影時間。ミタマは二匹のシャドウに追われていた。見た目は臆病なマーヤに似ている、テケテケみたいな姿をしたシャドウだ。
思いっきりミタマを追いかける様は臆病とはほど遠いが。
(いきなりは反則だろ!!)
いつもの通り広場に向かう最中に街を通る。その時に路地裏にいたシャドウ達と目が合ったのだ。
後は今の通りだ。シャドウは見た目がホラーなので、いきなりは本当にビックリする。走っている疲れとは別に心臓がバクバクだ。
(…クソッ!此処も駄目だ!)
ミタマが今、逃げているのは他の人達を巻き込まないためだ。象徴化しているとはいえ、人がいる所で自身のペルソナを暴れさせるわけには行かない。
試した事はないし、試す気はないが象徴化した棺桶の耐久力は未知数であるからだ。
少なくとも、傷つけたら碌なことにならないのは分かる。
(──!あった!!)
そうして逃げながらも戦えそうな場所を探していると、象徴化している人がいない場所を見つけた。
直ぐ様其処にミタマは転がり込んだ。
「ハァハァ…まだ来てないな…」
ミタマが見つけた場所は神社であった。夜中に神社にいる人はいなかったようだ。
広さもイッポンダタラを出して、暴れさせても大丈夫そうだ。荒い息を整えながらもミタマはこの場所を観察する。
そうして呼吸がある程度整った直ぐ後、シャドウ達も遅れてこの神社に辿り着いた。
「--¶¶_Ε-!!」
「Ξ>>%∑%?」
(──距離はまだある)
追い詰めた。そう判断したシャドウ達がミタマに襲いかかろうとする。飛びかかってくるシャドウを見ながら、ミタマは逸る気持ちを抑え何時ものルーティンに移った。すると…
「ペルソナ」
『«№‾‼°!?』
突如ミタマから溢れ出た青い奔流に驚くシャドウ達。ミタマから発せられる力をはらんだ風は容易くシャドウ達を吹き飛ばす。
(…召喚完了)
いつもとは違い実戦でのペルソナ召喚。その違いによりペルソナが出せるか少々不安であったが、どうやら普段の練習の成果が出たらしい。
その証拠にミタマの直ぐ傍には頼れる半身である自分の映し身。イッポンダタラが佇んでいた。
「∥ρ±“§…?」
「¤™×"<¢…」
(…どうやら、戸惑ってるみたいだな。なら…)
今まではただの獲物としか思ってなかった人間。しかしその実態は自分達を脅かす存在であった。その衝撃は大きく、2体のシャドウ達は戸惑い、恐れをなしている。
その隙を見逃さず、ミタマは手堅く自身にスクカジャをかけた。
(──暴れさせるか)
「ォォオオオ!!!」
スクカジャのお陰で研ぎ澄まされた集中力により、先ずはイッポンダタラを暴れさせる事にしたミタマ。敵は複数。固まった状態から離す事にした。
「-∌∌∑!?」
「ΖΞ︶…!」
(片方は浅いか…)
暴れまくるイッポンダタラの攻撃は、威力はあるが命中率に難がある。なので片方のシャドウには少ししかダメージを与えられなかった。
だがもう片方のシャドウには、イッポンダタラの持つ金槌がクリーンヒットしたらしく、大きく後ろに吹き飛ばされる。
「∏№·!!」
「おっと」
「オオオァァ!!」
ダメージの浅かったシャドウがミタマに攻撃を仕掛ける。殺られる前に殺るの精神だろう。
しかしスクカジャとペルソナを降魔させた今のミタマにはその攻撃がスローに見える。難なく爪の攻撃を避けると返す形でイッポンダタラの金槌を思い切り叩きつけさせる。
「£\>×!?」
「もう一発だ!イッポンダタラ!!」
「オオオァ!!」
「†©±±‡……」
叩きつけられた攻撃に怯んだシャドウ。ここが決め時と、ミタマは駄目押しとしてイッポンダタラに命令を送る。その声に応え、イッポンダタラはトドメの一撃を与えた。
(先ずは一匹…)
