絶対UFZに入りたくないバルタンVS絶対加入させたいゼロ   作:スターク(元:はぎほぎ)

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Z-Pの軌跡

《ディメンジョンコア?》

 

バレットさんは学者でもある。そう聞いて、何か発明品を見たいと聞けば、彼が取り出したのは製作途中の炉心でした。

 

『ああ。次元断層を疑似的に発生させることでその復元力を抽出し、利用可能な運動エネルギーに変換する機構。勿論、反転させて疑似じゃなく実際に次元を切り開く事も出来る』

《なるほど、次元自体が持つ維持性は恒久的な物。それを利用すれば第一永久機関も夢では────あっ、まさか》

『理解が早くて助かる……が、どうした?』

 

次元を切り開く。その一文で、彼がもともと何を目的にこのコアを発明しようとしていたのか……分かってしまって。

 

《……元の世界へ、帰る為の?》

『!──ああ。そう()()()よ』

 

答え合わせは△。部分点と言わんばかりに、バレットさんは苦笑していました。

一方私の胸中は、“安堵”。

 

『時間がかかり過ぎたからな、今更戻っても全部手遅れだろう。それにこの世界にも馴染み過ぎた』

《で、でも……帰ったら、きっとJr.(ジョー)さんも喜ぶんじゃないですかね?今も待ってますよ》

『長男の俺を差し置いて指導者の才を見込まれたんだ。とっくの昔に見切りをつけてるだろうさ』

 

彼の真意を確かめるように、心にも無い事を言って翻意を促してみます。けれどまるで私の期待へ答えてくれるかのように、彼の意向は変わりません。

更に、まるで追撃してくるかのように。

 

『それに今は……()()()()()

《!!》

 

ダメです。それ以上はもう、本当に勘弁して欲しい。

 

『お前と出逢えて、今は毎日が楽しいんだ。だからもう元の世界に帰る気なんて毛頭無い。だから研究もほぼ止まっちまってる』

《そんなにですか》

『そんなに。気持ち悪い事言うから嫌だったら拒絶して欲しいんだけど、もうお前以外何も要らないまである』

 

そんな事まで言われてしまったら、私はもう貴方以外を愛せない。こんな私を此処まで思ってくれる相手、他にいる訳が無いから……希望を抱いてしまう。

叶わないと分かっていても、死んででも叶えたいと思ってしまう。そんな願いを抱いてしまう。

 

『だから……待っててくれ、ウォルナ』

《……バレット、さん……》

『お前が抱えてる孤独も、苦しみも、俺は知らない。けどいつか絶対、それを全部根こそぎ解決してやる。バルタンの頭脳は伊達じゃないから』

 

もしそれが出来たら。彼はそう言って、共に宇宙(そら)を見上げながら。

 

『一緒に行こう。ディメンジョンコアを使って、あの星々より遠い所へ。例え星の光さえ無い闇しかなかったとしても……お前となら、何も怖くない』

 

 

 

 

 

──ごめんなさい。

 

どうか許さないで下さい。

 

貴方が語ってくれた夢を、その懸け橋にしようとした発明品を、自殺の口実に使う私を。

 

貴方の想いに応えもしないまま、逃げようとする私を。

 

どうか、許さないまま、忘れて下さい。

 

 


 

 

嫌だ。

 

嫌だ!

 

嫌だっ!!

 

『だったら制御役は俺が行く!発明した俺以上に勝手を分かってる奴なんか、』

《貴方まで異次元に巻き込まれたら、誰が外から封印を解くんです?それに超獣因子の研究だって貴方以上に適任はいないでしょう》

『お前がいるだろ!!』

 

《──ぁは、はっ》

 

笑うないでくれ。一笑に付さないでくれ。

自分の容態は分かってるだろ?バイタルの低下した状態からの急激な高駆動、それによる俺のサポートでかなり限界に近付いている筈だ。

そんな条件で、未完成のディメンジョンコアを制御し自爆させるなんて……!

