絶対UFZに入りたくないバルタンVS絶対加入させたいゼロ 作:スターク(元:はぎほぎ)
『むっ!まさかこの場所がバレるとは……よかろう、メイドの土産に教えてやるぞ!我が名はレギュラン星人がツヴォーカー、この“糸ひっかけ作戦”を計画した真の支配sy』
『誰だよも〜…』
『ギャバーンッ!?!』
今日も今日とて血みどろ稼業。ヤプール軍への奇襲作戦から160日後、俺はUSAからの依頼で星間戦争を裏で手引きしてた奴を暗殺していた。罠だらけの基地を潜入させた分身ごと爆破、首謀者も協力者も分け隔てなく宇宙の塵である。
俺の分身はどうしたって?肉体の消失と共に意識も記憶も
《……あのー、お父様。もしや私、今回の作戦目標の名前を伝え忘れていましたか?》
『しっかり言ってたぞ、ツヴォーカーだと』
《なら何故“誰”と……》
『いい加減見知った宇宙人を見たくてなぁ……』
前世の俺は昭和生まれ昭和育ち、三丁目の夕日に照らされながら生まれた地球人だった。小学生の頃にカラーテレビで放送された銀色のヒーローに目を奪われ、ずっと追いかけ、80まで頑張って見ていた。
とはいえそこまでいくと流石に大人。高校生あたりから流石に趣味として厳しくなり、泣く泣く卒業してもう何年になるのか……千年単位か?
折角バルタン星人として生まれ直したのだから、他の見知った種族と出会ってみたかった。それこそ、憧れたウルトラの輝きに。
《むすーっ》
『あっ拗ねた』
《その思い出をお父様と共有出来るのはお母様だけですもん。私にも教えて下さい》
『記憶はある程度引き継いでるだろうに……いやスマン、悪かった悪かった。今度黄金彗星見に行こうな』
《約束ですよ?》
そんな夢ももう錆び付いた。ただ辟易とする現状に愚痴として漏れ出ただけで、執着と呼べるほどの念は最早無いのだから。
それよりも大事なのは、今後の平和とそれを前提として俺達の明日だ。
《……!入電です、USA総司令官から》
『開いてくれ』
《おはようバレット。早速だが、ヤプール勢力掃討作戦の日時が決まった》
『そうか。決戦だな?』
一拍置いて切り替わる音声。聞こえて来たのは最早旧知の仲となった秩序の代弁者の声だ。
元は本当にただの一般的な殺し屋をやっていたのに、ヤプールの侵攻に首を突っ込んでいたらいつの間にか協力体制を築いてしまっていた。流れと馴れ合いって怖いな、としみじみ思う。
《ああ。この長い戦いに、一旦の終止符を打つ。これが現状の作戦概要だ》
『一旦、ねぇ』
俺が開発した次元湾曲率測定機、それで前回特定したヤプールの前線基地から逆探知したのだろう。奴等が元いた宇宙から、俺達がいるこの宇宙へ繋がる次元ゲートの存在を。
……ヤプールがいる宇宙というのはつまり、ウルトラマンがいる宇宙という事でもある。
《良いのか、君は》
『何が?』
《あちらの世界は、君にとって夢のような世界なのだろう》
そこへ連なる道を閉じて良いのか、という問い。外部協力者である俺への義理立てか。超獣の群れを見ながらかつて愚痴ってた事を、彼はまだ覚えていたらしい。
だが一つ訂正点があるぞ、司令官。
『夢のような、じゃない。“夢”そのものだ』
《……?》
夢は夢だ。それ以上にはならないし、してはいけない。
自分の夢を追いかけるには、俺はいささか歳を取り過ぎたんだよ。
『なんだかんだでこっちでの生活が居心地いいんだ。遠慮無く破壊してくれ』
《──感謝する》
希望を見るのも労力が要る。それを“煩わしい”と思うようになった時点で、もう夢は追えない。
……ナナもいるしな。
『お父様……結婚して下さい』
『なんか言った?』
《ん?私は何も言ってないぞ》
『いや司令、アンタじゃなくて……まぁいいか。それより作戦内容だ、俺の立ち位置をもう少し左翼側に寄らせてもらうぞ?他はこのままで多分問題無い』
《良いが、何故だ?》
『ダークゴーネの思考パターン的に、ここら辺に次元ゲートで超獣送り込んで来そうだからだ。俺なら出オチに出来る』
何だろうな、超獣なりの特徴というか……例え
Aをリアタイした俺なら何が来ようと感覚で対応出来る。逆に他のUSAの連中だと、バキシムみたいに虚空割って出て来られただけでもう総崩れにされかねん。
『後はどうだ?』
