絶対UFZに入りたくないバルタンVS絶対加入させたいゼロ 作:スターク(元:はぎほぎ)
おのれバレット。
おのれUSA。
「ここまで、長かった……」
TUFIRを喪い、衰退。
逃したUSA准将にこき使われ、疲弊。
糞みたいなエスメラルダ人の中でも特に糞なエメリグに、*1過去の痂疲を徹底的に論われて、搾取。
武力を*2取り上げられて消耗。
開発した技術も*3接収されてさらに消耗。
碌な再活動も出来ずもっと消耗。
止まらぬ衰退。
……控えめに言って屈辱だった。この
だが、天は我々を見放してなどいなかったのだ!
「黄金彗星がZ-P宙域、つまり我らが母星の付近を通る!それを捕らえ独占してしまえば再興も夢ではない!!」
「隊長。皮算用は良いですが失敗すれば現状は変わりません、気を引き締める事をお忘れ無きよう」
「わ、分かっている!!みなまで言うなッ」
………仕切り直し。
特にキツかったのは最後、ベリアル軍による攻撃だった。
突如現れた奴の手でUSAが滅んだ時には諸手を挙げて歓迎したのだが、奴が次に選んだのはまさかの無差別侵略。こちらはUSA残党の情報を手土産に降伏を申し出たものの、けんもほろろに追い返されてあわや大量虐殺されかけたのは記憶に新しい。
しかも、そんな状況でさえバレットはしれっとベリアル軍に寝返り「俺はもともと陛下の御意に従うまでですが?」みたいなツラで軍を差し向けて来たんだ!!恨まずにいられるか!?!
「今に見ていろ……ウルティメイトフォースイチだかニだか知らないが、復活した暁にはTUFIRを奪った報いを受けさせてやる……!!」
「気持ちは同じです。隊長、やってやりましょうッ」
かつての栄光を再びこの手に。その悲願を胸に、我々の宇宙船は黄金彗星の後を追っていった。
……ん?
何だ、黄金彗星が……
いやそんなワケはない、よく見れば隣に現れた光は
は?
近付いて来てる?別個の流星か?
え、待って。明らかに意思ある動きしてるんだが。
……げ、迎撃!念のため迎撃!!アッ避けた敵だぁ!!
敵襲!!てきしゅ~~っ!!!
『ミラーナイフ!』
『ファイヤァ、フラーッシュ!!』
「「「ほぁぁあアアッーーー!!?!?」」」
『巷ではこれを“出オチ”と言うのでしょうか』
発射したミサイルを一撃で薙ぎ払われた上、ご丁寧にも機関部のみを斬られてモネラの宇宙船が墜落する様。下から見上げる分には絶景でしたよ。
かつて軽んじられた挙句拷問された怨讐も、今のモネラ星のザマと今回の滑稽な顛末を見れば胸が空くというものです。
……いえ。そう断じるのは、我ながら些か強がりが過ぎましたかね。
「スライが潜んでいる筈だ!探せ!!」
『私のレーダーは奴の反応を今も拾っている。近くにいるぞ、気を付けろ!』
「サンキューだぜ焼き鳥魔神っ」
『待て!もしかしなくともグレンから聞いただろその渾名!!』
(よもやここまで早く嗅ぎ付けてくるとは……)
TUFIRを探す際に利用された意趣返しに、私のモネラへの復讐と黄金彗星の横取りにバレットを利用する作戦。私とした事が功を急き過ぎましたかね。
(私に出来る最大限の隠蔽工作を何重にも強いていたのに、突破され突き止められた。やはりバレットの手元には今、TUFIRもしくはそれに匹敵する人工知能が存在する……っと)
「反応あり!つい先ほどまでここにいたようだ」
「奇襲警戒!」
(ある程度は予測こそしていたものの、ここまで特定されるのは想定以上。逃げ切れる確率は半々……といった所でしょうか)
USAの部隊だけなら蹴散らせただろうものの、向こうには巨大戦力であるジャンボットが控えている。それ相手に例え勝てたとしても、振り切るのが遅れればウルトラマンゼロが到着して終わり……どころか、ジャンボットとの戦闘中にバレットの狙撃で撃ち抜かれる可能性が50%だ。逃げ切りは至難を極めるだろう。
(暫し暇を頂くかも知れません、陛下……)
セーフティハウスに残してきた療養中の主へ謝罪。一頻りのそれを終えてから、私は意を決して飛び出そうとした。
「おっ、鉄火場か?」
『────!!!』
その声は、背後から響いた。
もちろん驚いた。気付かぬ内に背後を取られていた事、殺気さえ感じられなかった事、それらもあるが何より。
『
今は肉体も無く、魂魄だけの主と、
振り向けば、そこに立っていたのはヒューマノイドタイプの青年。逆立った一房の白髪を除けば黒の長髪、その下に三白眼を瞬かせて此方を見つめている。
「ベリアルだぁ?確かヘブライ語で“無意味”だとか“無価値”だったか、酷い事言ってくれるなぁお前」
『……違う……』
「なんて?」
よく聞けば声が違う。態度にも貫禄なんて碌に無く、明らかに陛下とは別人だと今なら分かる。
だが、なら何故私は最初に勘違いしたのだろう?
