絶対UFZに入りたくないバルタンVS絶対加入させたいゼロ   作:スターク(元:はぎほぎ)

27 / 61
ナナの見た目:10歳前後

天使の見た目:ナナ+10



Z-Pの邂逅

Z-Pには悪魔がいる。

“天使”は一般に薄く広まる噂だが、こちらを知る者はほぼいない……というか、俺しか知らない風説だ。だって俺が発案したまま誰にも言ってないんだから。

 

例えば、ある太陽系における勢力A・Bの星間戦争。Aの優勢によりもうじき講和間近……というタイミングでBが突如戦線を押し戻し終戦が遠のいた。逆転に貢献した奇策は明らかに外部からの入れ知恵が無ければ発想しえない物で、しかし発起人であったB軍高官は全てを黙秘したまま、気付けば死体となっていた。

戦争は続いた。俺が介入し、両陣営の過激派を全員拘束するまで殺し合った。

 

例えば、貧困に窮する国があった。しかし唐突に発明されたエネルギー掘削技術によって、星から無際限に富を出して飢餓を脱せると喜んだ。

100日後に星が割れた。僅か数回行った技術の実用試験、それだけで多大なダメージが中心核に入った事で自壊したのだ。生存者はもちろん皆無、USAが調査に入って漸くこの経緯が判明した。

 

例えば、平和を祈念する巨像。日本で言えば大仏に相当するそれは、周囲を何十もの警備網に囲まれ絶対の安全が保障されていた。

が、一介のテロリストによって爆破された。接近に用いた経路はハイテクノロジーを駆使した物で、相応の技術基盤を持った後ろ盾が無いと絶対に入手が叶わないレベル。しかしどうして、捕えられた犯人グループの規模は個人規模の延長線上に留まる程度だった。その犯人もまた、確保直後に全員が服毒自殺している。

象徴的なモニュメントが失われた事で、周辺星系の治安は悪化。対応する統治組織の基盤を圧迫しつつあった。

 

どれも公には謎のまま。だが俺は独自に調査を続けた結果、これら三つを含む多くの事件に共通点を見出す事に成功した。

どの下手人も、事件前1年の間に、Z-P宙域内でその姿を目撃されていたのである。

 

(ここで彼らと接触した何者かが、知恵に悪意を忍ばせて彼らに仕込んだ)

 

手を染めた犯人達もまた破滅的な末路を辿った事から、俺はその仮定黒幕を“悪魔”と呼称している。手段を求めた者達と契約を交わし、命をむしり取って行く魔の存在。

 

恐らくヤプールは直接的には関係していない。負の感情(マイナスエネルギー)を糧にする奴らからすれば、怨念を大量発生させる悪魔の行いは都合が良いだろう。しかしどの現場を見ても、干渉した証拠である超獣因子の残滓どころか異次元干渉の痕跡すら見当たらないのだ。

間接的に関係している可能性こそ残れど……となれば他の宇宙人、一番あり得るのは近くに母星があるモネラ星人か?そんな奴らが何かやらかしているのか。

その可能性を探るべく、俺はこの宙域に入り込んだのだった。

 

……んだが。

 

《えぇーご搭乗の皆様にお知らせします。現在当艦は力場異常による進路湾曲に見舞われ、無重力漂流(そうなん)状態となっております。つきましては救助が来るまで、皆様には落ち着いて席にてお待ちいただくよう御協力をお願い致します》

(どーしてこうなったし)

 

船員に紛し密航を試みた観光船がまさかの遭難に見舞われた。流石に予想外が過ぎた。

客も俄かに騒めき、不安を露わにまごついている。まぁ、こんな環境でいつ来るかも分からん救いの手を待てと言われちゃぁな。

 

(とはいえ脱出するにしろ救護するにしろ、迂闊に変身する訳にもいかん。潜入が台無しになってしまう)

「何やってんだ新入りィ!電子コンパスの復旧機持ってこいや!」

「あいs……ん?」

 

ふと窓に目が留まる。煌めく星々の彼方、その中に微かに瞬く翠の光点。

さっきまでは無かった。

 

「あ?どうした惚けて」

「先輩は見えないんですか?」

「オイオイ怖い事言うn、待てまさか」

 

どうやら先輩は視認できず、しかし見えているのも俺だけではなく。乗客のうち数割かが俺と同じ方向を指差して色めき立ち、それを見た彼は操艦室に駆け込んでいった。

1分後。アナウンスが鳴り響く。

 

