絶対UFZに入りたくないバルタンVS絶対加入させたいゼロ   作:スターク(元:はぎほぎ)

49 / 61
帰る場所

『目覚めたジョー氏は、世論が一転して穏健の道を進んでいた事に憤慨。残っていた過激派を搔き集めて政権奪還を目指し、それが叶わぬと見るやクーデターを起こしました』

 

『それに端を発する形で内紛が勃発。過激派は鎮圧され、ジョー氏も逮捕・軟禁状態に置かれています』

 

『現在ジョー氏は拘束こそされていないものの、障壁(バリア)を隔てての面会になるので貴方に何かをする事は出来ません。しかし念の為、双方の区画に護衛を付けさせていただきます』

 

『……それと。彼の姿を見て勘違いされると困るので言っておきますが、我々はジョー氏の市民権を認識・保証し、相応しい待遇を施しています。そこに侵害はありません』

 

説明を受け、歩く廊下は真白。穢れを残さぬよう徹底的清掃を施されたそこは、囚人の脱走を絶対に赦さない決意に満ちている。

その中を導かれ、入った一室。座して待つこと数分後。

 

向こう側のドアが開かれ、一人のバルタン星人が連れられてきた。

 

痩せ細った肢体に生気は感じられない。その容態で足元もおぼつかずに歩く様子は、生前の未練に取りつかれて彷徨う幽鬼にも見える。健康状態であれば常に一定の回転運動を見せる眼球も、栄養失調を示すようにその動きを止めていた。

しかしそれでも、守衛の補助を跳ね除けて自ら歩く。さしずめ自らの思想の下、ハンガーストライキを行っているといった所か。

 

本来の、健常な姿をまるで想像できない、削がれ切った姿──でもすぐに分かる。

 

『ジョー』

『誰だ?』

《面会人、まだブラインド機能を解除していません。発言はお待ちください》

 

家族だ。たった一人残った、残してしまった、最後の。

やがてバリアが変調し、向こう側の視界が開かれる。その中に俺の姿を見て、ジョーはやっとその瞳を揺らめかせてくれた。

 

『……あり得ない』

『俺も……そう思っていたよ』

 

スペシウム被曝で喉を遣られたんだろう、皴枯れた声が動揺を伝えてくる。そりゃそうだ、お前にとっては死人が喋っているようなモノなんだから。

でも現実だ。物悲しい事に、な。

 

『バルタン星人バレット、R惑星──新バルタン星に帰還した。久し振り、ジョー』

『兄さんッ!!!』

 

刹那、目の前に火花。先程までの生気の無さが嘘だったように、バリアへ体当たりしたジョーによる物だった。

即座に護衛が動き、興奮する彼を抑える。しかしバリアに弾かれた角が煙を上げるのにも構わないまま、ジョーは絶叫するかのように捲し立てた。

 

『よくぞ……よくぞ帰って来てくれた!!兄さんがいればバルタンは安泰だ、どうなったって巻き返せる!』

『……』

『俺は少しやり方を()()()()()()()()らしくてな!!今はこの体たらくだが……でも兄さんがトップに座れば丸く収まるだろう!そして、一緒に!!!』

『ウルトラマンを倒す、か?』

『殺すんだッ!!』

 

……自分は何一つ変わってはいないと、声高に。

 

『あんな天敵がのうのうと宇宙を闊歩してみろ、バルタンは碌に宇宙進出も出来やしないだろう?“害獣”は駆除が最前提……そうに決まっているッ』

『害獣、か。その獣から見れば俺達こそ“それ”に見えるかもな』

『だろうな。だが()()ある者は自己保全の為に最善を尽くす権利がある……兄さんが言った事だろう』

 

ああ、言った。ジョー、お前はそれを、そこまで理解してくれたんだな。

そうだよ。命とは、自己の為に多かれ少なかれ周囲を()()()物だから。自分たちに都合の良い様に環境を選び、環境を変えて……その領域を広げる。

 

それが行き過ぎれば()()になる……しかし、ならその境界は何処だ?

