絶対UFZに入りたくないバルタンVS絶対加入させたいゼロ 作:スターク(元:はぎほぎ)
『総統閣下が帰還された!?』
その日、R惑星は揺れた。
『重度のスペシウム被曝をされている!』
『重体だ!至急治療を!!』
『ビルガモ作戦はどうなったのだ?!』
『政治的空白をどうする、統治が揺らぐぞ』
『ジョー総統ですらこうなるなんて……やはり、我々はウルトラマンには勝てないのか?』
バルタンを率い、再興を為してきたトップがとうとう繰り出した一大作戦。その凶報に混乱が広がる。鬱々とした空気が、共有知性を介して広がる──その、直前で。
『この日誌を、読めッ』
意識を取り戻した当人の思念が、全バルタンに放たれた。
『兄が、バルタン屈指の天才バレットが、遺した書だ。必ず逆転の秘策が記されている、そうでなくとも、そのヒントに、なる!』
『閣下、それ以上は!!』
『読め!アーカイブ化し、全人民に回覧せよ!!そうしてバルタンに、栄光、をッ……』
そして、ジョーは長く眠りに就く。ウルトラ戦士と地球への報復を胸に、次の目覚めを待つ為に。
残された民はどうしたのか。答えは幾星霜を経た未来にて、示される事と相成った。
『私がバルタン側の代表を務めさせていただく、ブレイドと申す者だ。ウルトラマン、クゼセンベイ、よろしく頼む』
「こちらこそ、それを望んでいたのだ。この手を取ってくれた事に感謝する」
「我々の間で砲火が交わされなかった奇跡。無駄にしないべく努めるとしよう」
──バルタンとしての人権を取り戻してからは、トントン拍子に事が進んだ。
穏便に進めたい意向が分かり、その事を使節団に通達。バルタン側の準備を待ち、それが整ったのを確認した上で、現在R惑星──もう“新バルタン星”と呼ぶか──の隣の惑星にて、とうとうバルタン側の使者と使節団が対面した。それが今。
ここからやっと本番……だが、もう心配は要らないだろう。
『上手くいくと良いな』
『いくさ。きっと』
仲介の役を十全に果たした自負がある。その上で論議するのが初代様とクゼ大使なんだから、まず悪い事にはなるまい。ブレイドという同族も、数度話してその健全性を保証できる。
つまりお役御免。暇が出来た、ので。
『降りられますか?新バルタン星へ』
『ああ、頼む』
案内役として待機してくれていたガイド役の若バルタンに追随。これから俺は、まだ見ぬ新たなる故郷へ、初めての帰省と洒落込むのだった。
『……えーと。俺、マジで付いて行って良いの?』
『散々捏ねた駄々を聞いてもらえたんだろ、ほら大人しくちゃんとバルタン星人姿に
『執政部の意向としか……恐らく生態的な天敵であるウルトラ戦士を懐へ招き入れる事で、戦意が無い事をアピールしたいんだと思われます』
『……行きすがら、R惑星に移住してからバルタンが辿ってきた歴史を説明しましょうか』
小型宇宙船を操縦しながら若バルタンは言葉を紡ぎ始めた。
『この星に流れ着き、まず為されたのは指揮体制の再構築。No.2だったツヴァイ氏が貴方の父君の後を継ぎ、暫定的な統治者となりました』
『……やはり、アイツだよな』
『えっ誰?』
『お前達が“二代目バルタン星人”と呼んでる彼の事だよ。ツヴァイって名前があったのさ』
『そういう事です。ツヴァイ氏はジョー氏を副リーダーに据え、彼と共に“ウルトラマン討滅”および“地球征服”を政策として、混乱の中にあったバルタンを纏め上げたのです』
……うん。まぁ、うん。そうなるよなぁ。
共有知性の開発以後、それに慣れ切ってしまったバルタンは、一度変な暴走に入ると一瞬で周囲に伝播して止められなくなる危険。だからそうなる予兆が出た時、暴走を纏め上げて制御する為の“お題目”を用意するのが当時のバルタン政治の常道だったんだ。
で、それに選ばれたのがvsウルトラ・vs地球。うん、そりゃあ、あの状況じゃそうなるよなぁ……。
『R惑星は飽くまで
『……あ、地球から出てきたロケットを利用したあの件か!』
『ウルトラマン側の記録にも残っているようですね。そうです、個体名:モウリという地球人を捕らえて
それが“科特隊宇宙へ”。ウルトラマン16話の、バルタン星人視点での経緯だったのか。
ツヴァイ……お前、どんな気持ちで地球に攻め込んだんだ?
