返ってきた。
「んと……そうじゃないんだよね……今後みんなの注目浴びるかもしれないし、だから折角だしかわいいのにしよう?」
「かわいいと、戦闘で有利なのか?」
「あちゃー……」
思わず声に出してしまった。
「?」と、当の本人は気にしていない様子。
助かった……ひとまずそういうことにしておく。
さっきから上手くいかないなぁ。と反省しながらいろいろと考え込んでしまう。アリウスで育ったからこういう受け答えになるの? でもアリウスで最初に接触した子――サオリはその辺普通だったな。
……もしかしてこの子、私のこと嫌い? うぅ。そうだったらどうしよう、ナギちゃん慰めてよぅ。
心の中で固っ苦しい幼馴染に泣きつこうとして、その間に真っ暗な隙間があることに気づいて足が止まる。そうだ、今回のことはティーパーティーの他の二人には言えない。全部、一人でやらないといけないんだ。そう思った時、その隙間を冷たい風が吹き抜けていく。
そんな思考に囚われ、身震いしたところで我に返った。
――私が、頑張らないといけないんだ。
「急に立ち止まって、どうしたんだ?」
「あっあれ……? ごめんね、私……」
立ち止まったつもりはなかったんだ。普段通りの自分ではないことを嫌でも思い知らされる。
しっかりしないと。頑張らないと。そんな時にふと、マスクと帽子で目元しか見えない、サオリの横顔が頭に浮かぶ。
私のアリウスと和解したい、っていう他人からみたらただの夢物語。そんな物語に耳を傾けてくれた彼女のこと。
アリウスとトリニティの関係を、進めたいって踏み出してくれた。そう思ったからこその行動のはず。
――そして、それを託された彼女自身もきっと
「あのね、」彼女に向き合ってから口を開く。
「あなたはこれからアリウスとトリニティの……私たちとの和解のために、アリウスの生徒でもトリニティで幸せに過ごせるっていうお手本になってもらわないといけないの。いわば象徴となるべき存在なの」
「象徴……?」
「そう、あなたの姿をみて、他のアリウスの子たちが憧れを持てるように……ね。だから物語に出てくるお姫様みたいに、綺麗に着飾ってみんなから憧れるような存在であるべきなの。物語の中心に立つ人が、みすぼらしい恰好をしてたら台無しでしょう?」
「なるほど、理解した」
簡素な返事に不安になる。でも、
「そうそう、そういうこと! こっちの制服でかわいく着飾ったらきっと実感も湧くと思うよ☆」
幸いにも店はもう見える距離まで来ていた。返事を待たずに言葉を続ける。
「それじゃあ、いこっか」
私は少し速歩きで店へと足を進める。
◇
「着いたよ」
目的の制服屋に到着した。このお店は既製品からフルオーダーまで様々な取り揃えていて、アクセサリーもとても充実してるお店。自分の家からも近く、アクセサリーを買いによく足を運んでいた。
主役の彼女を店内に案内すると、入ってすぐに立ち止まり呆然と視線を泳がせていた。
ずらっと並んだマネキンに様々なコーディネートが着せてある。お嬢様なトリニティの生徒でも初めて来たら圧倒されるような店構えに、それに見合う豪華な内装。彼女が立ち竦むのも無理はないと思った。
「どれでも好きなもの選んでいいからね、どう? 気になるのはあるかな?」
「……選んでみても、いいか……?」
彼女は前を見据えたまま、私に呟いた。
「……もちろん!」
正直嬉しかった。てっきり「どれでもいい。早く選んで着せろ」くらい言われちゃうかと思ってた。
まぁそのときはそのときで、着せ替え人形にして遊ぶ気満々だったんだけどね☆
素材はいいんだから――
整った顔立ち、綺麗な髪色、そしてその翼。黒ずくめで質素な格好は
――本当に、もったいない。
「ただ……こんなにたくさんあるとどう選んでいいのかわからない。私には難しい」
「んーそうだなぁ……それじゃあ私がコーディネートを……そうだね、いくつか作ってみるから、その中からあなたが"着たい"って思える服を選んでみる。とか、どうかな?」
「それならできそうだ、よろしく頼む」
「おっけー☆それじゃあ選ぶからちょっと待っててね」
