絶対UFZに入りたくないバルタンVS絶対加入させたいゼロ   作:スターク(元:はぎほぎ)

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ちなみに前話でウォルナ達の頭上を飛んで行った猿の名前はギネです


Z-Pの背信

───時を遡る事、およそ2ヶ月。まだ私が彼を、リンクから引き離せていた折。

 

「これが初代ウルトラマン第2話。“侵略者を撃て”の結末だ」

 

バレットの種族であるバルタン星人。この宇宙には存在しない彼の仲間達について聞きたがったのは、モネラの意向など無関係な私自身の好奇心による物だった。

ただ彼を知りたかった。もっと踏み込みたかった、それだけの事──そこに彼が、どれだけの想いを秘めていたかなんて知りもせず。

 

「笑ってくれよ。一方的に宣戦布告しておいて、このザマなんだぜ」

 

故郷を失った流浪の民。20億の仲間を抱えた宇宙船はようやく、安住に足る地を見つけ歓喜に沸いた。

誰が責められる?誰が咎められる?

一刻も早く降りたかった筈だ。もう帰る道も家も無く、寄る辺無い身の上を永遠に耐える術などあり得ない。罪も無い旅民を船に抱えた船長は……バレットの父親は、どれほどの焦燥に身を駆られただろうか。

……星間航行すら覚束ない原住民と引き換えに隣人の未来を、と。そう踏み切った彼を、誰が?

 

《──あなた、は》

「何だ?」

《貴方は、ウルトラマンを何故今もまだ好いているのですか?》

 

ヒーローは、責めた。

その手から光を放ち、苦渋の決断に踏み切った船長を焼いた。

 

いや、分かる。生存権を懸けた戦争を挑んだ以上、負けて死ぬのは道理に適うから。そこまでは理解できるし、支持出来る。

それでも、これは……!

 

《貴方の同族まで、皆…!!》

「……交渉決裂と同時に侵略開始。これは親父が地球に降りる前から、船内上層部で決まっていた事だ。連帯責任だよ。それに全員死んだ訳じゃ……」

《反対した方々もいたでしょう!?》

 

宇宙船への追撃。明け方の空に轟く爆音は、ワープしようとした彼らに向けて放たれた必殺光線、その着弾によるものだ。

そこまでする必要があったのか。あったとして、それでも彼は。バレットはその所為で……!

 

《貴方もまた反対派だったでしょうに、どうして!》

「だが代案を出せなかった。最後には説き伏せられて協力してたし、親父が死んだ時点で既に次善の侵略計画が練られてたんだ、“彼”が撃たなきゃもっと酷い事になってた」

《私は!》

 

何故かを知りたい。

 

何故彼らは撃たれなければならなかったのか。

 

何故彼は撃たれて。

 

なのに何故、貴方は。

 

《貴方がどうしてウルトラマンを()()()のか、分からないんですっ!!!》

 

今もまだ、ウルトラマンを語れる?

ヒーローとして憧れられる?

自分を撃った、家族の仇を、どうして?

 

「……嬉しかったんだ」

 

私の問いかけに返された答えはしかし、文面とは裏腹に喜びの色が無く。

代わりに見えたのは、“安堵”で。

 

「あの時は前世の記憶も戻ってなかったが、それでもずっと後ろめたかったんだ。この方針が正しい訳が無くて、でも船に乗る民を見殺しにする選択肢なんか無くて、凶行に手を染めた。文明の遅れた原住民相手に負ける確率は0%、俺達は業と引き換えに安住の地をまんまと手に入れそうになって──でも、“彼”が来てくれたんだ。本当に、本当に、安心したんだ。」

 

“止めてくれる”、と。

 

「親父の死は悲しかったよ。でも仕方ないじゃないか、殺そうとしたんだから」

《……バレットさん》

「仲間の全滅だって悲しかったよ、救えなくて申し訳なかったよ。でも仕方ないじゃないか、撤退を勧告した“彼”に砲火で応じたんだから…!」

 

悲壮な覚悟、それが破られた苦しみと諦念を抱き、彼は吐露する。震える声音が葛藤を、私へと克明に刻む。

 

正義のヒーロー(ウルトラマン)に止められたなら……納得できるだろう!!?」

 

自分に言い聞かせるような、血を吐くような叫び。私はそれに何もしてあげられない、実体の無い私では彼を抱き締める事すら出来ない。

 

 

───私は、現住民側の存在だ。流れ込んできた流浪の民に故郷を追い出された種族の生き残りだ。

バレットは、流浪の民側の存在だ。彼らの企みが成功していれば、原住民……地球人は、私達と同じ運命を辿っていただろう。

なのに今、バルタン星人の側にこそ理解を示して同情している。猿は未だ嫌いで、ならこの矛盾は何?ここにある違いは何なの?