《艦長より皆様にお知らせします。只今力場異常による障害から通信が回復し、救助隊と連絡が取れました!1時間後に到着するとの事です》

「力場異常帯を脱したのか!?」

「でも船は動いてないぞ」

「天使だ!天使の加護だ!!」

 

唐突にもたらされた希望で、船内の空気が一気に動き出した。やがて光が動き出すと同時にブースターも復旧、船は救助隊と合流する最短ルートへ向けて光の後を追う。

その最中、俺は仕事の合間を縫って再び光を見つめた。

 

(悪魔より先に天使と会えるとはな)

 

複眼に内蔵したスコープを起動。視界にその姿を露わにすれば、なるほど、確かにその姿は見目麗しかった。

柔らかな薄緑の長髪、スラリと伸びる手足。ついでにプロポーションも中々……いや、元地球人の価値観に素直になって言えば“凄い”と言う他無いな。しかもそれが一糸纏ってないんだから、過去に救われた人々が恍惚そうに鼻の下伸ばすのも納得だ。肝心な所は光の粒子に阻まれてよく見えんが。

 

「……!」

 

その刹那。振り返った天使の視線が、俺を捉えた。元より不可思議存在、その事自体に驚愕は無い。

ただ、その表情が。

 

「なんだ?」

 

一瞬だけの驚愕と、喜び。一転しての無表情。

その情動は何だ。俺に何を見出した?

 

(気になる)

 

決めた。奴を追う。時を同じくして、救助隊が目視圏内に入ったタイミングで倉庫に向かった。

隠していた装備を調達してから、憑依していた青年から分離。記憶はいい感じに調整して残しておいたから特に齟齬は生まれないだろう。

 

「天使が消えた!」

「何言ってんだ、まだそこにいるじゃん……あれ、いない」

「なんか光弱まってね?」

「行かないでー!お礼言わせて~!」

(俺にはまだはっきり見えてるが……ステルスか何かの類か?)

 

という事で牽引作業のゴタゴタを突き脱出。変身し、未だ強く輝きながら遠ざかる翡翠を追う。とっくに気付かれてるとはいえ、念のために小惑星群で視線を切りながら。

 

 

宙を鮮やかに舞うその姿は、審美眼の無い俺の目から見ても美しかった。

 

 

《酔狂な方ですね》

 

向こうからの初コンタクトは、追跡を始めて2時間後の事。口こそ動かしているが、肉声ではなく脳に直接響かせて来る形だ。

手頃な隕石に降り、立ち止まった天使。その呼びかけに応じるべく、俺も姿を現し正対する。

 

『言っとくがストーカー被害は聞き入れないぞ。連邦戸籍の無いお前に刑事法は適用されない』

《あら、熱烈な脅しですこと。法意識は無くとも倫理観はお持ちで無くて?》

『こちとら荒事稼業なんだ。そういう枷は死因にしかならん』

 

思ったよりウィットに富む返しで、細やかながら気が緩む。どうやら完全なファンタジー存在ではなく、幾らか社会へ精通しているらしい。

 

『単刀直入に聞くが、お前は何者だ。何故無償で救助活動をしている?』

《理由など何も。強いて言うなら単なる趣味ですよ、暇な時に見かけたらという程度の物です》

『そうか……で、前者の質問は?』

《乙女を詮索するのは不埒な事です。これ以上はお答えしません》

『そりゃすまなかったな』

 

ここで機嫌を損ねてしまったようで、そっぽを向かれる始末。しかし一拍遅れてクスリと微笑まれたので、そこまで気を害した訳でもないらしく。

 

《面白いですね。こんなに追いかけて来たのも、こんなに長く話したのも、貴方が初めて。()()()()()()です》

『オイオイ、もう終わりか。まだいろいろ聞きたい事とかあるんだが』

《ずっとここにいる訳にもいかないんですよ、ご了承くださいな。どうせもう会う事もありませんし》

 

が、ここでどうやらタイムアップとのこと。薄く消えていくその姿を惜しく感じ、思わず問うた。

 

『俺はバレット。バルタン星人のバレットだ』

《……ええ。存じ上げておりますとも》

『お前の名前は何だ?』

 

