絶対UFZに入りたくないバルタンVS絶対加入させたいゼロ 作:スターク(元:はぎほぎ)
まぁ紹介文の最後に「良い所でエタっとるんちゃうぞボケが(意訳)」って書かれてたから急いで書き上げたのが前話なんだけどね
準備は整った。後は実行に移すだけ。
文字通りのお祭り騒ぎに沸く地上とは裏腹に、もぬけの殻となった地下基地。その一番大きい格納庫で俺はモニターを開いた。
映るのはハッキングした衛星映像。映るは観光に来た大船団──の中に一つ、逆行して星を離れ往く船影。ステルス機能を使っているのが小賢しい、その程度で欺けると思っていた奴らの姿はお笑いでしかなかった。
……いや、笑えない。その程度の奴らに、アイツが良い様にされている現実なんて。
(否定してやる)
後から思えば、この時の俺は本当に感情的だった。ここまでストレートに怒りに任せ、行動を起こしたのはこれが初めてだ。二度目はベリアル、それ以降は今の所無い程度には稀。
それぐらい、ウォルナに惚れていた。
アイツと過ごす時間が好きだった。
初めて思い出を分かち合ってくれた異界人。そのシンパシーが心に強く根付いて、離れてくれなかった。
ウォルナが欲しくて、仕方が無かった。
そんなザマだったから……
タイミングは、船が座標:x20・y51・z43に到達したその瞬間。その進行方向に
「な……何だ!?時空間異常か!」
「ヤプールに裏切られたのか?!」
面食らったのも無理は無い。なにせゲートをくぐって新天地──かと思えば、
特に凝った手品をした訳じゃない、ただ事前に色々仕込んでいただけだ。例えば……ウォルナと一緒に詰め込まれたエメリグ達の体内に、ナノサイズの発信機を注射したり、な。
「返信来ました。約束通りにゲートを開き、我々の通過も確認したとの事ですっ」
「ふざけるな!ではなぜ我々は──」
それを起点にワープに干渉されただなんて、相手に分かる筈も無い。分かる必要もない。
だから俺は、自分の存在を気付かせるためにもこう言ってやるんだ。
「何故も何も。お前達を逃がす訳が無いだろう」
瞬間、船の前に座す存在をようやく認識したようで。騒ぐは喚くは、盗聴器から「誰だ」だの「何者だ」だの無意味な疑念が沸き上がってパニックを呈している。この様子じゃ今すぐには交渉には持ち込めないな。
じゃあ……先に。
「そこにいるんだろ、ウォルナ」
どんどん弱っていく気配。今までずっと見ている事しか出来ない彼女へ、やっと声を掛けられる。
俺はちゃんと
質量値──不一致。
呼吸音──不一致。
脈速度──不一致。
測定された全ての要素が告げるのは“否”。だからウォルナは当初信じられなかった。彼女がこれまで認識してきた情報と、直面している現実が完全に乖離していたからだ。
例えばそう、推理モノの物語において、犯人しか絶対に知り得ない情報を全く関係ない第三者が知っているような。血縁も無い人々の指紋が完全に一致してしまうような。
全ての事前知識や前提が瓦解しかねない、計算から弾くべき外れ値の事象である。TUFIRというコンピュータとして、永く半生を過ごしてきた彼女であるなら猶更の判断。
だが……例えに例えを重ねるなら、その上で
それで全てに説明がついてしまうのならば、それはもう。
(バレット……!?)
紛う事なき現実。揺るぎない真実。
連続性のある同一生命である確定証拠、思念波────完全一致。
目の前の彼が、この手で死へ導いた筈の男である事を受け入れざるを得ない。
「バイタル回復……良かった。ちゃんと自分で起きれるじゃないか」
(だって……っ)
なんで。どうして。今になって。
そんな言葉ばかりが高性能な頭脳の中で光より速く回る。今自分は嬉しいのか、怒っているのか、ただ困惑しているのか、どれを発露すれば良いのかさえ分からずグルグルと同じところを回り続ける。
代わり、TUFIRの再起動とエラーを認識したモネラのリーダーが問うた。
「TUFIRにアクセスした……!?お前は誰なんだ!」
「知りたいか?』
「……ッッ!!!」
それを受けて、とうとう正体を現す。
憑依していた人間を影が包み込み、一回り大きい異形となって新たな姿を表せば、モネラ側も状況を正しく把握せざるを得ない。バルタン星人バレットの生存と、その暗躍を。
「ど……どうして、生きて、いる……」
『今聞くべきはそれじゃないだろう』
──バレットは絡繰りを明かすつもりなど毛頭無いので、ここでタネと仕掛けを明かしておこう。
まず、このZ-P宙域に潜入した折。バレットは観光宇宙船の乗員に憑依し、ウォルナと邂逅。これを追うべく憑依をやめて分離した……かに思われた。が、実情は異なる。
分離はした。だが、憑依もしたままだったのだ。
被憑依者の中で、バレットは分裂していた。分離した方を
BAがZ-P宙域の星々を調査しながらウォルナと親睦を深めている間、BBは本命の調査対象であるリンクにて活動。手を拱くエメリグ・USA准将コンビを横目にモネラ地下基地を突き止め、彼らとスライ・
その間もBAと意識を共有し続け、記憶と記録を同一とし。
分身と本体ではなく、
BAの最期を機に、その今際の感情さえ自身の物としたBBを、新たなる唯一の
勿論モネラは何一つ知る事は無い。そのストレス、更には一度殺した筈の存在に主導権を握られ、圧を駆けられる現状。それに耐えて、リーダーは言葉を慎重に選んだ。
「……何が、目的だ」
『スライと同じだよ』
一方、バレットの要求は単刀直入である。魔導卿スライが何を求め何をしでかしたかなど、モネラ側からすれば周知の事実なのだから。
だがそれは同時に、「生命線を寄こせ」という無理難題に近い申し出でもあった。
「ふざけるな!!