 

 

《……れば、良かったのに……》

 

頭痛がする程の混乱をきたし、脳が起こり得ない結論を下す。それは所有者に負荷を懸けられた時より辛く、痛く、泣きたい程の心の絶叫だった。

 

《貴方の宇宙に、ウルトラマンがいなければよかったのに》

 

止まらない。私にだけ都合の良い、何も生み出さないIFの夢想。

 

《私の世界に、ウルトラマンがいれば良かったのに……!!!》

 

貴方達の侵略が成功すれば良かった。そうすれば貴方は、家族を失わずに済んだのに。

私達を守ってくれるヒーローが欲しかった。そうすれば私も、家族を失わずに済んだのに。

そんな、明らかな矛盾を孕んだ回答。私が発したそれを受けて、貴方はこう言ったのだった。

 

「……それじゃあ、お前と会えないだろ」

《───っ!!》

 

違う。それは、違う。

だって、だって私は。貴方は。

 

 

 


 

 

 

《出逢ってはいけなかったんですよ》

『……げ、フッ……!!』

 

そして今。作戦は成功してしまった。

 

惑星ムスタファー、大地が煮え滾る灼熱の星。そこで溢れかえる溶岩の中で、標的──バレットが、焼かれながら血を吐いていた。

彼の周囲をテロフェイザー、つまりモネラ星人の兵力が囲い銃口を向けている。頭上には怪獣ゲランダが、まるで獲物の死を待つ鳥のように舞う。

もう……全てが、手遅れ。

 

『デートの誘いに乗ったは良いが、些か張り切り過ぎたか』

《溶岩流上流から、惑星マーズより回収した鉱石を溶融・流入させています。含有鉱物の内、どれがスペシウムなのかは分かりませんでしたが……量が量。無事効いてくれたようですね》

『ああ最高だよ、効き過ぎて今すぐ昇天しそうだ……!』

 

そう告げる彼の口吻からは、流血が止まらない。先程からテロフェイザーに蜂の巣にされ続け、ゲランダに啄まれ続け、彼の命は風前の灯火だった。

 

……見たくない。見てられない。

それでも、見なければならない。

 

『お手柄だぞTUFIR。よもやここまで魅せてくれるとは驚きだな』

 

私がやった事、だから。

 

『モネラ星人か。勘は当たってたという訳だ、悔しいな』

『お前が来た時には心底恐怖させて貰った。が、まさかここまで追い詰めれるとは……後学の為に聞くが、我々の事をどこまで嗅ぎ付けていたのだ?』

『オルディランの滅亡に関わってる事までは把握している』

我々のビジネス(マイナスジェネレーション)の出鼻からじゃないか。これは駄目だな、消えてもらうしか無い』

 

遠巻きに浮遊するモネラ星人の宇宙船からの音声。私の所為で最初に滅んだ星の名が出た所で、彼らの対話が終わる。次に話しかけられたのは私だった。

 

『しかし、まさかTUFIRが精神体の離脱能力を得てお前と会っていたとはな。本来なら再調整(しつけ)をする所だが、今回ばかりは幸運としよう。感謝するぞ、我が生体AIよ』

《っ……ありがとうございます》

『……()()()、だと?』

『?何かおかしい事でもあったか、所有物を管理するのは所有者の義務だろう』

『いいや……お前達が疑問に思わないのなら、俺からも言及はしないさ』

 

そうだ。私は所有物、権利など何も無い。ただ命令された事を命令通りにこなし、自分自身を含む全てを利用し最善策を導き出すだけの存在だ。

例えそれが、愛した人を最悪の結末へ(いざな)おうとも。私にそれを為さない選択肢は、最初から無いのだから。

 

だから会いたくなかった。

だから来て欲しくなかった。

こんな事になるぐらいなら、会わなければ良かった。

 

『数多の戦場で名を馳せたお前の事だ、細胞一欠片だとしても何かしら仕込んであるのだろう。なので、跡形も無く消し飛ばさせてもらうとしよう』

《……大気圏外より、炉心連結したテロフェイザー10機によるナルビーム砲を照射します。7.2秒間の焼却を経て、貴方の体を構成する全細胞は死滅するでしょう》

『手が込んでるな。ご丁寧にどうも……ガフッ

『ではさらばだ。その功績を称え、君の死は永遠に我が星の機密としよう』

 