「あぁ」
私の得意分野だ。と息巻いて腕まくりをする。……まぁ私の服、袖ないんだけど。
「……んーと、白い羽根、色白なお顔が綺麗だから黒基調が映えるかな。黒いロングドレスの上に白のセーラーをボレロみたいに羽織るとおしゃれかも!あっ、あと瞳の色綺麗だから色を合わせた花があしらわれてるのがあれば……あ! これイイ感じ!! あーでも動きにくいかな。そうだよね、おめかしするの慣れてないだろうし他のもの着やすさ重視にしてっと……素材がいいからなんでも似合いそう、あーどうしようどうしよう悩んじゃうよー」
いけない、ついつい夢中になっちゃう。先ほどまでの気持ちが嘘のように胸が高鳴っていく。
「あっゴメンね、ひとりで盛り上がっちゃって! あなたは他の好きなもの見てていいからね!」
「……あぁ」
――――
「ま、待たせちゃったかな……」
「うん」
ひぃ。
結構な時間を一人で盛り上がってしまった。他の人でも同じような反応するよね、はんせい。
「でも、店の中にあるものを眺めているのも悪くはなかった。私の知らないものがたくさんある」
「ご、ごめんね?」
よかった、そこまで退屈させた訳ではなかったらしい?
「そしたら作ったコーデ、紹介させてもらうね」
「あぁ、よろしく頼む」
作った制服のコーディネートを着せたマネキン。それを並べた前に案内し説明を始める。
通常の制服をおしゃれにアレンジしたもの。動きやすさを重視したもの。彼女が着ることを考えて作ったさまざまなデザインの制服を五つ並べてある。
そして最後。右端に用意した制服――これはただの私の趣味。黒いロングドレスの上に白いセーラーをボレロのように羽織らせた制服。そこへさらにフリルや花をふんだんに各所に施してある。
楽しくてつい、つくってしまった。自分の理想を詰め込んだ、ただただそれだけのもの。これについては必要がなかったから、彼女への説明を省いた。
私が説明し終えると彼女は並べられた制服を、説明順に改めて左から見始めた。扇風機のように機械的な動きで見渡し、最後の制服の前で首が止まる。
右端の制服。それをじっと真剣な眼差しで見つめてていた。
「……あっ、これはね、動きやすさとか考えてなくって……その、私の好みだけっていうかそのーあのね、えっと……」
やっぱり不審に思うよね、どう見てもひとつだけ抜きんでて派手だもん。気が付いたら私は言い訳めいたものを口走ってた。
「これ」
「……えっ」
「うん、これがいい」
「これで……いいの?」
「これだと、ダメなのか?」
「そんなことないよ! いいと思うよとても!」
彼女からしたら一番興味なさそうなデザインなのに。
「ただ、なんでかなぁって思っちゃって。……どうしてこれがいいの?」
「自分でもよくわかってないんだ。ただ、この制服が他のものより明るく見えたんだ。それだけだ」
曖昧な返事に少しだけびっくりした。イエスかノーか、機械的な返事しかしないものだと思ってしまってた。もしかしてとても素直な子なのだろうか……ひょっとしたらこの制服、気に入ってくれたのかな。そうだったら……いいな。
「……ふふっ、おっけー☆それじゃあ、着てみよっか」
彼女を試着室に案内する。わからないだろうからと着方をアレコレ説明してカーテンを閉める、けれども一向に着替えるような音がしない。そこからしばらくすると、カーテンの向こう側から声がした。
「聖園ミカ――」
「なにー?」
「着方がわからない。手伝ってくれないか」
「そうだと思っちゃった、まかせて」
会話が自然と弾む。なんだろう……このお店に着いてから、心が軽くなった気がする。
「これで完成……っと。じゃあ、姿見の前に移動しよっか」
全身が映る姿見の前に案内すると鏡の前でお人形さんのように佇み、じっと鏡を凝視したまま動かなくなってしまった。
「どう……かな?」
そんな彼女に対して、待ちきれずに自分から感想を伺ってしまった。
「……よくわからない、でも――」
鏡をまっすぐ見つめたまま、
「悪くはない」
そう漏らした彼女の姿は、かわいいものでオシャレをする、年頃の少女そのものだと。そう思わせてくれた。
