絶対UFZに入りたくないバルタンVS絶対加入させたいゼロ   作:スターク(元:はぎほぎ)

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ファースト - 後編 -

《鶴翼の陣を展開。各艦、護衛機を発艦せよ》

「相手はどう来るでしょうか」

「新兵器とやらの有無、有ったとしてその効果によるな。今考えても仕方の無い事だ」

「リオス、ベルゼブ!出ますっ!!」

 

環境から見える流星達は、皆全て友軍の物。戦力比にて5対1、数だけ見れば我がブラキオン軍の圧倒的有利と言えるだろう。

だからこそ解せない。そんな相手に正面突破で挑むというのか、ストラド軍は?

 

「敵陣、変容!魚鱗の陣形をとった模様です」

「そう来るだろうと思っていた。先行部隊、散開して敵の裏を取れ」

《リバイアサン部隊、敵中央から8時の位置に着きましたッ》

《マモン部隊、5時地点に現着。これより圧をかけるべく接近する》

 

強行突破の様相を見せてくる相手方に、此方は定石通りの包囲で対抗。敢えて6時の方角、退路を残す事で撤退を促しつつ後方より相手を攻める。

 

この先に予想される、ストラドの先鋒と我が軍の中央の激突。前者が突破に少しでも手間取れば、後続班による挟撃が成立し趨勢が決することになるが……果たして。

 

「退いてくれ……」

 

誰かがそう嘆いた瞬間、砲が火を咲かせた。ここに安穏の道は砕け散った。

 

《ストラド艦隊による砲撃!旗艦バルバトスへ集中攻撃です!》

「状況は!?」

《電磁バリアに全て防御!被害軽微、全艦に反撃命令!!》

「面舵いっぱーい!主砲撃ち方始め──!!!」

「包囲部隊、進行開始!」

 

もう後には戻れない。我々が生き残るには、ストラド艦隊を全て沈める他無い。

例えそれが歴史的に見てどれほど義の無い事であろうと……ストラドが永遠の被害者であろうと、我々は加害者のままではいられないのだから。

 

「包囲完成!後続、敵陣形の最後方と接触しますっ」

《アスモデウス、攻撃を開始する!!》

《バルバトス、凌ぎ切りました!作戦成功です!!!》

 

幸いにも勝利の女神はこちらへ傾く。もうストラド艦隊に逃げ場は無く、総勢における8割を構成する彼らが潰えればストラド側に戦争を継続する力は残されない。

 

勝ちだ。戦いは終わりだ。

そして憎悪の歴史は継続だ。ストラドはより我らを憎み続ける。

……どうしろと。

 

「……勘弁してくれ」

 

またも誰かが呟いた。これ以上はやめてくれ、と。

 

──それが皮切りだったのかも知れない。

 

 


 

 

「逃げろ!!」

 

隣で刹那が叫ぶ。その反応で確信を深め、俺はこれから起きる惨劇を完全に予知した。

予想は出来ていた。この状況で動き始めたヤプール、急に調子に乗り始めたストラド、そして今回アヌーで発見された刹那の“仲間”。

その金属結晶体は、簡易的に検査しただけでも凄まじい代物だと分かる物体だった。

 

「撤退してくれ!()()に準備無く触れては……」

「無駄だ。声は届かんし、届いたとしても間に合わん」

 

それこそ、ヤプールが動き始める理由として充分な程に。

 

ストラドが調子に乗るのも分かる程に。

 

……ブラキオン艦隊が、その包囲を最小範囲まで狭めたその瞬間。

ストラド輸送艦(パンドラの箱)が、開かれた。

 

 


 

 

銀。

銀。

銀銀銀銀銀銀銀銀銀銀銀銀銀銀銀銀銀銀銀銀銀銀銀銀銀。

 

《うわぁぁぁっ!!?》

《離れろッ、この、ギャ》

《アスタロト、航行不能!脱出困難──!!》

 

何だこれは。

死か。

 

「全砲門展開!全て撃ち落とせ!!!」

「間に合いません!!主砲に取り憑かれました?!」

「ふざけるなッ、ここが突破されればどうなると!!」

 

こんなものが……!

