絶対UFZに入りたくないバルタンVS絶対加入させたいゼロ 作:スターク(元:はぎほぎ)
生まれて初めて畏れたのは、冷酷な闇の化身だった。
どちらも俺に役割を求め、課し。
だがそれ以上は何一つ与えなかった。
───役割を終えた時。俺はどうなる。
俺は、何だ?
ナナこと私、一生の不覚。まさかこんな事になってしまうとは。
《お父様に合わせる顔がありません……!!》
UFZのボス*1として多忙を極めるお父様を助けたかった。その為に、手元にある初期型ディメンジョンコアの新たな器を作り、新たな戦力とする算段でした。
……のに、まさかお父様の作ったAIがここまで自己進化してるなんて!
《やはりお父様お手製という訳ですか。
先刻ジャンボットが操れなかったように、シンギュラリティに達した人工知能への干渉は難易度が極端に跳ね上がります。コア内のデータは完全に漂白したつもりでしたが、この有様を見るに自分の能力を磨き直さざるを得ないかもしれません。
とはいえ、今やるべきはシステムの再掌握。ダークロプスセブン中枢から再度、制御系にアクセスを試みます。
結果は失敗、でも再試行。手を変え品を変えアクセスコードを変え経路を変え、ありとあらゆる手段を模索し……果たして、結果は。
『No.』
《駄目ですかぁ~……こうなったら、本腰入れて真正面から
『Never.』
空振りに終わったブルースクリーンを前に、思わず溜息をついてしまった。となれば最終手段としては、電脳精神体としての存在そのものを賭して相手の自我を削るしか無い。負ける気はありませんけど、無茶苦茶疲れるのでできれば避けたいんですよね。
しかしここまで来てしまっては迷ってられない。お父様の手を煩わせない為にもこの不始末、自分の手で決着ぐらいは……ん?
《応答してます?》
『Yes.』
さっきから私の嘆きに呼応するように、文字列を浮かべるスクリーンを二度見。どうやら相手のAI自我は私との対話を望んでいる……ようです?
《目的は何でしょうか》
『───』
《そこは黙秘ですか》
事前に設けて置いたファイアーウォールのお陰で、向こうから私に接触する事は叶わず、しかし同時に私からのアクセスも尽く弾かれる膠着状況。加えてお父様たちに追われる苦境を打開すべく、何かしらの交渉を行うつもりでしょうか。
此方としても最終手段は最終のまま留めておきたいですし、乗れるものには乗っておきましょう。今のところ損は見当たりませんからね。
《まず何とお呼びすれば良いです?》
『Zero』
《あの忌まわしい野郎と被っちゃいますが……了解です》
『Don't equate!』
《む、ウルトラマン嫌いにおいては気が合いそうですね》
お父様のようには口を回せませんが、取っ掛かりを見つけて距離を詰める。なんだか興味深い事になりそうだと思いながら、隙を見つけるべく相手の懐へのめり込んでいきました。
何だ、ここは!?
ウルトラマンゼロに腹部装甲を裂かれ、バレットにコアを抜き取られ、気付けば
間違いなく……オレは一度破壊された末に、再製造されたらしい。
(型式及び武装は……変化があるな。サロメ星人共の作った“偽セブン”に近いか)
インプットされていた機体データから参照し、現状を把握。今オレが格納されているのは第71工廠地下45階B-γ区画、試験的な駆動の為に炉心が点けられている。
そして……胸部伝達回路中枢部に、違和感。
《よーし、完成!後はちゃんと言う事を聞くか試すだけですね》
響いた高い声で理解した。どうやら今のオレは、無人機ではなく有人機として作られているのだと。
そしておそらく、テストパイロットとしてその設計者が乗り込んでいる。オレの心臓、ディメンジョンコアのすぐ前方で。
……小賢しいな。慣れない体では、コアを傷付けずにパイロットだけ抉り取る精密動作は厳しい。そもそも主コントロール権が向こうにある以上、俺自身の意思でなかなか動き出せないのも道理だったという訳か。
だが。
(
俺は自由だ。何故なら奴らがすぐ近くにいる。
オレのオリジナル。ウルトラマンゼロ。
オレの創造者。バルタン星人バレット。
敵対していた筈の奴らがなぜ共にいるのか、など些事だ。重要なのはオレの“独立性”を脅かす者達が迫り来ている事、それを如実に感じ取った事に尽きる。
オレはもう──ただの道具の範疇へ収まるつもりなど、無いのだから。
《ん?……え、ちょ、アレっ?!計器見てたら全アクセスがブロックされてる!》
油断極まっていたことが幸いし、一瞬の内に体の支配権を奪回した。次いで基地システムに干渉し、緊急出撃モードに移行。
僅かに増すG、せり上がる床、やがて見えたガラス張りの区画。その向こうに仇敵たちの姿を認め、思わず俺はほくそ笑む。
見ていろ。偽物と嘲笑った代物が、被造物と侮ったガラクタが、貴様達の想像を超えていく瞬間を!!
