絶対UFZに入りたくないバルタンVS絶対加入させたいゼロ   作:スターク(元:はぎほぎ)

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「バレットは切り捨てる1を“真っ先に”自分にする」と解釈してくれた読者の皆様、解釈違いを起こさせたらすみませんが事実は少々異なります
彼の本質は……


本当の君がそこにいる

……光の星。

翡翠に輝く星が、俺の手から離れていく。

 

『……あ゛ぁ、勘違いか』

 

思わず手を伸ばした瞬間、気付いた。アレは光の国じゃねぇ、そして離れていく手も俺の物じゃねぇ。

惑星エスメラルダに縛り付けていた要塞が、ワイヤーを次々破壊された事で離れて行ってんだ。仰向けに寝転んだ、俺の視界の中で。

そもそも、そもそもだ。俺は……ああそうだ、艦砲射撃で派手にぶっ飛ばされちまったのか。ダメージは無ぇが腹立ってきたな。何様の分際で、虫ケラが俺様に楯突く?

よし殺す。全員殺す。ナナとかいう奴の仕業っぽいからソイツも殺す、そんでゼロも見せしめに踏み潰して殺す。

最後に、バレットを───

 

そう思って身を起こそうとした、その瞬間の事だった。

 

『んぁ?』

 

顔面に突き付けられた2()0()の鋏。噂をすればというか、1()0()()()()()()()が俺を取り囲んでいた。

衝撃が走った。

 

『げゥッ……!?』

 

撃たれた。的確に眉間を揺らしやがる。無視出来るか出来ないか程度の痛さだが、準備も儘ならない体勢だった所為でそのまま再び仰向けに倒れ込まされる。

そんな俺へと、先程の一射を皮切りに360°全方位から連射、連射、連射!

 

『グッ、ガッ、ゴハッ!?このッ……!!』

『『『『『…………………………』』』』』

 

繰り返される無言の弾幕に打たれ、打ち付けられ、弾み、また打ち付けられる俺の身体。一瞬も姿勢が安定しねぇ、これじゃ起き上がるどころか力む事すら碌に出来ん。

野郎……このまま俺を、()()()()()()()()つもりだな?!

 

『バ、レ……ットォ……!』

 

コイツ……コイツ、コイツッ!!

俺を裏切った挙句ここまでするか!コイツだけは、本当に、コイツだけは!

 

『──お前』

『『『『『!!!!!』』』』』

 

そう身構えんな、これから言う事にそんな深い意味も裏も無ぇっての。

ただの………“願望”だ!

 

『お前─── 俺の部下(モノ)になれよッ!!!

 

『『『『『…………………………は?????』』』』』

 

お?弾幕が止まった、好機か。

飛び起きた瞬間に再開する衝撃の群れ、だが今更豆鉄砲が通じるか。両の足さえ地に着いちまえばこっちのモンなんだよ!

 

『オルァ!!』

『『『ぐっ!?』』』

 

爪を一薙ぎすれば、7人のバレットが掻き消えた。流石なモンだ、やっぱ本体はそうそう捉えられんよなぁ?!

 

ブラフ(出まかせ)か?!なんて初歩的な、クソッ……!』

『まさか。本心だよ!!』

『気でも狂ったか、乗る訳無いだろ!?』

 

手近な1人の胸へ貫手。手応えは当然とでも言いたげに皆無。

嘘じゃねぇんだ、ずっとそう思ってたんだ!お前を()()()()()()従えられたら、って!!

 

『じゃなきゃあんなに厚遇するか!どんだけミスしようが怪しい動きしようが!!』

『裏切りは見透かしたと?その割にはまんまと引っ掛かったな!!』

『そんなんじゃねぇよ!!!』

 

次の1人がばら撒いた光の玉、触れれば爆発するそれの中を構わず突き進む。接近、殴打、回避された、足払い、再度殴打で粉砕した。

次は本体!お前だけだ……

 

『お前だけなんだ、俺に()()()のは!!』

『……ッッッ、ぬかせ!!』

 

そうして始まる追いかけっこ。弾やら機雷の罠やらバラ撒きながら距離を取ろうとするバレットと突き抜ける俺、こう言うのは基本的に追う方に場があるモンだ。ついでに言や、アイツは俺の足止めの為に離れ過ぎる訳にもイカンからな。

床を踏み砕いて走り抜き、そのローブを掴もうとし……すり抜けた。

 

───分身は透過を使わなかった。並列しては使えねぇな?

