絶対UFZに入りたくないバルタンVS絶対加入させたいゼロ 作:スターク(元:はぎほぎ)
お父様に付き添ってUSAの会談に参加した事がある。討議の卓に就いた訳ではなく、会場となった星までただ付いて来ただけだけれど。
招かれた宿舎で、お父様が諸国の首相達と視察に回っている間、暇を持て余した私は庭にとある物を見つけた。
数センチだけ摺鉢状に凹んだ地面、虫の巣。図鑑で見た事のあるそれに、大きめの石が入り込んで壊していた。虫はそれを追い出そうと必死になって、でも出来なくて、どんどん巣は壊れて。
王女ともあろう者が人前で土遊びなどあり得ない。しっかりとそう教育されていたにも関わらず見ていられなかった私は、キョロキョロと周囲に人目が無いのを確認してから石を摘み上げたのだ。
唐突に消えた障害物に、虫は困惑したように顎を広げて静止する。時折ピクピクと首を傾けるその姿が愛らしくて、ついつい私はその場で覗き込んだままになってしまう。
「
……そんな私に、音も立てず気配も無く近付いて、声を掛けてきたおじ様。
それが彼と私が出会った、今のところ唯一の記憶だった。
「はわ……」
「シー。俺は王女様なんか知らないし、王女様も不審者の事なんか知らない。それで良いだろう?」
不敵に提案しながら、おじ様は懐からカプセルを取り出す。中に入っていたのは蟻のような小さな虫。
「見たところ腹を減らしてそうだ。食べさせてやりたいか」
「もしそうなら……お腹が空いてるなら満たしてあげたいです」
「分かった。コイツは基本何でも食べるが、その中でも大好物はこの羽虫になる。見てろ、バリバリ食うぞ」
「あっ」
彼が羽虫を放り込むと、それは流砂に飲まれてどんどん引き摺り込まれていく。中心で待ち受けるアリジゴクは餌を察知したのか、待ち遠しげに顎を開け閉めして獲物を望んでいる。
それを前にして羽虫は足掻く、足掻く。その足掻きこそが自分をより深みに落とすとしても、死んでなるものかと。
最初はワクワクして見ていたけれど、いつしか憐憫が上回っていた。同情の対象が、アリジゴクだけではなくなっていて。
気が付くと、今度は羽虫を摘み上げていた。
「……その行いが、アリジゴクにとって残酷な物だと分かっているか?」
言われてハッとした。私が今した事は、飢えた人に食卓を用意しておいて目の前で取り上げたのと同じだと。
見返せば、アリジゴクは不満げに顎を振り回してから巣の中に潜っていく。その姿と、掌で疲れ果てた様子の羽虫を交互に見比べ、私は今更迷う。
「わ、私は…可哀想で」
「……」
「助けたくて、でも、それは片方を助けない事で、あれ……?」
「おかしいって事が分かったなら、その羽虫をもう一回巣に入れてやるか?」
「それは違います!」
何故かそれだけは即答できた。一度この手で拾った命をまた放り出すなんて無責任だから。例えそれが世界の摂理としては正しくても、人としてはやっちゃいけない事だと思っていたから。
でもアリジゴクには尚も申し訳なくて、最後には俯いてしまう。そんな私の頭に乗せられた手。
「その理想論、忘れるんじゃないぞ」
「……え」
おじ様は否定しなかった。
私の矛盾を肯定してくれた。絵空事と断じながら、でも抱き続けて良い物なのだと、撫でてくれたのだ。
「羽虫を逃がして来てあげな。羽を休める場所に」
「あ、ありがとうございます!」
「そういうの良いから」
ペコリと頭を下げて、私は茂みを探しにその場を離れた。おじ様は尚もその場にしゃがんだままで、それが彼を見た最後の姿。
羽虫を生垣に止まらせて戻って来てみれば、おじ様の姿は既に無く。代わりにアリジゴクの巣へ、私が助けたのとは別の羽虫が捕らわれていた。おじ様が新たに放り込んだのだろうそれを、アリジゴクは嬉しそうに食べていた。
私のした事に意味はあったのか。子供心にそう自問自答し、眠りに就いたのを覚えている。
成長した今なら言える。意味の有無の問題ではない、私の行いに、私自身の手で意味をもたらすのだと。それが責任という物なのだと。
それを教えてくれたのが、あのおじ様だった。
外套を纏った黒髪の彼だった。
───バレット。
姿形こそ違えど、間違い無く彼だった。
「エメラナ?」
ゼロとグレンファイヤーが鏡の海へ降りた後、ふと呟いた言葉をナオに問われる。とはいえ特に意味を含めて出した名前ではないので、首を振って誤魔化す。
……なら何故、私は今彼を思い出したのか。
それはきっと、悶えるミラーナイトを見て思ったからだ。この痛みを、世界を覆う苦しみを、彼は全て理解しているのだろうかと。
(貴方にとって、どちらが羽虫でどちらがアリジゴクなのですか?)