何処までが当然の権利で、何処からが悪しき侵犯だ?

それを誰が決める?誰が定め、誰が罰する?

 

ウルトラマン(正義のヒーロー)

地球人(被害者)

 

決まってる。

 

『だが、()()()()だ』

『は……?』

 

バルタンだ。

それを行った、人民(バルタン)自身が裁き、罰した。

だからお前は牢獄(そこ)にいるんだ、ジョー。

 

『もうバルタンは平穏を取り戻したんだよ。今更ウルトラマンに囚われ続けては、彼らは前に進めない。解き放ってやれ』

『何を……言ってるんだ……?』

『言ってる通りの事しか言わないさ。なぁジョー……()()()()()()バルタン全員を、解放してやるんだ』

 

かつては必要な憎悪だったんだろう。種族を纏める為に、再起へ行動を起こす為に……けれど、それが終わったならもう良いだろ。なのにずっと自分で自分を縛り付け続けるなんて、何にもならないじゃないか。

 

『終わりにしよう。もう、幸せになって良いんだよ』

 

よく頑張ったんだ。お前が導いたから、バルタンはここまで戻って来れたんだ。

その功を受け取ってくれ。拒まないでくれ。

 

……ずっと外野にいた俺が、今更そう願ったところで。

 

『────ハッ』

 

『ジョー……』

 

届きは、しない。

 

『……兄さんならそう言うって、分かってた気がするよ』

 

『ならっ』

『けど、じゃあ質問させてくれ。──1()8()()()は、何だったんだ?』

 

その数字が意味するのはただ一つ。

 

ブルーベリー号に乗っていた18億人は……ウルトラマンに殺される為に生き残ったというのか?!』

『っ.....』

『そんな訳がないだろうッ!!!』

 

あの日、宇宙の塵と消えた同胞達。

二度と幸せになる事を許されない、かつて存在した生命達。

それを弟は、置いて行けないのだ。

 

『父上は勤めに殉じた!ツヴァイもそうだ!!皆、己に出来る事を尽くし、その果てに死んでいった…それに報いなければ、彼らの嘆きはどこへ行く?!』

『目的を見失うな!!ウルトラ戦士への報復も、地球への侵略も、総ては“バルタンの復興”の為だった筈だ。違うか!?』

『その願いを踏み躙ってきたのが!ウルトラマンだろうがァッ!!!』

 

再度散った火花は、制止を振り切って繰り返されたジョーの頭突きによる物。自分の頭部が変形するのも、焼け焦げるのも厭わないとばかりに。

……届かないなら。

 

『光の国とバルタン星と地球で、密約が結ばれつつある』

『なッ……』

『俺が手引きした。今頃、各星の代表同士で細部を詰めている所だろう』

 

現実を突き付ける他、無い。

それを受け、彼の動きが止まった。目の色を、怒りから別の色へと変えた事で。

 

『......降伏した、のか?』

『.....和解だ』

『尻尾を振って、靴を舐めたのか!?』

『違う!』

『アンタともあろう者が!!ウルトラマンに!!!』

 

絶望。

失望。

困惑。

取って代わったそんな色の視線が、声音が、俺を叩く。責め、苛み、貫かんと。

 

『──なんで』

 

やがてそれも力を失い、ジョーは項垂れる。バルタンの報復路線、その道が断たれた事を完全に理解できたからだろう。

その姿に、俺が掛けられる言葉は無かった。その権利もまた。

 

『……皆、死んだんだぞ』

『…………』

『バレル、ボウサ、ベレーダ、バニシン………兄さんが教えてくれた“生命”を、皆、喪ったんだ』

『…………』

『兄さんにとってそれは……(ウルトラマン)に頭を下げられるぐらい、軽い物だったのか?』

 

……本当に、応えられない。その問いに報いる口さえ、俺は持っていなかったんだ。

やがてそれを察したように、ジョーがこちらと見る。今度は明らかに、侮蔑の意図と共に、

 

『────出て行け』

 

紡がれたのは決別の言葉。

 

