絶対UFZに入りたくないバルタンVS絶対加入させたいゼロ   作:スターク(元:はぎほぎ)

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Z-Pの責任

「ふざけよって!」

 

最悪の展開だ。何者かの横槍によってモネラの宇宙船を奪取され、完全に隔離された。向こうも次元系の技術に伝手があるのか、地下基地に逆戻りした事までは分かってもそこへ入り込めなくなっている。盗聴も不可能。

状況から考えて……TUFIRはモネラごと、他者の手に奪われた。このままでは不味い。

 

(USAという一定の秩序が敷かれているこの宇宙では、モネラの協力……特にTUFIRによる戦乱以外での大規模なマイナスエネルギー確保は見込めん!場合によってはモネラ越しに我々の弱み(枯渇)さえバレてしまう可能性も……!)

 

ただでさえ落ち目にある我が種族。そこからの一縷の望みに懸けて選んだ別宇宙で、再興どころか滅亡の引き金を引くなど冗談ではない。

 

何より、()()

 

酷い腐臭だ。干渉が出来なくとも、リンク地下深くから僅かに感じ取れる──“希望”の思念波。何をしている。そんな心を持つな、捨てろ、やめろ、ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなッ!!!!!

 

そんな物、今すぐ叩き潰してやる!!

 

「惑星リンクに存在する全超獣因子を活性化せよ!!」

 

TUFIRに頼れないならば……混沌を、地獄を、それを生み出せる手駒を自ら作り出すまでの事。幸いにもその下地は整っている。

惑星リンクの地下水脈に流出させ、今や星全体を汚染するに至った超獣因子よ!総てを取り込み、形を為せ!!

 

「だっ──ダメです!因子が反応しません!!」

「何!?どういう事だ!!!」

「原因不明!強いて申し上げるなら……まるで妨害電波に打ち消されているように、こちらの信号を受け取ってくれないんです!」

 

そんなバカな。超獣因子は我らヤプールの手足も同義、それが言う事を聞かないなどあり得ん!まさか下手人は、因子の存在すらも織り込み済みで対策していたとでも!?

 

「かくなる上は……」

「何か手があるんですか?!」

 

已むを得まい。これで我らは手札の殆どを喪い、元宇宙の本隊から責任を問われるかも知れないが……あの矮小な祈りを踏み躙れるのならば。望みを手折る事こそが、マイナス思念の権化たる我らの本懐なのだから!

 

「全因子()()()()()()()開始!!星を冒せ、命を侵せ、尊厳を犯せぇぇぇ!!!」

 

 

 


 

 

──ぬかった!!

 

『糞ッ!』

 

降り注ぐ瓦礫をありったけの赤色冷凍光線で停止させて作り上げた空洞にて、俺は思わず毒()いた。

対象はもちろん、普段にあるまじき読みの甘さを露呈した自分自身だ。ウォルナが叫んでくれなかったら間に合わなかった……!

 

「……今度は何があったというんだ!?」

「外の情報が入りません!ですが超獣反応だけが大量に……!!」

「ヤプールに裏切られたんだ!もうダメだ、お終いだぁ!!」

『黙ってろ』

「「「ギエピッ」」」

 

宇宙船全体を覆うように赤色光線を放ち、煩い奴らを黙らせる。外壁を壊して再深部まで入れば、当初の目的(コンテナ)はすぐそこに。中には元の目論見通り、三つの生命反応が見える。

その内一つが、俺がコンテナを開くより早く動き出し──

 

『──ウォルナ』

《バレットさん……》

 

中の本体(コアユニット)から出てきた精神体が、俺の前に現れた。見目は変わらず美しいままに見える……が、窶れ切っているように見えるのは、絶対に気の所為じゃない。

今すぐ抱き留めてやりたかった。実体の俺と精神体の彼女、触れる事なんて出来ないと分かっていてなお。

 

《ヤプールが動きました》

 

そして、それに指向を割いている時間さえ無い。そう分かっているように、ウォルナの方から口を開く。

 

《リンク中に拡散させた超獣因子を一斉起動したようです。目的は私達の抹消、それによる情報流出の防止でしょう》

『有り得ん』

 

だが俺はその可能性を否定する。もちろん現実としてこの事態が起きてしまったのは分かってる、だからこれは現実逃避ではなくロジック解明の為の確認に過ぎない。

 

『タンクに入っていた超獣因子を解析し、その活動を阻害する“血清”を作って中身をすり替えておいた。既にリンク全土に行き渡り、因子の活動を阻んだ筈だ』

《ええ、阻みました……けれど、ヤプール側には“オーバーロード”という、それを突破する手段が一つだけあったんです》

『その詳細は?』

《文字通り、超獣因子の活動を強制的に、限界を超えて駆動させる命令(コマンド)になります。代償として以降、主であるヤプールからも制御不能な完全なる暴走状態に入ります》

 

オーバーロード。完全なる暴走。

上記の二言で思わず呆気にとられた。何だそれは、あまりにも考え無しな愚行だ。後先をまるで見据えてない、悪手を超えた悪手じゃないか!