ベリアル軍に蝕まれる私達の宇宙は、巣の中で惨めに足掻く羽虫に過ぎないのだろうか。だとしても、私達はそれでも。
「足掻きましょう、ナオ」
「……?うんっ」
その足掻きに
まずはミラーナイト。貴方を光の道へ引き戻します!
そんな私の想いへ答えてくれるように、鏡の海から光と炎が立ち昇った。
『ゼロォォオオオ!!!』
『お前なんかさっきとキャラ違くね!?』
『言ってる場合か!来るぞグレンッ!!』
鏡さんに導かれて来た水底もとい鏡底だけど、縮こまって座ってた筈のミラーナイトとやらが雄叫びあげながら襲いかかって来やがった!しかもなんかゼロの名前を呼んで俺は
っと鋭い蹴りぃ!あぶねぇな騎士さんよ!!
『ミラーナイト、落ち着け!俺達の話を聞くんだ!!』
『うるさい!私を見るな!こんな姿を見るなァ!』
『ぐっ……!』
『何やってんだよゼロ!!』
掴み掛かったゼロが膝蹴り喰らいまくってたので急いで引き剥がす。なんで反撃しねぇんだ!
『操られて負の心を増幅されているだけで、本来のアイツは正義の味方なんだ!痛みは負の心を刺激する、だったら全部正面から受け止めるしか無ぇ!』
『ぐむっ……一理無いとは言わねぇが、よッと!』
話してる間も相手はお構い無し。飛んできた黒い十字の刃を2人弾けるように躱し、少しの膠着状態となる。
それを会話のチャンスと見たゼロが、再度口で仕掛けた。
『“こんな姿”なんて言うな!お前の姿形に変な所なんて無い!』
『違う……闇に染まって…醜い………!』
『んな訳無ぇだろ!正義の為に戦った立派な勇者の姿だろうが…!!』
『今はもう、違うぅ…!!』
だが結果はまた空振りだ。もう聞く耳持ってねぇ、このままじゃゼロのダメージが増え続ける。
……なんか腹立ってきたぞ?
『オメーなぁ!!いい加減にしろよ!』
『は!?』
『グレン…!』
再度、間に割って入って仁王立ち。驚いて立ち止まった騎士さんに、今度は俺から叱咤してみた。
『そもそもオメー、闇の力に侵されても特に変な装飾とか付いたり体が変形した訳でもないらしいじゃん!何が醜いの!?いやマジで!!』
『グレン、多分そういう事じゃ……』
『何が……貴方に何が分かるゥ!!』
瞬間、打撃。渾身のグーが俺の左頬に突き刺さった。
痛ぇ。
『鏡に映るんだ!私の身体が!!』
『グレン!!』
次は右頬。
痛ぇ。
『闇のオーラが見えるんだ!それが、前と同じな訳があるものか!!』
鳩尾。思わずえずく。
痛ぇ、なぁ。
あ゛ぁ分かったよ。よーく分かったよ、ミラーナイトさんよ。
オメーが……!
『この──ッ』
「!?」
『根暗野郎がーッッ!!!』
『ガフッ!?』
『ミラーナイトォォォォ!!?』
ゼロの理屈は分かる。分かった上で、俺はそれでも拳を選んだ!後悔は無ぇが反省はする!!
『ぐっ……熱っつ……!?』
『あのさぁ!オメーなぁ!!誰かに言われて他人守ってその有様なら分からんでもねぇぞ!?その場合根性は無いけど!!』
倒れたミラーナイトへ更に口撃。
『でもそうじゃねぇんだろ!オメーはオメーの意思で、誰かを守ってそうなったんだろ!だったら誇れよ、
『ッ……!!!』
手前の意思で起こった事は手前の責任だ!それを取らなくてどうすんだよ、一々後悔してたら過去の自分が浮かばれねぇ!
なぁ、そうだろ!?
『──グレンの言う通りだ』
俺が問い掛けを口にするより早く、ゼロか隣に並び立ち言ってくれた。
『お前は“光”なんだ。その闇に苦しむ姿こそが、お前が誰かの希望となった姿の証なんだ!!ミラーナイト!』
『ぅ、ぐおぁぁ……!』
『おぉ!?』
すげぇ、ミラーナイトを覆う闇のオーラがちょっと薄れて光も見えた。けど足りねぇか……?
『頑張れ!俺達の光で浄化してやる!!』
『やるんだな、ゼロ!』
『ああ、手伝ってくれグレン!!』
『ホイ来たァ!』
頼ってくれるねぇ嬉しいねぇ。仲間ってのは良いモンだな全く!
