絶対UFZに入りたくないバルタンVS絶対加入させたいゼロ 作:スターク(元:はぎほぎ)
「バレット、が」
消えた。
「ゼロ……が…………」
……消えてしまった。
その報が耳に入った瞬間、まず理性が拒んだ。時間を経て理性が受け入れれば、今度は感情が。
堂々巡りする思考がIFを妄想し続け、情報が完結しない。やがて足に力を込める事さえ出来なくなり……崩れ落ちる。
「姫様、お気を確かに!」
「ジャンボットはどうしてますか……ミラーナイトにも頼んで、彼らを……っ」
「既に現王陛下の命令により、第一王女の指揮下で捜索隊が出ております。エメリグ上皇も極秘回線にて無事を知らせる連絡があり、独自に動いてらっしゃいました──しかしどういう訳かUFZの残存戦力とも連絡が取れない状況です」
「そんなっ!なんとか、なんとかならないのですか!?」
私達を救ってくれたヒーローが、その存在を消していく現実。立て続けに襲い来るそれを前に魂が悲鳴を上げているようだ。
そんな筈はない。ゼロはあんなにも格好良くて、ミラーナイトはあんなにも美しく、ジャンボットは逞しく、グレンは雄々しき、バレットは頼もしいヒーローだというのに。
にも関わらず、この現実は、何?
「……どうして……」
「姫様……お言葉ですが、貴女もまた彼らと同じ英雄なのです。その貴女がこの有様では、世の乱れを留めるどころか強めてしまいます」
どうかしっかり、と叱咤してくれる忠臣に応えるべく頷く……けれど依然、肉体が精神に付いて来てくれない。私の心がこれほど彼らに頼りきりだなんて思いもしなかった。
嗚呼情けない。その思いは、臣下から齎された情報によって加速する。
「情勢は……どうなっていますか。ブラキオンは、ストラドは、USAは」
「緊張感が増大しております。ヤプール関与の疑いによりストラド側の態度は鳴りを潜めましたが、今度はブラキオンが我慢の限界とばかりに噴き上がっている状況で……USA内でもストラドを糾弾する動きが強まり、司令殿が調整に四苦八苦しているとの事」
「そんな!ヤプールが関わっている事が分かったなら、それこそ団結すべき時だというのに!」
悲しみに
ゼロ。助けて。
彼はいない。私達の手で平和を作らなければならない。
それでも。勇気だけでも。
──私室に備えられた通信機器が、一通の着信を示したのはその折。
臣下を下がらせ、恐る恐る手に取ったそれには、銀河間ネットワークにおける或るサイトへのリンクが記されていた。
「我らブラキオンは、ここにUSA条約第15項批准国から脱退する事を宣言する」
総会にて聞こえてきた宣言に、私は耳を疑う。
第15項の内容は大量破壊兵器の使用禁止。戦闘状態にあるブラキオンがそれを禁止するという事は、つまり。
ブラキオンの持つ最大火力の兵器と言えば。
「待て代表!ストラドに向けて使うつもりか、
「彼らが戦闘行為を継続するなら或いは」
「待ってくれ、これからは我らUSAが前面に出て交渉を図る、だから民間人の巻き添えを前提とした攻撃は……!」
「その使用に踏み切れば、主力艦隊を喪ったブラキオンに対するUSAとしての支援は見込めなくなるぞ、良いのかっ」
私だけではない穏健派の星々から上がる制止の声に、ブラキオン代表は瞑目。やがて数拍を経たのち、首を縦に振った。
最後の“良いのか”という問いに対して、だ。