 

『今のお前がやったら封印じゃすまない、死ぬぞ!!』

 

どう考えても耐えられない。過程で神経が焼き切れ、精神生命体であるウォルナは確実に消滅してしまう。そんな未来だけは受け入れられなかった。

けれど、ウォルナは、それでも。

 

《……()()、私?》

『っ、あ……』

 

飽くまで、冷静に。

努めているのか本心からなのか、それは分からない。いずれにせよ、現実を真っ向から受け止めて。

 

《耐えられる訳無いじゃないですか。いつの私でも》

 

それを俺に、容赦なく突き付けてくる。

違う。そういう意味じゃない。そうじゃないんだ……なんて言い訳がグルグルと口を回るが、終ぞ嘴を突いて出てくる事は無く。

 

《戻りましょう、バレットさん》

『……どこに』

《私達、精神体と分裂体で逢ってきましたけど……()()()()()向かい合った事、無いじゃないですか》

 

ふうわり、宙に浮いていくのを止められない。手を伸ばしても届かない、飛べば掴めるのに足が地面を離れてくれない、そんな高みへ彼女は舞い、そして。

 

《最後の逢瀬です。待ってますからね》

 

……消えてしまった。止められなかった。

 

場所は分かっている。行かねばならない。時間が無い彼女を、これ以上待たせるわけにはいかない──そう分かっていても尚、足取りは重く。

 

『……ウォルナ……』

 

うわ言のように呟き、楽しかった日々を追憶する。それしか、俺が現実に対して出来る反抗は無かった。

 

 

 

 

──何の事は無い。モネラの地下基地跡、そこが待合場所で目的地だ。

准将やエメリグ王太子の姿は無い。栄養剤が効いて脱出したんだろうか、いや反応が更に地下にある。地上の混乱を避けて潜り込んでいたらしい。

いずれにせよ好都合。ウォルナの姿を見られずに済むから。

 

『っ……、はぁ』

 

そう分かっていてなお、人間態で二の足を踏んでいるのが俺だ。情けないったらありはしない、コンテナの扉はもう目の前だというのに。

見たくない。叶うならこのまま、コンテナごと持ち帰ってしまいたい……いや待て。それで良いだろ、もう。

 

これだけの騒ぎになったんだ、査察団だって時期に到着する、USAが直々に介入してくる、それに全部任せて放り投げてしまえば良い。責任だって既に最低限以上果たしたんだから、誰からも責められる筋合いは無い筈だ。

 

このままウォルナを攫って逃げてしまって。どこかに腰を落ち着けて、彼女を()()して、大手を振って外を歩ける肉体(からだ)をプレゼントして……二人で生きていけば良い。殺し屋家業なんて物騒な看板を畳めば憂いも無いだろう。

そうだ、このまま掴むのはドアノブじゃなくてコンテナその物。持って逃げよう、それが良い。超獣が再び暴れ出すより早く、早く!!

 

 

「こんな格好悪い奴を、アイツが好きになってくれるかよ」

 

 

捻ったのはドアノブの方だった。ウォルナが笑い掛けたあの日の俺を否定する訳にはいかない。

 

 

 

果たして彼女は……ああ、居た。

 

 

閉所の闇の中、仄かに灯された光がある。それは高さ5mはある大掛かりな装置で、輝いているのはその中央に配された直径1mの容器に入った液体だ。

 

……勿体ぶった言い方はよそう。つまりは、培養槽。

中に臓器を直接投げ込んでも、暫く活動させられるような……そういう延命を目的としたバイオプール。

 

その中に、嗚呼、居た。

 

小さくて、脈打って、それで辛うじて“生きている”と分かるような。けど、この有様でどうして、生きていると言えるんだろう?