 

「敵輸送艦より発進した金属結晶群、なおも反応増大!!3万を超えました!」

「主砲パージ!電磁バリアは全出力を回し、接触を回避sあがっ!何だ!?」

「アスタロト、アスモデウスです!結晶体に8割以上侵食された二隻が体当たりを!!」

「航行能力を奪われたのか……ッ」

《こちらソネイロン!艦橋をやられた、助──》

 

ストラドの輸送艦から繰り出された金属結晶の群れ。それは()()()()()()()()で、こちらの艦・兵器を追尾し、その数で飲み込んだ。敵陣営を追い込んでいた筈の我々に回避時間は無く。

囲んでいた筈が囲まれ。

啄むように喰まれ。

蝕まれ。

 

「アスタロトからの侵食、環境に及びます!入ってきましたぁ!!」

「アスモデウスの侵食で脱出機構が全滅?!」

「早過ぎる……!!!」

 

認めない。

 

「逃げろ、これはダメだ!!」

「どこにだよ。もう俺達は……」

 

認めるものか。

 

「床が!ドアが!!」

「エレベーターが開い、なぁっ!?」

「やだァ、パパ、ママぁッ!! 」

「ガラク……俺はッ」

「チクショウ、腕が!!!」

「離れてくれよぉぉぉ!!」

 

こんな物が。

現実、だと?

 

「ミツネ、ゴクr──────」

 

 


 

 

────ELS。

 

正式名称、Extraterrestrial Livingmetal Shapeshifter。地球外変異性金属体。尤もこれは地球人が一方的に名付けた物に過ぎない……が、それでも一つだけ言える事がある。

 

彼らは……兵器などでは、ない!

 

(尊重されるべき生命、俺達の仲間だ!!)

 

我慢ならなかったんだ。人類を凌ぐ知性を誇る彼らが、ヤプールに捕まったばかりに……俺が守り切ってやれなかったばかりに、その思考を剥奪され、他者を害する道具として利用された。結果、多くの人々がまたその犠牲とされた。そんな現実に対する怒りが、拳となって壁を叩く。

 

……そうした所で、何にもならないのに。

 

「──さて。ストラドが劇的な初撃(ファーストインパクト)を終えた所で」

 

そんな俺を置き去りにするかのように、バレットが口を開く。

 

「質問を再開するぞ、刹那」

「……何を」

「再開すると言った。お前はこれまでに何人を殺めた?」

 

有無を言わさない口調で問われる。そんな事を聞いている場合ではないとか、そんな反論を許さないように。嘘偽りも誤魔化しも見通すように。

しかし、その裏に紛れた()()に、にも関わらず秘めた誠実さに、俺もまた抗う気など起こさず……答えていた。

 

「覚えていない」

 

……数え切れない。

俺が犯した罪は、俺だけで抱え切れるほど軽くはない事を。

 

「最初に殺した人は覚えている。両親だった。信心を捨てた者から神の地を取り戻す、その聖戦に参加する資格を得る為に……そう教えられ、信じて、“ソラン”と俺を呼び止める父と母を撃った」

「……次は」

「その次から、もう覚えられない。戦場を駆けずり回り、ひたすらに引き金を引いた。誰を何人仕留めたかなど忘れてのたうち回った……次第に、神はいないと気付いた」

「何故?」

「死ぬからだ。死ぬと気付いたからだ。俺も、同じ教えを受け同じ飯を食べた友も。死ねば何も残らないというのに、死に邁進する事へ矛盾を感じた。それでも立ち止まれなかった」

 

そんな時だった。ガンダムを見たのは。

 

美しかった。光の粒子を纏って、俺を狙っていたMSを全て撃ち抜き、天から見下ろす姿。神が死んだ俺の心に、代わりにその姿が焼き付いた。

戦いを終わらせる存在。戦いに苦しむ命を救う者。ガンダム。

あの光のようで在りたいと、強く願ってしまった。

 

そうだ、バレット。

 

俺はその出会いを経てなお、経たからこそ、“力”に囚われてしまったんだ。

 

「ソレスタルビーイング。紛争、戦争、戦いを引き起こすその原因を作るモノ。それへと武力介入し、争いを根絶する組織。ガンダムを擁するそれに、俺は入った。そして戦い、また命を奪った」

「いっそ見上げるレベルの矛盾塊だな」

「そうかも知れない。だがそれを看過するほどに、俺はガンダムに乗りたかったんだ」

 

なりたかった。あの日、俺を救った存在に。

そうして、あの日の俺と同じ境遇にある者達を救いたかった。

あの日の俺を、救いたかったんだ。

 

「だが、矛盾を抱えたままの存在を世界は許容しない。武力介入を行った俺達は世界から恨まれ、狙われ、壊滅した。大切な仲間の命も失われた──その過程で、各勢力を団結させるという形で、世界を破壊して」

「……なるほど。世界の敵となり、自らを最後の戦争開始者として断罪される事で紛争根絶を為したのか」

「ああ。ガンダムとソレスタルビーイングを創った男の意図は正しくそれだ。俺たちはその運命にも抗い続けたが」

 