◇
「その、聖園ミカ、気になるものがあるんだけど……」
自身の制服姿を一通り眺めた彼女は、思い出したように訊ねてきた。……この子、自分から主張することもあるんだ。
「どうしたの? 言ってみて」
「ありがとう。向こうの方にあったものなんだけど……ついてきてくれると助かる」
彼女が案内した先は、アクセサリーコーナー。それも羽根飾りを置いているところだった。
羽根飾り。それはトリニティではお世辞にも流行ってるとは言えないもの。飾りを翼に着けるには重たくて動きにくい。よっぽどのオシャレさんか、フィジカルがある人しか中々手を出せないものでもあった。両方を兼ね備えた私みたいにね。
心の中でそうドヤっていると、歩いていた彼女は足を止めた。彼女の視線が示した先にあったのはお店の中でも特段に豪華な羽根飾りだった。
「……この羽飾りが気になるの?」
「これ、どこに付ける飾りなんだ?」
「みて」
身体を軽く左に傾け、右の翼を広げて自分の羽根飾りを鳴らす。
「私も翼につけてるの。かわいいでしょ、興味ある?」
「翼に飾りをつけるのか。見たことがないな……」
「トリニティでも翼に飾りつけてる人なんて珍しいよ。ナギちゃんにも勧めたんだけど、重いーだの動かしにくいーだのって……翼に装飾付けてくれる人誰もいなくってさー。かわいさの前にそんなこと些細な理由だと思うのに、むぅ。……付けてみる?」
「あぁ、気になる。付けてみたい」
「ほんと!? それじゃあ付けてあげるねっ!」
馴染みの友人と楽しくショッピングをしにきているような、そんな気分になる。
丁寧に彼女の翼を彩っていく。今までこんなことなかったな、と思いながら指先を弾ませる。
「よし、これで取り着け完了っと。どうかな?」
その言葉を聞いた途端、トトト……とまるで、糸で釣られた人形のような足取りで、姿見の前まで移動していく。
そして、社交ダンスをするように自身の姿を鏡に映す。その少女をしばらく眺めていると、彼女は振り返り、私のもとへ戻ってきて少し見上げて訊ねてきた。
「その、聖園ミカ。両方の羽根に付けるのはダメだろうか……?わ、私なら問題なく行動できる、任務に支障はきたさない。だから……」
「わーお……そんな気に入ってくれたの……?」
「……うん……そうかもしれない」
そう言った少し上目遣いの彼女の顔は、今までよりも明るく見えた。
「その……左側も付けてほしい」
「もちろん♪」
反対側の翼も彩る。こそばゆくしてしまったのか時折翼がそわそわと動いた。
「――――できたよ。大丈夫? 重たくない?」
「この程度、平気だ」
言い切ると同時に、先ほどのように姿見の前に移動していった。
鏡の横幅が狭いらしい。今度のダンスは体をよくひねり、そのたびにシャラシャラと羽根飾りがご機嫌な音を奏でる。
その姿を眺める。とてもかわいらしい。でも、しばらく見ていると彩りに少し物足りなさを感じた。今でも十分に華やかなんだけど、なにぶん制服の主張が強い。羽根飾りがそれに圧されてしまってるように感じる。
「ちょっとそこで待っててね」後ろから声を投げ掛けると、うん。と返事がそのまま返ってくる。
そんなそつのないやり取りを済ませ、お花のアクセサリー売り場に向かう。
迷うことなくいつもの引き出しを開けると、そこから淡い紫の花飾りが顔を覗かせた。
やっぱり、これだよね。
そうつぶやくと、未だに鏡の前で睨めっこしていた、少女に声を掛ける。
「仕上げに、これを付けてみない?」
彼女は振り返って私の手の中にあるアクセサリーを見ると、静かにコクリと頷いた。
おずおずと私に近づいてきて、立ち止まって翼を広げる。まるで私が付けてあげることを当たり前のことかのように。……なんだかくすぐったいな。
白い綺麗な翼の前にしゃがみ、ピンクの花の間に、バランスよく淡い紫の花を添えていく。
「――できたよ」
「ありがとう」
慣れた動きで姿見の前に移動する、そんな見慣れ始めた光景のはずだったけど、気が付くと私の足も一緒に進んでいた。
「……その、変じゃないか?」
