絶対UFZに入りたくないバルタンVS絶対加入させたいゼロ 作:スターク(元:はぎほぎ)
『どうだ?久しぶりの故郷ってヤツは』
『悪くない』
トンネルを抜けるとそこは宇宙空間だった。川端康成のフレーズに肖って思ってみたが、なかなかどうしてしっくり来る。
此処はさっきまで俺がいた、長年を過ごしてきた世界とは違う。人間時代の俺が夢見て、そしてバルタンとして最初に生まれ落ちた世界──M78スペース。
『いや嘘ついた。めっっっっっっちゃ興奮してる』
『そうなのか?』
『心なしか眩暈がする程度には』
『体調不良じゃねぇか。大丈夫かよ』
『大丈夫だ、問題ない』
この程度で止まってられるか。この目で光の国を見る望外のチャンスなんだぞ、不意には出来ない。
という事で出発だ。どっちの方角がM78星雲なんだ?
『焦んなって、ゆっくり行こうぜ』
『早くしろ!間に合わなくなっても知らんぞ!!』
『何にだよ』
──ゼロ曰く、宇宙警備隊は星雲の外縁地点で俺達を迎えるべく待っているらしい。そこへ向かう俺達の行脚は、軽い物見遊山と併せて始まる事となった。
『おっ、ありゃハーシー大彗星だ』
『マジか!?ピッコロ乗ってるか!??!』
その途中に出会った、見た、聞いたものは興味深いの一言に尽きる。かつて知識だけで知っていた物達。
『ベムスターの巣がある。迂回しよう』
『えっリアタイで産んでる!卵胎生?!始めて知ったぞ、ちょっと採血だけしていって良いか』
『ダメに決まってんだろ!?ちなみにあれは亜種だ、原種の生態はまたちょっと違う』
『原種も見に行かせてくれ!!』
『急かしてきたさっきまでのお前はどこ行った???』
だが、テレビの画面越しでしか知る事の叶わなかった者達。
そんな夢の世界が、今……
『ジュランの植生地だな。おーおー盛大に花粉飛ばしてやがる』
『樹液どんな味かなぁ』
(こっち来てから盛大にキャラ崩壊してんなぁ……)
俺の目の前に、ある。
すげぇ。あの巨獣達が、宇宙の神秘が、ヒーローの居る世界が、目前に。
『すげぇぇぇ……』
『溶けてんじゃねぇか』
感動し過ぎて力が入らん。お陰でゼロのおんぶにだっこだ、すまんなホント。
『大丈夫だって、むしろ連れて来た甲斐があるってもの……っつーか、体調悪いのか?どんどん元気無くなってるような気がすんだが』
『そんなわけ、ないだろ。元気ピンピンだよ』
折角光の国に近付いて来てるんだ。メインディッシュを前に前菜だけで満足できるか。既にこのままだと腹破裂しかねないとかそういうレベルの満腹だけど。
で、後どれくらい?もう見えてくる頃合いか?
『ああ見えて来たぜ。あれがM78星雲、光の国を内包する天体だ』
『アレが……』
何故か
……やっと、辿り着いた。
(何年求めただろう)
元地球人としての自我を取り戻してから、宇宙船でジョーたちを庇ってから、ずっと……ずっと、だ。
永遠にも思われた時間を、その憧れに縋って生きてきた。ウォルナと共有し合った思い出を糧になんとか、生きてきた。
そんな夢の地が、あの中にあるというのなら。
(……居ても立ってもいられない)
会いたい。この目で見たい、ゼロ以外の光の巨人を。ウルトラマンを、光の国を!
その一心で、気付かぬ内に手を伸ばしていた。
『……ぁ?』
『は…………?』
異変は、その時。
俺のその手が、鋏が、
『うそだ、ろ…ッ……』
『何だ!?待てバレット、気をしっかり持て!オイ!?!』
異変は止まらず、二の腕から、肩、更には頭頂部からも足先からも始まって全身へ。そうだよ、考えてみれば当然の事だ。寧ろなんで気付きもしなかったんだ?
スペシウムを手繰るウルトラ戦士の総本山が、スペシウムの波長で満ちてる必然性に……!