 

『誰が!お前なんかに!!』

『じゃあ初めて出会った日、何故最初に撃たなかった?あの日のお前の目を俺は、よーく覚えてんだぜェ!!』

『うるさいッ!』

 

直接攻撃しても透かされて終わり、ならばと奴を壁際まで追い詰めてから退路を手で塞ぐ。すると奴は俺の腹に鋏を押し当てて発砲、今更効くかと防がなかった。実際無問題な程度の痛みだった。

だがアイツの狙いは別、反動による吹っ飛び。それで背後の岩山を貫通して向こう側まで逃げ切りやがった。魅せてくれるなバレットォ!!

 

『知ってるだろうが、俺は恐怖で支配して来た!』

『知ってるさ、それしか出来ないゴミカス!』

『だがお前は違ったろ?俺の力に恐怖したんじゃない、俺の“姿”を見たから撃たなかった。違うか!!』

『違う!!』

『違わねぇよ!嬉しかったぜェ──()()()()()を見てくれるお前を、心から欲しいと思う程になァ!!!』

『気持ち悪いんだよッ!!!』

 

大穴を介しての光線の撃ち合い。衝突点となった岩山が内部から爆散し、その瞬間に俺が押し切る。出力は明らかに俺が上だ。

機と見て駆け出し、腕を振りかぶる。予想通り、回避で姿勢を崩していたバレット目掛けて、拳を奮った。

 

 

誰にも見下されたくなかった。

誰しもに見上げられたかった。

叶わなかった。ケンにもマリーにも見放された。

 

 

お前が初めて、見上げてくれた。

 

 


 

 

 怖 気 が 立 つ !

 

その一言に尽きた。人間の身体だったら嫌悪感で吐き散らしていただろう、それ程に気持ちが悪い。

そんな奴の拳が俺の頭に振り下ろされた。だが難なく透過、単純な威力攻撃は俺には通じない。

 

『はぁ、はぁ、はぁあっ……!!』

 

……嘘をついた。難はある。透過は繊細な調整を必要としながら、かつ一度使用を誤れば即死しかねない危険な技法なんだ。

 

まず、重力環境下で無策のまま“本当の意味で”全身完全透過するとどうなるか?──重力に引かれて()()()()()。下手すると重力場の中心部まで無限に落ち続ける。

 

その状態で透過を解くとどうなるか?──死ぬ。地面と全身の肉がごちゃ混ぜになり、急性循環器障害(*いしのなかにいる*)その他諸々を引き起こして即死する。

 

無重力状態でも同じ事が言えて、大小問わず障害物を通過中に間違えて透過を解けば即大怪我だ。大気みたいに希薄なら押し除けれても、大事な臓器に土塊でも入り込んだ途端に大激痛なんだよ!!瓦礫飛び交う戦場で気軽にオンオフ切替なんか出来るか!

 

その上で透過維持も中々なエネルギー消耗と集中力を要するから多用はしたくないんだ。だから分身とは併用出来ないし、戦闘で使うとしても部位ごとの透過に範囲を限って節約していた。

 

 

ベリアル……お前が相手でもない限りは。

 

 

『うおおおお!!!』

 

倒れた俺に馬乗りになったベリアルへ、鋏も外套内の火器も併せてひたすら撃ちまくった。その間も拳が迫り来るが全て透過、効きやしない!まぁ俺の豆鉄砲も効いてる様子無いが!!

目ならどうだ!耳!!鼻は!?!