彼女は目と口を少し大きめに開いて、不思議なものを見る目で鏡の中を眺めていた。
「大丈夫、とってもかわいいよ」――ほんとうに。かわいい。
「この服装、かわいいのか……そうか……そういうものなのか」
「違うよ」
つい、心がそのまま漏れ出た。
「あぁ、ごめんねっ。服装がかわいいのはもちろんのことなんだけど、それを着たあなた。――アズサちゃん自身が、かわいいなって思って」
「私自身が……? すまない、私にはよくからない」
「……これから、知っていけばいいよ。ここにくればきっと、学んでいけるはず、そう思うから」
そこまで言ってから気が付いた。それが出来る環境を作ること。それを私がやらないといけないことだった。
彼女はきっかけを作るために過ぎないんだ。アリウスと和解すること。それが私の目的。さっきも気が付いたはずなのにそれを忘れるなんて。ちゃんと和解の象徴になってもらわないと。お友達ごっこなんてしてる場合じゃない。
急に、ばつが悪くなった。
◇
余裕を持ったスケジュールのはずだったのに、気が付くと期限に設定した時間が迫ってきている。
書類も作った、制服もできた。それに加えて今後、自分がやるべきことを改めて認識できた。
やり残したことなんてない。だから学園が起き始める前に彼女を送り出さないと。
「そろそろ時間だねっ、楽しんでるところ申し訳ないけど、そろそろ撤収しないとだね☆」
「あ、あぁ……それもそうだ、すまない。浮かれていたようだ」
「わかってくれたらそれでいいよ」
「……聖園ミカ」
「…………なぁに?」
「今後、私はわからないことがたくさん出てくると思う。その時は聖園ミカ、貴方が私に教えてもらえないだろうか」
それは、私なんかの役目じゃない。
「あはっ、なんだか気に入られちゃった? でも私はティーパーティー。残念だけどそんな暇はないかなって。そうだ、それに。……転校生とティーパーティーが会ってたら、みんなが怪しんじゃうでしょ?」
「……確かに真っ当な意見だ、その通りだと思う。私の考えが甘かった、反省している」
「あはは♪物分かりがよくて助かっちゃうな☆」
「今後任務で世話になると思う。その時はよろしく頼む」
「その時は……ね。もちろん、よろしくね」
形だけのやり取りにやけに安心させられる。あぁ、居心地が悪いな。
「ここで買ったものを書類まとめないといけないから、先に帰って。このお店を出て右に曲がって進んだら来た道に出るから」
「わかった、そこから帰る。失礼する、聖園ミカ」
さっと後ろを向き、端正な足取りで店を出て行く。訓練された兵士のような可愛げのない仕草。
「うん、バイバイ」――アズサちゃん。
彼女が去る時に鳴った、羽根飾りの無機質な金属音。それがやけに耳に残った。
◇
青く透き通った空の下を歩くひとりの生徒を見送る。
フリルとリボンに飾られた黒いロングドレスの上に、セーラー服の上着をボレロのように羽織った独創的なコーデ。
特に目を引くのが綺麗な白い両の翼。そしてそれを彩るオシャレな羽根飾り。
淡い、紫色の花が各所にふんだんにあしらわれている。
まるで、物語に出てくるお姫様か。まるで、希望をもたらす天使か。いずれにしても申し分ない出立ち。
文句なしにかわいい。かわいすぎてちょっと妬いちゃうかも?
……あはっ☆やっぱり私、センス良すぎるんじゃない?
朝日が強めに差し込むバルコニー。自室からつき出したその場所で頬杖をつきながら、後ろ姿が見えなくなるまで見送った。
遠くの雲は太陽に熱せられて、水平線から天へと緩やかに伸びていく。
立場とかそういうのってめんどくさいな。
不器用だからうまくいく自信なんてない。
ナギちゃんにも、セイアちゃんにも、誰にも相談すらできっこない。
頼れる人なんていない、そう思うと耐え難い孤独感に襲われる。
でも、
もう私は、行くところまで行くしかない。
この計画が終わったら、私が頑張れたら、
きっとみんなで仲良くティーセットを囲むことができるから。
だから、
一人でやりとげてみせるよ。
ちゃんとできたら、それを証明できたら、きっと。
きっと、誰かが私のことを褒めてくれるよね?