『何者なのですか、貴方は』
「質問してくれてるとこ悪いんだけど、俺もこの世界に来たばっかで言語よく分からんのよ。むしろ俺の方が此処がどこか聞きたいぐらいなんだ、悔しいだろうが仕方ないんだ」
会話不能なまま時が過ぎ、気が付けば背後から足音。あと数秒もすれば見つかり、交戦状態に入るだろう。
そのタイミングで、何を思ったか青年は指を鳴らし──
「けど、お前とは何かしらの縁なり因果なりあるらしい。助けてやるよ、貸し一つな」
(時空間ゲート!?)
あろう事か、その所作一つで脱出ルートを作り出してしまったのだ。機材も何も必要としないまま。
……なるほど。これは望外の幸運やもしれませんね。
『……借り一つ、という事で』
「そうこなくっちゃ。返礼を期待しとくぜ」
『なっ!スライの反応が消えたぞ!?』
「バカな、一帯に転移ジャミングを撒いてる筈だろ!」
「どうやって……」
我々の知るゲートとは形式の異なる、まるで
『────ああ、分かっている。気に病むな、スライの生存を公に確認できただけでも戦果は満たしているんだ。他の襲撃者がいないかの索敵に戻ってくれ』
《……了解した》
《ゆっくりグレンだぜ。モネラの宇宙船を無事捕まえたんだが、どうすりゃ良い?炙る?》
『思い出したように海賊仕草するな。保管した後、USAに引き渡してで処理させる……ナナ、冷蔵庫は』
『え?なんで冷蔵庫??』
黄金彗星の進路を、隠れながら全て見渡せるアステロイドベルト。そこにゼロと共に潜みながら、俺はナナを介して秘匿念話を飛ばしていた。ゼロがここにいるのは、最大戦力として不備の事態にすぐに投入出来るよう備える為だ。
しかし魔導卿……まぁ生きてるよなぁ。リンク脱出の時に身柄を確認できなったし、ドサクサに紛れて逃げていたのか。
だが存在を認知した・その事をスライが自覚した以上、今後の活動は大幅に制限される筈。何を企んでいるのかは知らんがひとまず満足とするか。
《冷蔵庫ならこちらに。キンッキンに冷やしてやりましょう》
『ノリが飲酒のそれじゃねぇか』
『光の国でも酒の概念あるんだな』
『太陽が爆発する前の歴史でな。今は別の嗜好物に代わってるよ』
《でもゼロってなんだか未成年飲酒してそうですよねw》
『滅多な事言うな。確かにゼロはアウトローな気質があるが、犯罪に手を出すような愚か者ではないだろう』
なぁゼロ?
『……』
『オイ待て何だその間は』
待ってくれ。頼むから目を合わせてくれヒーロー、嘘だよな?嘘だと言ってくれ!
頼むよセブンの息子ぉ!!
『あ、あーっ!!!!!鳥が今すれ違った小惑星の影が怪しそうだ!!!!俺ちょっと見てくるぜ!!!!!!』
『案件終わったら審問会な』
『……うす』
《えっと、ちょっと言い出した私も、こんな事になるだなんて思ってなかったというか》
いそいそと逃げ出していくゼロの背中を見送ってから、俺は途方に暮れて頭を抱えた。ええい、平成ウルトラマンって奴は倫理観どうなってるんだ。昭和の品行方正っぷりが懐かしいぞ……いやタロウとかだいぶハッチャけてたな……やめようこの話。
『しかしアレが黄金彗星……なるほど、噂に違わない美しさですね』
『だろう?──とは言ったが、実は俺もじっくり眺めるのは初めてなんだよな』
現実逃避もかねて、ナナの感想に全力で首肯する。それだけ、鳥の輝きは予想以上に優しく柔らかい物だったから。
鳳凰か不死鳥か神鳥、果たしてなんと例えればいいのやら。心の
……ウォルナといたあの頃の俺なら、もっと純真な気持ちで直視出来ただろうか?
