影時間適正は後天的に付与される時がある。それはペルソナに目覚める事であったり、人工的に会得したりと、取り敢えずはこの2つだ。
ミタマの場合は前者であったようだ。ペルソナことイッポンダタラが覚醒したお陰でミタマは後天的に影時間内で行動する事が可能になった。
これはミタマにとっては+の出来事だ。
ペルソナに覚醒したはいいが、その力を振るう場所がないのではペルソナの習熟が出来ない。
力を手に入れたとはいえ、それはあくまでスタートラインに立っただけだ。
ゲーム風に言うならばレベルが低いといったところか。そんな訳でミタマは影時間を認識し、その中で活動出来ることに喜んでいた。
「1…2…3…4…」
そしてミタマは影時間内を探索した。幸いミタマが住んでいる場所は本編で舞台となる巖戸台がある港区とは離れている。
なのである程度大々的に散策をしても大丈夫だろう。基本的にシャドウは、タルタロスがある巖戸台付近にしか現れない。
仮に現れても今のミタマにはペルソナがある。タルタロスから溢れるシャドウは1体くらいだろうから、今のミタマでも対処可能だ。
「5…6…7…8…」
そして自分の家の近くを粗方探索し終えたミタマは、家から少し離れた広場に来ている。
家でペルソナを出すわけにはいかない。イッポンダタラは巨体であり、自分の部屋に出すのがギリギリだ。
しかもイッポンダタラの攻撃方法は物理系。そんなものを家の中で振るえば、たちまち我が家は崩壊するだろう。まあ魔法で合っても厳しいだろうが。
「良し…準備運動終わり!」
と、これまでの経緯を軽く話しているうちにミタマの準備が整ったようだ。
ペルソナを主体として鍛えるのが目標ではあるが、これから行う練習において、体を動かす機会がある。
なのでミタマは体の準備と、ルーティンとしての心の準備として準備運動をペルソナ練習の前に行っている。
「ふぅ………」
準備運動は済んだ。ならば今度は本格的な練習だ。ミタマは目を閉じると、自分の中に海があるのを想像する。
ペルソナには心の海という概念がある。そこはざっくりと説明するとペルソナが生まれ、ペルソナが還る場所だ。
だからイメージとしては海は最適だろう。
(イッポンダタラ……)
ミタマは想像する。自分の海の中にイッポンダタラが沈んでいるのを、そして自分はその海の中に手を突っ込み、自身の半身である相棒のが手を握った。そして…
「…来い!!」
思い切り心の海から引き上げる。するとイッポンダタラはミタマの手を握り返し、ミタマの海から浮上した。
ミタマの体から青く光る力の塊が流れ出す。それはやがて形を成し、赤と黒のカラーリングで体を染めた1つ目の鍛治に変化した。
「…まだまだ時間が掛かるな」
ミタマは自身の体から出現したイッポンダタラを見つめながらそう呟く。
ペルソナを出すにはまだまだ集中が必要だ。これに関しては仕方ないとミタマは思っている。
どんなことであれ、慣れない事をするのは大変だ。故にペルソナの召喚は、何度も何度も繰り返し行うことでスムーズになるよう努力せねばだ。
「さてと、召喚は成功。次は試運転だな」
今日は召喚に成功出来た。ならばペルソナの習熟度を上げるチャンスだ。そう思ったミタマはイッポンダタラ前に動かし、何もない所に体を向けされる。
「先ずは物理技だ、イッポンダタラ」
「オオォ!!」
ミタマがイッポンダタラに命じると、イッポンダタラは空をめがけて金槌を振るう。
…いつ見てもその迫力は凄まじい。自分の半身が頼もしいのは純粋に嬉しいのかミタマは頬を緩める。
「そこまで。次は俺に補助魔法をかけてくれないか?」
「オアァ!!」
「おお…!やっぱり凄いな!補助魔法!」
ある程度イッポンダタラを暴れさせた後、ミタマは攻撃を止めるよう指示する。
するとイッポンダタラは動きを止め、ミタマの次の指示を待っているようだ。何度か物理技を繰り返し放ったお陰か最初よりもキレが良くなってきた気がする。
もしそうだとしたらこの練習も無駄ではないという事なので嬉しい限りだ。
それはさておき、ミタマは次に自身の体にスクカジャをかけさせた。
「おおっと!やっぱり振り回されるな…」
スクカジャは身体能力と集中力を向上させる。ミタマが先程準備運動をしていたのも、これのせいだ。
何の準備せずにこの状態で体を動かせば、ミタマの体はズタボロになるだろう。故に準備運動は必要不可欠だ。