こっちから名を明かすなんてらしくも無い、だが何故かその迂闊さを後悔出来なかった。俺はどうやら、思ったよりこの女に酷く惚れ込んでしまったらしい。恋愛経験皆無で未婚のまま死んだのがここに来て響くとは。

そんな俺に、彼女はやはり表情を消し──どう見ても感情を堪えるように──だが諦めを僅かに醸しながら、答えてくれた。

 

《……ウォルナ。どうかお忘れくださいな》

『悪いが記憶力には自信がある。諦めろ』

 

それが最後。俺の視界に、もう翡翠の彼女はいない。

 

『………だいぶ予定から逸れちまった』

 

我ながら、本当にらしくもない。ここまで積み立てた予定が見事にご破算、ここからどう積み立てた物か。

ただでさえ()()()()()()()というのに。

 

『悪魔と天使(ウォルナ)、どっちの捜索を優先するかなぁ』

 

困った困ったと、自分に言い訳するように嘯きながら俺は飛ぶ。臨時拠点とする事にしていたZ-P宙域辺境へ、誰にも見つからぬよう気を払いながら。

さて、次にお目通りが叶うのはいつになるやら……。

 

 

 

 

翌日には会えた。また遭難した別の宇宙船を助けていた。

 

『ご苦労様な事で』

《へっ?》

 

素頓狂な声を上げる彼女へ、背後から“よっ”と会釈する。何が“もう会う事も無い”だ、余裕で同じ宙域辺境に留まってるじゃないか。乗客に掛けてたステルス機能も使ってないし、それで隠れる気あるのか?

 

『ん?おーいどうした、(グエバッサー)豆鉄砲(ダインスレイブ)喰らったような顔して』

《…………です、か》

『は?』

《私の姿が、見えるんですか?》

『そりゃあもう』

 

しっかりと。緑の髪は心なしか昨日より輝いて見えるし、声は一層透き通って聞こえるし、ああこれが初恋フィルターという奴なのか?自分の事だが、いい歳して何夢見てるんだか。

ところでそんな俺より様子がおかしいのはウォルナだ。誘導し終えて離れていく宇宙船と俺を交互に一度見、二度見、三度見。目を丸くして驚き続けるその姿に、美しさとは別に愛らしさを覚えて笑ってしまう。

 

『心配しなくても、()()()()()よ。俺も、お前も』

《…───っっ!!!》

『うぉっ!?』

 

そう告げた瞬間の事だった。顔をくしゃりと歪めたウォルナが、突如俺に飛び掛かって来たのだ。

ダメージは無い。どころか触感も重量も無い、それが彼女が実体の無い存在である事を告げている。それでも俺の首に腕を回し、抱き締めるウォルナは。

 

《やっと……やっと会えた…!》

『お、おい……』

()()()()()()()()()………!!

 

その独白を聞いた瞬間、俺はもう戸惑う事をやめた。肩越しに顔が見えずとも、震える声音が涙を流していたから。

触れられずとも、例え()()の域を出ないとしても、彼女に伝われと抱き締める。俺はここにいると、何度でも伝えるように。

 

 

これが、俺とウォルナの出会い。

そして分かたれ、ナナと出会うまでの……つまらない話のプロローグだ。

 

 

 


 

 

 

ごきげんようヤプール様。いえいえ、こちらこそ御贔屓にして貰い大変感謝しておりますよ。これからもどうかよしなに……。

ところでですが私共、近く()()する事と相成りまして。惑星リンクがUSAの連中に嗅ぎ付けられつつあるのですよ、まったくどこから情報が漏れたのだか。それに際し、太客である貴方がたには真っ先にご連絡をとですね。

ご心配なく。“TUFIR”の機能は微塵も損なわれませんよ、運搬の際に損傷が無ければの話ですが。

 

……それはありがたい!!護衛に超獣5体を用意してもらえるとは、いやはやお目が高いですな。これからは使()()()を半額にさせていただきましょう、ええ勿論!

 

では詳しい日程などはまた後日。我らがモネラの“マイナスジェネレーション”を、今後ともよろしくお願いします。




ブロ「化け物?違う、俺は悪魔だァ」
ウォ「粋がらないで下さいよ化け猿。気色の悪い緑色は貴方の趣味ですかぁ?」
パラ「やめろ大人のおねゑゑさん!落ち着けぇ!!」ピロロロロー
バレ「というか髪が緑色なのはお互い様だろうに……」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。