 

『 煩 わ し い ッ ! ! ! 』

『うおおぉぉぉ!?』

 

業を煮やしたベリアルの手で、俺が背をつけた地面が半径200mに渡って塵となった。アレをモロに喰らえば意識はまず()たんな、とヒヤリ汗を流す。バルタンの身体に汗腺は無いから、内心だけで。

また宙に投げ出された俺に向かって、拳が迫る。明らかな顔面狙い、だが念には念を入れて全身透過で備えた。

空振って姿勢を崩した所を、牽引光線(トラクタービーム)で引き摺r

暗転。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《意識の遮断を認識しました。電撃覚醒モードを起動します》

『──カハッ?!』

 

脳内に埋め込んでいた機械から流れたナナの記録音声。視界が半分無い。顔が抉れていた。

何故?どうして?どうやって??

俺の透過技術を。

 

『ウルトラ大戦争で見た事があってな。確かスペースビースト──ゴルゴレム?だったかァ』

『なっ……この、き……』

『別位相の空間に逃げて透かす、それと同じだろ』

 

その通りだ。過去にヤプールが連れて来ていた、確かにそう呼んでいた超獣がいた。元の身体から改造が繰り返されて原型を失っていたような造形だったが、厄介な特性を持っていた。それを参考にして作った技術だった。

だが何故だ。その場しのぎで対策出来る物じゃないだろう、これは。

 

『力技で破らせてもらったぜ』

 

ふざけるな。何だそれは。この世の法則に喧嘩を売っているのか。

それはヒーローだけの特権だ。理屈を超えるなんて、それは愛と勇気と絆を以て主人公が漸く為せる境地じゃないか。

違う。

お前は。

 

『ベ、リア、ル……ッ』

 

絶対に違うんだ。

俺はお前に憧れてなんかいないんだ。

お前は俺の憧れ(ヒーロー)じゃないんだ。

 

『………ぉ』

 

消さなきゃ。

ずっと焦がれてたウルトラマン。

孤独な世界で、記憶から勇気付けてくれたウルトラマン。

それに姿だけ似ているお前。

許せるものか。

 

『お、ぉお…!!』

 

お前のせいで大勢が死んだ。

お前のせいで大勢を殺した。

俺の作った機械兵が殺し回った。

許せるものか。

 

『おおおおおおぉぉ゛あ゛あ゛あ゛ッッ!!!』

 

お前だけはこの手で殺す!

この──()()()()()()()がッ!!!

 

 


 

 

『そんなモノかァ!!?』

『まッだッだァァァアアッ!!』

『バルタァァァンッッ!!!』

 

一瞬の交錯、その間に俺の爪で奴の鋏を粉微塵に引き裂いてやった。振り向きザマに裏拳、モロに入って吹き飛ばし……いや、浅い!!

 

『死ねぇぇぇぇ!!』

 

力の流れに逆らわず飛び退いたか!首を抉られつつも外套を翻し、中の銃火器からの目にも止まらない連射が俺に降り掛かる。効かな……いや1発貰ったら体が重くなったな、重力弾か!しょうがねぇなぁ避けてやるかァ!!

 

『デスシウムリッパァッ!』

『!!!』

 

走力に任せて弾幕を振り切り、反撃の遠隔斬撃。避けられる事を前提に放ったが、何と予想外にも直撃してバレットの胴体を上下に二分してみせる。

すると……下半身の方が、突撃してきやがった!

 

『うぉお!?……なにっ』

『一点集中型の爆破だ!!』

 

面食らって迎撃すれば、下半身は更に小さなバルタンの群れへと分裂しやがる。そのまま俺に張り付き、上半身の声と同時に起爆。

これには流石にビビった、自分の身体をここまでぞんざいに扱うとはな!面白ぇ、本当に面白ぇぞ!?

 

『楽しいなァ、オイ!!』

『黙れよッ!!!』

 

土煙に紛れて接近して来たバレットと四つに組み合う。ハサミにゃ石、俺のグーにお前は勝てるのかよ?えぇ!?

 

『バルタンの腕が何で鋏状か知ってるか!?』

『知らん!』

()()()()()だ!!』

 

そんな俺の問いに対する答えは、腕の分裂で返された。鋏を上下に裂くように、二本腕から四本腕へ!そうくるか、蝉人間モドキが!!

