絶対UFZに入りたくないバルタンVS絶対加入させたいゼロ   作:スターク(元:はぎほぎ)

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三角座りは原作再現なんだって

ガポン、という音。

それは医療ポッドが開いた事による物で、中からノッソリと出て来たのはバレットである。首から下は綺麗に元通り、滴る液を蒸気に変えて通路を歩き出した。

 

『ナナ、いるか』

 

返答は無い。数秒の思案の後、今は()()()()に出している事を思い出す。

……確か、鏡の星への侵略予定日が迫っていたか。

 

『ミラーナイトの件はナナに任せるとして……』

 

場合によってはその身柄も確保できるかも知れない。いや、タイミングによっては“せざるを得なくなる”の方が正しいだろう。

拙速は巧遅に勝るという事で、バレットは外套を身に纏った。アイアロンのいる前線基地から招集令が掛かっている。

 

『ジャンバードが最後に確認された座標は……なるほど。アイアロンとどっちが早いかな』

 

光か闇か、それとも影か。

鏡が最初に映すのは。

 

『───ウルトラマンノア』

 

お前は誰に微笑む、と呟いて。

 

 

 


 

 

 

「アレが鏡の星です」

『何だお姫様、知ってたのかよ』

「かつてエスメラルダは二次元の民と交流がありましたので」

 

航海ならぬ航宙を経ること1週間。小惑星などの障害物をグレンファイヤーが破壊し、ベリアル軍の斥候はジャンバードが遠距離砲撃で仕留め、その果てに俺達は漸く辿り着いた。

……俺はナオと組み手する以外する事無かった。なんかこう、ちょっと肩身狭いな!

 

《姫様のメンタルセラピーになっていたので大丈夫だ。誇れゼロ、ナオ》

「僕達ペット扱いかよ!!」

「……ともかくだ。あの鏡に映ってるのが目的地で、そして“ミラーナイト”って奴もあそこにいる。それで合ってるんだよな?」

 

宇宙に浮かぶ巨大な鏡面、その中にのみ映る天体を指差す俺の問い掛け。それを受けて、エメラナが頷く。

 

「ミラーナイトは、二次元人の父とエスメラルダ人の母との間に生まれた勇者です。しかし彼は、ベリアル軍にエスメラルダが襲撃された折、私を逃がして………」

『女子供守って殿(しんがり)たぁな。中々根性あるじゃねぇか』

「ええ、本当に彼は偉大なんです。彼が無事で、傷を癒やし機を待つならばこの星……の、筈なんですが」

《姫様が来訪したというのに音沙汰が無い。記録された平時のミラーナイトの性格なら出迎えに来るだろうに……》

「ここにはいねぇか、もしくは出て来れる状態じゃねぇって訳だな」

 

相談している間にジャンバードが信号を送っていたようで、鏡が動き出す。俺達に正対した上で表面に浮かび出した紋様、もしかしてこれが入口か?

 

《鏡の星は異次元に存在し、鏡面はこの次元と異次元を繋ぐ媒介に過ぎない。無理に入ろうとすれば、鏡面を介して異次元に生成された仮想の質量と衝突し阻まれる。だが二次元の民が生成したゲートは質量を無効化するため、通行が可能になる訳だ》

『つまり……どういうこった?』

「鏡を通ろうとしても鏡の向こうの自分が邪魔になるって事だね!」

《そういう事だ!ナオは賢いな》

「というかグレン、お前バラージの盾が鏡の星にあるって分かってるのになんで肝心の入り方を知らねぇんだよ……」

『うっうるせぇ!俺だって祖先から伝わる伝説を元に教わったんだから仕方が無ぇだろ!!』

「……?待って下さい皆様、アレは何でしょう」

『《「「え?」」》』

 

その時、エメラナが何かを指差した。ゲートが浮かび上がった鏡面、その少し隣に浮かぶ物体……宇宙船か?

 

『自然じゃぁねぇな。明らかに人工物だ』

「けどあんな型番見た事ないよ。宇宙船と呼ぶには小さ過ぎるし、無人ロケット?」

《生体反応は見受けられません。しかし鏡の星が排除してないのを見るに、つい最近ここに流れ着いたばかりの宇宙デブリ……と言ったところでしょうか?》

 

……いや。まさか。

 

()()()()()()()()()

 

俺のその言葉に、船の内外で緊張が迸った。

 

「バレットの手がここまで及んでいる、という事ですか!?」

「分からねぇ、だが故郷で読んでた資料で見覚えがある。あのギザギザ模様はバルタン星人の宇宙船とソックリだ……!」

『オイオイオイ!ってこたぁ鏡の星さん、もう侵略されてるとかそういうオチじゃねぇよな?!』

《いや、その心配は流石に無い!ベリアル軍が来たならもっと大規模な破壊などの変化が見て取れるはず、何よりあの程度のロケットでは大した兵器は積めないだろう》

「けど侵入はされてるかもだよ、バレットの事だし……!」

 