《他の幹部連中の手札は割れているからな。全てこちらで撃破できるだろう》
『なら憂い無しだな』
《お陰様でな》
『だからそういうのはいいから』
夢へと繋がる道。やっと出会えたそれが終わる時を前に、俺の心は穏やかだった。
そうと決まればさっそく準備だな。久し振りに忍ぶかね、忍者らしく。
《ヤプール戦役のMVPが今更コソコソ出来るか疑問だな》
『お前が変に公表するからだろうが……しかしそうだな。奴らからの注目も高まっているだろうし、ここは逆に派手に無意味な動きをしてみるのも手か?』
《陽動作戦はお前の負担が……》
『今更奴ら相手に逃げ回るのなんか苦にもならんさ』
そこまで言った、その時だった。
『──!!』
《なにっ!?》
外套に隠したマイナス思念計が示す異常数値。時を同じくして通信の向こうで喧ましく響くサイレン音。
《何があった!》
《中央基地上空に超獣出現!し、しかし……80m級!これまでに無い大きさです!!》
《なにぃ?!》
『オイ司令、映像あるならこっちにも寄越せ!因子数値を見るに相当不味い個体だぞ……!』
告げるや否や、タイムラグ無しで届く記録媒体。
推定体重、飛行速度、光線発射孔と見られる多数の発光器官に加え長大な触手を確認、収集して来た過去の超獣データと照合し、その戦闘力を算出する。
疑念は確信へと変わった。
『エスメラルダからミラーナイトを呼べ』
《なに?》
『此奴は対複数特化の火力型だ!それを
《ヤプールの切り札という事か!!》
『恐らくはな!』
USA中央基地には異次元干渉を妨げるバリアが設置されていた筈だが、コストを厭わず突破して来たという事は
乗ってやろうじゃないか、ヤプール……!
『今転移する!肩の棘はおそらく誘導ミサイルだから撃たせるなよ!!』
《それは助かるが……!》
『十中八九、中にヤプール
《お父様、ご武運を!》
武器及び装備を即座に選択し、俺はワープゲートの中に飛び込んだ。決死の戦線へ。
地獄にでもなんでも行くつもりだった。
夢など捨てた筈だった。
結論から言うと、俺の懸念は外れていた。
『もう終わりか』
『エスメラルダ王からの招集に馳せ参じましたが、存外早く終わりましたね』
鏡の騎士の言葉に頷く。次いで見下ろした巨体の残骸は、今となってはピクリとも動かない。
拍子抜けだ。
『しかし貴方も無茶をしてくれます。半径1kmの地形表面をガラス化する程の焼夷弾とは』
『元より避難済みで破壊された区画だ。何より役立っただろう?』
『……まぁ、一番恩恵を受けた私は何も言えませんね』
惑星エスメラルダと鏡の星の申し子ことミラーナイトは、反射率の高い物体──要は鏡面を媒介にして瞬時ワープが可能な存在だ。だから合流した瞬間から装備を防御型から熱融解型に切り替え、奴が暴れ回りやすい環境に変化させた。
それによって乱れ飛ぶ切断技で触手を封じ、飛んでくるミサイルは俺が迎撃し、そして極太光線をミラーナイトの鏡反射で跳ね返して倒したという訳だ。戦闘というより処理、害獣駆除に近かった。
そう。この超獣は、“獣”に過ぎなかったんだ。
『ヤプールがいない』
『え?』
『この超獣は自律機動だった。操縦者がいない』
超獣の中にもしヤプールが入っていれば、こう易々と事は運ばなかっただろう。触手の動きは直線的、ミサイルの発射タイミングは安直、極太光線の射角も簡単に誘導される始末。ヤプールの嫌らしい思考が組み合わさっていれば、俺達が他の無事な区画を庇わざるを得ないよう立ち回っていただろうに。
『何故だ?この局面で隠し球を使ったんだ、片手間でドブに捨てる訳が無い。陽動だとしても音沙汰が無さ過ぎるし、費やした
『……貴方とは数度会った程度ですが、考え過ぎる傾向は変わり無いようですね』
『堅物のお前に言われたくはないな、ミラーマnゲフンゲフンミラーナイト』
『それ程でも。ですがそんな事より今は、“声”に応えてあげればどうですか?』
《ありがとよバレット!》
《助かりました……》
《アンタはヒーローだ、俺達の!!》
『……チッ』
戦いを援護してくれた数多の円盤戦闘機。周囲を飛び回るそれらからの通信を聞いて、思考を中断された。
本当によして欲しい。俺は陰に生きる暗殺者で、大っぴらに褒め称えられるのはガラじゃない。何が悲しくてヒーロー呼ばわりされなきゃいけないんだ?
