どろどろとしたものが、お腹にはいってくる。生暖かい、カビだらけのような乾いた肌が私の肌と擦れ合っている。すこし、嗅ぎなれた生ゴミのような匂いが鼻につく。低い呻き声と、汗が数滴、私に落ちる。
この路地裏で、病に侵された男は、その最後の生命を、私に強引に譲り渡そうとしているようだった。
行為を終えると、男は私に体を放り出した。ひび割れた唇からも、薄い胸板からも何も音は聞こえなかった。
男は死んでいた。少し安心したかのような、だが苦悶の表情で、死んでいた。私は仕事をひとつ終えた。
こんな世界で、一応とは言えども仕事を手に入れることが出来たのは幸運だったと思う。ましてや、この世界に迷い込んでしまった、普通の女子高校生にとっては、今こうして生きれている時点で奇跡に近いだろう。そして、正直、私はこちらの世界の方が、この現実の方がよっぽど、あんな世界よりマシかもしれないと思い始めている。
私は自分で言うのも小っ恥ずかしいが、顔が整っている方だった。そして、私はいわゆる「変わった子」だった。小中までは、勉強もそれなりにして、読書が好きだったから、先生といろいろお話したりして、多少癇癪とか喧嘩とかの問題を起こしたけれども、高校入学までは順調に進んだと言えた。
だから、高校生になっても、慎重にしていれば順調だろうと思っていた。だが、そんなぼんやりとした自信は、愚かに自分自身によって砕かれた。
高校生でも読書さえできればいいや、と偏差値が低い高校に行った私は、誰とも特に話すことも無く、友達を作ることも無く、ひとりで本をずっと読んでいた。
だが、それでも高校生の男というものは、私に話しかけてくれる。私はただの、良く味わった親切心みたいなもので話しかけてくれたのだとずっと思っていた。だから、私は正直に自分の話をしたり、質問とかに答えたりしていた。
そうして、なんやかんやで、私はその同級生の男とセックスをした。その男は別に賢くもなく、私と共通の趣味があったとかという訳ではなかった。ただ、私に優しくしてくれた。私が彼にセックスしないかと言われた時も、その対価として妥当だと思って私も承諾した。別に私は、彼と付き合っているという気はなかったし、愛しているという訳でもなかった。
彼とセックスした次の日に登校すると、彼はその事を、まるで大きな手柄を得たかのように、クラスのみんなに自慢げに言いふらしていた。
皆が、私を見つけた。私にはその視線がどんな意味を持つのか、その時は全くわからなかった。私は彼とのセックスをちょっとしたプレゼントのようなものだとばかり思っていたからだ。
男子からの視線が増えた。女子からの言葉が増えた。
学校に行くことが少なくなった。死にたいと思うことが増えた...
ずっと家にひきこもっていた。ある日の夕方、そんな私の家にあの男が来て、私にセックスを迫ってきたことがあった。私は訳が分からなくなって、逆らえなくて、優しかったはずの彼を思い出して、陰鬱な家にあの男をあげてしまった。
男は私の部屋に上がって、床に座って世間話みたいなことをした。私がいない間の学校の話を楽しそうに話した。私はそんな学校の話は、そんな話は知らなかった。嫌な話ばかり聞いてしまっていたのかな、とちょっと反省した。
一通り、話すと、彼は部屋の夕日に透かされた黄緑色のカーテンを閉めて、私をベットに誘った。私は服を脱いだ。彼も制服を脱いだ。私は彼を見た。やっぱり私には彼の感情が上手く読み取れなかった。
彼は私を押し倒した。ベットのシーツが背中に擦れた。さぼって長くなった髪の毛が邪魔だった。彼は私の胸に触れた。彼は私をまさぐって、セックスが始まった。私がぼんやりと彼を見ていると、彼は脱いだ制服からスマホを取りだして、こちらに向け始めた。私はやめて、って言った。
彼は帰って行った。夕日は私を馬鹿にしているようだった。
知らない男子たちを連れて、あの男はやってきた。あの男はスマホの中にいる私を私に見せて、私を嘲笑した。
家に引こもることもできなくなった。私の親はすでに私なんて見ていなかったし、家出した。
私の親は屑だった。私を連れ戻して、部屋に監禁した。親が仕事の時には、部屋で漏らしたこともあった。
私はもう限界だった。
私は自殺した。最後は、そう広くは無い窓、純白のカーテンを端に寄せた窓から、どこまでも続く青い空を見て、首を吊った。
気づいたら、ヨーロッパ風の街中の路地裏で寝転がっていた。腐臭と、誰かが咳をする音があちらこちらからした。
本通りに出て、乞食のような若い人に話しかけた。言葉はまるで、通じなかった。向こうの言葉もいっさいわからなかった。そもそも、その若い男は私の話を聞くつもりはなかっただろう。私を路地裏に無理やり引き込むと、私を乱暴に、力なく犯し始めたから。
ヤリチンは名誉のように扱われて、ヤリマンは侮辱されるのは何故でしょう?というより、別にみんなを愛しても良いと思うのですが。