『ゼ、ロ……す…………まん……』
『バレットぉおおおお!!!』
真空空間に響き渡る相棒の絶叫を最後に、俺の意識は泥濘となった肉体へ沈んでいったのだった。
くそ……ここまで、かぁ。
ゼロからの凶報は、私の足を突き動かして余るもので。
『ゼロ、私だ!』
使節団を置いて駆け付けた一個の小惑星。その裏側に潜む宇宙船に呼び掛ければ、中から念話が返されてきた。人間体のゼロだ。
「マン……一人か?」
『ああ。来れる限りのトップスピードで来たからな』
「なら都合が良い、後続に遠くで待機するよう伝えてくれ。此処に入るのは人間体で頼む」
『了解した』
団に連絡を入れてから、ハヤタの姿を借りる。すると宇宙船のドアが開き、招かれるまま中へ。
そこはまるで研究室だった。ヒカリがよく籠るようなラボ……を、移動用に簡素化したような。否、“ような”ではなくまさにその通りなのだろう。
「待ってたぜ」
「ゼロ、彼は?バレット君に何があった!?」
その奥から現れた若きウルトラ戦士、しかしその顔色は暗い。
中には、揺蕩う粘度の高い液体が──まさ、か。
「これが……バレットだ」
「────っっっ!!」
なんという事だ。なんて事をしてしまったんだ、私は!!
(バルタンがスペシウムに弱いだなんて、分かり切っていた事だろうにっ!)
にも関わらず、無思慮にバレット君を光の国へ呼んでしまった。我々を尊敬してくれていた彼に、拒絶する選択肢があっただろうか?
そこを汲みもせず、私はただ星雲外縁で待ち呆けていたというのか!?こんな愚かな話があるか!!!
「私が、彼を、死なせたのか……!!」
「お、オイ。落ち着いてくれ、幾らプラズマスパークの出力が凄いからって、まさかこんな辺境でもバルタンが接近不可能なレベルだなんて誰も予想出来なかっただろ」
「それを予見しなければならなかったのが、発起人である私の責任なんだ!すまない、バレット君──っ」
「……あ~、う~ん……」
幾ら懺悔を重ねても、ドロドロの有機溶液になってしまった彼には届かないのだろう。ならば私にすべき事など、贖罪以外ありえない……
……ゼロ?どうしたんだ。
というか、何故そんな平気そうなんだ?
「…………あ~も~!!いい加減なんか言えよ
は?
《────申し訳ありません、ウルトラマン様。貴方を一目見た喜びで失神しておりました》
「えっ」
初代ウルトラマン。
身長40m、体重3万5千トン。年齢は約2万歳。
大地を蹴っては400km/hで、空を飛んではマッハ5。腕力は20万tタンカーを優に持ち上げるキック力は320文で、聞いて驚けジャイアント馬場の20倍だ────それサイズの話であって威力じゃないだろ、というのは禁句。
1966年、カラーテレビに噛り付く日本少年たちの前に燦然と現れ、一世を風靡した銀色の巨人。それに変身する精悍な
彼が、俺の移動用ラボに入ってくれていた。
感極まって、泣いて、気を失った。
「またかよ。起きろって」
《ああ、起きた。寝てられるか》
「……無事なら、まぁ良いんだが。いや無事とは言えないよな……?」
《いえ紛れも無く無事です。ご心配させてしまい本当に申し訳ありません》
((いや体溶けてるし……))
ではこんな有様ですが、改めて挨拶させていただきましょう。
《はじめまして、ウルトラマン様。私がバレットです。お招きいただき誠にありがとうございます……このような恥ずかしい見目で対面する事、どうかご容赦ください》
「とんでもない、こちらこそ応じてくれて嬉しい限りだ──ああ、私はウルトラマン。君を心より歓迎させてもらおう」
握手代わりに
《単刀直入ですが、本題に入らせていただきましょう》
「ああ」
《ウルトラサインください》
「え?」
「あ?」
《すみません、30秒……いえ、15秒だけ時間をくれませんか。思考が派手に暴走しているようです》