組み合った二腕、自由になった二腕、計4つの砲門が輝く。俺は──掴んだ二腕をまず、()()()()()

 

『ぬぁっ!?』

『そーるァッ!!』

 

そのまま仰け反りながら膝蹴り。反らした上体を光線が掠め、代わりに俺の膝がバレットの鼻っ面に突き刺さる。

まだ終わらねぇぞ、追撃にヘッドバット!罅が入っていた嘴が砕け、緑色の血が俺の顔面を濡らした。良い気分だった。

最高潮のテンションで、グニャグニャになったままの手を掴んでフルスイング。

 

『バギャ、ガ……!!』

『お前さえいりゃ、マレブランデスが何個ぶっ壊れようが幾らでもやり直せる』

 

岩盤に激突して止まった奴に、俺は改めて語りかける。血反吐撒き散らして弱り切ったその姿、だが安心しろよ。俺はお前を捨てやしねぇからな。

歩み寄り、首を掴んで持ち上げて勧告してやった。

 

『俺の力にお前の頭脳さえ合わされば、無敵だ』

『それ、で……?』

『俺の仲間(モノ)になれ。何度も言わせるな』

『断る』

 

そうか。じゃあ仕方無ぇな。

本当に勿体無ぇが……洗脳するか。

そう名残惜しく思いながら、俺は赤く光る爪をバレットの腹に突き刺した。

瞬間、バレットの身体から放たれた()()()が辺りを照らした。

 

 

……?

 

『ミラー…ナイトから……抗体を、取って、事前に摂取、した…お前の闇、は、通じない……』

『そうかよ』

 

叩きつける。凹む地面、噴き出る血液。

なぁに殺しやしねぇさ。だがなバレット、忘れんな。

 

俺から逃げられると思うなよ。

 

 

 


 

 

 

(───終わり、か)

 

バルタンとして生を受け。

故郷を失い宇宙を彷徨い。

父を殺した光を見て、記憶を取り戻し。

この宇宙に流れ着いた。

そんな長い旅路の終わりを、バレットは噛み締めていた。

 

(戦況は……司令達は上手くやっただろうか)

 

気掛かりはかつての仲間達。彼らが暴れる時間を稼ぐ為にベリアルを単身相手取った、その甲斐あれば良し。無ければ……後は呼び寄せたヒーロー達の活躍に期待するしか無いだろう。

 

宇宙海賊グレンファイヤー。

鏡の申し子ミラーナイト。

エスメラルダの切り札ジャンバード。

 

………ウルトラマン。

 

彼らがレギオノイドや幹部達を討ち、その後にベリアルを囲んで叩く。それが最も勝率が高く、その為にはベリアルをずっとフリーにさせない要因が不可欠だった。

バレット以外にその役は不可能だった、だから引き受けた。それだけの事。もし彼以外に適任がいたなら、彼はその人に役を押し付けて自分はより全体の勝率を高める動き方をしていただろう。

だがそうはならなかった。自分以外に出来る者がいない時、犠牲を用意出来ない時、それを躊躇わないのがバレットだった。

 

(後は、頼む)

 

ベリアルにここまで目をつけられた以上、先は無い。あったとして碌な事は無い。だから彼は全てを託す、己をここまで導いてくれた光に。生きる勇気となってくれた希望の光に、全てを。

最後の手段、自爆。恐れは無かった。USA艦隊にヒーロー達が付き、それをナナがサポートするのだ。それはバレットにとってまさに、考え得る最強の布陣だったから。

 

そこまで考え至って、初めて。

 

(あ……ナナ)

 

目に入れても痛くない愛娘。心残りが()()()事を、思い出す。

 

 

 

そうしてその出来事は、考え得る限り最悪の時分で発生した。

ベリアルの背中にレーザーが着弾。よろめき、手放されたバレットが地に落ちる。

伏せた複眼が辛うじて捉えた。高速で接近して来た、ギザギザ模様の母船とその僚艦を。

 

《お父様を離せぇぇぇえええ!!!》

 

ナナ。

ダメだ、よせ!