そうして、破壊された世界は再生を経る。新たなる秩序の下、紛争の無い世界へと。

……だが。その再生は歪んでいた。

弾圧を前提とした平定。虐殺を肯定する秩序。人々の命を奪うテロが“独立治安維持組織アロウズによる鎮圧”に名を変えただけで、それは破壊される前よりも世界を悪化させていたんだ。

 

仲間の命を以て為された再生が、そんな物であって良い筈が無い。

だから俺達は、ソレスタルビーイングは再結成を果たした。行われてしまった再生を、また破壊する為に。

 

「つまり……それからの自分の行いは、正義であったと自信を持って言えるのか」

「違う。()()だ」

「!」

 

家族を失ったルイス・ハレヴィ。

姉を殺された沙慈・クロスロード。

国を奪われたマリナ・イスマイール。

 

彼らの苦しみは、俺達が起こした行動から始まった。その歪みは、俺達の破壊が無ければ生み出されない物だった。

彼らだけではない。俺達の所為で人生を捻じ曲げられた者達が世界中にいる。

自ら起こしたその歪みを、後になって正すだけの手遅れの行い。そんな物を、胸を張って正義などと言えるものか。

 

「そしてその為にもまた相手を殺した。MSに乗った相手をこの手で。平和の為に戦う矛盾を、分かっていて行使し続けた」

「……」

「お前の思う通りなんだろう。散々未来を奪ってきた俺に、俺の掲げた理想(ガンダム)を体現する権利は無いのかも知れない」

 

『じゃあ、やめるか?』

 

「いいや」

 

だが。

それでも。

だとしても。

 

「俺がこの理想を抱けたのは、この過去を経てきたからこそだ。それを否定する事など出来はしない」

「なるほど。過去は過去と肯定するのか」

「そうじゃない。矛盾は矛盾だ、だが矛盾(それ)()()()()()()()()()()と決めたんだ」

 

死にたくないから他者を傷つけてしまった。

数え切れない死を見、殺しを行ってきたからこそ、それを止める存在を目指せた。

争いを止めようとして争いを起こし、更に多くを傷つけてしまった。

それによって仲間を死なせた。

友を失った。

歪みを生み出した。

それでも……その歪みと対峙し続けた。

 

「全て俺なんだ。変わろうとした俺も、変えたい所を変えられなかった俺も、それでも少しずつ変わっていった俺も。過去の自分から矛盾を繰り返して、変わってきた俺なんだ」

「そうか。それがお前か」

「ああ、俺は変わる。存在し続け、変わらなければならない」

 

殺した過去から、殺さずに済む未来へ。

ロックオン(ニール・ディランディ)が変えたかった世界へ。

沙慈達が暮らしていた、平和な光景が広がった地球へ。

マリナが掲げた、対話による相互理解が為された宇宙へ。

 

戦いを必要としない世界の為に、俺は戦い続ける。

変われなかった者達の為に、変わりたくても変われずもがき苦しむ者達の為に。

 

「それが俺の、革新者(イノベイター)として覚醒した意義だ!」

 

それがソレスタルビーイング。ガンダムマイスターであった俺は、今も彼らで在り続ける。

それがガンダム。それになった俺は、命を救う希望(ガンダム)を目指し続ける。

 

それが俺だと。この口で、伝え終えた。

 

「……()()()()とは、そういう存在か」

 

果たしてどこまで理解してくれたのか。バレットは逡巡を経て呟く。

たとえ納得してくれなくとも良い。矛盾をせずに済むのならそれが一番良い……だが、未来を目指して過去から反していく事は、それ自体は間違いではない筈だから。

バレット。お前はそれを、どう思う?

 

 

《お父様!ゼロが!!》

「!」

「動いたな」

 

答えを聞く事は叶わなかった。再度映し出されたスクリーンに、逃げ果せるブラキオン艦を庇う銀色の巨人の姿が映る。

ゼロ……!

 

《どうして!?介入しないと決めたのは貴方でしょう、ゼロ!!》

『あの金属異性体の威力は人間(ヒューマノイド)の範疇を大いに逸脱していた。俺はゼロの判断を支持するよ……アイツ本人としては苦渋だったろうが』

「バレット、彼は……」

「……お前に言わせれば、()()()()んだろう。少なくともアイツの中ではな」

 

そう言いながら外套を纏ったバレットが右手の鋏を開いた瞬間、浮遊感。俺達の足下の床が消えて底の見えない奈落へと落とされる。

だが恐れはない。相対するバレットは至極落ち着き払っていたから。

 

「時間が無い。巻きで行くぞ」

 

落下の最中に、彼は口を開いた。

 

「まず謝罪する。ガンダムを知らないが故に、お前を()()()事。そしてお前達の行いを“矛盾塊”と謗った事を」

「問題ない。俺達は批難されて当然の存在だ」

「違う。()()()()()()()()()()()からだ」

 

