絶対UFZに入りたくないバルタンVS絶対加入させたいゼロ 作:スターク(元:はぎほぎ)
Z-Pの悲劇
黄金彗星。それはこのアナザースペースの星々における一大イベントである。
「宇宙を無軌道に駆ける天体だ。移動ルートは完全にランダム、重力に縛られず自由に軌跡を描く。気まぐれに完全消失したと思ったら全く違う場所に再出現する」
『意思でも持ってるみたいだな』
「ちなみに最新鋭望遠鏡で観測したら巨大な
『マジで意思持ってるパターンじゃねぇか』
なんでも、黄金彗星が通り過ぎた星は豊穣が齎されるとか、願いが叶うだとか、色んな逸話があるそうで。
「今回依頼したいのは、この彗星の護衛だ。Z-P宙域を通過し終えるまで撃墜されないよう守って欲しい」
『彗星を撃墜?酔狂な事をする奴がいるんだなぁ』
『まぁ鳥だからな』
「それが……どうやらこの鳥、超高燃費な可燃ガス粒子を大量に纏っているらしく」
豊穣の逸話も、その粒子が星に降り注ぐ事で富栄養化するからだというのが最新の学説だという。近年ではそのエネルギーを悪用しようとする者たちが絶えず、USAとしても苦労してるとの事。
……ここで司令は、彼らに頭を下げた。
「黄金彗星の存在によって生態系が成り立っている星もある。そうでなくとも、ベリアル軍の爪痕が残るこの世界において、かの鳥の存在は復興の希望になりつつあるのだ。どうかそれを断ち切らせないでくれないか……!」
『見縊ってくれるな。そんな事、頼まれるまでも無い』
「頼みましたよジャンボット」
『頼まれました姫様!!』
『オメーなぁ……』
同席していたエメラナに言われるなり露骨に態度を変えた戦友へ、ゼロはグレンと共に呆れ返るばかり。だが気持ちは同じ、意地でも守り抜くと快諾したのだった。
「ありがたい!……ところでだが、バレットとミラーナイトはどちらに?」
『ナナの体調が悪くて欠席だぜ。ミラーナイトはその付き添い』
「……そう、か」
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「時にエメラナ姫。100年前に当宙域で起きた事故は、ご存じですかな?」
「“Z-Pの悲劇”の事ですね」
ゼロ達が去った後、投げられた問い掛け。
回答に対する返事は首肯。群星連邦史に色濃く残る大事件は、世代を越えてなお人々の記憶に新しい。
──当時、あの宙域は星間物流の要だった。天下の台所と評すれば良いのか、連邦経済の起点を担う要石として活用されていた。しかも黄金彗星の接近によって、観光客でごった返していた程だった。
そこが突如、原因不明の大爆発。
「宙域中心に座す惑星リンクは大きな被害を受け、更には重力場が継続的に乱調。進入には特殊装備を要し、未だ銀河市民は立ち寄れない状況が続いていると」
「その通りです。確か……先々代エスメラルダ王は、その瞬間を目撃されていましたな」
「口酸っぱく語り継がれたものですから」
予兆など無く引き起こされた大惨事。これをきっかけに大不況が巻き起こり、あわや星間大戦にまで発展しかけた大災害・大不祥事である。今も究明は続いているが、解明の兆しも宙域復興の見通しも見えていない。
不幸中の幸いと言えるのは、この事件に際し“黒幕”の存在を誰も詮索しなかった事だろうか。誰も彼もが平等に大損をこいたが故に、「誰それが仕組んだ故意のテロだ」という論が支持されなかったのである。
そう。アレは事故だった。
誰も彼もが不幸になった、痛ましい事故だった………
「………で、先々代王は何と?」
「“
「しっかり伝承済みですな。話が早くて助かります」
真実は違う。USAの機密を網羅する司令へ、そのUSAの中心ともいえる大国家エスメラルダの王族は看破していた。
「お爺様は爆発に巻き込まれかけた所をバレットに救出されました。しかし同時に、彼に対し強い疑念を抱いたとも」
「それは不思議な事で。私の記憶では、その件をきっかけに彼らは密かに交友を温めたと認識しておりますが」
「そこは私としても疑問です。疑念を抱いておきながら、お爺様はバレットを悪くおっしゃらずに信頼すらしていた。なのでそれを解き明かしに伺った、というのが私の本心ですね」
