絶対UFZに入りたくないバルタンVS絶対加入させたいゼロ 作:スターク(元:はぎほぎ)
『宇宙を揺るがす恐怖と絶望のカウントダウンは、既に始まっている……』
惑星チェイニー、サロメ星人の野望が潰えた星にて。もう一人の巨人──単眼の巨人の
『ンだとぉ……!?』
『やがて我々の宇宙から……ッ』
己の死期を察しているのであろう、しかしそれでも突き動かすは誇りかプログラムか。拳を高らかに突き上げ、お前の傷では死なぬとばかりに自害を目論んだ。
それが齎すは
ウルトラマンゼロは悟った。応戦の構えから離脱の姿勢へ、地球人達もまた同様に。
ダークロプスゼロの拳に力が満ちる。いよいよ己に突き立てんと、その総身を力ませて。
『強大ナ゛ッ───?!』
──結論から言えば。
自爆は起こらなかった。
自決は食い止められた。
寸前で到来した
『は?』
倒れる写し身の姿に、思わず呆気に取られるウルトラマン。光が来た方向を見上げても、超視力の瞳に捉えられるような異質な存在は無い。
それより先に気付いたのは、地球人の片割れ。レイブラッド星人の血を引く
「何かいる!!」
かつて宇宙を支配した血筋由来の感覚で指差した虚空、弾かれたようにそこへゼロも視線を向けた。瞬間、そこに“ソイツ”は姿を現す。
『……驚いた。まさか地球人類に見破られるとは』
「『バルタン星人……っ!!』」
まるで空気に溶け込んでいたかのように、そこから浮き出てくるが如く全貌が露わとなる。鋭く尖った二本角にギョロギョロ忙しなく蠢く複眼、何よりも存在感を主張する両手の大鋏を携えて。
ウルトラマンゼロから種族名を呼称された彼はしかし、他の同族とは違いボロボロの外套を羽織る珍しい装いをしていた。だが疑いようも無く、それはバルタン星人そのものだ。
『サロメ星人の次は宇宙忍者ってか。テメェ、何しに来た!?』
『助力したというのになんて言い草だ……が、状況が状況。仕方もないか』
そう言うと、バルタンはその
機能のほとんどを停止し倒れ伏した身体が、その背中がボコンッ!と歪んだ。
『グゴォ……!!』
『なっ、よせ!もう決着はついた!』
『
「生産者だと……っ!」
元よりダークロプスゼロは宇宙を滅ぼそうとした敵。それでも、既に死に体の相手が苦しむ様をなんとかしようと叫ぶゼロをバルタンはすげなく拒絶する。
一方でバルタンの発言に着目したのは、地球人の片割れ──レイオニクスの血など引かないごくごく普通の一般人、ヒュウガである。
「お前がダークロプスゼロを造ったというのか!」
『まぁな。ああ一応言っておくが、
『多次元宇宙だな…!』
ダークロプスゼロはここではない別の宇宙から来た、という旨をヒュウガ達は既に知っている。宇宙崩壊現象を止めにここへ来たゼロもまたすぐに悟り、しかしその間にも事態は進んでいた。
金属がへし折れる音。ダークロプスゼロの背中からいよいよ、紫色の光を放つコアが顔を見せていた。
『オ、レは……!』
『ダークロプス……ッくそ!やめろォ!!!』
苦悶の声に迷いを振り切ったゼロが上空へエメリウムスラッシュを即射。
瞬時に伸びていく光はしかし、効果を齎しはしない。着弾の瞬間に、まるで出現した時を巻き戻すかのようにバルタンがその姿を眩ましたのだから。
気配を頼りに視線を遣れば、その五体はすでにダークロプスを踏み付けて立っている。いつの間にという疑問を投げ捨て、ゼロは宇宙拳法の構えをとる。
コイツは、危険だ。
『オレは……何、だッ』
『………何がだ?』
創造者へ彼は問う。今際の際で最後の命題を、己の存在意義を。
『何の為に、オレは生み出されたッ?!』
『道具が物を考えるな』
返された答えは冷徹。
終わりを告げたのは破砕音。
動力炉を手中に収め、バルタンは周囲を見回した。警戒を強めるウルトラマンゼロと、そして銃をこちらに向ける地球人達を睥睨して。
嘆息を一つ。
『言っておくが。ここで俺をどうこうしたところで、ダークロプスゼロの言った“恐怖と絶望のカウントダウン”は止まらん』
『そうかよ。じゃあテメェをボコボコにして仔細を聞き出すまでだ!』
『連戦で消耗したその身で、か?お互いに得が無い、無意味だ』
『生憎元気ピンピンでな!3カウントなんて待たずにぶっ倒してやるよ』
『……平成ウルトラマンって皆こうなのか?ガラ悪過ぎるだろ……』
既にゼロのカラータイマーは明滅をする寸前。それを見抜かれ、ゼロはせめてもの虚勢を張る。場を支配する緊張故に、バルタンの呟きを聞き取れた者はこの場にいなかった。
『そもそも、そもそもだ。ダークロプスゼロはプロトタイプに過ぎん、“量産型”のな』