先程話してたカラクリで、そう易々と入り込む事は出来ない筈だが、万一の可能性もあり得る。それを警戒する俺達の議論を受けて、エメラナは決断したようだった。

 

「一刻も早く星へ降りましょう。こちらの申し出を受けてゲートを開いたという事は、少なくとも甚大な変容は起こっていない筈……だからこそ間に合う内に、この件を二次元の民へ伝えなければ!」

《分かりました姫様!総員、これより鏡の星へ入国する!》

『あっちょ待てよ!オーイ!!』

 

加速するジャンバード。俺はナオと共にGに耐えながら、ゲートを通る瞬間──ロケットとすれ違うその瞬間に、透視でその中を見ようと試みる。

結果は空振り。幾重にも張り巡らされた装甲には特殊な素材が用いられているようで、あらゆる電磁波と念力の類を撥ね付けていた。中身を見る事など叶わず、すぐさま景色は鏡の中へと移り変わってしまう。

 

だがその瞬間、気付いた。

 

「……映ってねぇ」

 

小型ロケットの像が、鏡面に無い事を。

何故だ。

本体はそこにあるのに、どこに行った。

 

………どこかに、()()()

 

 


 

 

『鏡の星を破壊する』

『……飽くまで“征服”目標じゃありませんでしたか?』

 

苦々しい顔で言うアイアロンに俺は問うた。理由は分かり切っているが敢えて。

 

『ダークゴーネによる海賊捜索が振り出しに戻った事で、陛下がお怒りになってな』

『あぁ……』

『期日も早めんと、要塞マレブランデスは我々諸共に宇宙の塵だ』

 

どうやら俺が医療ポッドに入っている間に行われた急遽の強襲が空振りに終わった事で、やっと特定した駐留地点に海賊が寄らなくなってしまったらしく。立たない敵性勢力減衰の目処により損なわれたベリアルの機嫌を、征服計画の早回しで取り繕うという算段のようだ。

 

(中々引っ掻き回してくれるじゃないか、ゼロとやら)

 

惑星アヌーでの接触時、地下にジャンバードが潜んでいるのは分かっていた。だから監視役のダークロプス2機を捨て駒として起爆する事で、ジャンバードにゼロを確保させるよう誘導したんだ。俺を倒せる程の逸材を、ベリアルへの反攻に利用しない手が無いから。

仮にジャンバードが動かなかったとしても、その中に乗っているエメラナの方がゼロ達を見捨てられない。お嬢さんはそういう甘い子だ。

……とはいえ。ここまで掻き乱してくれるのは、想定以上に想定外と言える。

 

『1時間後にここを出立だ。貴様は取り逃がしの無いよう、後衛から敵勢力を監視しろ』

『承りました。が、わざわざその為に俺を呼び出したのですか?』

『……俺とて貴様なんぞ呼びたくなかったわ』

 

察しろと言いたげに顰め面を向けてくるアイアロンの態度に、容易く悟った。これもまたベリアルの意向なのだと。

奴はどうしてか、俺に戦果を上げさせたがる。

 

(気色が悪い)

 

本当に。心の底から気持ちが悪い。

 

 


 

 

「聞いて下さい、二次元の民よ!!」

 

宇宙を写す鏡の水面に立ち、エメラナが叫んだ。向かい合うのは宙に浮かぶ幾何学模様の結晶体、どうやらアレが二次元人の意識そのものらしい。

 

「鏡面ゲート付近に、バルタン星人バレットの物と思われるロケットが浮遊しておりました!こちらに、侵入されたなどの異常はありませんでしょうか!?」

其方(そなた)の言う通りだ、エメラナ姫よ]

 

塊が輝き、声音が響き渡る。

 

[1人、我らの導きを待たず入って来た者がいた。見るに幼子(おさなご)のようであったが、只者ではあるまい]

「子供!?だが入って来たなら、取り敢えず身柄を確保しねぇと……」

[捕まえぬ。為すが儘、時流に背かぬと決めた]

 

その返答に皆して驚かされてしまう。只ならない事態だと分かっていながら、対応のひとつもしねぇってのか……!?