『出て行け!二度と俺の、俺達の星へ戻って来るな!!!』

『………ああ。分かったよ』

 

ジョーにとって、俺はもう裏切者でしかなくて。

この星は、弟が弟なりに、バルタンの為に築いた(くに)で。

なら、裏切者はそこに居るべきじゃない。あまりにも当然の帰結だった。

 

『じゃあ……元気でな。ジョー』

『なんで…ッ、今更、どうして今になって……!!』

 

せめてもの別れの言葉さえ交わされる事は無い。俺とジョーで分かたれた道は、再び交わる事など有り得ないのだと示しているかのようで。

嗚咽を上げる家族に、何一つしてやれないまま──俺は部屋と出た。

 

それはこの新バルタン星における目的を達成したという事であり。

 

即ち、俺がこの星に留まる理由が、完全に無くなった事を意味していた。

 

 

さようなら。新たな故郷。

もう二度と見る事もあるまい。

 

 


 

 

会談は大成功に終わった。

公式でこそないものの、過去の戦闘に対する講和条約の締結。また、三星間における相互不可侵の取り決め。今後の交流を前提とした定期的な議論の為のホットライン設立…....誰の損にもならない、誰もが得と出来る、極めて理想的な終わり方が出来たと思う。

特にバルタン側が輸出に、地球側が輸入に積極的だったのが好ましい。需要と供給という繋がりは予想以上に強固となれるだろうから。

 

そうして今、私は最初に地球人達と合流した臨時拠点の星へ戻って来ていた。

この後やる事は少ない。地球の使節団と別れ、光の国へ戻り、報告と次への準備に掛かるのみ……しかし双方において疲労の色が濃かったのを鑑み、この星での一夜を、最後の懇親を兼ねて休息に充てたのだった。

そうして、会談の成功に沸くテントを尻目に、独り外で夜風に吹かれるバレット君を、とうとう私は見つけてしまう。

 

「……隣、良いかい」

『喜んで。どうぞ、初代様』

 

迎えられるまま右に立つ。腕を抜ける星空の下、幾ばくかの時を沈黙に沈めて……私はようやく口を利けた。

 

「まず....ありがとう、バレット君。君がいてくれなければ、バルタンとの和解は夢のまた夢に終わっていただろう」

『お戯れを。ダークロプス戦役での地球艦隊しかり、貴方がたの対話努力が実を結んだだけでしょう』

「そちらこそ謙遜はよしてくれ。本当に感謝しているんだ」

 

君のお陰でどれ程のトラブルを回避出来たか分からないんだ。その有能さたるや、ゼロが

惚れ込むのも当然だと今なら分かる。

 

.....分かるからこそ、解せない。

 

「君の予測通り、私の行いはバルタン側に受け入れられてしまった。正確には、それと引き換えにバルタン側の過去の過失を減免する条件とされた」

『バルタンの脛も傷だらけでしょうからね。相殺出来る要素があれば飛び付くでしょうとも』

()()()()()()()?」

『!』

 

どこまで理性的であったとしても。

それを上回る、(ウルトラマン)への恐怖。怒り。

なぜ君は、それを抱かずに居られたんだ?

 

「ゼロから全て聞いた。君の本当の出自──あの宇宙船に乗っていた事も。私の撃った侵略者(初代バルタン星人)が、君の実父だった事も含めて」

『……嘘偽りを働いた事、心よりお詫び申し上げます』

「よしてくれ。善意ゆえの行動である事は分かっている」

 

頭を下げようとしてくるのを止めながら、やはり尚のこと分からなくなってしまう。彼は被害者で、私は加害者本人なんだぞ?