《おーとーうーさーまーっ。邪念は
『いや邪念て』
《デート中に他の女の事考えるなんて邪念以外の何物でもないでしょう?》
『……ああ、スマン』
《…………》
この宙域に来ると色々思い出してしまうし、考えてしまう。何故ならあの一件は、俺の中でまだ
プロトコアの自壊によって封印した惑星リンク。そこで眠る人々の治療法を、俺は未だに見つけられていない。
(ヤプール戦役を、ベリアルが終わらせる前に勝ち切れていれば……)
そうすれば、もっと新鮮な超獣のサンプルを捕らえて有用な血清を作れただろう。実際あの時点での研究進捗率としては80%を超えていて、後もう一息で完成出来る状態だったんだから。
しかしベリアルの侵攻によって俺の動きが制限され、その間にヤプールは完全に息を潜めてしまった。新鮮な超獣細胞は手に入らなくなり、出回っている中古の超獣兵器じゃ碌なデータが取れやしない。リンク救済は現在、完全に商売上がったり──ならぬ研究上がったりに陥ってしまってる。
俺がなんとかしなきゃ、リンクの住民は時間から取り残されたままなのに。
ウォルナは、俺なら出来るって、託してくれたというのに。
『……はぁ』
思わず溜息が出てしまった、その時だった。
《あーあー。マイクテスマイクテス》
『どうしたゼロ。念話なら聞こえてるぞ』
《おうバレット。
気付いてない?何が……!!
《鳥がそっち向かってるぞ》
黄金彗星が来る。その青い瞳でこちらを見据え、直角にその進路を捻じ曲げて。
ナナ、原因分かるか?
《いえ、ステルス機能は依然完璧に動作中。相手のテクノロジーが私達を上回っているならともかく、生物相手にバレる筈は……無いんですけど……》
『明らかに此方を認識しているよな……ゼロ、周囲の警戒頼んだ』
《頼まれたぜ。気の済むまで付き合ってやりな》
『簡単に言ってくれる……』
敵意は無いし、恐らく戦闘能力も皆無。だから荒事にはならない筈だが、念の為ナナの入ったカプセルを庇いつつ砲を手に取った。
距離10000。鳥は尚も羽搏く。
距離5000。こちらの様子を窺うように旋回開始。
距離3000。再接近にて、一飛びに詰めて。
距離──50。
目と鼻の先に、その翼は降り立った。
《黄金彗星が止まっただと!?》
《USA設立以来、初めて観測された事象です!》
《何故バレットの目の前に?!!》
《静かに!──彼らに全てを任せましょう》
騒めき立つUSA部隊の通信をミラーナイトが諫めてくれたのを聞き流しつつ、俺は鳥へと慎重に歩み寄った。相手がそれを拒絶する様子は無く、まるで此方の選択に全てを委ねるような佇まいを崩さない。
(……まるで、前々世のインコだ)
首を傾げて見つめてくる様に思い出すのは前世の知識。そういえば親戚が飼ってたっけな、と思いつつ……いよいよ、その眼前に立つ。
鋏を展開し、中から出した触腕。それで恐る恐る……触れた。
《ッお父様!!》
『見守っていますから』
『────っぁ……!!!』
刹那より短い時間だった。それだけで、でも確かに感じられた。
振れた柔らかい羽毛、それを伝うように聞こえてきた声。鳥の蒼い瞳の中に、薄っすらよぎった翡翠の光。
そこにいるのか。
『ウォル……あ、ぁあッ!』
『──────!!』
甲高い鳴き声を上げ、鳥が飛び立つ。俺も飛べば追い付いただろうに、何故かそんな気さえ起きないまま手を伸ばすしか出来ない。
そのまま鳥は、まるで来た道を引き返すように逆行。哨戒中のゼロの横を通り過ぎ、元の針路に戻って、その先へ。その彼方で。
……一際強く輝いて、消えたのだった。
《……あの女……》
ナナの呟きも耳に入って来ない放心状態。それに数秒か数分か浸った後……ようやく俺の意識が浮上する。
が、それでも現実を受け止めきれない。というか幻覚だったんじゃないだろうか?
でも、だが、しかし、それでも────
(いや……
考えるのはやめだ。この件に関してはだけは、自分に都合よく考えたってバチは当たるまい。
ありがとう黄金彗星。彼女の魂を拾い上げてくれて、本当にありがとう。
そして……ウォルナ。
お前が天を廻って、見てくれているというのなら。
『……頑張るよ、俺』
まだやれるから。力が湧いてくるから。
だからどうか、その輝きを────永久に。
その鳥にとって、惑星リンク周辺を通る事に深い意味など無い。ふと訪れたくなる場所──その理由は、本鳥にすら分かってなどいない。
……ただ。
その鳥は、泣き声に引き寄せられる傾向があった。遠き彼方の呼び声に寄り添う性質があった。
それは鳥にとっての
つまり──黄金彗星がZ-P宙域を訪れるのは、必然ですらあったのだ。
そこに漂い、消える運命にあった咽び泣く魂を取り込み、連れていく事もまた。
「もう良いの?」
「ええ、アサミちゃん。あの子は元気だったし、いつかきっと──」
『キーッ………!』
「──彼は、追い付いてくれますから」
シーラキートは
夢を破れた人々へ、希望の光を届ける為に。
あの日、自らを導いてくれた、あの
『……待ってろよ。アイツを絶対、お前らの
同じ光を宿す者、ゼロは。
【Z-Pの堕天使】編、完!
ながかった(小並感)
次は【逆襲のヤプール feat.OO】編です。いつになるかは分かりません。
困ったなぁサーガ編どころかビートスター編すら遠い……