「覚悟の上だ。我らはストラドに対して
「……絶滅させる気か?!」
「そうだ。
「ふざけるな!それだけは許されない!!」
「我々が鏖殺されるのは良いと!?」
そうして、絶叫が議場に木霊した。訪れる静寂に、誰も言い返せるものはいない。
私とて反論はあった。あの自律型増殖金属群──バレットが“ELS”と呼称した物──さえ無ければ。
あの凄まじい威力を誇る兵器がある時点で、USAの総力を挙げても、ブラキオンを守り切れる保証が無くなったのだ。例え全ての星から戦艦をかき集めて幾重にも防衛線を引いたとして、一欠片でも星に落とされれば侵食を免れないのだから。
守り切れる保証が無いなら、守られても意味が無い。ブラキオンはそのように判断したという事。
「父祖は許されざる大罪を犯した。それは紛れも無い事実だ。しかしその罪が、今を生きる我が国の子らに、未来に生まれる子らにもあるか?それは否だ!そうでなくとも歴史的に粛々と償い、責任を果たしてきた我々に、奴らはさらに命まで要求してきた!私はブラキオン人である前に銀河市民として之を許容する事は出来ない!!」
ならば、この連鎖を断つには如何するか──その答えこそがコレだ。
相手の種族ごと絶つ。あまりにも悲しい、しかし彼らを追い立ててきた歴史こそが証明してきてしまった事実だった。
その旨を言い切ったブラキオン代表に拍手は無く、しかし拒絶の声も上がらない。誰も彼もが言葉を失う中──恐る恐ると言った体で、一つ挙手があった。
ストラドの次にブラキオンに支配された星の代表だった。
「えー……我が国はブラキオンの意向を支持します」
「しょっ、正気か?」
「はい。近似した境遇の同志として、ストラドとは独立運動を共にし、ブラキオンとの和解にも接触的に動いてきた我が国ですが……もう彼らには付き合い切れません。バレットが名付けた“ELS”という兵器の猛威が示され、なおかつヤプールによる極大規模の次元干渉さえ確認された今、我が国は政府と世論の両方でストラド排斥の意向が強まっています」
「──貴国が仰るのなら、ブラキオンの同盟国である我らも続かせて頂こう。もはやストラドの被害者芸に付き合うのもウンザリだ。ベリアルに次ぐ脅威を前にして、背中から撃ってきかねん国など除く他あるまい」
「待て!まず貴国らがその意向に至る過程自体は納得できるが、それではストラド国民の虐殺を肯定してしまうぞ?!」
「その国民が望んだ結果が之だろう!」
「だからと言って我らの方から手を穢せば、二度とUSAは元の形へは戻れんのだ!!」
やがて徐々に噴き上がる
……USAが、瓦解していく……!
(このままではヤプールの思うがままだ……ッ)
──結局、ブラキオンを止める事は叶わなかった。
なんと言う有様だ。これが……こんな生き恥が、銀河連邦のトップの姿だとでも?
「お前がいれば、私の首を挿げ替えるのも視野に入れたかもな」
光る宇宙、その彼方へ消えた英雄を想う。最早私が此処にいる意味など……
……?
(エメリグからの暗号か)
ポケットの中で震える携帯端末。彼がストラド政府の拘束から逃れた事は本人からの連絡で把握しているが、今この状況で何の要件だろうか。
彼の事だ、暴走はするが決して無駄な行いはしない。ならば、ややもすると、この苦境を脱する何かを掴んだとか……?