 

[我々は三次元世界で起こる事に関知しない]

『オイオイオイそりゃねーだろ鏡さんよ!ベリアル軍の手がすぐそこまで伸びて来てんだぜ!?』

[承知している。だが滅びには誰も逆らえん、それが摂理だ]

「ふざけんな!皆頑張って生きてんだぞ!!」

 

ナオの言葉に、結晶体は僅かに言葉を詰まらせ……だが再び頑なな姿勢で応じた。奔る一筋の稲妻によって、俺達が立つ水平線の奥底を示した事で。

 

[見るが良い。エメラナ姫、其方には酷かも知れんが……]

「……ミラーナイトっ!!!」

 

見せられたのは、闇に沈む鏡の巨人。何も映さない漆黒に囚われ、その身を封じ込めた手負の戦士の姿だった。

アレがエメラナの……?

 

『なんつーか。変な座り方』

「グレンお前……」

『いや悪い、茶化すつもりは無ぇんだ。けど鏡さん、アイツどうしちまったんだ?』

[エスメラルダの王宮を守るべく全ての力を使い果たし、その隙をベリアルに突かれてしまったのだ。魂を闇の力に蝕まれた以上は己を封印する他無く…最早どうにもならぬ……!]

 

労わるようにそう告げる結晶体の声には、ミラーナイトへの愛情すら乗っていた。彼らにとってもミラーナイトは我が子のように愛しい存在で、だからこそ彼が堕ちた事で絶望してしまったのか。

 

……ふざけんな。

 

「諦めてんじゃねぇよッ!」

 

俺の叫びに、一同の視線が集中した。そうだ、俺を見ろ。アイツを救える俺を見ろ!!

 

「俺がアイツを元に戻してやる…!!」

「「ゼロ!!」」

「このままにしておいて良い訳無ぇだろ!」

 

ゼロアイを展開、その手に掴む。待ってろミラーナイト、今俺が……!

 

『待ぁてよ、ゼロちゃん』

「誰がゼロちゃんだ!」

『いやお前だろ!?』

 

瞬間、俺の前に拳が突き立てられて止められた。何のつもりだ、グレンファイヤー!

 

『何のつもりも何も、何の為に巨大戦力増やしたんだ。俺がいる、そうだろ?』

「だが……闇を祓うには、俺の光が無きゃ」

『炎だって存分に(ひか)らァ!……仮にお前じゃなきゃダメだったとしても。お前だけの場合と、俺とお前で挑んだ場合じゃ。成功率は違ってくるんじゃねぇか?』

 

そう言って再び拳を目前に突きつけてくるグレン。それを見て、俺は思い出す。

俺は1人じゃない。1人で出来ない事も皆なら出来る、だったら──

 

「1人でも出来る事を2人でやりゃ、もっと楽ってか!」

「そゆこと!行こうぜゼロ、アイツの目を覚まさせに!!」

「あぁ……!」

 

全く、俺も未熟だ。ナオに止められ、エメラナに諭され、そして今はグレンにまで。

だがこうやって、時に助け、時に止めてくれる。そんな存在がいるからこそ強くなって、そして強く在れるんだと。

親父。アンタ達もそうだったのか?

 

「デュワッ!!!』

 

今度こそ変身。紅蓮の炎と銀色の光を合わせて沈んでゆく闇へ。

待ってろ鏡の騎士。俺達が今、助けてみせる……!!

 

 


 

 

《───おや。来ましたか、早いですね》

 

ミラーナイトがその声を聞くのは何時間ぶりか、それとも何日振りか。もう彼には時間感覚も分からない。

暗闇に微睡む意識はカウントアップをとうに諦めた。なのに感覚だけが鋭敏になり、彼を苦しませる。

 

それを逆撫でするようにまた、少女の声が。

 

《良い(しら)せですよ、ミラーナイト。貴方を助けに“光”が降りて来ます》

『ひか、り……?』

《しかし困りました。まだ免疫が働き切ってないというのに、半端に救われては()()が──》

『なんだ。いったい、なにが』

《──已むを得ません》

 

瞬間、苦痛。

ベリアルに裂かれ、刺された傷から何かが入ってくる。

 

『ぐぉあぁっ……!?』

《心苦しいですが辛抱ですよ。じき、楽になりますから》

 

声はくすくすとまた笑う。だがミラーナイトからすれば堪ったモノではない。

中枢神経を侵していた闇が表層へ。吹き出、捩れ、全身を支配する。

 

《最後に一つ───光の名はゼロ、だそうです》

『ぜロッッッ……!?』

 

 ド ク ン ッ ! 

 

その名を認識した瞬間、支配された心の臓が一際強く波打った。

ゼロ、ゼロ、ゼロ。

ベリアルの憎悪が闇を通じて活発化し、ミラーナイトの意識を飲み込み、そして。

 

『ゼッロだとッォォォォッ!!?』

 

鏡の海の奥深く、底の底にて。

その怨念は爆発した。




鏡の星のゲート云々はオリジナル設定です
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