 

「私は知りたいだけなんだ。君は確かに私の所為で地獄を見た…....なのにどうして、君は私を赦せた?何故君は、我々をそこまで慮れるんだ?」

 

……ハッキリ言おう。私は彼に()()()()()()()のだ。

バルタン星人ブレイド大使から聞いた、当時宇宙船の中で巻き起こった恐慌。天敵(わたし)の存在によってパニックが引き起こされていたと知った時、私の中で、私の行いは“過ち”だったと完全に定義されたのだ。

 

私は……正義など、名乗るに値しないのだと。

 

にも関らず、今回の会談で、私の身勝手な謝罪が差し挟まれる余地など無く。そんな事はもう()()()()()()のだと、バルタン星人にも地球人にもスルーされて。

宙ぶらりとなったこの後ろめたさが、私の中でだけ粘つき続けて──こうして、当時の被害者に一方的にぶつける始末。何と情けない光景だろうか?

だが、懺悔せずにはいられなかった。これが私の限界。

 

『……貴方様と、似た質問をしてきた女性がいましてね』

 

それを受け止めてくれた上で、バレット君は思い出すように嘴を鳴らした。

 

『その時は“俺達(バルタン)が誤っていたから”・“貴方(ウルトラマン)が正義だったから”・“だから納得した”、と答えました。でも、今はちょっと違う答えになりそうです』

「私に過失を見出したのか」

『違いますよ。きっと、俺は────』

 

一度言葉を切り、深呼吸。自分の内に秘める感情を掘り起こすその所作を経て、彼は此方へ向き直った。

その表情は、果たして。

 

『納得()()んじゃない。納得()()()()()んです』

 

微笑み。

その裏に秘めた、喪失への悲哀。

 

『父さんが、仲間が、同胞達が……死んだ理由は、真っ当な物であると信じたかった。その為に貴方がたを絶対視した』

「……」

『それが間違っていたとは今も思ってません。実際に父さんは選択を間違え、船員は貴方に引き金を引き、ジョーは逆恨みに執り憑かれた。その魔の手から地球を守った正義こそ、貴方達ですから』

 

言いながら(ゆび)指すテント。その幕に映る、談笑に耽る地球人とM78星雲人の影絵。この光景を守ったのだと、彼は言ってくれる……けれど。

 

『でも弟と話して。遅まきながら自覚出来てしまったんですよ──

 

──俺。思ったより“悲しかった”んだ、って』

 

その言葉に、拳に力が入ったのは完全な無意識だった。

目の前の青年が心の中でだけ流す涙。それこそが私が永久に背負うべき罪なのだと、自分本位な贖罪意識を差し置いて芯から理解したからだ。

 

地球を守った事に後悔などある筈が無い。だからと言って、このまま謗りも償いも無いまま生きて良い筈も無い。

私が齎したこの悲しみを、贖う術は本当に無いのか?

 

 

「……君は何を望む」

 

絞り出したその一言は、そんな思いを込めた物。バレット君はゆっくりと頷き、こう言った。

 

(ヒーロー)で在り続けて下さい。あの日、地球人にとっての貴方がそうだったように』

 

“あの日に滅んだ全てのバルタンを、過ちに殺された惨めさへ沈ませるな”。

“その死の正当性を、永劫に渡って示し続けろ”。

 

言外に示された二つの意味。それを(しか)と胸に受け取り、私は最低出力でベータカプセルを点火した。

ハヤタの見目を借りた仮初の姿ではない。一人のM78星雲人──侵略者(あの日のバルタン)を撃ったウルトラ兄弟No.2として。

 

『誓おう、バレット。私はいつまでも()()()()()()であると』

 

約束を確かな物とする為に。

それにバレットは、力強く頷く事で応えてくれたのだった。

 

 


 

 

『ホント便利だよな~、ウルティメイトブレスレット』

『……そうだな』

『次元移動もできる上に、これを付けてる限り活動制限無しだぜ。お前がマンを敬うみたいに俺もノアを崇拝しちまいそうだ』

『……そうだな』

『ただ、やっぱファイナルウルティメイトゼロの威力がかなり低まってるのが引っかかるよな。なんでだろ』

『……さぁな。仮説なら無い事も無いがな』

 

『……』

『……』

 

きっ……気不味い!!

M78スペースでの仕事を終えての帰路だけど、バレットがあんま喋ってくれねぇ!やっぱマンに色々話しちまったの根に持ってんのかな!?