気分が悪い訳じゃなかった。むしろ、賞賛で気を良くしている自分そのものが歯痒い。
『帰る』
『お達者で。公式にUSAに転職したらエスメラルダに来ると良い』
『今更するか』
俺は俺の仕事を果たした。もう自分の宇宙船に帰って傷を癒そう、そう思って踵を返す。
ワープゲートを起動しようとして……
……やめた。
『どうしました?』
《オイオイ、礼ぐらいさせてくれよ》
ミラーナイトと通信からの問い掛けに、外套から一掴みの機械を取り出し応じる。ブザー音を鳴らすそれは、マイナス思念探知機。
先程の超獣襲来時に、3000を記録したそれは今、新たな数値を示している。
既に5桁。尚も上がり続けている……!!
『何かいる!警戒レベルを下げるなッ!』
《『!!!』》
鋏を構えて索敵姿勢を取れば、ミラーナイト達も息を呑んでそれに続いてくれた。敵の姿はなおも見えない、だが確実に近くに潜んでいる!さっきの超獣を遥かに超える恐ろしい化け物が…!
《司令部より通達、各機フォーメーションA!敵性存在を確認次第通達し包囲せよ!バレット及びミラーナイトはその場で待機!》
《80000、95000……10万を超えました!こんなの故障です!!》
騒がしくなる通信、マイナス思念係数に狼狽えるナナの声。
実際問題として、怨念の塊であるヤプールの切り札よりも濃いマイナス思念など想像すら難しい。ヒューマノイドタイプのエイリアンが生身で近づけば即鬱を発症し、前向きに自殺を試みるレベルだ。
光学レーダーに反応は無……いや待て。この
………違う!高濃度の闇が全てを遮断してるのか!!?
『距離30万、超獣直上!!直径60mの球体がそこにいる!!!』
『なっ……宇宙の暗闇に紛れて見落としていましたか!』
外套から取り出したのは巨大砲塔。右手がちょうどフィットするそれは、
《バレット、何を?!》
『司令、USAの火砲じゃ届かん!俺が撃ち落とした所を集中砲火するんだ!』
《わ…分かった!!》
『ナナ、スコープ展開!』
《倍率65倍!チャージ開始!!!》
装着と同時にバルタン特有の鋏を更に大きくしたような形へ砲口を発展。エネルギーパイプを通して、射程を確保する空間湾曲エネルギー・貫通力を高める破壊エネルギー・被射体をこの星の地表へ急速落下させる為の重力エネルギーが攪拌充填された。
後は照準を合わせ、引き金を引くだけだ。
『3…』
他の連中とタイミングを合わせるためのカウントダウン。その間にもスコープの拡大は進み、球体の全容が俺の複眼に映される。
予想通り、闇で構成された膜状の物体。揺らめくその中に人型の影を視認できる。
『2……』
やがて人影が動き、闇の帳に手をかけた。姿を現すつもりか。急所が見えやすくなれば好都合だと、より姿勢を固くした。
『1………!!』
取り払われた。その全貌が露になった。
ありがたい、分かりやすく弱点が丸見えだ!胸の中央、光り輝く何かしらのコア。狙ってくれと言っているようなものじゃないか。
撃ち抜いてやるよ!ゼットンに倒された
………。
『え』
『あ…ああぁ……!』
《お父様!お父様っ!敵性存在の両手に高エネルギー感知、撃たれます!!》
《どうしたバレット!!》
『何かあったのですか!?』
嘘だ、そんな、あり得ない。
『なんで、こんな…っ!!』
《ッ──USA司令官!今すぐ光波バリアーを当該方向に集中展開してください!》
《誰だ君は!?》
《いいから早く!》
《ぐっ…全機撤退、基地の全エネルギーを障壁へ回せ!!ミラーナイト、補助を頼む!》
『やむを得ませんッ!』
だって、だって。
ウルトラマンは。
《この測定熱量、理論上はこの星の地表を焼き尽くせますよ!?》
《こちらストーム2、待ってられない!迎撃に出る!!》
《エネルギー充填完了!!バリア最大出力!》
《敵、
《来まァすッ!!!》
正義の、ヒーロー。
地獄にでもなんでも行くつもりだった。
夢など捨てた筈だった。
《………ま……答し…く…………お父様!しっかり!!》
『──カッ……!!』
ナナの呼びかけでようやく、意識を取り戻した。燃える地平の炎が肌を焼いていた。
威容とそれによる平和を誇った要塞都市が瓦礫の山。USA本部、中央基地が
俺が撃っていれば、この光景は避けられただろうか。
《謎の巨人による光線で、地表の半分が炭化。衝撃波は全土に広がり大きな被害が出た模様です。現在、星の裏側から多数の避難船が離陸しています》
『ミラーナイトは』
《エスメラルダにて鏡からの出現を確認。間一髪で避難したようですが、重傷の模様》
『司令は』
《……不明です》
甚大な被害に絶句。地球サイズの隕石を余裕で防ぐバリア、それをさらに一点集中した物を貫通した上でこの威力だと?
