絶対UFZに入りたくないバルタンVS絶対加入させたいゼロ 作:スターク(元:はぎほぎ)
「私の名前は“ナナ”。お父様にのみ仕え、彼だけが頂点に座す世界を望む、そんなしがない小娘にございます」
そう宣う少女がいるのは上空。手が届きそうで届かない、そんな絶妙な位置だった。
んで、
『お父様とは一体誰の事だ!?』
「とっくにヒントは揃っている筈です。状況証拠を纏めれば簡単に考え至るでしょうに」
くすくすと笑うその声に、ミラーナイトが勘付いたような反応を見せる。つまり彼が言ってた“少女”ってのは、アイツの事で間違い無いって事。
そして、これまでの流れを見るに“お父様”ってのは……
「……バレットだな」
「正解です!流石は大虐殺種族ことウルトラマン様ですね」
「ベリアルの事を言ってんなら生憎俺にはノーダメージだぜ。そのベリアルを倒しに来たんだからな!!」
「いいえ?ウルトラ兄弟において栄え在る
……痛いとこ突くな。何故か分からねぇが、アイツやバレットはこっちの宇宙で起きた事をかなり熟知しているらしい。
「……それに関しちゃこっちにも言い分はあるが、何言ってもお前は納得しないんだろうな」
「当たり前です。お祖父様を殺し、お父様の同族を皆殺し、その上で正義を気取る道化共──あぁいけません。敬意に倣うと言ったのに、私ったら未熟な」
そう言って、ナナとやらは瞳に灯りかけていた激情の炎を消す。冷淡さを取り戻した彼女に、次に語り掛けたのはミラーナイトだった。
『彼の種族が何であろうと、今ここにいる彼が宇宙を救おうとしてくれている事に何の関係も無い。私の恩人を、これ以上侮辱するような真似はするな!』
「ミラーナイト……っ」
『そもそも、そもそもだぜお嬢ちゃん!皆殺しってだけ聞きゃあやり過ぎに聞こえるけどよ、それ以前にバルタン星人ってのが何かやらかしたのが先なんじゃねぇのか?そこをちゃんと整理しとかねぇと逆恨みになっちまうぞ!!』
「………はぁーっ」
続くグレンの問い掛けに、彼女はそれはもう深いため息を吐いた。怒りというより呆れの色が濃く乗っている。
と、その瞬間、彼女の周囲360°を瞬時かつ完全に鏡面障壁が包み込んだ。ミラーナイトの物じゃない。
二次元人!やっと動いてくれたのか……!
「怠惰極まる
捕虜交換の交渉を仄めかせた二次元人の言葉に、ナナは数瞬の思案をした様子。やがて顔を上げると、困ったような顔をして、
「お父様は私などにも慈悲深いですからね、そんな迷惑は掛けたくありません……ので、さようなら」
『『「え……!?」』』
次の刹那、俺たち全員を驚愕させてみせた。何食わぬ顔で障壁を透過しやがった……?!
「鏡面が通さないのは飽くまで
『つまりどういうこった!?』
『今の彼女の身体を構成してるのは仮想質量体、だから鏡面を自由に移動出来るという事です!』
『分かんねぇ!!』
「俺達がゲートを通る時に、バルタンのロケットごとアイツの現実肉体を回収しとけば良かったって事だ!くそっ、当たらない……」
変形させたゼロアイから光弾を発射するが、距離もあって狙いがブレる。その間にもナナは飛び続け、やがて鏡面ゲートまで到達しちまった。
「最後に、ミラーナイトを救出してみせたささやかな報酬として言っておきましょうか」
『今度は何だァ!?』
「近々アイアロンを筆頭にこの星へベリアル軍が侵攻を計画しています。20日前の時点では今日から170時間後の予定でしたが……どうか憂の無きよう備えを」
それが本当に最後。鏡面に触れた瞬間、プツンと糸が切れた人形みたいにナナの身体が力を無くし、落下する途中で泡みたいに消える。鏡の外の肉体に意識を移して、鏡像の方の身体は捨てたって事なんだろう。
「悪い、逃がした」
「そうですね……」
ナナの奴が言い残した、ベリアル軍の侵攻予定日。敵勢力所属者の言う事を真に受けるのもアレだが警戒するに越した事は無い。
「えっ言ってないよね?」
ジャンバードから出てきたナオ達に向けて二次元人達が言う。だがそう言うお前達はどうするんだ?
『鏡面ゲートが破壊されればこの星も大ダメージを免れない。迎撃体制を整える……ただ懸念すべき事として、ナナの忠告を受けて認識範囲を広げたところ、こちらに接近してくる一団の存在を認知した。彼女は170時間後と言ったが、予測では1時間後にはゲートへ接触してくるだろう。度々申し訳ないがグレンファイヤー、防衛戦に際し彼の力を借りたい』
「分かった……グレン、頼めるか」
『良いってことよ。そろそろゼロの変身も慎重にやらなきゃだしな』
ヘッ、分かってるじゃねぇか。
……で、盾はどこにあんだ?どうやってそこに行けば良いんだ?