◇◇
寂れた寮の最上階、さらにそこから非常階段を上がったところにある屋根裏部屋。
外は雨が降り続いている。ザーという一定の音を数日も鳴らし続けていてなんの面白味もない。
薄暗い部屋の中を見渡しても、以前のようにお気に入りの服やアクセサリーは見当たらない。それもそう。ほとんど燃やされちゃったから。当然の仕打ちだ。そう思った。ここに、私を励ましてくれるものはもうない。
仕方ないよね。
ぽつりと呟く。それに応える人はいない。
無地のカーテンが物言わず、部屋のトーンを一段下げていた。
薄く、固いベットの上で抱えていた膝。それをさらに抱き寄せて丸くなる。首を横に傾げて暗い室内から目を逸らし、カーテンの隙間から見える窓を眺めていた。
雨粒が窓については、滑り落ちる。それを見送ってもぽつぽつ、ぽつぽつ。と次々に表れては消える。
私なりに頑張ったつもりだったんだけどな。
et omnia vanitas
懐かしいだけのはず。そんな響きが、やけに身近に感じて嫌になった。
気慰みの外出、それすらも雨の帳に妨げられる。
まるで私をこの部屋に閉じ込めておくために下りた檻のように。
◇
――――リーン
無為な時間を過ごしてると不意に、部屋の呼び鈴が鳴った。
誰だろう。寮長は鈴なんて鳴らさないし、私のことが好きでちょっかいを掛けにくる子たちもこんなところまではわざわざ来ない。ぼんやりしてたからかな、足音にも気が付かなかった。
「聖園ミカ」
扉越しに聞こえてくる声は、長らく聞いてなかった、けれどもよく知った声だった。
「白洲アズサだ、急にすまない。相談したいことがあってここに来た」
ホントに急だね……。それに、今はここに住んでるってこと、知ってる人はそう多くないはずなんだけどな。
「……居場所は百合園セイアに教えてもらった。ここに来れば会えると聞いたんだ」
「…………セイアちゃんが?」
「あぁ」
そっか、そういうことなら……仕方ないのかな。
「それで、どうしたの?」
扉越しに会話を進める。今更合わせる顔なんてないよ。
「羽根飾りの花が壊れてしまったんだ。元通りの状態に戻したい」
羽根飾り?あぁ花のアクセサリー、私が選んだっけ、そういうこともあったかな……。
でも、どうしてわざわざ?他に良さげなのはいっぱいあるし。
「あの時選んでもらったものと同じものが欲しい。同行してくれると嬉しい」
そっかー。あのアクセサリー、気に入ってくれたんだ。でもそれって、私じゃないとダメじゃなくない?
「……もちろん無理にとは言わない。私にとってあの羽根飾りは
「今はそういう気分じゃないかな、帰ってくれない?」
言葉を遮って自分の感情を捩じ込んだ。冷たい廊下に、自分の声が反響した気がした。
「わかった」
――ぎしっ。足音?
