絶対UFZに入りたくないバルタンVS絶対加入させたいゼロ 作:スターク(元:はぎほぎ)
エメリグによって「USAの水準に匹敵する」と評されたストラド軍。しかし水準は水準、その域を越える事は無い。
USA内でも大国としての規模と格を誇るブラキオンの軍にはどれだけ楽観的に見ても劣る。そこに他の加盟国からの支援も加わるとなれば、差は広がるばかりだ。
勝ち目など、どこにも。
「エメリグ王は今も滞在を?」
「先々代王、な」
それでも彼らは軍靴を鳴らす。昨日の事のように思い出せる種族単位での凌辱、それを雪がない事にはスタートラインにすら立てないからだ。
基地内を歩く2人の軍人もまたそうだった。
「困りましたね。彼を国内に留めたまま戦端を開けば、“エスメラルダの王族を人質に取っている”と看做され、中立国家も敵に回りかねません」
「それが狙いなんだろうな。ステラル王も甘い、だから来訪には反対だったんだ」
「でも、我々には
そう言って部下が立ち止まったのは、厳重に閉ざされた区画の扉。それを指差し、興奮しながら彼は宣う。
「この新兵器さえあれば、数の差も兵器の質の差も関係ありません。ブラキオンの母星なんか、他の国が遺憾の意を表明する前に
「そうだな。楽しみだ」
「例えそれに後から文句を言われたって関係ありません。邪魔する奴らも新兵器で」
「少尉!」
しかし怒号。叱責の色濃いそれは、生きすぎた排他思想を強く戒める意味合いを持っていた。
「我々が憎むはブラキオンのみだ。矛先を関係ない他者へ向けるなど……次に口にすれば、冗談でも貴官を処断するぞ!!」
「も、申し訳ありません中将殿!」
「全く……全てはブラキオン人にのみ向けろ。いくら新兵器があるといえど相手の規模は我らの数倍、ならば士気さえも集中せねば相手にもなれんのだから」
一聞すれば、人道に配慮しているように思える発言。実際その側面は強いがしかし、それでもこの中将ですらブラキオンに対してだけはそれから外れる事を辞してはいない。
「ブラキオンのみを殺し尽くすぞ。先祖代々の願いを、星の祈りを我々が果たすのだ」
ストラドは止ま“れ”ないのではなく。
止ま“ら”ないのだ。
「ここの区域だ」
「そうか」
カマルと名乗った青年を連れてやってきた鉱山は、至っていつも通りに砂塵を散らしていた。特に変わった様子は見られない。
けど確かに、ここのカメラに変なモンが映ってたんだよなぁ。
「と思ってる間に、早速発見したぜ。“いつも通りじゃない所”を」
「おわぁ、クレーターだぁ」
ついでにノコノコ付いてきた
ただ地盤が緩いのか、中央は流砂と化してて何も無い。探し物はその奥底に沈んじまってるようだった。
「ありがとう、ラン。後は……」
「いやいやいや、ここまで来たら掘り出すまでやらせてくれ。洗堀機を呼んだからそれで」
「……すまないな。何から何まで」
「まぁ貸しっつー事で。返礼には期待させてもらうぜ」
「じゃあさ、じゃあさ!アンタがどこから来たかとか、その機械がなんなのかとか、色々教えてくれよ!!」
ここで時間が出来たので、三人で一先ず休憩を取る事にした。
洗堀機が来るまで1時間、早めの昼飯。その中でカマルがナオの問いに答えてくれる。
「地球……という星が俺の故郷なんだ。知っているだろうか」
「ちきゅう?チキューの事?」
「いや、どうやらその星の事ではない。青い海に満ちた丸い星だ」
「水が豊富なんだな。羨ましい限りだぜ」
「もっと言えば、その殆どが塩水と言って良い。かなり恵まれた星だったと、今になって思える」
「塩!?すっごい量じゃん、それだけで天下狙えるよ!」
その話は中々に興味深いもんで、聞いてた俺も気付けば身を乗り出してたほどだ。特に面白れぇのは、衛星軌道上に太陽光で発電するシステムを作って、地上に送ってたっつー話。確かに恒星の光は半永久的、それを安定供給できるってんならやらない手は無いだろう。このアヌーでも使えるんじゃねぇだろうか?
しっかし、アレだな。
太陽の光をエネルギーに変えるって、まるで。
「ウルトラマンみてぇなシステムだ」
「ウルトラマン……?」
……知らないのか?