 

「──来たよ、ウォルナ」

 

ほつれた脳。

と、破れかけの心臓。

 

それだけが全ての彼女だった。

そんな彼女に、やっと、会えた。

 

「────信じて、待ってました」

 

この姿を俺に見せるのに、どれだけ苦悩しただろう。どれほどの勇気を振り絞ったんだろう。

先刻まで悩んでた俺があまりにもバカらしくて、殺したい程に愚かで、俺は……ウォルナの生きた世界に、喉元でだけ呪詛を吐いた。

 

そんな俺を労わるように、アナウンスが響く。

 

「この姿を、貴方に見せられて、良かった」

「そうかよ……っ」

「ええ。これがありのままの私……すみません、どうしてこんな有様になったのか、少々話しても良いでしょうか?」

「存分に言え。気の済むまで吐け、全部受け止めてやる」

「……やっぱり、貴方は優しい人です」

 

それが彼女の心の助けになるのなら。その一心で思いっきり首を縦に振れば、ウォルナは苦笑交じりに話し始めてくれた。

 

「私が、星を統べる国の、次代を担うお姫様だった事。でも先々代王が引き受けた難民、それに乗っ取られ追い出されたという旨は、もう知ってますよね」

「ああ」

 

侵略者と非侵略者。時と場所こそ違えど対立し合う立場だった事を知った時は、酷い偶然があったものだと天を仰いだのを覚えている。同時に、そんな相手とも絆を交わせた事に多大な感謝を覚えたっけ。

 

「ではその後、暫くの孤独な宇宙の旅から。私は生存可能な星を探してワープを繰り返し、何度も死にかけて、削れて摩耗して……コールドスリープを繰り返しながら、ザッと6万回は試行しましたかね。それでも見つからなくて……私ほど可哀想な存在は無いって、何度自己憐憫に浸ったか」

「そうなって当然だ。卑下しないでくれ」

「いいえ、させて下さい。だって、そんな心持ちだったから……モネラ星人に付け入られたんですもの」

 

ここからが本当の始まり。言外にそう告げて、ウォルナは言の葉を紡いだ。

 

「ワープを繰り返す内にいつの間にか別宇宙まで飛んでいたらしく、とうとう墜落した私を彼らが確保。同時に、私の一族特有の高知能にも目を付けたようで……“叡知を寄こせば助けてやる”、彼らのその誘いに、私はただ死にたくないという一心で飛びつきました」

「……それで……」

「そうです。生体コンピューター“TUFIR”は、そうやって生まれたんです」

「後は、物品扱い、か」

「ええ。それはもう酷い扱いをされましたよ、だって()()()()()姿()()()()()()()もの。最初に手足を切られて、皮を剥がれて、肉を削がれて……気付けばこの有様です」

 

愚かですよね、と笑いを促してくる……でも、そんな事できる訳が無い。寧ろ俺の脳内は今、“憤怒”でいっぱいだ。

コンテナの外には今もモネラ星人たちが転がっている。それを全員打ち首にして、宣戦布告代わりに母星へ送りつけてやろうと本気で予定に入れるぐらいには。でもそんな俺を、ウォルナは尚も笑って宥めてきた。

 

彼女自身も、()()()()()()()()()()

誰に?

 

「怖い顔しないで下さい。だってこの姿は、私が自分の意思で選んだ、その成れ果てですから」

「詭弁だ!お前は被害者だ!!」

「いいえ、違います。私は()()()。自分の意志で生命活動をやめて、この苦しみを終える事だって出来た──でも、そうはしなかった」

 

「テロリズムを指示されても死のうとしなかった」

 

「大量虐殺を命令されても死のうとしなかったっ」

 

「星の破滅を誘わされても、死んでも嫌だなんて微塵も思わなかった!」

 

……彼女、自身に。

 

「何故か分かりますか──

──誰が死のうが殺されようが、自分さえ生きられればどうでも良かったからですよっ!!」

 

罪悪感が爆発。その叫びがハウリングを引き起こし、地下基地を揺るがしたと錯覚しかけた。それがウォルナの、彼女の中に育ったモンスターの叫びで涙だった。

それに負けず、俺も叫ぶ。

 

「そんなの……()()()()()()()!?!」

 

自己保全は全ての生命に等しく与えられた権利だ。他者に尽くすだなんて本来は理から外れた行いで、だからこそ称賛されるべき物……だからと言って、利己が貶められるべきだなんて、そんな話があるか!!