「か、構わないが……。ゼロ、彼は本当に大丈夫なのか?スペシウム被曝の後遺症とか起きてないか」
「分からねぇ……こんなに頭おかしくなってるバレットなんか初めて見ちまったから……」
本当に落ち着け俺。このまま初代ウルトラマン様を呆れさせた挙句に失望なんてさせてみろ、自決じゃ済まないぞ。ウォルナにも顔向けできたもんじゃない、だから頼むから落ち着け!──はい、深呼吸。肺無いが。
《今度こそ大丈夫になりました。本題ですが、R惑星と光の国・地球の繋ぎ役を私に頼みたい、というお話でしたね》
「そうだ。三星の現況についてはゼロから聞いているだろうか?」
《概要は。細部についても察しは付きます》
R惑星の鎖国と地球人による発見。吉報に出来るならしたい所だろうが、彼ら二者はかつての戦闘以来、何の講和条約も結んでいない不文律の休戦状態でしかないんだ。一手誤ればそのまま再度開戦しかねない緊張状態にあるという事。
ウルトラマン側にてもそれは同じ条件。事を修めるには、バルタン側に歩み寄れる人材が不可欠という事……それに俺が、光栄にも選ばれたのならば。
《仲介役、喜んで引き受けましょう。不肖バレット、細やかながら全力を尽くさせて頂きます》
「っ、本当か?」
《もちろん。私からすれば断る理由がございません。逆に断らない理由なら今から100並べてもまだ足りませんが》
憧れのヒーローから平和に向けた頼みごとをされて嬉しくない奴いる?いないよなァ!?!!?
と今すぐ喚き散らしたい気持ちを死に物狂いで抑え込みつつ、俺は外見だけ(液体だけど)平静を保ちつつ応じた。
ウルトラとバルタンと地球人が手を取り合えるなら、こんなに嬉しい事は無い。これもう昭和ウルトラシリーズの最終回で良いだろ。
え、最終回のキーパーソンが俺?あっちょっと
「オイ!生気薄れたけど大丈夫か?!」
「やはりその状態で交渉は無理だ!療養場所は此方で用意するから休んでくれ!!」
嗚呼、待って!待って下さいお願いします!!そういうのじゃないんです、俺個人の些細な問題ですからこの夢のような時間を止めないで!!貴方を前にすると意識が少々トリップしちゃうだけなんです、信じて下さい!!
あっそうだ!
《光の国を観光させてください!!!!先っちょだけで良いんで!!!!!》
「すまない!却下!!」
「
すみませんでした!!!
《むむ。お父様が苦難に見舞われている気配》
仕事をこなしながら、ふと脳に走った直感。私の中のお父様レーダーが、世界線を超えて受信したようです。
いつもなら宇宙の総てを生贄にしてでも駆け付ける所ですが、今の私はこの世界の平和を彼直々に託された身。歯痒さここに極まりますが、耐えて責務を果たす事こそが彼の助けになると、そう信じる他ありません。
《お父様、私頑張りますからねっ》
彼が帰って来た時、褒めて貰えるように。
彼の予想以上に事を為し、私がお母様を超えたスーパーアルティメット天才美少女である事を示して、お父様に伴侶として選んでもらう為にも!さぁ仕事仕事、悪人への
『……ナナよぉ』
《グレン、無駄話は聞きませんよ。口より手を動かしてください》
『いや、無駄じゃねぇ。お前の耳に絶対入れなきゃいけない事だ』
ふむ。貴方は蛮族の莫迦で罰当たりですが、そこまで言うなら一聞の価値ありかも知れません。言ってみて下さい。
「あっ、バレット神、あっあっ」
「ナナ様、あっ、可愛い、あっ」
「あっあっ、バルタ、永久に、あっ」
『テロリストとはいえ洗脳はよくねぇんじゃねぇかなぁ……!!』
《なんで?お父様教を伝授してるだけですが。貴方にも布教しましょうか?》
『怖ぇーよ!!焼き鳥ぃっ』
『焼き鳥言うな。もうUSAに通報した』
《はぁーッ!?何やってくれてるんですかガラクタセスナさんー!!!!》
『ゼロ……バレット……早く帰って来て下さい……』