「いや、行き交う人々からその名を湛える声は度々聴いている……だが詳細は知らない」
「じゃあ教えてやるよ。ウルトラマンは、ゼロは、“ヒーロー”なんだ!!」
「……ヒーロー?」
「もしかして、バレットとかも知らない感じだったりするか?」
応答はまさかの首肯。おいおい、っつー事はヤプール戦役もベリアル戦争も知らねぇって事かよ!?地球ってのはどんだけ辺境なんだ!
「凄いんだぜウルトラマンゼロは!ゼロアイを輝かせて登場すれば、マッハ7の速度を利かせて大地を蹴って空を飛ぶ!その力で、宇宙を我が物にしようとしてたベリアルをぶっ飛ばしたもん!」
「……本当か?」
「マジの話だな。アイツは俺達の世界を闇から救ってくれた」
……俺だけは実際に見れてないけど。それでも感謝の気持には変わりない。
あの
「希望の光、ってヤツだよ」
「それにバレットが、ジャンボットが、グレンにミラーナイトまで味方になってる!彼らがいるから、僕らは希望を胸に生きていけるんだっ」
「……そうか」
「というか今気付いたよ。アンタの声、やっぱ
「そうなのか?俺、地味に知らねぇんだよ何も」
「あー……兄貴は寝てたもんな」
「つまり、だ」
俺達が彼らに抱く想いの全てを伝えれば、カマルはほんの少しの間だけ沈黙。少し経って、彼なりに俺達の関係を解釈してくれたようで。
それを言葉にして、伝えようとしてくれた。
『見つけたぞ、ガンダムマイスター!!』
「お前達にとって、この世界にとって。彼こそがガンd───ッ」
「ガン……なに?」
「伏せろ!!!」
その刹那。
俺もナオも、急遽言葉を切ったカマルの小脇に抱え込まれ、飛び退かされて。
一瞬後、俺達の座っていた岩場が爆砕される。
「な、えっ何?!」
「兄ちゃん、上だ!」
『バラバラとなった“ダブルオークアンタ”、その飛散位置に陣取っていれば必ず現れると思っていたッ』
見上げれば、空の彼方から飛来する……なんだアレ、
そもそもアヌー宙域に怪獣接近警報なんて出てなかった筈だ、どっから現れた?!
「こっちだ!!」
「「ほげぇ!?」」
『隠れるか。だがそれも長くは続かんぞ!』
またもカマルに引っ張られて物陰へ。直後に怪獣が着地し、周辺を暴風に乗った砂塵が襲う。
オイオイどうしろってんだ、アヌー警備隊出動しろってか!けど今は
「いや、兄貴!洗堀機がオート運転で来るんでしょ、それなら!」
「そうか、アレがあった!!」
『何だこのガラクタ!?どこから現れたッ』
\ドカーン/
「「洗堀機~~!!」」
「静かに!……気持ちを鎮めろ。奴は俺達の脳量子波を探知してくるぞ」
敢え無くペチャンコにされた愛機の一つを悼む間も無く、言われるままに無理やり深呼吸。“のうりょうしは”ってのは知らないが、恐らくバレットや
その甲斐あってか、怪獣は砂塵の中の俺達を見失ってくれたらしい。怪獣が50m級の巨躯を持て余し始める。
『ええい間怠っこしい!こうなれば、このベムスターの吸引力でこの地丸ごとッ』
「よーし良いぞ、このまま軍が来るまで持ちこたえれれば、」
「いや……それではダメだ」
それを見た俺の楽観を否定し、カマルは立ち上がる。その瞳に帯びた覚悟の光に、俺は思わず引き留めた。
「まさか……囮になる気か!?」
「奴の狙いは俺だ。囮も何も、俺が来なければお前達を巻き込む事は無かったんだ……許せ」
「許すかよ!!謝るぐらいなら協力してこの場を切り抜けるんだ!」
「同感だよ、諦めるなんて一番ダメだ!ノアの神だってそう言い残してるし!!」
「そういう事ではっ……」
『見つけたぞ』
でも、その為に心を荒げたのがきっといけなかったんだろうな。
その声は確かに、心から総身を震わすように伝わって来たから。
見上げる。目が合う。
詰んだ。そう思った。
「こっちだ、来い!!」
そうならなかったのは、俺達が助かったのは、カマルが走り出したから。その瞳を
囮を……させちまった!