 

「お前は王族の務めを果たそうとしたんだ!滅びに直面した種族の血を後世に残す、その勤めを立派に!誇りこそすれど、誹りを受けて良い筈が無い!!」

「バレットさん。誰が許そうと許すまいと、私が私を許せないし赦()ないんです。例え許したのが貴方だとしても!」

「だったら俺もお前を()()()()!俺が想うお前を、お前自身でも非難するなんて許して堪るか!!」

 

でも届かない。俺の言葉なんてどう逆立ちしたって慰めにもならなくて、それだけ彼女が長年積み重ねてきた絶望の深さの証明にしかなりはしなくて。

 

「──ごめんなさい。本当に、本当にごめんなさい、バレットさん」

「ウォルナ……」

「もう、無理なんです。死にたくないのに、生きるのはそれ以上にもう沢山なんです」

 

彼女には目が無い。無いから涙を流さない。流れない涙は、拭えない。

そうやって誰にも掬い取れない嘆きを溜め込んできた彼女は、既に俺の手すら届かない深みに沈んで、疲れ果ててしまっている。

もっと早く出会えてれば。そう思わずにはいられなくて、握りしめた拳から血が滲んだ。

 

「でも……そんなどっちつかずの私が決断できたのは、貴方のお陰なんですよ」

「は?」

()()()()()()()()、から」

 

そんな俺を慰めようと、ウォルナが発した言葉は。

 

「幸せでした。貴方と出会ってから、心分かち合える相手といる事がこんなに楽しくて嬉しい事だなんて、初めて知れたんです。これ以上の幸福なんて、この先生きてたって絶対あり得ないって、確信できたんです」

「諦めがついた……生への未練を断ち切れたって、言いたいのか」

「そんなネガティブな感情じゃありません。今のこの絶頂の中で、終わりにしたいな──って」

「…………酷い女だ」

「でしょう?」

 

やはりどう足掻いても、俺にとっては地雷だ。要するに俺の存在がウォルナの自殺の最後の後押しになったって事だろ、それを喜べる訳が無いだろう。

けれど、それがウォルナにとっての最善なら……俺がすべきは。

 

「ウルトラマン第20話。“恐怖のルート87”」

「ぇ……?」

「土産に持たせてやれる、俺からの最後のプレゼントだ。受け取ってくれ」

「──っ、喜んで!」

 

 

それは初代マンの中でも、少し異質な物語だ。

 

太古からの永い眠りから目覚めたのか、それとも子供の想像力が具現化し生まれたのか。

真偽は分からないが……しかし怪獣、高原竜ヒドラは現れた。交通事故で命を落とした少年の無念に(いざな)われ。

 

ヒドラは飛ぶ。科特隊の猛攻にも怯まず、血を流しても血に(まみ)れても、少年を死に追いやった原因である自動車を襲い続ける。あろう事か、駆け付けたウルトラマンさえ返り討ちにするほどの大立ち回りさえして。

 

差し詰め荒魂(あらみたま)。逆鱗に触れられた八百万の神が祟りを振り撒くが如く、ヒドラは暴れて、暴れて、暴れて────

 

報われた。

少年を轢き殺した犯人が自首する未来。因果が在るべき形へ収まり、荒魂は和魂(にきみたま)となる。

ウルトラマンが見守る中、ヒドラはその背に少年の魂を迎えて空に舞った。

その霊を天へ送るため、翼をはためかせ、空の彼方へ消えて行く。

 

ヒドラは子供たちの守り神だったのかも知れない。純真な心を守り、救う存在だったのかも分からない。科特隊がそう考察したのを皮切りに、幕を閉じられたのだった。

 

 

────パチパチ、パチ、パチ。

 

語り終えると同時、ウォルナの精神体が拍手しながら出現した。どうやらお気に召して貰えたらしい。

 

《読了感の良いお話でした。少年の、アキラ君の魂は大好きな鳥の神様によって救われたんですね》

「きっとな。じゃなきゃ最後、フジ隊員の目に見えてないだろうから」

《……鳥、といえば……》

 

見せた逡巡に頷きで返す。次に口にした一言は、見事なまでに完全にハモって響く。

 

「《黄金彗星》」

 

近く此処(Z-P宙域)を訪れる輝き。もうすぐ近くまで来ているだろう、鳥の形をした生きる星。

そうだよウォルナ。だからこの話を、最後にここに持って来たんだよ。

 