と、少し話は逸れたがスクカジャの効果は凄まじい。それは前にジバクレイと交戦した時にも薄々感じていたが、こうして改めて実践するとその凄さが分かる。
「取り敢えず、軽く走るか」
いきなり上級的な行動は避けた方が良いだろう。なのでミタマは、スクカジャが効いているうちは最低限の動きを意識して慣らしていく。
何度か途中でスクカジャが切れたが、その都度イッポンダタラにスクカジャをかけ直して貰った。
「ハァ…ハァ…今日はこんなところか…」
ミタマは大の字に寝転がると、息を荒げながらそう言った。
少しの間休憩すると、立ち上がり今度はペルソナを自分の心の海の中に沈めるようにイメージする。
するとイッポンダタラは、ミタマの体に重なるようにして消えていった。
「疲れた〜ベンチベンチ…」
ミタマは少し覚束ない足取りで、近くのベンチに向かう。ペルソナの召喚、維持、運用、帰還。どれもが今のミタマには重労働だ。
明日も疲れが残るかな?そんな事を思いながらも、こればかりはサボるわけにはいかない。
強くなる。それが今の自分に出来る抗う術なのだから。
「おさらいでもするかな〜」
あれから少し経ち、ミタマの体力も戻って来た。体がまだ若いので回復も早いようだ。
そんなどうでもいい事は置いておき、ミタマはイッポンダタラの成長方向、そして耐性について思案する。
ゲームとは違いステータスを見ることは出来ないが、何となく自分のペルソナが何に弱く、そしてどのような事が得意か把握出来る。
分かりやすく表示するとこうだ。
ペルソナ イッポンダタラ
物銃火氷雷風念核光闇
耐 耐弱 無
物理技◎ 補助系◯ 回復系△
ステータスとして見せるとこうなる。耐性は3つ。弱点は1つ。かなり優秀なペルソナと言えるだろう。
それはミタマも自覚している。何より即死魔法が多くある、光と闇の片方に無効耐性があるのが喜ばしい。
戦闘にて、どちらの即死魔法が来るのか意識しながら戦うのは精神を著しく摩耗させる。
(考えただけで嫌気がさすな…)
なのでイッポンダタラの耐性には感謝だ。光属性の魔法にだけ、気を配っていればいいのは単純に助かる。
闇属性の魔法は耐性で弾く事が出来るので、ある程度無視して良いだろう。
貫通等もあるがその時ははっきり言ってゲームオーバーだ。今のミタマに対策できる事はないのでそれは保留。
「弱点突かれるってどんな感じだ?」
イッポンダタラには氷結属性の攻撃に弱いという特性がある。一応家にある氷をイッポンダタラに当ててみたが、別に何の変化も無かった。
やはりペルソナやシャドウから食らう技でないと実感出来ないのだろう。なのでこれも保留だ。
「物理技中心かぁ~」
贅沢な悩みだとは分かっているが、攻撃属性が1つだけなのは心配である。
何しろこのペルソナというゲームは物理に耐性を持つ者が多い。だからこそ攻撃属性は複数あるくらいが一番なのだ。
「うーん…貫通か、もしくは特殊な物理技とか覚えないかな…」
ペルソナ以外の話になるが、物理と他の属性を併せ持つ技等もある。
イッポンダタラは本来ならばそんな技を覚えないが、自分のイッポンダタラは専用のペルソナだ。もしかしたら何か特殊な技を覚えるかもしれない。
まあ最悪覚えなくてもこの力で頑張っていくしかないのだが。
「補助系はまあまあ覚えそうかな?」
少なくとも適正はあるので、三種のカジャ系は覚える予感がする。マハ系やヒートライザ等は覚えるか微妙である。
けれどもスクカジャがあるだけでかなりお釣りがくる。なのでミタマは余りこの事を気にしていない。問題は…
「回復技は…まあ最低限か…」
そもそもゴリゴリのアタッカーである、イッポンダタラに攻撃以外のものを求めるのが間違いなのかもしれない。
ディアは覚えているので何も覚えないよりかはマシだろう。というか1つのペルソナに多くを求めるのがおかしいのだ。
「あー…こうしてみると分かる。複数持ちへの妬み〜」
ペルソナ3以降では複数のペルソナを所持できるのは主人公だけである。
それで色々と思うところがある仲間がいたが、その気持ちも当事者になると分かるというものだ。
とは言っても力があるだけ恵まれているのだ。ここは素直に、自分のペルソナを鍛える事を第一としよう。
「よし、帰るか!」
改めてそう決心したミタマは、不気味な棺桶が広がる帰り道に消えていくのだった。
とりあえず4話まで出来たので毎日投稿。