 

『来るなァッ!!』

『……ぁあ、そういう事か』

 

バレットの叫びで合点が入ったように呟くベリアル。次々に放たれてくる精密なレーザー・艦砲射撃を爪で払い除け、一息だけ笑ってから手を掲げる。

その手に浮かんだのは光輪。瞬間、また別方向から実弾が襲い掛かった。

 

《ストーム2、バレットを援護する》

《死ぬんじゃねぇぞ戦友!!》

『よせ、犬死にする気か!?』

 

父の危機に、ナナが半狂乱でUSAに依頼し別働した救出部隊。それに気を取られた瞬間、艦隊から鞭状のビームが放たれベリアルを拘束する。

その隙に戦闘機がスモーク弾を見舞った。瞬く間に視界を閉ざす煙、それに隠れてバレットの身柄を回収する目論見である。

 

だが、相手はベリアル。

理屈を超えた力を振るう暴虐の化身であった事が、彼らの不幸だった。

 

『■■■■■■■■ーーー!!!』

 

皇帝が吼えた。その名は“デスシウムロアー”。

空間を伝播する闇の波動、アイアロンサウンドなど比にもならないその威力は、まず近くの地形とスモークをバレットごと吹き飛ばし、次に近くにいた戦闘機を、そして牽引による拘束を試みていた救出艦隊を襲う。

 

《キャアアアア……ッ?!!》

《強大なEMPか!?》

《全計器反応せず、航行困難───!!》

《嘘だろう…たった1人相手にこんな……!》

 

次々に火花を噴いていく機器類、それに揉まれて墜落していく艦。ナナの船も例外ではない。

そしてベリアルには、推定ナナの乗る船を、許すつもりが全く無かった。

 

『おい………オイ!!』

『悪ィな。あの小娘には死んで貰うぜ』

『やめ────!』

 

バレットの目の前で、よりによって十字に組まれる腕。

ベリアル最強の、バレットにとって最悪の必殺技が、放たれる。

 

“デスシウム光線”。死を齎す邪悪の稲妻。

 

放たれたそれは、宇宙船の機関部を貫通。一瞬の後、大爆発を引き起こした。

紅の炎が戦場を照らす。これまでベリアル軍の攻撃を無傷で凌いできた装甲すら一瞬で貫通するその出力に、そしてこれまで戦線を支えてくれた援助艦の喪失に、救出部隊──そしてその通信を受けた司令は、顔を青褪めさせたのだった。

 

 

───カツン、と。

 

 

少し離れた所に、ひとつまみのカプセルが落ちた。

 

《お父様……ごめん、なさ……》

(ナナ、嗚呼、くそ………!)

 

響いて来た念話にバレットが反応する。まだ生きている事を悟られないよう、お互いにだけ通じ合う波長で。

瓦礫と土煙に紛れながら、バレットは這いずって近寄り……庇うべく、その身体でカプセルに覆い被さった。バレないよう、隠すよう。

 

だがそれも、念力により全てを感知していたベリアル相手では無駄に終わる。

 

『どけよ』

『ぎぃっ!!』

《お父様、お父様ぁっ!》

 

土手っ腹を蹴り飛ばし、顕になったカプセルをぞんざいに持ち上げたベリアル。中身の一つでも拝んでやろうと透視すれば、次の瞬間には堪らないとばかりに哄笑を上げた。

 

『クァッハッハッハッ!オイオイ、まさか()()がナナってかァ!?テメェも大概良い趣味してんじゃねぇかバレット!ぇえ?!』

『ナナを……娘を、貶すな…!!』

『へぇ?大事な娘か。じゃあコイツと引き換えなら、俺の野望に付き従ってくれるか?』

『!!………っ』

 

卑劣な問い掛けに言葉を失う。それを見たナナは、自分の事など捨て置いて欲しいという旨を叫ぼうとし、

 

『いや、期待させて悪いな。コイツはどっちにしろここで殺すから』

『っ、やめろ!やめてくれ!!』

《艦隊転進!バレットとナナを救出せよぉ!!》

《無理です、どう足掻いても間に合いません!》

《そんな……いないのか!?誰かっ!!》

 

