絶対UFZに入りたくないバルタンVS絶対加入させたいゼロ 作:スターク(元:はぎほぎ)
……いや、バレットage描写をするべく困難な状況を積み上げてたら、肝心の作者がそれを解決する手段を思いつかなくなったが故のスランプという()
スタークの脳が自キャラのそれに追いついてない……
前編
記録。
漂流開始より■■■が経過。便宜上この日を初日とする。
なお、これは公式な要素を持たない私的記述である事をここに留意しておく。
経過を簡単にまとめると、我々は外宇宙探査を兼ねた旅行ツアー中に、実験失敗に起因する母星の喪失を確認。その時を以て移民団としての活動を開始した。
立ち寄った星々で補給を重ねながら、新たなる安住の地を求めての宇宙放浪である。しかしどの星も長期滞在できる環境ではなく、あったとしても僅かな資源のみ。はっきり言って限界は近い。
特に芳しくないのは栄養分の備蓄だ。20億にも上る避難民の殆どはコールドスリープ処置下にあると言えど、船の運航にはそれを制御する人員の覚醒が必要であり、彼らの活動には当然消耗品の使用が不可欠となる。 父さ艦長などずっと起きていなければならないのだから、消費するコストも膨大なものになるのだ。それが長期間の漂流に渡るのならば猶更。
加えて最近、艦のバランス維持に関わる制御システムの調子が悪い。なんとか騙し騙し修理を続けてきたが、俺もそろそろ交代してコールドスリープする順番が回って来た。次のエンジニアも上手くやってくれれば良いんだが……嫌な予感を否定できない。考え得るほとんどの事象への対策は済ませたが、もし
次に起きてここに記述する際、予感が外れている事を祈る。以上。
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「何をしてるんだ、バレット」
「ジョーか。新しい手慰みだ、何の事は無い」
何かを紙面に書いていた兄に声をかけた。俺達の思念は集合知性*1に接続して自動記録できるというのに、どうしてそんな無駄な事をするのか意味が分からなかった。
兄はそういう、一見無意味な事を不意にする、不思議な個体だった。
「紙は現状唯一余裕のある資源とはいえ、そうじゃなかったら懲罰モノだぞ。節約の為にも早く寝てくれ」
「そうする。次に俺が起きるまで、船長を頼むぞ」
「言われるまでも無い。安心して永遠に眠ってろ」
「相変わらず酷いな。兄さんと呼んで慕ってくれた頃が懐かしいよ」
「……」
でも兄の存在は有意義そのものだった。
この艦が今も稼働していられるのは、偏に兄が技術面で支えてきた側面が非常に大きい。指導者の才こそ無いと判断されたから家督こそ弟の俺に継がれたとはいえ、素直に尊敬を向けるに値する。それが父の名を“
「…負けんぞ」
「……勝負ですらないだろ。おやすみ」
だからこそ、負けられない。コールドスリープに入る兄の背へその意思だけ投げかけた。
リーダーの才だけで選ばれた?ならば選ばれた者が、選ばれなかった者より劣っている事が許されるとでも?──否だ。それは個体としての矜持が許さない。
証明するのだ。俺は兄より優れたから選ばれたのだと。でなければ民を導くなど夢のまた夢だ。
何故なら──
(──兄もまた、その“民”に含まれるのだから)
……そう信じる心は、現実にすぐさま踏み砕かれる事となった。
起きた。前回から1ヶ月しか経ってないが、悪い予感は外れてくれなかった。
重力制御装置の破局的エラー。案の定、代えの利かないダイオードの故障により修復不可能。 これは艦の航行において余りにも致命的な物だ。星への降下難易度が果てしなく高まるだけでなく、そこからの再浮上は事実上の不可能。次に立ち寄る星で資材を獲れなければ、そこが我々の終の住処になってしまう。 もしその星の環境が苛烈な物であれば……バルタンという種族は永遠に、この宇宙から姿を消す事になるだろう。
延いては重要になってくるのは次のワープ先の選定だ。先刻開かれた緊急会議では候補銀河を3つまで絞ったところで意見が三分してしまったという。そこでご意見番として俺が起こされたのだが、熟慮に熟慮を重ねたいところだ。 はてさて責任重大だぞ……。
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「M2銀河だ」
候補一覧を見た瞬間、兄は言った。彼らしくもない、短慮を疑うほどの速度だった。