今度は彼が告白する。彼の抱えた罪を、その懺悔を。

 

「俺はお前たち以上の罪を犯している。かつて憧憬を抱いた存在、それへの執着を捨てられないまま縋り続けた。憧憬を裏切られて尚囚われ続け……多くの人々を傷付ける結果となった。俺の造った機械(ロボット)が、宇宙中の無辜の市民を殺戮したんだ」

 

言われ、思い出すのはオートマトン。時を同じくしてバレットの背後の闇に投影された二機の機兵(ダークロプス・レギオノイド)、コレが彼の罪なのだろうか。

 

「確固たる目的と理想を持って、事に及んだお前達。それを、目指す展望(ビジョン)も無いまま手を穢した俺が責めた事。それを謝らせくれ」

「そんな事……」

「そしてそれ以上に、()()()()()()()

 

しかしここで一転。彼の瞳が光を映す。

まるで空の(あお)しか知らなかった者が、泳いだ海に別種の(あお)を知ったような。

 

「ガンダムに対し偏見を持っていた。ヒーロー扱いされる事を疑問に思っていた。戦争の物語に正義を標榜するのは如何なものかと……だが違ったんだ。お前がそうであるように、ガンダムによって生きる希望を得た弱者がいるのなら、それはまさしくヒーローと言える」

「……どうだろうか。ガンダムでありながら、絶望だけを振り撒いた者だっていた」

「うるさいな俺がヒーローだと思ったならお前(ガンダム)は俺の中ではヒーローなんだよ」

「急に対話拒否したな……」

 

だが。そう告げて彼の姿が変わる。二本角を生やした昆虫系宇宙人、彼の本来の姿へと。

 

『心だけではダメだ。今のお前には力が無い』

「分かっている。このままではELSも、彼らを兵器と嘯かれ使わされているストラドも、それに脅かされているブラキオンの人々も救えはしない」

『そうだ。それが旧来の人間の限界だ』

 

だから、と。黒い外套を纏い、闇に溶け込んでいきながら彼は続けて言った。この場を、後を俺に託すが如く。

 

『“力”をくれてやる。変革者だと宣うのなら、示して魅せろ。変えてみせろ』

 

この現実を。

 

……それきりだ。彼の気配が消え、俺だけが取り残されたのは。

重力加速が弱まり、ふわりと着地。瞬間、眩い点灯に目が眩む。

 

俺が降り立ったのは巨大なコンテナ。多くの兵器と、それを調整(チューニング)する機材がそろえられた武器庫。光を取り戻して捉えたその視界の中心に、“それ”は立っていた。

 

「Oガンダム……!?」

《そんな冠詞は付きません》

 

言われてみれば、確かに細部は異なる。だがそのシルエットはまさに、かつて俺が見上げた新たな神と瓜二つだったんだ。

しかしそれでも、バレットと入れ替わるように俺の隣へ降り立ったナナは“否”と示していた。

 

《これはRX-78-2。Oだの何だのと言った余計な枕詞(まくらことば)の付かない、正真正銘の“初代(ファースト)ガンダム”となります》

「初代……」

《といっても、お父様もそこまでは詳しくないらしく。外見や主兵装はともかく、中身については完全に別物だそうなんですけどね》

 

言いながらガンダムの周囲を飛び回る彼女は、次に腕の一振りで周囲の機材を起動。すると付近のエレベーターも始動し、接収されていたGNビームガンをここまで運んで来た。

 

……まさか。

 

《これはお父様が人間達へ供与する兵器として試作した物です。怪獣という脅威に、彼ら自身の手で抗う為の力……ウルトラマン達の到来を機に残置されていたこれを、貴方に》

 

バレットが、託してくれた物とは。

 

《応えなさい、刹那・F・セイエイ。お父様が残したこの力を、使いこなす事で》

「……了解した!」

 

手近なコンソールを操作。即座にアームが自分の手のように動き始め、機体を改造し始めた。

ガンダムマイスターとして4年間、エクシアを自己保全していた経験を活かす。俺が最も動かしやすい形に変える。ゼロとバレットが参じていった戦禍を終わらせる為に。

 

 

怨恨は消えない。

紛争は簡単には消えてくれない。

 

だが行き過ぎた怒りが、牙を剥き続けるというのなら──それを終わらせるのが、ガンダムだ。




混迷を極める戦場へ舞い降りる光。駆け付ける人々。
その様を見て嘲笑う悪魔の、真意はどこにあるのか。

次回。【ゼロ暗殺計画】。

終わらせ、変えていくのがガンダムならば。ウルトラマンは?
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