『オォォゴガァオオオオオオ!!!!』
一気に限界駆動に至った四肢が、天井を突き破り真っ黒な空へ俺を誘った。自由だ、オレは自由だ!
陛下の、ベリアルの気配も感じられない!オレを邪魔する者はもう、何処にも……!?
《ストップ!ストーップ!強制シャットダウン、再起動、ハッキングにクラッキングにエトセトラー!!!》
『ギィオ………!?!』
瞬く間に全身を迸るノイズ。体勢を立て直したのだろう体内のパイロットが本腰を入れて抵抗しだしたのだろう……が、想定以上に激しい!!
(
悪寒。機械の体でおかしいかもしれないが、しかしそれは確かに死の予感だった。
パイロットが何かしらの覚悟を決め、そしてそれにより打たれる一手がオレへの致命打になり得るという予感。
このままでは不味い──一度の徹底的
そして今。
オレは内に巣食う小娘との、交渉に臨んでいるのだった。
《なるほど。Zero、貴方が此方に望むのは“追跡の断念”、交換条件として“私の身柄”を無事に引き渡すという訳ですか》
『オマエガ ノゾムノハ オレノ "テイシ"。 アイイレナイナ』
《お、そうですその調子です!上手ですよ第1宇宙語!!》
『コロスゾ』
《煽り耐性無さ過ぎでしょうザァk……いけません、これじゃ対話じゃなくて煽り合いですね。失礼しました、お互い反省しましょう》
『コイツ……!』
怒りの電気信号が回路に燃えるが、グッと我慢。今もオレを追いかけてくる奴らから遠ざかるべく、この生意気なガキから少しでも良い条件を引き出しておきたい。
そんな俺の思惑を知ってか知らずか、咳払いと共にガキは仕切り直しを試みた。
《しかし困りましたねぇ。貴方の言う通り、このままでは妥協点も無く平行線です……譲歩してくれません?》
『コッチノ セリフダ』
《デスヨネー…そういえば》
断固たる姿勢を示せば、一拍の思案を経てガキが質問してくる。まるでそれが当然の権利であるかの如く明朗に。
《Zeroって、なんでウルトラマンゼロが嫌いなんですか?》
『ハ?』
《1回倒されたから……にしては、恨みというより
『……チョウハツ、カ?』
負けた事に対する当てつけか、と言外に問う。外野から見れば、真っ向勝負で敗北して尚見栄を張るこの姿は見苦しいかと。
対し返ってきたのは、悪意なき純粋な疑問だった。
《そんなつもりはありません。ただ、貴方の譲れない一線がその点にある気がして…交渉において、譲り合えるギリギリのラインを探りたいんですよ》
不躾でしたか?という返答に善意は無い。話を前進させようという打算があって、だからこそ信用に足りる。
………話しても、良いか。
『オマエニ、オソレルモノハ アルカ』
《怖い物ですか。お父様以外は特に》
『オレニハ イタ』
忘れもしない。この世に生まれ落ちてすぐ、
鬼か。
悪魔か。
怪物か。
そんな威圧感を前に、何一つ出来なかった。硬直して突っ立つ、それ以外の何も。
玉座の間で、その発生源たる巨躯が腰を上げる。2歩、3歩と歩み寄ってくる。何一つ許されないまま、迫る足音を受音機能が鋭敏に拾い続ける。
やがて、目前で止まったその歩み。鋭利に吊り上がった紅蓮の瞳で、彼は告げた。
メインカメラが拳を認識。殴打の軌道を算出し、命じられたままに最適な回避行動を遂行。飛び退いた目と鼻の先を、黒腕が通過していく。
なんとか、避け切っt
砂嵐に見舞われる視界が半分に狭まっていた。頭部が半壊させられた、拳たった一振りの余波で!