『じゃあどうする?査察団が来るまで、仲良くこの閉所でお留守番と洒落込んでも俺は構わんぞ』
「なッ……こ、きさ……!」
『焦るな。何もタダで貰おうって訳じゃないんだから』
だが次に送られてきたデータで、彼らは一斉に言葉を失う事と相成った。
そこに記載されていたのは、モネラが関わったありとあらゆる汚職の記録。USAの深部にも関わるそれらは、一度でも放たれればそれはもう特大なスキャンダルとして世を風靡するだろう。その過程でどう足掻いても、モネラは糾弾の嵐に巻き込まれ衰退不可避だ。
生命線どころか急所までブッコ抜かれていた。その事実に震え上がるモネラ達へ、飽くまでバレットは提案を持ちかける。
『知っているのは俺だけ。握り潰せるのも俺だけ。意味、分かるよな?』
「脅迫するつもりか……!」
『つもりじゃない。
歯噛みする暇さえ与えず、次いで示された紙面はUSAが定めた基準に則った契約書。だが内容は一転、モネラ側からすればかなりの好条件が示されている。
「……は?」
一通り読んだリーダーが、思わず呆気に取られてしまうほどの。
『不満か?』
「い、いや……だが、」
『無いなら早く判を押せ。後が
「待て!待ってくれ、
一つ。今この時点で“TUFIR”コアユニットの入ったコンテナをバレット(甲)に引き渡し、以降モネラ(乙)はその所有権を甲へ移譲する事。
二つ。TUFIR使用権は甲と乙で共有し、使用料などを甲は請求しないものとする。なお、乙のTUFIR使用に際しては甲の同席を原則とし、乙の使用履歴も甲は開示可能とする事。
三つ。モネラ側に損害が生じたとみられる場合、
(三つ目が都合が良過ぎる!罠か!?)
モネラリーダーは疑った。これは即ち、バレットがモネラ星文明の繁栄を保証しバックアップするという宣言に他ならないからだ。
つまりTUFIRを渡す前と後で、得られる利益がさほど変わる事は無いという事。首根っこを掴まれているというのにこの条件を示されるなど、状況が不一致過ぎて頭に入って来ない。
(いや、この有利を投げ出してでも、それほどの利益価値を
だがここで思い出したのは、バレットの“後が閊えている”という一言。つまり彼もまた何かしらに追い立てられている状況にあり、それ故にここまで強引な交渉へと臨んでいるのだと、リーダーは呼んで見せた。
そうと決まれば幾らか心も軽くなる。相手の弱みを突き、TUFIRの所有権を取り戻すことも視野に入れられるだろう……リーダーは内心でほくそ笑んだ。
──バレットの目論見通りに。
(掛かった)
彼を追い立てる者など存在しない。後に閊えている緒用など何一つ無い。
そして、三つ目の好条件。これを破ればバレットは銀河中の表の存在から信用を失うだろう──が、元が裏家業。表での信頼に何の意味があるというのか?
総てはモネラを口車に乗せる為。それによって、確実に、100%、絶対に……ウォルナを救い出す為。それ以上の事など無いのだから。
(ま……第三項に関しても、よほどモネラが
モネラリーダーが契約を受け入れた旨を告げる。それを聞いて、バレットもまた手元に同じ契約書を出現させながら思った。
(追い立てられてないというのも、些か語弊があったかも知れん……なぁ、ウォルナ)
彼女を助けたい。その一念で焦りに焦っていた自分を、自覚できたと。
それでも万事うまくいって、彼女をこれで救えるのだと。そう嚙み締めながら、相手と同時に書面を記そうとした。
誰かの幸せを許さない。
他者のハッピーエンドを認めない。
“奴ら”はそういう存在であると、バレットは知っていた筈なのに。
一瞬遅れて、5万tを超える質量が地下基地を押し潰した。