何を隠そう、エメラナがバレットと初対面したのも、彼女および屋敷の護衛を先々代王が依頼していたからである。その事をエメラナが知る由は無いがしかし、憶測と疑問を重ねさせるには十分すぎる関係だ。
1世紀前のあの日あの時。惑星リンクで何があったのか。何がZ-Pを滅ぼし、銀河を揺るがしたのか。
「教えてください。あそこで当時、バレットは何をしていたのですか?」
謎多き事件の真相に向け、エメラナは凛と立ち向かう。
対する司令は落ち着き払い、暫しの黙考。眉間に皴を寄せるその表情は、何かを隠すというより言い表す方向に苦慮しているようで。
「──期待させてしまい申し訳ありませんが。実を言えば、“私”個人としても“我々”USAとしても、実はお出しできる情報は一般と大差無いのです」
「……え。で、ですが司令様は長命種で当時から要職に就いていらっしゃいましたし、何か隠された秘密など無いのでしょうか?」
「要職も何も、私もまた現地で巻き込まれた当人です。もっと言えば、若き日の先々代と一緒にバレットの鋏へ隠れたまでありますし」
「お爺様なにやってるの……?」
閑話休題。エメラナが
「ともかく、私共から新たに提供できる確定情報はございません。“当事者の憶測”なら話は違いますがね」
「あ、それで良いです。それが良いです」
「現金な御方ですなぁ」
苦笑も程々に、彼を口を開いた。語られるのは真実から切り取られた“事実”、そこへ推論に推論を重ねた本来意味の無い物。
「信じられないでしょうが……当時この宇宙には、」
天使がいたんですよ、と。
自分で言ってておかしいように、司令は笑った。
《ねぇーえ。バレットさーん》
ヤプール派閥。
裏社会の抗争。
テロリズム。
星間戦争。
ここじゃ、命なんて物は吹けば軽く消し飛んでしまう軽い物らしい。前世の日本がどれだけ恵まれていたかよく分かる環境だ。
《聞こえてますかー。おーい》
そこで始めた殺し屋稼業も板について何年目か。そんな頃合いで。
《バルタン星人のー、バレットさーん!》
『はいはい、そういうのはいいから!聞こえてるよ』
《全く意地の悪い。もっと早く答えてくれても良かったんじゃありませんこと?》
『だからって接近するやいなや四六時中話しかけられたら逆張りしたくもなるだろ』
《イケズ〜》
舵輪から視線を上げると、窓の外に女性が立っていた。
極寒、真空、無重力。にも関わらず白い肌を宇宙線飛び交う過酷な空間に躊躇いなく晒していた。風も無い場所で翡翠の長髪を靡かせ、彼女は俺に微笑みかけた。
遭難した宇宙船が、虚空に浮かぶ彼女を追っていたらいつの間にか航路に戻っていたという。
絶望した者の前に現れ、起死回生の叡智を授けたという。
繁栄を齎す黄金彗星を呼び寄せた、という。
意図的接触は不能。積極的対話も不能。意図は量れず追跡も出来ず、不意に現れ不意に消える霞のようなその存在。
しかし出逢った誰もがこう言うのだ。美しき救いの天使だったと、声高に。
《ほーら、早く早く。置いて行っちゃいますよ?》
『変に加速したら他の船に怪しまれるわ。急くな急くな』
そんな嘘みたいな美女を。
なんでか、俺は。
《だって、あなたと同じ刻を出来る限り長く過ごしたいんですもの!》
『……全く』
しっかり観測できて。
その気になればずっと話せて。
仲良くなってしまった。
本当に、なんでか。
《今日はどんな
『そんなに気に入ったか』
《それはもう!隊の規則を連呼するのが苦々しくもどこか清涼感があって、良いですよねぇあのラスト》
『なら何よりだ。じゃあ今日は趣向を変えて、ウルトラセブンの“恐怖の超猿人”といこうか』
《猿野郎は生理的に無理なのでチェンジで……》
『りょーかい』
……本当、なんでこうなったんだか。そして俺も中々どうして、ここまでのめり込んでしまったんだか。
『ちなみにお前の嫌いな猿がセブンの手で踊り狂わされて無様に死ぬ話なんだが』
《やっぱり見ます!絶対見ます!!》
『俺が言うのもなんだが趣味悪いな!?』
《猿野郎限定です!!!野蛮な猿が死ぬのは唯一正義です!!》
………本当になんでだろうな!?
Q.天使ってまさか根津アサミちゃんじゃねぇだろうな
A.死の間際に愛鳥を逃がせる優しい子が猿差別なんかする訳ないでそ。流浪の戦闘民族を居候させたら母星を乗っ取られたクソ雑魚種族の生き残りですよ