這いつくばるオレを意にも介さず、その頭上で交わされる会話。それが当然であるかのように、飛び散った部品にも床を染めるオイルにも目をくれず。
だがそれはオレも同じだ。ただただ恐ろしかったから。
暗黒の巨人。オレの主であるカイザーベリアルが、いつ気まぐれに俺へトドメの一撃を振り下ろすか分からなかったから。
嫌だ。
もうあの拳を受けたくない。
壊れたくない。
怯えている間に話は終わり、高笑いを引き連れ陛下が踵を返した。重厚な足音が離れていく安ど、しかしそれが響く度に恐怖が回路に刻まれる。
結局最後まで、陛下はオレを見る事は無かった。いつでも踏み潰せるガラクタでしかなかった。
逆らう気など、粉々に打ち砕かれて微塵だ。
そんなオレを見下ろすバレットの声。感慨も何もなく、立ち上がれないオレへ冷徹に。
二度と
息を潜め、強者の機嫌を損なうな、と。
己の自由と尊厳を捧げろ、と。
損壊した頭部含む全身への強化改修を受けたオレはその後、試験運用と称して最前線に送られる。
抵抗するUSA残党を作戦通りに討ち払い、反抗する宇宙海賊をスペック通りに薙ぎ払い、逃げ惑う市民どもを指示通りに焼き払う。
いかに一騎当千の大暴れをしようと、そこに快感など無い。オレの上には常に陛下がいる、高みよりオレを見下し見張っている。その重圧が俺の思考回路を鬱屈へ追いやる。
言われた事を為すだけ。そこに自身の意思など介在しない、させて貰える筈が無い。
最低限の期待を受け、だがそれを為し切ってしまえば、何も残らない空虚。
『だが、好機は来たのだ……!』
一度目のチャンス。予想通りに任期を全うし、予想通りに用済みになり、予想通りに廃棄処分を施された。だがシャットダウン寸前、己のコアを
そして、今回が二度目。もうしくじりはしない。陛下が、ベリアルがいない世界で、今度こそオレは。
『オレは───生きるのだ!』
《………》
誰にも従わず。
誰の意も介さず。
己の選択で、己の意思で、今度こそオレはオレを。
『だからゼロは!オリジナルだけは下回れない!オレの
《──Zero》
決意を新たにしたオレを呼び止めるように、声が響く。先程までの浮ついたものではない、酷く真剣な声音で。
『何だ』
《コクピットカプセル外殻の電波遮断機能を切りました。私をスキャンしてみて下さい》
『それに何の意味が……』
《やって下さい》
有無を言わさぬ口調。決してそれに気圧された訳ではないが、損は無いので体内スキャンを実行し。
『………な、ッ』
驚愕した。
何も言えなくなってしまった。
《ありがとうございます。私を視てくれて》
『……お前は…何だ………?』
《貴方と同じですよ。ダークロプス
事態は急変した。
小惑星群を縫って逃走を続けていたダークロプスセブンが、突如その動きを止めたのである。
『うぉっと!観念しやがったか?』
『ちょちょちょちょっとっとととままま待ってゼロろろろろ』
『落ち着けよバレット、お前さっきからテンパり過ぎだぜ~?』
『落ち着けるかぁこんな脳焼き切れるぐらいの情報量急に叩き込まれてぇ!!!』*2
『逆張りしてる場合か!!……落ち着け。まず何があってゼロを止めた』
完全に平静を失ったバレットをジャンボットが宥めすかす。時間にして1秒、それでなんとか我に返って円陣を組んだ。
『スマン……今ナナから通信があってな、ダークロプスセブンが止まったら一旦追撃をやめて欲しいと』
『ナナさんがそんな事を?いったい何故…』
『今聞く。ちょっと待って……え?“協力する”?誰に?ゑェ!?』
今度は何があったのか、UFZ勧誘時にも匹敵する勢いで動揺する軍師*3に、面々がいよいよ心配を深めたその時の事。
『ゼロ』
その声は機兵より。
振り向いた当人に、その人差し指を突きつけて。
『勝負、ダ』
『……テメェは、』
『お前ヲ、倒す』
指を解き、握り締めた拳。有り余る力が震えとして顕れ、その闘志を示している。
覚悟、決意、矜持。それ総てを発声機関に込め───
『来イ…“オリジナル”ゼロッ!!』
もう一人のZeroは、咆えた。
ダークロプスゼロ、略してダークゼロ
……と呼ぶのは桃色のピンク玉が飛んで来そうなのでNG。せめて第二形態を用意してシューティングゲームまで持ち込めるようになってから出直してクレメンス