「アンドロメダ星系の隣に位置する某渦巻銀河?」
「正直最も選ばれないと思っていたが……」
「バレットさん。理由を聞いても?」
「勘」
「「「勘!?」」」
「ばっ……バカ言うな!そんな根拠の薄い論にこの艦の未来を掛けられる筈が無いだろう!?」
訳を聞き出すと余計訳が分からなくなる始末。一目置いていた兄弟の乱心に、怒りと対抗心、そして制御装置に自身だけで対応できなかった無力感が幾らか混ざった声音で咆えてしまう。
それを受けて兄はバツが悪そうに目を逸らしてから……副艦長に向き直って告げた。
「
「…やるだけならタダですが。送信されてくる何かしら、及び送信
「これも勘だが、
憶測の文調でありながら確信を孕んだ物言い。彼の実績を知る者たちは、俺も含めて全員二の句を告げられない。
やがてツバイがアンテナ捜査を部下に命じ──数分の後、世迷言は現実となる。
それが、受信された文言だった。
議場は、沸いた。
「確定だ…M2銀河で決まりだ!!」
「生命が発生できる安定環境と、文明を築けるほどの資源量が確約された!」
「補給どころか定住も夢ではないッ」
「しかも文明レベルも低い。
当然の事だ。故郷を失い幾星霜。還る地は無く行く当ても無い流浪により、限界に近付いているのは何も物資に限った話ではない。
集合知性として意識に一定の共有を設けている以上、民達のストレスはコールドスリープ状態でも溜まり続け……爆発寸前なのだから。その代表者として選ばれた彼らが興奮するのも全く無理は無い。
何故か、言い出した当人が頭を抱えているのが気になるが。
「どうした?何故喜ばない、自分の発案が光明を齎したんだぞ」
「不安なんだ」
「今までの先の見えない旅路に比べれば塵に等しいだろう」
「いや、違う───選んではいけない道を、提示してしまった気がするんだ」
「???」
……やはり兄の思考回路は不思議だ。展望がハッキリした現状で何を不安に思うというのか、きっと今後も俺が理解する事は無いのだろう。
だから俺は俺の観点で、冷たくそれを切り捨てる事にした。
「たとえその懸念が的中したとして、“今滅ぶ”か“未来で滅ぶか”の二択でしかない。なら後者を選んで“今”を掴み取れる事を喜ぼうじゃないか」
「そう……か。そうかも、な」
「───答えは定まったようだな」
その最中、声が響く。議席の中央に最も近い、この船を取り仕切る艦長の物。
「ではこれよりM2銀河辺境、信号が確認されたM240惑星──メッセージ内の呼称に倣い、仮称チキュウ近傍宙域へ舵を切る。総員、ワープ準備に取り掛かれ!!」
見覚えのある銀河。
見覚えのある星。
俺は知っている。この青い景色を。青い空を、青い
……だが、何故?
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「バレットさん?」
「あ。すまんツバイ、呆けていた」
訪れたM240惑星は美しかった。何故ならその様相は、変わり果てる前の我らが
汚れ切る前の水、腐り果ててていない土壌、澄み渡る空気。原住民が穢し始めてこそいるものの、まだ十分取り返しのつく、輝きに満ちた星。
「無機資源・有機資源ともに埋蔵量は想定を越えました。気温もハビタブルゾーン故に適応可能範囲です」
「そうか。こちらも地殻活動を解析した結果、星自体の寿命もかなり長い事が判明した」
「ダイオード原料も調達出来ましたしね……移住にせよ補給にせよ、ここまで適した星が見つかるとは」
そこに先遣隊として降り立った私とバレットさんは、現地民の姿に扮して活動を開始。この星が我々の望むものかどうかの調査を行っている。
結果は予想の遥か上。それこそ我々の旅をここで
「しかし貴方もこの星を気に入ったようですね。拠点の1スペースを風景画像で占拠してしまう程の執着とは、正直らしくもない」
「考えあっての事だ。何か思いつきそうなんだ、この星の景色を見てると頭の中がグシャグシャにこんがらがって……」
「ふうむ」
……バレットさんは優秀だ。生まれたばかりの頃から教育係を務めてきた私はその事をよく知っている。知性の共有化が進むバルタン社会において異質とも言える個人趣向・それに基づく発想力は、度々私達を驚かせてきた。
しかし最近はおかしい。M2銀河を…M240惑星の遠景を目にした瞬間から、その思考力は目に見えて精彩を欠き始めている。これまでの無理が祟り始めているのでしょうか?