「「「川???」」」
「「「わーっ!?!」」」
それを皮切りに足元に開いた大穴、その奥底目掛けて真っ逆さま。そういやアヌーでもこんな事あったなと思いながら、俺達は地下深くへと誘われていった。
『……さて。厳しい戦いになりますよ、グレンファイヤー』
『覚悟は出来てるぜ。焼き鳥はどうだ?』
《焼き鳥ではない、ジャンバードだっ!》
『貴方喋れるじゃないですか、なんでこれまで黙ってたんですか』
《今の私は変形も出来なければ姫様について行く事も叶わないからな、口出しする権利もタイミングも無かった……が、戦いとなれば話は別だ。助力させてくれ》
『心強い……!』
「なぁ、エメラナ」
「なんでしょう、ゼロ」
「バレットは本当に裏切り者なのか?」
「……実は私も疑問に思っています。ナナさんはわざわざ私達に侵攻予定を伝えてくれましたし……しかし、ゼロはどうしてそう考えたのですか?」
「実はな……ディファレーター光線の件あるだろ。俺が太陽光をエネルギー源に出来ないっていう」
「ええ、最初の戦いで消耗が激しかったから気付いたんですよね」
「……“キエラ・ソル・カレカレータ”。
「っ!!」
「去り際にそう言ってヒントをくれたのは、バレットなんだよ」
「ゼロー!エメラナー!神殿が見えたよ〜!!」
「……行こうぜ」
「…はいっ」
銀十字が降り注ぐ不思議な戦場だった。
次々に八つ裂かれるレギオノイド、延いては戦列艦ブリガンテや揚陸舟艇デルストまで。
………戦闘力自体に疑う余地は無かったよ。ただ、
『鏡の星を穢す事は、このミラーナイトが許さないッ!!』
お前が闇を振り切って、健在を示してる事が正直驚きだよ。どうやったんだ?
《ええい、これではロクに前進出来ん!援護狙撃せんか!!》
『お言葉ですが、俺と奴の相性は最悪の一言ですよ。下手に撃ちようものなら位置を特定された瞬間に反射されます、それじゃ俺がここに来た意味がありません』
『それを決めるのは俺の判断だ!というか偏光射撃出来るだろお前、なんとかしろ!』
通信機から叫ぶアイアロンの声がやかましい。ヤプール戦役時代からの腐れ縁ともなると手の内知られてるから誤魔化しも利かない、厄介な物だ、早く綺麗サッパリ消え失せて欲しい。
……って、オイオイオイ。お前まだこの宙域にいたのか。
《お父様、お久しぶりです》
『危ないだろうナナ。わざわざ寄って来ないで早く離脱しろ』
《いえ、お伝えしたい事がありまして》
鏡の星へ出張させていた愛娘。それの乗ったロケットが、戦線を迂回してこの狙撃ポイントに近付いてくる。もしかして、ミラーナイトの復活はお前が何かしたのか?
《私は命令以上の事は何も。彼の再起はウルトラマンゼロに依る物が大きいです》
『……いるのか。鏡の星に』
《僅かな差で、ベリアル軍より先んじて。予定が早まっていたようで、戦列を見かけた時には焦りました》
それは確かに有用な情報だ。ありがとうナナ。
となると。目的は十中八九バラージの盾、だがアレは欠損により機能停止してる筈だ。再起動の目算があるのか?
(もしあるとすれば……)
“バラージ”の名を知った瞬間、宇宙中を探し回った。目を皿にして嗅ぎまわり、密航を繰り返し、違法な採掘まで手を伸ばして。
ノアの神がここにいる。
俺の知るウルトラマンかも知れない。初代マンか、ゾフィーか、それとも!
……と思って探し当てた鏡の星の地下深くにて、見つけたのは見た事も無い羽付けた巨神像でしたとさ、というつまらないオチだ。
だがしかし。巨神像そのものはともかく、それが持っていた石の盾は──
『もし反抗勢力がバラージの盾の起動に成功すれば、情勢は一挙にひっくり返る』
《お父様がお母様と出会う前、鏡の星への密航時に見つけた物ですね。当時検知された内包エネルギー指数だけでも惑星蒸発級、マレブランデスも一撃で粉砕可能でしょう》
『してナナ、お前の見立てでは起動確率はどれ程だ?』
《0.2%》
……そりゃ、有史以来の起動実績が無いんじゃな。ヒーローだったら賭ける確率、そして掴み取る勝ち筋。
俺はヒーローじゃない。
『名残惜しいが攻撃続行だ。お前は母船に戻って───』
《お父様!!》
『見ィつけたぜ鉄砲玉ァァァ!!!』
そこで回避に成功したのは、ナナの悲鳴に助けられた側面が大きい。飛び退いた地面に業火が着弾、避けなかったIFの俺の姿が融け落ちた地盤としてブチ撒けられた。
ナナの乗るロケットを抱えて彼方を睨む。下手人の正体は問うまでも無い。
『グレンファイヤー!!』
『その通り!紅蓮の闘士、焼き鳥に乗って只今参上!!』
《焼き鳥言うな!》
厄介な、ジャンバードに乗る事で速度を味方につけてらっしゃる!!火力に機動力を合わせるってのは単純だが、それ故に強力……ッ!