馬鹿げていると言いたかった。あり得ないと断じたかった。
だが、それでも、ああ。
よく分かっているんだ俺には。“
《お父様ッ!!》
分かっているよ、ナナ。
答える間もなく、俺は未だ装着していたライフル砲を後ろへ向けた。闇の帳を纏い、舞い降りた“奴”がそこにいたから。
手が震える。隠せない。
『面白い奴がいるな』
その一言、たった一言。それだけで膝を屈しかける。
異様な圧力と覇気が、塊となって俺を蝕む。
『いい余興だったぜ?Uキラーザウルスをああやって攻略するとは』
U、キラー、ザウルス?
『ヤプールの最後っ屁でしたが、お気に召したようで何よりです』
『しかし陛下の一撃でこの有様。いやはや、敵いませんな』
奴の背後から出て来たのは、ダークゴーネとアイアロン。
ヤプールの最後っ屁、だと?
まさか此奴、ヤプールすらも。
『しかしなんとまぁ、無様ですねぇバレット。恐怖に屈して一発も撃てないそのザマ、非常に愉快ですよ』
『ザウラーの仇、そして強敵としての情けだ。今ここで首を断って……陛下!?』
俺へと攻撃しようとするアイアロンを手で制し、奴は笑う。
俺の夢の姿で、嗤う。
『無様だが見所がある。コイツ、さっきからずっと俺のカラータイマーに照準を外さねぇしな』
黙れ。黙ってくれ。
その姿で、他者を嘲ってくれるな。
《お父様、逃げて!!》
逃げられない。
歩み寄られる。
『ほォら、俺はここだぞ』
また一歩寄られ、気圧される。
その姿に奴は嘆息すらして──砲口を掴み、自分の胸に押し当てやがった。何のつもりだ。
『撃てよ』
『……は?』
『さっき撃てなかった分を、さぁ今だ。やってみろよバルタン』
ふざけるな。こっちだって、星を貫通する弾道を放てるんだ。
舐めるな、舐めるな、舐めるな!
俺の愛したウルトラマンの姿で、力を騙るなッ!!
『死ッ────ッねぇェェェエ!!!』
『ベリアル様?!』
『陛下ァ!』
《お父様っ──!》
起動、発砲、接射。直撃。
収束した極光が放たれる。殺傷力を突き詰めた弾丸、“倒す”為ではなく“殺す”為の。
構えず放ったため、反動で強かに尻餅をつく結果となってしまった。あまりにも不格好、だが、確実に急所へ当たった。相応以上の手応えだった。
殺せたと、信じたかった。
ウルトラマンはいつだって、俺の想像を超えていく。
分かっていたから、信じられなかった。
『───今のは効いたぜ?』
分かっていたさ。心から。
爆煙の中から、それでも健在の
(勝てない)
心が折れる音がした。砲を下ろし、俯いた俺の頭に巨人の手が置かれる。
定められた上下関係。決められた主従の儀。
『バレット』
『……は、い』
『俺様の
抗える訳も無く。
抗う気すら起こさず。
その日、ヒーローに憧れていた俺は、死んだ。
悪夢となって還って来た夢に、殺された。
※司令は死にかけながらなんとか脱出しました。そして2話で残存艦隊と一緒に消し飛びました