「悪い事は言いませんし、交代要員を喚んで船で休まれてはいかがでしょうか?考えてみれば貴方、前のコールドスリープも中途半端で疲れが取れてないでしょう」
「いや、この星の言語解析だけは終わらせなくては……交渉の大きな壁に……」
「そんな状態では誤訳連発です。貴方はバルタンの今後の要なのですから、身を大事にしてください」
「……アンタにそう詰められちゃ敵わんな」
気分を入れ替える、とだけ言って出ていく背中を見送ってから、私は次に彼がまとめた原住民の解析結果に目を通した。人口22億、文明レベルは0.2、隣の星へ向かうのにも相当な労力を必要とする程度。そして民度に関しては……未熟ゆえの野蛮と言ったところか。
(交渉は難しいでしょうね)
意識の半共有という解決策を見出した我々と違い、この星の原住民は未だに内輪揉めによる争いから脱せていない。“アメリカ”と“ソレン”という二大集団に分かれ、“カク”という兵器で脅し合っている現状のようだ。とてもではないが「ようこそ」などほざいている場合ではない。
そんな種族が、ひとまとまりになって我々と交渉?無理だろう。例え上手く友好関係を結べたとして、それを快く思わない勢力が勃発し混乱が起きる。そして現住民側は、それを制御する術を持たない。
22億の人口が42億へ、過程を経ずに瞬間的に増加する。それにインフラが対応出来るか?住居は、食料の供給が間に合うか?
原住民側の立場としても、自分たちが今まで暮らしてきた土地の半分を易々と
(不可能だ。絶対に)
必ず戦争となる。例え交渉による穏和な解決を双方が望んだとしても。
ならばいっそ、最初から……───
そんな考えを浮かべる私とは裏腹に、夜になって帰ってきたバレットは一転してどこか清々しげだった。何やら
だがそれもすぐさま反転する。集合知性に訴えかけてくる
拠点とした小屋の窓から見える夜景に、落ちていく母艦の光。
日記を中断したバレットと共に、私達はその落下地点を目指して飛び出した。
気晴らしに降りた街で1機、走り去っていく鋼の機械を見かけた。名は確か“車”。M240惑星原住民が開発した移動手段だったか。 そこら中にありふれて排気ガスを噴くそれらの中で、銀色の光を放つ1機やけに目に付いた──もっと踏み込んでいえば、側面に張られた
あれは何だったのか。未だ謎は尽きず、何より不思議なのは自分の上機嫌さだ。あの車を見ただけでそれまでの暗鬱が反転したようで、我ながら訳が分からない。この感覚はそう、やはりこのM240惑星を目撃した時に抱いた感慨と似ている。
やはりこの星には何かがある。バルタンにとってではなく俺にとって、極めて個人的な根幹にかかわる物が。
知らなければ。調べなければ。その為にも、この星の今ある形を保てるよう穏便な交渉を進めなければ
緊急事態発生。この日記を置いて現地へ向かう。
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バルタン星人同士が意識を集約・蓄積して作り上げた一種のアーカイブ。いつでもどこでも脳だけで接続できるインターネット的な物で、コールドスリープ中も意識の一部をそこに残す事により意見表明が可能となる
シン仮面ライダーで例えるなら“行き来可能なハビタット世界”といったところ
艦長→初代
ツバイ→2代目
ジョー→Jr
3代目?アイツ、メフィラスの幻説が浮上する程度には影薄いし……