『結果はご存じの通り。ツヴァイ氏も、募った
『俺が言うのもなんだけどよぉ、そんなノリで話して良い事なのかコレ』
『だって僕らにとっては“歴史”ですもの』
知人が真っ二つになる末路を思い浮かべていたら、薄っすらと赤に染まる窓。断熱圧縮の洗礼を受けながら、宇宙船は見る見るうちに降下していく。
……見えた地上は、
『すげぇ。かなり自然豊かじゃねぇか』
『宇宙船に残っていた種を全土に広めたんですよ。壮観でしょう?』
『ああ。光の国はそういうの無くなっちまってるからな』
(……旧バルタン星と同じだ)
バルタンの食性である樹液。それを分泌する植物が繁茂し、立ち並ぶ建築物と完全に共存している。その様がかつての故郷を思い出させ、無視できない郷愁を胸に抱かせる。
父さんと見た景色。ツヴァイから教わった世界。それがまた見られるとは思わなくて。
『話を戻しますが、地球攻撃作戦の失敗後は暫く潜伏期に入ります。だってあんなに用意周到な作戦で臨んだのに弾き返された訳ですから、並大抵の策ではまず無理だと分からされちゃったんで。R惑星内で大人しく力を蓄えよう、という方針になったんですね。ちなみに植林もこの辺りから始まりました』
『なんでそんなに遅れたんだ?』
『一説によれば、あまりにR惑星を住み易くすると、地球侵攻の気運が弱まる事が危惧されていたとか。ジョー氏が“総統”という座に就き、統治体制を一新したのもその頃でしたし』
『……総統、なぁ』
そこを皮切りに、ジョーの治世が狂い始めた。若バルタンはそう言う。
『悪政って訳じゃないんですよ?ただ
『ぅゎ』
『三代目か』
『ただ幸か不幸か、そのすぐ後の時代って……太陽系、乱世時代に突入するでしょ?めちゃくちゃ侵略者が押し寄せたあの時代』
……まさか?
そんな俺の考えを裏付けるように、ゼロが。
『
『そうです。あの時、地球だけでなくR惑星まで宇宙人が押し寄せてもうテンヤワンヤでした。ここでジョー総統の独断軍備が変に功を奏しちゃって、襲撃、撃退、襲撃、撃退……それが週1ペース』
『地獄かよ……』
『まぁその分、他星技術も流入したんで割と得も有ったり?あーそうだバレットさん、その時に貴方の残したテクノロジーが大活躍したんですよ』
『えっ、ここで何故俺?』
『ジョー総統が軍事転用したんです。総統自ら貴方の武器を持って、前線で敵をちぎっては投げ、毟っては投げ。記録映像見ましたがバルタン無双でした』
『何だろう……素直に喜べない……』
何やってんだ弟よ。いやバルタンを必死に守ってくれたのは嬉しいし褒め称えたいけど。でも軍事転用は……いや仕方無いよな……でもなぁ……
と、そんな俺を置いて尚も話は進む。あゝ無常。
『んで、それが一段落ついて……新たにウルトラマンジャックが地球へ来た時代。ここでジョー総統が
『ビルガモ作戦、だな?』
『よくご存じで。そうです、
家族を失った坂田少年の傷心を狙い、建築途中のビルを戦闘ロボット・ビルガモに改造しつつ中にMAT隊員を閉じ込め、人質として帰マンを封殺する作戦。ジョーの奴め、なんて事をしt……
……ん?
『ウルトラマンとMATはついで??主目的が何???』
『貴方の手記です』
『なんで????』
意味不明。そこで何故ウルトラマンを押し退けて俺!?どういう事だジョー!!
『あっそういやR惑星の件でバタバタしてて伝え忘れちまったな。
『待て、潜入?ビルガモは誰が操縦したんだ?』
『自動操縦ですね。なのでロクにウルトラマンジャックを足止めできず、簡単に人質を救出されたとか』
(歴史が!歴史が変わっているッ!!!)
いやいやいやなんでなんでどうしてどうしてどうして?!俺ってこのM78スペースじゃ早期退場しただろ!そもそも手帳にも碌な事書いてないのに、何に拘ってんだよジョーの奴!!?
『お前そりゃ、兄弟の遺品が仇の手元にあるってんなら取返しにもいくだろ。生きてるけど』
『それもありますし……貴方、母星健在の時代から名を馳せた技術屋じゃないですか。そのテクノロジーが記されてるなら復興や更なる軍備に使えるかも、って魂胆だったんですよ』
『アイツほんと……』
『……遺品奪還と技術利用、どちらが建前で主目的だったのかは俺には分かりません。ですがジョー総統は目的を果たして生還しました』
凶行というか奇行というべきか、そんな行動に走った弟の話は尚も続く。聞いてられないけど聞く他無い、そんな俺側の事情なぞ知らぬとばかりに。
でも、そうか。あの最後から生きて帰る事は出来たんだな、ジョー。そうか、命を拾えたんだな……。
『スペシウム被曝による重傷ですぐ昏睡状態に陥ってしまいましたが、その寸前でこう言い残したんです。全人民、日誌を閲覧せよと』
拾った命でなんて事をしてくれたんだ。
『ごめん、寝込むわ』
『オイ待て、もうすぐ宇宙港だぞ!!っていうか日誌に何書いてたのか教えてくれよ!!』
『ご心配なく、ウルトラマンゼロ。日誌の内容は
ゼロに背中を叩かれながら這う這うの
そんな中、取り敢えず見えた空港は、外見も中身も旧バルタン星時代と大して変わってはいなかった。むしろ技術進歩のお陰か洗練されているまであり、でも所有物検査とかの手続き等も特に記憶と差異は無……い、っぽい。
途中で共有知性への接続検査にゼロが引っ掛かりかけたりしたものの、若バルタンが上手い事やってくれたおかげで何とかクリア。俺達はお忍びでの新バルタン星潜入に、とうとう成功してしまったのだった。
なぜ「して
……だって、な。
だって……さぁ!!