――――え、
「ま、まって!!」
そんなあっさり――――
気が付くと扉を開け、後ろを向いた彼女の腕を掴んでいた。急に掴まれた彼女は驚きを隠せない表情をしている。でも、それ以上に自分の行動に理解が追い付いていなかった。言葉に詰まる。ガタガタと窓が震える、その音が静寂を埋めていた。
「…………ご、ごめん。ちょっといじわる言っちゃったというかその、あのね……」
あはは、ばつが悪いな……。
「き、着替えるからそこで待ってて……」
手を放して引っ込めると、扉がゆっくり音を立てて閉まった。
――いっそそのまま帰ってくれてたらいいのに。
そんな淡い期待を捨てきれないまま着替えを済まる。どうして引き留めてしまったのか、それを考えても答えは出ない。ゆっくりと扉を開けると、見知った制服が目に入る。
「……お待たせ。それじゃあ……行こっか」
「ああ、ありがとう。よろしく頼む」
この時どんな顔をしていたのだろう。私はそれを思い出すことができなかった。
◇
似たものが置いてあるアクセサリーショップに心当たりがあった。今の寮からもそこが近い。
羽根飾りのお店はここから遠い。近くの店、そこに行ってそれっぽいもので済ますことはできた。それでもあの店へと向けて、足を進めていた。私をそこへと向かわせた気持ちは、情なのか誠意なのか、どこから来るものかは自分でもからない。
でもなぜか、無性にその気持ちが大切な気がして、それを置いていってしまう気がして嫌だった。これ以上気持ちを置き去りにするのも――されるのも嫌だな。なんとなくそう思った。
それに”同じものが欲しい”って言われちゃったらしょうがないよね、だってそのお店にしか置いてないし。
寮を出てから互いに無言で、あの時と同じ場所へと向かう。
都合のいいことに雨はやんでいた。しかし雲は低く、あたり一面を閉ざしている。いつ、また降り出してもおかしくない天気だと思った。
前だけをみて歩く私の後ろを、少しだけ間を置いて彼女――白洲アズサが付いてきていた。
私なんかと一緒にいて気まずくないの?なんて訊きたかったけどそれを訊くこと、それすら気まずい。彼女の顔を見たのは、腕を掴んでしまったあの時だけ。
雨を含んだ泥が靴にまとわりついて重たい。でも足を止めることはしたくなかった。
◇
「久しぶりだね」
店につくと自然と感想が口からこぼれた。
「うん、久しぶりだ」
あれから、色々あった。本当に色々と。そして、私を取り巻くひと、もの。それらも、ほとんどといえるほどには変わった。
時間にするとそれほど経ってないはずなのに、とてもとても遠い過去に感じた。手の届かないほどに。
「それじゃあ、お花のパーツ取ってくるね」
「一緒に行こう」
私と一緒にいて気まずくないんだ。そう思いながらも、目的の引き出しがある棚を目指して迷うことなく進む。
「でもどうして?あなたなら場所も覚えてると思ったんだけど」
「あの時は……鏡を見ることに集中してしまっていたようだ……それに」
「わかった。付け方わからないんでしょ」
「ふふ、その通りだ。先に言われると、少し恥ずかしいな」
ふと彼女と目が合う。そこにあった表情は、私の記憶にあった彼女からは想像も出来ないほどやさしい表情だった。それは手を伸ばせば届きそうな距離なのに、どこか遠い存在に感じてしまう。あの頃の自分とは違うんだって、そういうふうに。そんなことを感じさせた。さっと顔を逸らし、引き出しを開ける。そこにあるべき花飾りが見えて少しほっとする。
「しょうがないなー、……また付けてあげる」
「ありがとう」
引き出しから淡い紫の花飾りを取り出すと、私はあの時と同じように丁寧に彼女の翼を彩っていった。
この感覚、それはとても――、
「懐かしいな」
自分じゃないその声にびっくりして顔をあげると、また彼女と目があった。彼女はそのまま柔らかく笑った。
「今度は先に言われちゃったかな」
私はその笑顔に少し甘えて、頬を掻いた。
「――できたよ」
「ありがとう、見てくる」