それより早く、今度こそ手に光輪が掲げられた。息を呑むナナ、そしてバレットはその足に縋りついた。最早転ばせる力すら無くとも、愛娘の生存時間を一秒でも伸ばすべく。

 

『ダメだ、それはダメだぁっ!!()()()の生きた証を、俺とアイツの結晶を奪わないでくれぇ!!!』

 

だがエネルギーチャージは止まらない。寧ろ嘲笑の色を濃くし、今度こそベリアルは振りかぶる。自身へ弓引いた愚か者を、見せしめの惨死体とするべく。

 

《……お父様、私達は》

『ナナァァァァ!!!!』

《いつまでも、貴方の事だけを──》

 

震える声音で交わすは最後の言葉。それを待たずに、殺戮者の斬撃が振り下ろされた。

 

 

 

 

命は戦っている。

 

取り巻く環境と。敵対する誰かと。そして自分自身と、常に。

 

負けそうになる時もあるだろう。挫けそうになる時だってあるだろう。

 

そんな時、命は自分以外の何かに希望を託し、重ね、拠り所とするのだ。それは夢であったり、宝物であったり、愛する人であったり。

 

その希望が潰えた時、命の灯は消える。容易く、儚く、消えていく。

 

ならば誰が守る。その灯を、それを活かす希望を、誰が救う?

 

 

───それが出来る者。

誰かの危難に駆け付け、それを成し遂げて魅せる者を。

人は、時代は、世界はきっとこう呼ぶのだ。

 

 

“ヒーロー”、と。

 

 

白熱の一撃が、ベリアルの横面に叩き込まれた。

 

それは正義の打撃だった。

それは怒りの蹴撃だった。

 

それは──誰もが待ち望んだ、真のヒーローの推参だった。

 

『───ぁっ』

 

バレットは見上げる、光り輝くその勇姿を。かつて憧れた真紅のファイター、その面影を身に纏う若き闘志を。

それはベリアルからカプセルを──ナナをバレットの手の中へと取り返し。彼らを庇うが如く、巨悪の前に立ちはだかっている。

否。如くではない。彼は本当に立ち塞がっているのだ、この宇宙の希望を守る為に。

 

『あぁ、あっ、あああ……!!』

 

瞳から涙すら流すバレットに、その戦士は頷きで返した。後は任せろ、と。

そうして今、正義と悪が対峙する。銀と黒、光と闇、希望と絶望。

バレットが、ナナが、USAの人々が見ている中で。

 

『……なァ』

 

立ち上がったベリアルが、言った。

その喉は先程の上機嫌から一転、苛立ちと憎悪に狭窄していた。

 

『なんなんだテメェはマジでよ……いつもいつも良いところで………ッ』

『……さぁな。テメェが呼んだんだろ、喜べよ』

『ッるせぇ!!!』

 

裂帛の恫喝にも怯みはしない。弱きを助け強きを挫く、毅然極まる姿勢である。

一周回って挑発にさえなっているが……その勢い余る青さを、頼もしさへと変換出来るだけの力と器が、彼には備わっているのだ。

 

目にした誰もが彼を見守っていた。

彼に感謝し、その勝利を祈っていた。

 

……やがて。

 

『今度こそ絶望の淵へ叩き落としてやろうか、虫ケラァ!!』

『“虫ケラ”じゃねぇ!人様の呼び方忘れるぐらいボケたってんなら、その頭に何度でも叩き込んでやるぜ!!』

『ンだとぉ……ッ!?』

 

その名が再び宇宙に轟く。

ベリアルの眼前で響き渡り、その身体を震わせる。

闇を祓い、世界に光を齎す勇者。その名は───

 

『俺はゼロ───“ウルトラマンゼロ”だッ!!!』

 

───新しい、光!




自他問わず最高効率の最小犠牲を冷徹に選びながら、でもウルトラマンの優しさに脳を焼かれた、家族が大事なただの男なんです。
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