 

『ヤプールに事態を収拾する気は無いのか!?』

《まず無いでしょう。そもそもこのオーバーロード信号は、私の知る限りでは他物質に感染していないフリー状態の超獣因子を自壊させてしまう諸刃の剣でもあります。つまりヤプールはリンク貯蔵分だけでなく、自らが保有している全ての因子を捨てる覚悟なのでしょう》

『捨て身か……!!』

 

保身を捨て去る程の価値を、奴らもまたTUFIR確保に見出していたという事か。

誰も彼も、目の前の彼女に人権も尊厳も見出していないのをこれでもかと示してくる。ふざけやがって、ああ畜生……!!

 

『地上はどうなってるか、分かるか』

《……見ない方が良いです》

『お前は見たんだろ。俺にも頼む』

「っ」

 

諦めたように手を翳すと、宇宙船のモニターが起動。リンク地表面のカメラと繋がる。

 

…………後悔しかけた。

 

 

「だぁずげでぇぇぇぇぇぇ」

「いやあああああ!!」

「待って!!置いてくな、うわああああッ!?!」

 

半端に超獣化した男性が、肥大した肉を爆ぜさせながら、逃げ惑う人々を押し潰していた。

 

「化け物がァ!殺し……何を!?」

「やめて!恋人なわ」

「ひぃっ?!」

 

助けを求めた人が変異して、先ほどまで縋りついていた他者の五体を引き裂き。

 

「ごろ……ぜ…!!」

「ごめんね、ごめんね……!」

 

愛する者が人であるうちに、楽にしてやる姿さえ。

 

木材が、石材が、そして血肉が焼け焦げる景色を背景に、地獄が広がっていた。目を逸らせるならそうしたかった。

だが、この光景は、その責任は──

 

 

《私の所為です》

『俺の所為だ』

 

 

声を上げたのは同時で。

 

《貴方じゃありません。知っていますかバレットさん、緊急時の作戦として因子開放をヤプールに提案したのは、私なんですよ》

『TUFIRとして命令されて、だろう?責任能力が無いなら罪も無い、だが俺は軽率な判断でヤプールを刺激しこの事態を招いた』

《因子オーバーロードはさっきも言ったように諸刃の剣です!よほど追い込まれた状態じゃないとまず選択肢に入らない手なのに、こんな状況で唐突に発動するのを予測するなんて不可能でしょう?!》

『だったらお前も無罪だろ!飽くまで立案したのは“緊急時に限って”の作戦なんだからッ』

《違います!!だって、私はっ、》

 

ガチャン、と手にした方を強く掻き鳴らした。これ以上彼女の自責を聞いていたくなかったから。

話している間に、憑依していた青年を介抱して寝かせ、展開した砲を整理する。これで準備は整った。

 

『良いかウォルナ!責任っていうのはな、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだ!』

《何を……するつもりですか!?》

『取りに行くんだよ責任を!!!』

 

何をどう間違っても、お前の所為じゃない。世界がお前を糾弾するなら、間違っているのは世界の方だ。その総ての想いを詰め込んで伝え、勢いよく地表(じごく)へ飛び出す。

待っていたのは赤く燃える街並み、赤黒く染まった川、ひしゃげた悲鳴と……巨躯と化した元人間達(ちょうじゅう)達の、敵意に満ちた視線。

 

やるしかない。

 

救える者を救うしか無い。

 

もう救えない者は……!

 

『ぅうぉぉおおおオオオッ!!!』

 

覆水は盆に返らずとも、零れた水を掻き集める努力を欠かしてはならない。

それこそが俺の今ここで為せる事、すべき責務だと信じて…………引き金を引いた。

 

 


 

 

────嬉し、かった。

 

生きててくれてありがとう。

助けに来てくれてありがとう。

罪を否定してくれて、ありがとう。

 

心からそう告げたかった。偽りでしかないこの身で抱き締めたい程に、暖かくて、切なくて、苦しくて。

そんな、希望で在ってくれた、私だけのヒーローである事を確約してくれる、そんな誠実な貴方が大好きで。

 

 

でもね、バレットさん。

責任を取れる者にのみ重責は課せられると、そう仰るのなら。

 

《やっぱり、私の所為じゃないですか》

 

私には出来る事があった。生を捨てるという選択肢があった、のにそうしなかった。

……これは、“逃げ”でしょうか?

 

「うぅん……ここは何処じゃぁ?」

「くっ、今だ動けんか……」

《……!》

 

 

彼が飛び出していった穴を見上げ、想いを馳せたその時。コンテナの中で目覚める二つの気配(生命反応)

 

……そうだ。

 

(まだ取れる責任が、あったんだ)

 

全てを諦めるのはいつだって出来る。でもそれより前に、私も。

 

バレットさん。

最後に一度くらいは、貴方みたいに。

 

貴方の、隣で。

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