小走りに姿見まで駆けていく、彼女の後ろ姿を追おうとした時。あの日、見送った姿を重ねてしまった。
――――あなたは、晴れやかな青空の下へと歩みを進めた。でも私は、薄暗い檻に閉じこもったままだ。私はもう何者にもなれてなくて、過去を重ねる事しかできない。そんな、私に。 何もない私に。 あなたは。 どうして――
「聖園ミカ、ありがとう。元通りになって、本当に……」
彼女の口がそこで止まった。あー……よっぽど酷い顔なのかな、今の私。
「……どうして。どうしてその羽根飾りをそんな大切にできるの?」
それを口にした、その瞬間に。決壊した。
「どうして? 私アズサちゃんにいっぱい酷いことしたよ?アリウスの他の子たちも! みんな傷つけて、酷いことして、めちゃくちゃにしちゃって……それなのに、こんな私と一緒にいて……こんな私が付けたアクセサリーを大切に……して……こんな、こんな私の……どうして……」
「聖園ミカ」
真っ直ぐ私を見て名前を呼ばれた。こんなもの見せて引かれると思った。愛想尽かされると思った。見放されると思った。置いていかれると、そう思った。それでも彼女は、私のことをしっかり見据えて放さなかった。
「私にとって、この羽根飾りは大切なものなんだ。私にとってかわいいものを知るきっかけになった。
この学園に入って、私はたくさんのかわいいものにも出会えたんだ。
羽根飾りの花が壊れた時、その時は最初、同じものが欲しいと、そう思っていた。だけど今日、こうしてくれてわかったんだ。あの時みたいに、こうして聖園ミカに付けてもらいたかったんだ。
それが本当に嬉しくて」
「……でも、そもそも私が転校させなかったら、こんな計画立てなかったら、みんな傷つくことなかったんじゃない……?」
「転校する機会を作ってくれなかったら、そもそも私に学ぶ機会などなかったんだ。
学ぶことは本当に楽しかった……そのきっかけを与えてくれたのは、聖園ミカ、貴方だ。
それに、サオリたちを援けてくれたことも聞いた。
私にとって聖園ミカは恩人なんだ」
「で、でも……私は失敗したよ?失敗したの。ぜんぶ。なんにもできなかった……なにも、残らなかったの」
「誰よりもアリウスとの和解を望んで、誰よりも頑張ってくれた。私はそう思ってる。それに百合園セイアも、桐藤ナギサも、同じことを言っていた。サオリも……その計画を信じてたから、だから私を指名したんだと思う。聖園ミカ、貴方の想いは、形を変えてちゃんと私たちに残ってる」
ひとつひとつ、私の心を縛り付けていたものが解かれていく。
「本当に、感謝してるんだ。
ありがとう、聖園ミカ。」
「わ、わたし、……がんばったの、でも……
でもうまくいかなくて……
それで……アズサちゃんにも、みんなにもひどいことしちゃって…………
でも、もう戻れなくなっちゃってて
止まることもできなくて
わたし、わたし……
おかしい、こんなはずじゃなかったのにってずっと……
ごめん……ごめんね……
……わ、わたしね、……アズサちゃんとずっと……ずっと
友達になりたかった……!
今さらこんなこと言って……そんな資格はないのに……
……こんなこと望んじゃってわたし…………」
「私もずっと、ミカと友達になりたいと思っていた」
優しく、でもはっきりとした言葉が続く。
「資格がないなんて、そんな哀しいことを言って諦めないでくれ」
「でも、私……もう空っぽだよ?何も残ってないの、なんにもないの、私にはもう……」
「これから知っていけばいい、学んでいけるから。それは未来に希望を抱いてもいいということ。そう教えてくれたのは、他でもない。ミカじゃないか。
ミカは十分頑張ったよ。頑張ってくれたんだ。私たちのために。その見返りを望む資格はあるんだ。十分なほどに」
「わ……たしも、……未来に希望を、持ってもいい……の?」
「ああ、ミカがそう望むなら」
いっぱい泣いちゃた。お友達の腕の中で。
わーお、もしかしてこれ王子様じゃなくて、天使に抱き締められたお姫様になってないかな?