「お前はあの鳥と一緒に飛んでいくんだ」

 

此処からは俺の勝手な妄想だ。そうなれば良いな、という稚拙な願望に過ぎない、叶う保証などどこにもない気休め。

それでも、ウォルナのこれから向かう最期に、考え得る限りの希望を添えたかった。

 

「体を喪っても、命を取りこぼしても。黄金彗星がお前の魂を連れて、報いてく……そう、信じられないか」

《そんな逸話、この宇宙のどこにも──いえ、()()()()生みましたね》

「ああ。ヒドラ伝説だ」

 

白鷺が乙女の化身だというのなら、ヒドラが子供の守り神だったように、黄金彗星だって……と思い込む、その助けぐらいにはなるだろう?

だからお前は救われるんだ。二度と誰にも利用されない高みへ、あの翼に乗って飛び立つ事で。

 

「天を廻って戻って来い。俺もじきに追いついて、そうしたら」

 

そしていつか、時を越えて。

 

「今度こそ────あの星々より遠い所へ、一緒に行こう

 

……決まった。気障ったらしい、格好だけ付けた、一週回ってダサいこと極まりない文句だ。前にも似たような事を言って、はぐらかされた(フラれた)口説きのリベンジだ。

でもこれが俺の嘘偽りない本心、祈り、願い。それである事には一片変わりも、曇りも無いから。

 

それを受けたウォルナの返事は、果たして。

 

 

《────不束者、ですが》

 

……嗚呼。

いつだって綺麗だと、美しいと思ってた。でもこの瞬間には勝らない。

 

お前をこんなにも、“可愛い”と思った事は無かった。

 

 

《どうか……よろしく、おねがい、しますっ……!》

 

その破顔を。

彼女が俺に遺してくれたとびっきりの、渾身の笑顔を。

 

絶対に、忘れるものか。

 

 

 

 


 

 

 

 

「地響き収まったな」

「しかしまた揺れ始めたの」

 

「強くなってきたな」

「今度の震源は上じゃなくて下からじゃの」

 

「今度は収まる気配無いな?」

「無いどころかこれ星全体がヤバくないかの!?」

 

地下基地最下層での籠城もとうとう限界が来たようだった。襲い来る地揺れは最早、人の身で耐え得る範疇に留まらない。

どうする?我々二人以外にも、ここには気絶した成人男性一人と……()()()()の子供がいるんだ。この所帯で脱出手段を今から探すなど、出来るのか!?

 

「……否、“やらねばならない”か……!」

「階段は既に塞がれておるが、この程度ならワシの術で突貫可能じゃ!准将、お主は其奴らを抱えてついて来い!!」

「任された!先陣頼む!!」

「頼まれた!せーのっ、ゲムギルガンゴウグフォぉおーッ!!」

 

言うやいなや、呪文と同時にエメリグの周囲へ立ち込め始める氣のオーラ。エメラル鉱石の放つエネルギーと同種のそれは、やがて両手に集い収束していく。

出るか、エスメラルダ王家直伝の……!

 

「うぃいいいいたあああああぁa「やめろ死ぬ気か」ホァーッ!?」

「出ぇたぁ!!」

 

そんな俺達を嘲笑うように、瓦礫の山からぬるりと現れたのは影。形を成したそれはつい先刻、外のカメラで超獣と戦う姿を撮られていた戦士その人だった。

 

「バ……バルタン星人バレット!?」

『まず一言。()()()()()()

「……あーっ!その物言い、ワシらを地下基地に手引きしたのはお主という事じゃなー!?」

『そういう事だ。ここで明かしたのは、その事に関してお前たちに感謝してるからでもある』

 

言いながら、向けてきたハサミから何かしらの光線が照射。それは脇に抱えていたカプセルを引き寄せ、私からものの見事に奪ってしまう。

 

『悪いがコレは貰っていくぞ』

「かっ返せ!!それは我々に()()()()大事なモノなんだ、恐らく!」

『……そう、か。だがこの状況で、お前たちに拒否権があると思うのか?』

「おわっ?!何を……」

 

抵抗も何のその。お次は我々全員を念力で浮かし、バレットは改めて語り掛けてくる。

 