と浮かれてる場合でもねぇや!!ミラーナイトさんをゼロが後ろから羽交締め、俺が正面から腕を組み合い封じ込む!んでもってゼロが光を発するのに合わせて俺も……ファイヤァー!!!
『グゥゥゥ………!』
『『うぉぉおおぉぉぉおおおおぉ!!!!』』
名付けて、“輝く炎のクロスフラッシュ”!俺達のこの身で宇宙が燃える、闇を照らせと荒ぶり吼えるゥ!
ばぁぁぁくねつゥゥァアアアア!
───上手くいった。
『ふぃ〜。骨が折れたぜ』
『お疲れ様。助かったぜ』
『良いって事よぃ』
変身を解除した身で、グレンファイヤーと共に鏡の海に浸かりながら見上げるは、天高く輝く巨人の威容。その頭部に刻まれた十字の瞳は、先程までとは違う金色の光を煌々と放っている。
鏡の騎士、ここに復活!ってな。
「ミラーナイト!もう大丈夫なのですか!」
『えぇ。ご心配をおかけしましたが、彼らのお陰で』
「うわーっ、ギンギラギンだ!全然さりげなくねー」
駆け寄るエメラナ達にミラーナイトが跪く。なんとも様になる絵面じゃねぇな、綺麗なモンだな。
とはいえこのまま蚊帳の外ってのもアレだし、ちょっと恩着せがましくいってみるか。
「どうだ!参ったか!」
『待て待て手柄独り占めすんなよ〜』
『ありがとう……!』
「ありがとうゼロ、グレンファイヤー!本当にどう言葉にすれば良いのか……」
お…おう。ちょっとぐらい難色示してくれるぐらい良いのに、そんな純真に感謝されちゃ反応に困るな。そんなキラキラした目で見つめられたら照れちまう。
礼はまだ早いぜ……って痛っ!なに訳知り顔で小突いてんだナオ、このっこのっ。
「……あれ。ゼロ、ブレスレットの光が」
「ああ、これな」
乱暴にナオの頭を揉みくちゃにしてたら、その手に嵌められていたブレスレットの変化にエメラナが気付く。2回の変身により、3つある光の内の2つが消え──ていない事についてだろうな。今の所消えてるのは1つだけ、んでもってもう一つが半分くらい弱まってるって感じだった。要は残量1.5回分。
「最初のグレンとの決闘では変身時間が短かったし、今回はダメージ少ないからな。上手いこと節約出来た!」
『俺のお陰ってヤツだな!見たか俺のファインプレー』
「感謝はしてるけど、そもそも最初の一回をお前との決闘に費やしてるからプラマイで辛うじてプラスって程度なんだ。悔しいだろうが仕方ないんだ」
『責任の遡及はルールで禁止だろ?!』
『……んー?』
実に幸先が良い、と思っていた矢先の事。ミラーナイトが何か違和感を持ったようで。
『おうどうしたミラーナイトさんや』
『背中が少し痒くてですね……それとお二方、海底に来られた際に
「見てねぇな。というか高圧環境だったからいる訳無ぇだろ」
『ですよね……』
『まぁガキンチョの事は置いといて、取り敢えず背中見せてみ……おーなんか付いてる』
「本当ですか!」
少女云々の話は気になるが、グレンが何かしら見つけたらしいので議題はそちらに移行。とはいえそう大事にはならねぇだろ、精々岩とかがくっ付いt『やっべバルタンの模様付いてるわコレ』ウッソだろオイ!!
「ナオ、エメラナと一緒にジャンバードに避難しろ!グレンはそれ離すなよ!!」
「ゼロはどうするのさ!?」
「ケースバイケースだっ!」
『ちょストップストップ!!今度は俺が闇に侵食されたりしねぇよな、大丈夫だよな!?!』
『ご安心を、すぐ封印します!鏡面展開……なっ!』
俺がゼロアイを変形させた銃を構え、ミラーナイトが鏡で付着物を囲い込もうとした瞬間。まるで取り憑いていた幽霊のように、ゆらりと人型の影が付着物から現れる。それはタッチの差で鏡障壁から脱し、中空で止まった。
「派手に暴れてくれましたね。くっ付いてる此方の身にもなって下さいよ、もう全身痛いんですから」
「お前は……何者だ!!」
「わざわざ情報を曝け出す愚行をすると思いますか?──ですがゼロ。
優雅に一礼をしながら、しかしこちらを冷めた碧眼で見下す少女。透き通るような緑色の長髪を靡かせ、彼女は再び口を開いた。
「私の名前は“ナナ”。お父様にのみ仕え、彼だけが頂点に座す世界を望む、そんなしがない小娘にございます」
バレット@昔「え、アントラーいるのか!?どこどこ!」
アントラー@本当にただのアリジゴク「うす」
バレット@昔「ただの同名かぁ……」