「まさか、あのレベルが数十体レベルで増産されると……!?」
『出力とAIはそこそこ妥協が入るが、装甲はそのままのが既に生産ラインを確立しているぞ。もう止めるには
己の独断ではなく、背後に強大な組織の手が伸びている事を匂わせるバルタンの言葉。予想以上に深刻な事態へゼロと地球人達が息を呑むも、彼らの驚愕は次の言葉でさらに深まる事となる。
『そして今現在稼働予定のダークロプスはその数…500億』
「えっ」
「なにっ」
『な……なんだぁその数!?』
『というのは流石にハッタリだ。“皇帝陛下”はそのぐらい作りたかったらしいが、現実的には100万ぐらいに落ち着くんじゃないか?』
その冗談に何の意味があったかは知る由もないが、少なくとも笑える類のジョークではないのは明らか。文字通り
それでは何も残らない。征服というよりコレは最早───
「破壊が目的じゃないか……!」
『ご名答だ地球人。話が早くて助かるよ』
瞬間、バルタンの背後の景色が歪む。それは決して錯覚などではなく、ワープゲート特有の空間湾曲だと知るだけの知識がゼロ達にはあった。
逃げられる。
『待ちやがれッ!』
だが間に合わない。手を伸ばすよりも、ゼロスラッガーを投じるよりも、相手が薄れる速度の方が明らかに早い。
完全に姿が消える寸前。バルタンの嘯きが、木霊する。
『止めに来い、ウルトラマンゼロ。
『…!』
それが最後。
乾いた風が、何事も無かったかのように戦士達の肌を撫ぜていった。残されたのは大地に刻まれた数多の
その中心で、ゼロはただ拳を握り締めていた。
「……ゼロ!」
沈黙を破ったのはレイオニクスの地球人。彼もまた、バルタンの最後の言葉を聞き捨てられる素性ではなかったが故に。
「ベリアルと聞こえた!奴が関わっているのなら、同じ血を引く俺にも出来る事がある筈だ!」
「一連の戦闘および対話は我々の端末に全て記録された!ZAP本部に打診し、ウルトラマンと地球人類で共同防衛線を……」
ヒュウガも続く。しかし彼らを制止したのは、他ならないゼロの掌だった。
『レイ、ヒュウガ、悪い。ベリアルは光の国の問題だ、俺達ウルトラマンの手でケリをつけなきゃいけねぇ』
「だが宇宙存亡の危機ともなれば、我々も無関係ではいられない!それだけでなく、地球人としても
『起こさせねぇよ、そんな危機は…!』
ふわりと、ゼロの体が宙を舞う。その言葉の意味を理解した地球人達は二の句を告げない。
『レイ、ヒュウガ!お前達地球人は、同じ地球人の防衛だけを考えててくれ!まぁ心配は要らねぇよ、俺が
「ゼロ…!」
『助かったぜ。じゃあなっ!!』
一瞬の後、光が天へと立ち上る。光の巨人は夕暮れを裂いて、己が星へと帰っていった。
見上げて、見送る。地球人に出来るのは、今も昔もそれだけなのか。
「レイ」
「ボス、俺は……」
否。それで終わりはしない。
少なくともここに残された二人は、未だ諦めるつもりなど毛頭無いのである。
帰還する。
「バレット、帰投した。開門求む」
《
重々しく開いた扉の先で、俺を出迎えたのは数えるのも億劫になる程のロボット兵器の列。名をレギオノイド、両腕のアタッチメントを換装することで陸海空・宇宙に全対応する万能機械兵どもだ。
……開発にも一助した。
(
我が事ながら辟易としながら中へ。すると聞こえてきたのは、声。
《お父様》
脳内に直接語り掛けてくるが、何の事はない。
《お疲れさまでした。お体を洗浄なさいますか?補給されますか?もしくは……》
「“ナナ”、それよりも優先すべき事があるだろう」
《……ベリアルから招聘令が来ております》
だろうな。
という訳でナナ。
《御意に》
「それと、宇宙海賊の
《脳筋風情に撒かれるようなバグなど私には起こり得ません。全航路パターンを掌握済みです、ダークゴーネのアホとは違うのですダークゴーネのアホとは》
「上出来……ではあるんだがなぁ」
一体どこからそんな言葉遣いを拾ってきたのか、変な教育はしていないんだが。
ともかく、諸々の手筈は整いつつある。
「後は、蒔いた種がどう芽吹くか……だな」
《種、とは?》
「アドリブだ。じゃあ、行ってくる」
《はい。いってらっしゃいませ》
ワープゲート、再度展開。目的地、ベリアル銀河帝国首都要塞。
(……こんな事になるんだったら、ウルトラシリーズ卒業なんてしなければ良かったな)
内心でそうボヤキながら、考えるだけでも鬱々しい場所へと俺は一歩を踏み出すのだった。
バルタン星人バレット。元殺し屋、現ベリアル軍の小間使い。
ついでに、転生者。
バレット氏の姿はベーシカルバージョン(要はコスモスバルタン)を想像して下さいな