『よく聞け。この星はもうすぐ爆発する。お察しの通り、()()()()()()()()()()()()()()でな』

「「なっ……」」

『“銀河の台所”と呼ばれた惑星リンクの消滅だ。銀河経済に多大な影響を及ぼし、一歩間違えれば戦乱が巻き起こるだろう……が、肝心のUSAはどうだ?汚職塗れの現状で、満足に動けると思うか?エスメラルダにも混乱が飛び火しないと、胸を張って言えるのか?』

 

矢継ぎ早に明らかにされた窮状に言葉を詰まらせてしまう。それはこの基地内で我々が得た情報と、完全に照合できてしまうからだ。

USAは腐り切っていた。モネラからの癒着を快く受け入れ、悪行を看過する体たらく。エスメラルダもそれを止められず、それを知った時にはエメリグが歯軋りを露に悔しがっていた事も思い出せる。

そんな状態でリンクが吹き飛べば、引き起こされるのは市場の大パニックだ。そして本来それを御すUSAが機能不全となると……パニックを裏で手繰らんとするモネラ、そしてヤプールには全く太刀打ち出来ないだろう。

 

この地下を脱しても、そんな詰みの状況は変わらない。我らに出来る事など、もう……

 

 

『そこで、お前たちの出番という訳だ』

「……なに?」

 

 

絶望を打ち払ったのは、同じ口で絶望の事態を語っていたバレットの(くち)で。

 

『汚職の証拠は存分に取ったんだろう?リンク消失で起きた経済損失を、その責任を丸ごと汚職者に擦り付けろ。関係ある物から無いものまで全員、汚い奴らを排斥してその後釜に座れ』

「私に……U()S()A()()()()()()()()というのか!?」

『他に何がある?そしてエメリグ王太子、お前は今回の件を功績として、成り上がっていく准将との縁を匂わせまくりながら王座を継承するんだ。USAの権限執行者とその最大出資星の王が懇意となれば、体制としても盤石に出来る』

「お主、そこまで考えて……ッ」

 

飛び出してきたのは酷い無茶振りだ。何よりえげつないのは、それは不可能ではなく、努力に努力を重ねて渾身の力で焼き上げれば、ギリギリ実現可能なラインである事。

コイツ、俺達を骨の髄までしゃぶり尽くして利用する腹積もりらしい……!

 

(せめて、コイツの真意を明らかにしないと!)

 

利害は一致しているらしいが、タダで傀儡にされるのは癪だ。良いように使われては敵わないと、問おうとしたその時。

 

 

『天使を見ただろう?』

 

 

先手を取られ、一瞬だけ息が止まった。

 

『美しかっただろう?あまりにも綺麗で、自分の物にしたかっただろう』

「何の話──!?」

『それ程までに尊いアイツが、その身を賭して、()()()()()()()()()んだ』

 

有無を言わさぬ語調。それが終わるのを待たず、巨大化したハサミが我らの身体を包み込み。

 

 

『“天使に報いろ”──お前達が考える事など、それだけで充分だ!!』

 

 

飛んだ。

バレット自身が弾丸となり、ドリルのように天井の岩盤を掘削し、上へ。加速は止まらない、障害なぞ知らないとばかりに突貫してゆく。

助かる……救助、される。

 

(……そうなのか、バレット)

 

最中、我々を連れて行くバレットの背中を見て、勘付いた。

 

天使が死んだ事。またはこれから、死にゆく事を。

 

その死が我らの為である事、その犠牲を忘れてはならない事、そして──

 

(──お前は、天使と共に在ったのだな)

 

彼女の覚悟を間近で見届けた者。それこそがバレットである事を。

 

 

気付けば宇宙へ飛び出していた。真っ赤に染まったリンクを眼下に、逆方向の上から見染めたのは黄金彗星……いや……鳥?

 

すれ違う。バレットの視線が一瞬だけ、鳥のそれと交錯したように思えた。気の所為かどうなのか、今となっては何も分からない。

 

 

確かなのは一つだけ。

その数秒後、惑星リンクが爆発とともに消失した事だけだった。

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