『燃えるマグマのォ!!火の鳥アタァーック!!!』
『熱ッ!!』
咄嗟の前転、するとすれ違いざまに振るわれた炎の槍が外套を掠り、それだけで全体の3割ぐらいを焼き払いやがった。冗談じゃない!
『ナナ、ワープしろ。庇い切れん』
《わかりました!ご武運を…》
《させるか!》
『それは此方の台詞だ!』
相手の突貫に合わせ、俺は手元のスイッチをONにした。内容は機雷の一斉起爆、この宙域にバラまいた仕込みって奴だ。
接近時には回避してきたようだが、戦闘中ともなるとそうはいくまい。少なくとも、回避に専念するべく突撃は中断の憂き目に遭う。
《ぐっ、やってくれる!》
『どわぉ!?オイ焼き鳥ぃ、もうちっと安全運転しろよな!』
《勝手に跨っておいて何様だ?!》
その隙に、手元のナナが無事ワープを完了。見届けてから俺も飛び立った。
こうなってしまった以上、振り切るまで狙撃は出来ない。ならば乱戦に持ち込む──!!
《戦線の方向に……待て!》
『うおおおおおバレットォ!俺も降りるからタイマンしやがれ!』
『何だ何だ、なんでお前まで俺に執着するんだ!?』
『オメーが俺とザウラーの決闘を邪魔しやがったの覚えてねぇのかァ?!俺ァな、死に際のザウラーに卑怯者呼ばわりされたんだぜオメーの所為で!!』
『そりゃ悪かったな!だが奴の存在がどれほど脅威だったか分かっているのか!』
駄弁で集中力を乱そうと問うてみれば、返って来たのは割かしまっとうな怒りだった。だが仕方が無いだろう、ヤプール軍に入る前からザウラーはUSAから名指しで懸賞金を掛けられる程の凶悪怪獣だったんだから!効率的かつ安全に処せるならそれに越した事もあるまい!!
『知るかーッ!!俺の
『お前それでもヒーローサイドか!?』
《私としてもどうかと思うぞ……!》
頭蛮族かコイツ。海賊だったな。
だが不味い、レギオノイドたちを隠れ蓑に凌いできたがそろそろ距離詰められてきた。
こうなったら…!
《バレット、転進!》
『取り舵いっぱいだぜファイヤーマン号!』
《ジャンバードだ!!》
掛かった。あとは俺が上手くやれるか否かだけ、ミスは必死の乾坤一擲!
───目の前に十字の光が迫った。今だ。
『うぉッ──!?』
《しまった!》
『なっ、ジャンバード!?』
最前線にて
俺は寸前で完全透過により離脱、ジャンバード達もバレルロールによりギリギリ回避。しかし射程内に味方が入り込んでしまった事で、ミラーナイトの張っていた弾幕がその勢いを止めた。
『バレット、今だけは褒めて遣わそう!!』
……まぁそうするよな。この好機は逃せないだろう、ベリアル軍からすれば。
『全機、我に続け!ァアイアロォンサァウンドゥッ!!!』
『しまっ──!!』
アイアロンの頭部からマイナス思念を帯びた超高周波が、そして居並ぶ戦列艦とレギオノイドからエネルギー砲が斉射される。目標はもちろん鏡面ゲート、そこに映る鏡の星。
轟音と閃光に晒されて、ひび割れが入った。
『ぐぇぇぇ、耳ぃぃぃ!』
《姿勢制御システムエラー、このままでは…!!》
『……クッ!』
ミラーナイトと目が合う。悪いな。恨むなとは言わん、それは軟弱者の思考だから。
それでも……お前の故郷には、傷付いて貰うぞ。
『綺麗な物など、壊れてしまぇぇぇぇいッ!!!』
破砕音。散らばる欠片が戦闘終了を告げる。
これにて鏡の星は、この宙域より永久にその姿を消す事となった。
……あーあ。
『状況終了。鏡の星の粉砕を確認しました』
『よし。これで陛下の機嫌もいくらか好転なさるだろう。安心だ』
何が安心だ。奴が生きてる間ずっとこれが続くんだぞ、それがお前の望んだ事か。
あーあ、馬鹿らしい。死神のご機嫌取りなんか続けるくらいなら、いっそ自分の手で……
……ん?
えっ。
(おいおい待て待て)
鏡面ゲートがあった場所に漂う何か。星屑だったら無視できたが、
それにこのエネルギー数値……いやいやいや、勘弁してくれよ。
いやちょっと本当に勘弁してくれ?!
(うーわ)
そんな俺の願いは届かなかった。ノアの神は俺に微笑まなかったらしい。
駆けつけて認識した人間、かくしてその正体は。
『何をやってんだゼロ……』
俺が出会った二人目のウルトラマン。
変身アイテムと思われる
グレン:頭海賊
ナイト:頭根暗
ジャン:頭堅物
バレット:頭卑劣
UFZの明日はどっちだ