それを皮切りに、モネラ星人の船が上昇する。追うようにテロフェイザー達も空へ、ただし警戒の為にゲランダ達は残したまま。

かくして、精神体の私と、傷だらけの彼がそこに佇む。暫しの無言、私は彼の言葉を待っていた。

 

《………恨み言の一つでも、吐いたらどうですか》

『元より殺し屋、ロクな死に方できない事なんて覚悟済みだ』

《そうですか》

 

そんな事が聞きたいのではない。私が欲しいのはただ一つ、叱責のみ。

裏切り者、と。死を目前とした絶望を怒りに変えて、私にぶつけて欲しかった。陰鬱な悲しみの中に死んで欲しくなかった。

けれど彼が選んだのは、そのどれでもなく……

 

『それに……お前の手に掛かるのなら、悪くない。というか、かなり良い』

《ッ……!》

 

ひどい。そんな事、口が裂けたって言って欲しくなかった。

貴方に生きて欲しかったのに、死んで欲しくなかったのに。ただ、他愛無い会話の中で笑い合いたかっただけなのに……!

 

『なぁ、ウォルナ』

《……やめて、下さい》

『黄金彗星が、もうじきリンクに来るそうじゃないか』

《やめて………》

『もし叶うなら──お前と一緒に、』

《もう、やめてぇ!!》

 

もう限界。耐えられなくなった私は、この後に及んでまた不義理を働いた。

聞きもせずに全てを閉ざす。意識をリンク地下の本体へ、これ以上ここにいたら正気を保てなくなるから。

嗚呼、それでも。貴方の姿を、それだけは。

 

《───ごめん、なさい……!》

 

きっと。最後に交わした貴方からの視線を、私は死ぬまで忘れられないだろう。

 

 

やはり、ウルトラマンなんかいなければ良かった。

いなければ、貴方は私と出会わずに済んだ。

 

やはり、ウルトラマンがいて欲しかった。

いれば、私は貴方と出会わずに済んだ。

 

 


 

 

『振られたかぁ』

 

スペシウムに晒され脆くなった肉体が、高熱下でどんどん融け落ちていくのを感じる。神経いじってるから痛覚の方はなんとかなるが……まぁ、頭上遥かに輝く紫の光が、目下一番の問題だよなぁ。

 

(呼吸もそろそろキツイ。意識もかなり朦朧としてきた。詰みだ)

 

さぁて、相手さん方がこの不意打ちに相当な労力を掛けたのは間違いないだろう。マーズという名前なだけあって実際、あの星からはスペシウムが採れるが、現在発掘中の鉱脈においては含有量は微々たる物だ。

なのに俺相手に効果的になるまで集めたとなると、そのコストも相当お高くついただろうに。テロフェイザーやらゲランダまで過去に例が無いくらい駆り出して、それはそれは大変だっただろう。

それぐらいモネラ星人は俺の抹殺へと投資したという事。そして今、目論見通りに俺は殺されるという事。

つまり、まぁエメルグ王太子達の働き具合に依るものの、勝負は大体俺の───ああもう、発射しやがった!

 

(俺のやる事は変わらん……!)

 

辛うじて右腕を掲げ、残るエネルギー全てを振り絞った光線で迎撃。上空で破壊の光同士が激突し、やはり俺の方が押され始めた。

 

『死ぬ、もの、かァ…!!!』

 

彗星をウォルナと見るまでは。

 

絶対に、死ねな───

 

 

 


 

 

 

「どうじゃ?」

「……最ッ悪だ」

 

超獣因子、という物がある。

言うまでもなく超獣の材料であるそれは、マイナス思念がヤプールの身体を介する事で発生する物だ。物質化したそれが生物に組み込まれ、適合するやいなや至近の無機物を際限無く取り込みつつ急成長。瞬く間に50m級の規模を誇る生物兵器と化す。

 

モネラ星人はそれを、ヤプールより受け取り貯蔵していた。彼ら2人が得たデータにはその旨と、保管場所が記されていた。

 

「最悪、じゃと?」

「とぼけるな」

 

果たして地下基地の最下層にタンクはあった。そして、幾本ものポンプが()()()()へと繋がれ稼働していた。

それを目撃した准将は、アクセントにありったけの唾棄を込めて吐き捨てる。同時に突き付けた機材の画面には“○”の表記、これは「対象物質が検知された」という事を示す物だ。

 

対象物質とは何か?超獣因子だ。

では、その場所は───

 

「……嘘じゃろう」

「嘘ではない。これは歴としt」

「 地 下 水 脈 じゃぞッ!!! 」

 

 

───惑星リンクの上水道は、全て地下水から汲み上げられている。

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