「待っ、カマル──!!」
『逃がすものかァ!!』
「兄貴危ないッ!」
叫びは足音に掻き消され、伸ばした手は尚に引き留められた事で飛んできた瓦礫に潰される未来を免れた。その先の視界の中で、カマルが駆けていく。
人間離れした脚力で悪路を跳び越え、怪獣の追撃を躱し、窮地を何度も幾度も凌いで……でも限界だ。
『ここまでだイノベイター!!!』
「くっ……!」
崖際に追い込まれてしまえば、幾ら彼でもどうにもならない。後からのろのろ追いかけてきた俺達の手は、どんだけ伸ばしたって届かない。
やがて、ほくそ笑む怪獣が、その爪を彼に差し向けた。
間に合わない。
誰か。
『ギャアッ!?!』
思わず掲げたその願いを、空に流れた流星が拾い上げた。
それはナオにとっては“再会”。
俺にとっては半ば“初めまして”。
そしてカマルにとっては──“邂逅”となる、そんな出会いだった。
終わりを覚悟した。
覚悟した上で、抗い続けると決めた。最後まで存在し続ける、と。
(そこまでだッ、ベムスター!)
その瞬間だった。強い脳量子波の到来が、全神経を畝らせたのは。
大気圏外から飛来した発信源が、焔の蹴りで巨獣を穿つ。頭部を歪ませ、ゴムまりのように弾き飛ばす。
振り抜いた足をそのまま地面につけて消火。立ち上がったその巨人は、見上げる俺へと一瞥を寄越してきた。
(……何だ?)
この感覚の正体は何だ。
この巨獣を裏から手繰る“悪意”に匹敵する大きさ。だが……その性質はまるで逆。
未だ遠く離れているのに、熱い程に暖かく。
ELSが叫んでいた悲鳴より芯の通った、自身が強者である事を自覚している心の声音。
優しさと激しさを併せ持った、迸る光の意志。
そしてそれ以上に……何と呼べばいいのか。
目が合ったその瞬間、直感があったんだ。
彼とは、
『「お前は……?」』
向こうも同じ感覚を抱いたのだろうか。奇遇にも同じタイミングで、同じ事を俺達は呟き合う。
この共感は何だ。湧き上がるシンパシーは何だ。
俺にとってのお前は、お前にとっての俺とは、何なんだ?
『ゼロォォォォ!!!』
『「!!」』
その疑問から解き放たれたのも同時だった。地平線の彼方で巨獣が立ち上がる。巨人は俺を庇い、毅然と構えを取った。
『行け!!』
「ああ、頼む!」
気付けば、まだロクに対話もしていないにもかかわらず、彼を信じてこの場を託していた。彼もまたそうだったのだろう、指差す先には駆け付けてくるラン達の姿。俺もまた、彼らを託されたんだ。
「カマル、無事だったか!」
「ああ……ラン、ナオ。あの巨人が」
「そうだよ、ウルトラマンゼロさっ!!」
言われ、再び見上げたその背中は今、突進してきた巨獣を受け止め咆哮を上げている。
ここから一歩も通さない。そんな守護の意思を発露させて。
……理解した。納得した。
命がたやすく消える災厄の中で、悪意渦巻く中で、天より舞い降りる光の化身。弱者が生きる
やはり、彼こそが。
「お前がこの宇宙の、
それなのだと確信できた。
俺がかつて見上げた景色と、彼の勇姿が、完全に重なっていた。
「立ち話してる場合じゃねぇ、取り敢えずこの場から離れるぞ!」
「けど兄貴、探し物はどうするの?せっかく怪獣が暴れた余波でそれっぽい物が露出してたのに、このままじゃ踏み潰されちゃうっ」
「っ……!!」
その時、ラン達の会話と想起した物が、俺の意識を現実へと引き戻す。落下したのはこの部位だったか!
「案内してくれ。
「……アレ、生きてんの?」
「ああ。それに……上手くやれば、ウルトラマンと、他の仲間を助けられるかもしれない」
戦いは優勢に進んでいる。ウルトラマンゼロの格闘能力は凄まじく、見る見る内に巨獣の身体を砕き、削り、薙ぎ倒す……だがその度に、
だが俺にはその正体が分かる。対処法も……それに。
「俺も戦う……戦える!」
巨人の一気呵成さに呼応するように、湧き上がる一つの意思があったから。
戦い、守り、救う。未来へと繋ぐ。
彼がこの世界の、そんなガンダムであるなら──俺もまた、ガンダムだ!
共感・共振・共鳴。
儚い命を守る為、無為な争いを終わらせる為、二つの光が命の輝きを同じくする。それが焦がす望みの、向かう先は如何に。
次回。【惹き合う魂】。
空の彼方に問うは希望。