そう思い、縋るように開いた端末の画面。
其処にあったのは、1件の動画ファイル。
「これはどういう事ですか!!!」
我がストラド王宮にて開かれた議会で、一人の議員が誹る。我ら自身の過ちを。
「新開発した自律型増殖金属兵器!我が星独自の画期的な威力であった筈のそれは……事も有ろうにヤプールの手引きによる物であったと!干渉を受けたと思われる発明者も金属侵食で生死不明など、何たる失態でありましょうか!?」
「外務大臣、口を慎めっ」
「事実を陳列したまでです!!!」
……勝てると思った。積年の怨恨を晴らす機だと。
あの金属光沢は、永く虐げられ、それを忘れなかった我ら種族への神からの褒美なのだと。そう信じてしまった。
「お陰で我々は完全にUSA全国家を敵に回しました……ブラキオンだけではありません、全てです!ブラキオンに遠慮して及び腰となっていた星も、我らに同情してくれていた星さえも!!」
「それどころではない!ヤプールの思うがままに動いてしまった事で、我らが開いた戦端は……英雄ゼロ、及びバレットの生死不明という惨状を齎している。我らは取り返しのつかない事を……!!」
その妄信が生み出した結果が、これだ。
悪魔に漬け込まれ、希望の光を吹き消した。
不和を呼び、忍び寄る悪夢への備えを崩落させた。
……エメリグよ。
私は。
「……一つ、王に問いたい」
宰相が立ち上がる。私の善き友人であり、政を支えてくれた仲間が。
「私にはどうしても引っ掛かるのです。貴方が急遽発した撤退信号……アレは命令系統を踏まえるに、ブラキオン艦隊が全滅……いや、半壊どころか1/4が呑み込まれたタイミングで発さないと届かないタイミングでした。つまり貴方は、我らが艦隊の勝利を待たずして撤退──つまりは、敗走を命じた事になる」
「宰相殿、今そんな事を聞いている場合ではっ」
「いいえ。一国の行末を担う王たる方が、その敗走をどのような意図で命じたのか、我ら臣下は見極める必要があるのです。もしこの事態を予見し止められたのなら良し。我らは先見に秀でた王を擁し、庇い、事態解消に命を尽くしましょう」
逆に言えば、そうでなければ尽くせないという事。
そして彼は……そうでない事を、もう察している。
それでも認められない。認めたくないから、私に言い逃れの余地を残してくれたのだ。
すまない、友よ。
私が君の果たしてやれる義理など……最早、これしか。
「王……?」
「予め命じておく。己が、ストラドの敵だと断じた者を撃て」
この銃で。私が開発を許可した金属兵器、その銃弾が込められた物で。
それを手渡され、目を白黒させる彼を前に……私は口を開いた。
「ストラドは滅ぶべきだ」
「「「は?」」」
エメリグよ。お前が言った事を、私だってずっと考えていたのだよ。
ブラキオンは全被害国家に賠償を行った。
全被害国家は、ブラキオンと国交を回復しUSAに加盟した。
ブラキオンは、過去を繰り返さないよう人権学習を徹底し、国民に広めた。その活動は全銀河、全宇宙に認められ、その中心地にさえなった。
拒絶したのはストラドだけだ。
他の国家はとっくの昔に区切りをつけ、未来を歩み出した。
我々だけなんだ。過去に囚われているのは。
「他の国家が明日へ向かう中、我々だけが自ら望んで昨日へ取り残された。剰え、明日へ向かう者たちの足を引っ張りながら」
「……王よ」
「それ以外の道など無かった。我々は
「王よ、やめて下さい」
「だが明日へ向かえないのなら。存在しているだけで、他者の明日を壊してしまうというのならば……」
……100代前の王よ。民よ。
貴方達の痛みをドブと捨てた私を、呪ってくれ。
「
「スゥテラルゥゥゥッ!!!」
向けられる銃口。そうだ友よ、それで良いのだ。
私は王失格だ。例えどれだけ痂疲があろうとも、他背負った民の命を未来へ繋ぐ。それこそが王の責務。
「貴方は!言ってはならない事を言った!!」
その通りだ。
金属兵器によってもたらされた悍ましい惨状。それを見た瞬間、これが他者から見た我らの姿なのかと思ってしまった。生きとし生ける者へヘバリ付き、蝕む、ヘドロのようだと。
それに臆した。二度と引き返せないタイミングになって、今更。
「貴方は!!兵に、無為の死を強要したんだ!!!」
その通りだ。何一つ間違いは無い。
「死ねと言ったんだ!国民にィ!!」
その通りだ。
だから……その銃は、お前の手の中にある。
「撃て」
それが最後。
破裂音と共に、私の身体を衝撃が打ち据える。そして、
「助けて」という聲が。
……なんて事だ。
この金属も被害者ならば。彼らを兵器として使い潰さんとした我らは、あまりにも。
(エメリグっ────)
民の願いを受け取り報う。私はそういう王であったつもりだった……
きっと報い方を間違えたんだ。この愚かな俺を、その過ちを、笑ってはくれないか。
どう、か…………
御機嫌よう。
お久しぶりですね。
その二文、計15文字。それだけでヤプールとモネラの顔を歪ませるには充分でした。
『き……貴様、スライ!?』
『どうして此処に、いやどうやって此処に?!?』
さて……どうやってでしょうか?