それでもいいや、今はこの暖かさに、全部、ぜんぶ、ぶつけちゃうんだ。
嬉しかったこと、悔しかったこと、悲しかったこと……それに楽しかったことも、ぜーんぶ。
◇
こんなに寮の門限がもどかしいと思ったことは今までなかった。……結構あったかもだけど……。
「ミカ、今度私服も選んで欲しいんだ」
「おっけー☆どんなのがいいかな?かわいい系?おしゃれ系?どうする?…………って、アズサちゃん聞いてる?」
私の隣でお行儀よく歩いてる子。
私のとびっきりコーデを着て、ちょーかわいい羽根飾りを着けた女の子。
彼女のお名前はアズサちゃん。私の大切なお友達。
今日久しぶりに会ってね、お話したら意気投合しちゃったの。今はその帰り道なんだー。
どんなのがいい?って質問したら黙っちゃった。
ははーん、さてはイメージがついてないね?友達だからわかっちゃうな☆
「そしたら私がまたコーデ作るから、そっから選んでもらおうかな?」
「うん、それがいい。ありがとう」
向けられたやさしい笑顔。ずっと見ていたい。
「ただ……」
「どうしたの?」
「私ばかりしてもらってる気がする……。何か、私もミカにしてあげたい」
今日、アズサちゃんからとっても大切なものをもらってるけど、それを口に出しちゃうのは私のわがままな気がした。
「んー、あっそうだ!じゃあねじゃあねっ、私からのお願いも聞いてくれる?」
「もちろん、私にできる最善を尽くそう」
「じゃあ、こんどね、」
――連れて行って欲しいところがあるの。
◇◇
傘を取って玄関を開けると、眩しいばかりの朝日に元気よく挨拶される。ここのところ雨続きだったのに。と、癖で取ってしまった傘を傘立てに戻したところでようやく気づいた。
あぶないあぶない。着替え終わった後、服装を鏡で確認してなかった……。
さっと衣服が乱れていないかだけ確認し終えると、バタバタと大慌てで待ち合わせ場所に向かう。おかしいな、早起きしたはずなのに、ただでさえ選ぶ服の選択肢も少ないのに、着る服迷ってるだけでギリギリな時間だなんて信じられない。
息を切らして待ち合わせ場所に着くと、幸い先客はいなかった。近道したら思っていたより早くついた……。そう安堵しながら息を整えて、最後に大きめのひと息をゆっくり吐き出しきる。と、期待してた声を掛けられる。
「お待たせ。もしかして待たせてしまった?」
「ううん、私も今来たとこ」
トリニティのとある大型ショッピングモール。彼女が指定した待ち合わせ場所。
ショッピングモールなんて安っぽいしお気に入りのブランドのお店もないし、自分一人では来ようと思ったことなんてなかった。
だからこそ、今は胸が弾んでいるんだろう。
「じゃあ行こうか、み……えっと、そうだった。ミカさん」
「えっ、どどどうしたの?急にさん付けなんて……」
やだやだ距離置かれてる?泣いちゃうよー……
「上級生には”さん付け”しないといけないって、この間授業で習ったんだ」
得意げに話す彼女。授業で学び得た話を聞いていると、私まで嬉しくなる。
「もうっ、堅っ苦しいなー。びっくりしちゃったじゃん!……呼び捨ていいよ。だって、友達だから、ね?」
「なるほど、理解した」
堅い言葉遣い。でも優しい耳障り。
それが、とても居心地がよかった。
「ふふっ」
笑顔を作る必要なんてなかった。自然と顔が綻ぶ。
「それじゃあアズサちゃん、前に約束した場所、連れて行ってね☆」
「うん、行こう。ミカ」
彼女が振り返えると、羽根飾りが心地よく鳴った。
そこへ並ぶために歩くペースを上げた。その姿が近づくにつれ自然と口角が上がっていく。
アズサちゃんが知った、かわいいを――
――今度は私が教えてもらうんだ。
あとがき
アズサの制服をミカが選んでたらいいな。そんな妄想から始まりました。
初稿だとアズサ視点のお話でミカに羽根飾りを選んでもらって"かわいい"に出会った話だったんですが、気がついたらミカのお話になってました。
そうはならんか……?なっとるやろがい。
1000文字程度、多くても2000文字程度で書き切ってネットに上げるぞ!と息巻いて腕まくりしていたので聖園ミカ……許せねぇ……ってなってます。
ミカの行動、心情を書いてる時に、どうしてもエデン条約後の魔女の呪いが解けたミカがひょっこり顔を出してきて、自分の内外(ひょっとしたら内面だけでも)の整合性の取れてないミカを表現するのが難しかったですね……。
こう、読書感想文すら苦手だった自分が、初めてこうして文章を書いたのですが……もちろん難しかったのですが思ってたより書けましたし、なにより思い描いた光景が形作られていくことに感動がありました。
もしこれを読んでて、自分でお話を書いてない人は是非、レッツトライして書いてみてください。
私が書けたんだからみんな書けるよ、みんな書こう。そして増やそう二次創作!
少しでも楽しんでもらえたら僥倖です。そしてここまで読んでいただけたことに、この上のない感謝を。
それと、こんな私に筆を執ろうと思わせてくれたブルーアーカイブという作品、背中を押してくれた友人にもこの場を借りて感謝いたします。
これからどんどん作品を紡げていければな、と思っております。
繰り返しになりますが、お読み頂きありがとうございました。かんしゃ〜。