 

『わ……悪かったよ。今度の任務からはちゃんと大人しくすっからさ。出来る限り。善処して。多分。きっと』

『……ああ。そんな怒ってないから安心してくれ』

『その声色で言われても!?!!』

 

……それか、やっぱ(ジョー)との一件か。

 

でもダメだぁ、これ以上は俺が耐えられねぇ!いつもはワープ事故を避ける為に手頃な真空空間に時空間ゲートを開くが、今回ばかりはUFZ暫定本部へ直に転移だ!

だって到着までこの地獄の空気を味わってられねぇもん。俺だけじゃロクなアドバイスだって言ってやれねぇし、助けてくれ皆ァ!!

 

『よーし出るぞ、掴まれっ』

『ッ……』

 

螺旋状に虚空をこじ開ける穴。そこへ飛び込む巨影2人。

そうして、事故無く無事に帰って来れたと思った。

 

 

……んだ、が。

 

 

『『は??』』

 

帰れたのは間違い無ぇ。そこに憂う要素は皆無だと約束できる、うん。

ただそこで見えた景色が、俺とバレットが呆けちまうぐらい“変”だっただけだ。

 

「ジャンボット。貴方は一個の生命としてUSAから人権を認められていますが、“ジャンバード”としてはエスメラルダ名義で宇宙船登録されている身なのです。軽はずみな行動をされては、我が(くに)の面子に関わるのだと肝に銘じて下さい」

『申し訳の……しようさえ……ありません……』

 

ジャンボットが正座していた。

真ん前に設置された高台、そこに登ったエメラナのマジトーンの説教を喰らって項垂れていた。

 

「次にグレンファイヤー。現役の宇宙海賊である貴方は、実はバレットと同レベルかそれ以上に法的にデリケートな存在なのです。その事を踏まえて行動していただかないと、USAとしては貴方をUFZから除籍しなければいけなくなりますよッ」

『ハイ……サーセン……』

 

グレンファイヤーが土下座していた。

同じくエメラルダの真ん前で、その説法を受けて額を床に付けていた。

 

「そしてミラーナイト!……は、今回の件については特に問題ありませんでしたので置いておいて」

『許されました!』

「最後に貴女です、ナナさん。聞いていますか?」

《……むぅ》

 

ミラーナイトだけは見逃されてやや喜び、しかし矛先はさらにその隣へ。

ナナの入ったカプセルが、大人しく浮かんで叱られていた。

 

あのナナが、大人しく。

 

「貴女が捕虜に対して行った処置は、USA刑法第三項に抵触しかねない物です。今回は他の仲間が止めてくださったので大事には至りませんでしたが、貴女が罪を犯せば苦しむのは誰ですか?」

《ぐぐぐ……》

「答えて下さい。だ・れ・で・す・か?」

《……お父様、で、すっ……!》

 

すげ。あのナナを叱ってやがる。母親かな?*1

って、見てる場合じゃねぇ。何があってこんな異常な光景を披露してるのか聞かねぇと!

 

『オーイ!帰ったz

『ゼロぉ?!』

『バレットもいる!』

『よく帰ってきてくれましたねッ!!』

「ゼロっ、バレット、お待ちしてました!」

《お父様ぁ!!!》

ぉわーっ、何だァ!??』

『……どういう事だ』

 

と思って声を掛けた刹那、全員がこっちに振り向いて飛び掛かってきやがった!よもや叛逆かこの野郎、とバレット諸共潰されながら身構えていると、次に聞こえてきたのは……啜り泣き?

 

『ゼロちゃん助けてくれ〜!!!』

『もうダメですバレット!貴方もいないのでは立ち行きませんっ、皆もれなく暴走します!』

『許してくれ……お前達が去っただけでここまでやらかすとは思ってなかったのだ……!』

《グレンファイヤーは直情蛮族!ジャンボットは極端思考!!ミラーナイトは優柔不断!!!お父様()以外誰も頼りにならないんですッ》

『ゆっ優柔不断……』

『いや一番やらかしてたのお前だろ!?』

『私が極端思考ならばお前は妄執信者だっだろうが!!』

《ほざいて下さいよ大爆発未遂事故の主因共ーッ!!!》

『うるせーっ!?!』

 

いや啜ってねぇ!大絶叫の大合唱だ!!