《ダーティバンドベムスターズ、最終回に同点の奇跡!ブラグ選手の一打がスクリーンに突き刺さったー!!》
『誰だよバイドを抑えにしたの!!!このノーコンっ!!』
『ブラ神さまー!!最高だよお前~~!!!』
『“バードンズ連敗記録更新フラグ乙 ちな
『オイ共有知性に書き込んだの誰だ。●すぞ』
都市部の巨大スクリーンに投影され、人だかりを作っていたのが野球中継だったから。
もう一回言う。
『盛り上がってんなぁ~』
『なんで!?何があったらこうなんだよ!!しかもファンの民度が地球人のネット掲示板レベルじゃねぇか!!?』
ハサミをバット代わりに、光弾をボールにして投げたり打ったり!ベースの数が増えてたり途中に色んな障害が用意されてたりと齟齬はあるけど、どう考えてもこれ地球の野球だろうが!!
さっきのジョーによる軍拡から何があったらこうなるんだよ!!
『何がって、貴方の手記ですが?』
『……』
…………。
『どういう事だ?』
『彼が記してた内容こそこの光景なんですよ。彼は地球降下の折、先遣隊として
違う。いや違わないんだけど、正確には異なる。
手記に娯楽のアレンジ案を書き込んでたのは、地球降下より前からの話だ。まだ
でもバルタンとしての見識が前提だったから、出力されたそれも
要領を得ないって言うな。例え話で簡潔に纏めてやる。
(“妄想全開の黒歴史ノートが全世界公開を経て国際法に規定された”に等しいッッッ!!!)
『バレット氏?如何しました??』
『光の国に接近して溶けた時より具合悪そうに見えるんだが』
『もぅマヂむり』
『こりゃ本当に不味いな。ちょっと休むか』
『誇るべき事だと思うんですけどねぇ。これによってバルタンは確かに豊かになったんですから』
いよいよ俺を構成する全細胞が限界を訴え、近くの休憩場所で一旦足を止めた。その時に若バルタンが持ってきた“トロピカル炭酸ジュース”も明らかに俺の手記を元ネタにした物だったからやっぱり気が遠くなったものの、何とか持ち直す事に成功する。1時間かかったが。
ええい、肚を括れ。ここから先、俺が目にするのは俺の存在で良くも悪くも歪んだ世界だ。それをちゃんと自覚して歩いて行こう。
『……釈明しておきますが、バルタンは貴方が消えた後も地球の分析を進めていました。なので早かれ遅かれ、社会がこの“感化”を迎えるのも時間の問題だったかと』
『いやそれでも程度ってものがあるだろ……』
『ま、なっちゃった物はしょうがないですので。歴史の話に戻らせて貰いまーす』
『まだあんの?』
『ここからが一番大事までありますよ』
そこで、空気が変わる。若バルタンの表情が引き締まり、ゼロもそれを察して口を閉じた。
……だろうな。俺にも察しが付く。
『総統が傷だらけで撤退した事による、打倒ウルトラ戦士の気運の減衰。そこに流入したバレット氏越しの地球娯楽により、このバルタン星人は良くも悪くも
『……良い事じゃねぇのか?』
『概ねはね。まぁその間にも、逆に娯楽全振りになって動物園にウルトラ戦士を収容しようとか宣う
『バカって……いやバカか……』
『バカですよ。尽きかけていた火種をわざわざ再燃させようなんて、ただのバカです──貴方がたが“6代目”と呼ぶ彼はその筆頭です』
6代目は、厭戦の風潮に耐えられなかった過激派だと。若バルタンはそう言い捨てた。
『彼ら一部が暴走しただけでも大問題になりました。これ以上の諍いを厭って、この新バルタン星の太陽系離脱を当時の政権が決定し、世論もそれを支持するほどに』
『そういう経緯での遊星化だったのか……』
『それでも一つ。
俺もゼロも、その言葉で思い出す人物は一人だけ。
復讐の炎を胸に抱いたまま、当時眠りに就いていた
『ジョー総統が目覚め、内紛が勃発しました』
同時に到着した。俺がこの新たな故郷へ降り立った本当の目的地へ。
それは監獄。重厚な警備下に置かれた、危険人物を封じ、生かしたままその思想を殺す棺桶。
『面会許可は取れていますよ』
『……ありがとう』
その中に座す弟は、今。