まぁ隠さずに言えば、マキジ・ガイカの
はてさて、挨拶もそこそこに交渉と行きましょうか?
『確保した“ガンダム”とやら。それを用いた時空兵器、見事な物でしたよ』
『がんだむ?』
『おや、では別の名で──“ダブルオー”と言えば、今度は通じるでしょうか』
『なっ!何故それを!!』
『ガンダム?ダブルオー??ヤプールの方々が鹵獲した
これは幸運。情報優位は此方にある事、無かったとしても装える事が此処に確定しましたね。ではそれを盾に次のステップへ……。
『何の事はありません。私もあなた方の企みに相乗りさせて欲しいのです、前のように
『嫌味か貴様ッ』
『ええ。ですが貴方がたに断る選択肢もありませんよ?』
『ほざけメフィラス!お前がどう立ち回ろうが、全ては“ダブルオー”を所有する我々の意向次第だという事を……』
『かの時空兵器。
あれ程の規模を誇りながら。
その実、目標であるゼロにもバレットにも、凌がれかけた。それを私は知っていますから。
『それ……は……』
『し、しかし最後は出力が上げて成功には漕ぎ着けた!お前などいなくともクトゥグアは!』
『それが私の助力ゆえだとしても?』
『『!!!!』』
懐から徐に撒いた“緑色の粒子”。そのクトゥグアとやらが出力上昇に起因した物質を見せれば……もうお分かりですよね?
『貴方がたの計略。私だけが、それを完成させる事が出来る。それを可能とするピースを持っている事を』
『……ついてこい』
『ヤプール殿!』
『こうなれば仕方があるまいっ』
成功だ。交渉の推移に内心でガッツポーズをしながら、私が連れて行かれたのは異次元基地の中央。
そこに見えたのは──おお、これが。
『そうだ。我らが手中に収めし“ダブルオークアンタ”だ』
磔となった機械仕掛けの
更によくよく見れば中に……活動停止した思念波?貴方がたが残置するとは珍しいですね、何か意図があるのでしょうか。
『小細工だ。此奴、我らから逃げられんと悟るやいなや、各部位とパイロットをパージして逃がしよった。その上で己ごとダブルオーを時間凍結し、我らが直接弄れんよう阻んでいるのだ!!』
『時間……凍結……?』
『知らん!そうとしか形容出来ん!!』
おやおや、天下のヤプールもお手上げとは厄介な。外付けの設備でクトゥグアという活用法を見出せただけでも上等だったのですねぇ。
しかし……我々は本当に、人身御供を前提とした作戦と、縁が深いというか。
(バレットやウルトラマンは、我々を絶対に赦しはしないでしょうね)
怖気づいた?いえ、寧ろ真逆。
私は彼らの敵でありたい。敵でなければ彼を、バレットを超える事など叶わないのですから。
『ところで、クトゥグアの原理とは如何様に?吸い込まれたバレット達はどうなったのでしょうか』
『要は“意図的なワープ失敗”だよ。高圧のワームホール内にて、吸引した目標を圧壊・別宇宙へ放出するのだ』
『……つまり。もしかすると、ワープに
『フン、考えるに値しない微小可能性だな……まぁ安心しろ、仮に成功したとしても流れ着く世界の目星は付く。
おや。
おやおやおやおやおや!愚かですねぇ貴方がたともあろう種族が!
(嫌になる程ウルトラマンに阻まれておいて、バレットの反撃を受けておいて、彼らの“在り方”を全く理解していないとは!!)
これはやはりツキが向いている。ギャンブルは嫌だなどと言ってられません、こうなれば柄にもないオールベットと洒落込んであげようじゃありませんか!
精々踊りなさい、ヤプールもモネラもUSAもウルトラマンも!私はその様を、ベリアル様復活の礎とさせていただきましょう……!!