オイ何があったんだよエメラナ、コイツらからの異口異音じゃ要領得ねぇんだ説明してくれっ!

 

「詳細は省きますが、USAから指導が入るレベルで皆さん爆走されまして。その指導役として私が来ました」

『ウッソだろオイ』

『……あーあー』

 

バレットさえ呆れ声出すって相当だぞ、という念を込めてジト目で一瞥。お前ら目ェ逸らすなオイ。

しっかしどーすっかな、リーダーとして責任は取らなきゃ。でも困った事に、俺も暴走派閥としてそれなりの自覚があるのが……けど締め付け役を担ってくれたバレットはどうにも不調だし……

 

『…………くくっ』

『バレット?』

 

なんて思考を巡らせてた折、らしくもない含み笑い。それを奏でた相棒の嘴に思わず目を遣る。

バレットが、笑った。

 

『全く──本当にしょうがない奴らだ、お前達は』

《……私の不徳の致すところです。なんなりと罰を》

『いや今回ばかりはホントすみません』

『流石にぐうの音も出ない』

『優柔不断……優柔不断……』

 

俯く一同を順々に見回し、再度嘆息。けれどそれは、決して失望の意味を持ってなくて。

瞑目と沈黙を経て、バレットは……一転して晴れやかに言い放つ。

 

『嗚呼しょうがない……俺がいない事には、本当にな』

『『『『《えっ》』』』』

『ホラ動いた動いた。どうせ事後処理も終わってないんだろう、一人ひとり手伝ってやるから取り掛かれ。エメラナ、良いな?』

「あ、はい」

『……で。何ボーっとしてるんだお前は』

 

一頻り指示を終えてから、視線を向けられたのは俺。

 

『チームの再始動だぞ。リーダーの号令が無いと始まらんだろ』

『……なるほど?』

 

そりゃそうだ。納得と共に咳払いしてから、この拠点に響かせるように……っ。

 

『行くぜお前ら!UFZ、リスタートだッ!!』

『『『《お、おーっ!!!!》』』』

『……よーし、仕事だ!』

 

そうして動き出すヒーロー達。その輪の中に自然に入っていくバレットの姿に、俺は内心で安堵を抱く。

なんだか……やっとアイツが、このチームを“居場所”としてくれた気がしたから。

 

「バレットさん、何か変わられましたか?」

『ああ。心当たりもある……良い事だけとは言えねぇけど』

「そう……ですか」

 

エメラナは気付いたようで、でも言及はしないでくれた。バレットが故郷で遭った目に、家族からの拒絶を知らないままでいてくれた。

そこから何を思って、バレットがここ(UFZ)にいる意義を見出してくれたのかは分からない。けれど一つ確かなのは──俺達は、アイツの存在を欲してるっつー事。

 

『オイ!なにリーダー差し置いてワチャワチャしてんだ、俺も混ぜやがれっての!』

《は?リーダーはお父様ですが??まぁ副リーダーの地位なら許してあげても良いですけど??》

『……もしかして今、絶妙にゼロにデレた?』

『確かに。ちょっと当たりが柔らかくなったように思えますね』

《は?ハ??ハぁ???》

『急に怒るな。図星に見えるぞ』

『待てゼロ、ナナを誑かすのは流石に話が違う!UFZ抜けるぞ?!』

『お前も急にキレんな!親子か!!親子だったわ!!!』

《お待ちくださいお父様ッ、私は永遠に貴方一筋です!》

「あ~もう無茶苦茶ですよ」

 

アイツが此処にいてくれるんなら。俺達は、それを受け入れるまでだ。

それがきっと、“仲間”って事だから。

*1
すっとぼけ




里帰り編、完です。ご静読ありがとうございました

次回は閑話の予定
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。