消えゆくシャドウを視界の隅に映しながらも、先程吹き飛ばしたシャドウの方向に目を向ける。
どうやら今立ち直ったようだ。これで一対一。いやペルソナを含めれば二対一か。故に、後は消化試合であった。
「∏¶‾Ξ‾……!」
「………ふぅ…消えたか…」
もう片方のシャドウも片付いた。先程食らった攻撃が後を引いていたのか動きも鈍かった為、容易く葬ることが出来た。
念の為辺りを確認する。イッポンダタラも召喚したままだ。しかしその心配は杞憂であったようで、ミタマが間借りした神社は静寂に包まれていた。
「はぁ…心臓に悪い…!」
敵にいないことを確認したあと、ミタマは一気に張り詰めていた精神を緩めた。
いきなり現れるのは本当に勘弁してほしい。
まぁ、本物の幽霊に会って何やかんや撃退した経験はあるが別にそれで心霊現象に慣れた訳では無い。怖いものは怖いし、ビックリする。
「今日は帰るか…」
シャドウとの戦闘は快勝に終わったが、そこに至るまでの道程が大変だった。命を賭けた追いかけっこなど最悪だった。なので今のミタマに何時ものようなペルソナ練習をする気力は残っていない。
というわけでミタマは、ペルソナを戻そうとイッポンダタラを見るのだが…
「お?何か覚えてる」
どうやら先程の戦闘によりイッポンダタラが強化されたらしい。覚えたスキルは補助系魔法のスクンダ。自分以外にかける弱体化魔法である。
これをかけられた敵は身体能力と集中力がガクッと下がるだろう。
「おー……でも使い道が…」
そうホイホイと敵シャドウには遭遇しない。なので自分にかける強化魔法のように練習は出来なさそうだ。しかし有るのと無いのとでは雲泥の差。
何時かは役に立つ機会があるかもしれない。そう思うことにしてイッポンダタラを自分の中に戻した。
「お騒がせしました!失礼します!!」
神社を出るときに、一応ではあるが謝罪と礼を尽くしておいた。
ペルソナ世界には基本的に出て来ないが、他の作品では神仏の類が出てくるのがアトラス世界。
なのでこの行動も無駄ではないだろう。やらなかったせいで呪われた、なんて自体には陥りたくはない。
こうしてミタマのシャドウ初戦闘は終わった。
【混じり者か】
その戦闘とミタマを誰かが興味深そうに見つめていた。
「嘘だろ……」
シャドウとの戦闘を終えた帰り道。ミタマは頭を抱えていた。その原因は目の前に落ちている物が関係している。
青く妖しく、それでいて惹かれるような淡い光を放つ羽根状の物体。ミタマはこの物体に心当たりがあった。
「ええ…こんな所に落ちてるものなの…?」
付けられた名称は黄昏の羽根。この物体を取り込んだ機械類は影時間内でも正常に機能するという便利アイテムだ。これはペルソナを呼び出す召喚器等にも使われているが、それは今関係ないので一旦横に置く。
「………本物だよなぁ…」
頭の中にある記録とも合致する。それ故に困惑はより一層だ。うんうんと悩むミタマ。すると…
「あっ、でも…おかしくはないのか?」
黄昏の羽根は確かに貴重品である。しかしペルソナ3にて黄昏の羽根を使った機械は非常に多い。召喚器から果ては趣味のバイクに使っても咎められない程に。
それに黄昏の羽根を使っての研究は沢山行われていた筈だ。その時にもかなりの黄昏の羽根を使ったと考えられる。
故にミタマはこう結論付けた。
「貴重ではあるが…別に珍しくはない…か?」
現に目の前に落ちている。なので探そうとすれば手に入れられる。そのくらいの物体なのだろう。
まぁ黄昏の羽根の大元であるニュクスが巨大なのだ。それから剥がれ落ちる欠片等幾らでもあるだろう。
さて自分を納得させる仮説は出た。後は目の前に落ちている物をどうするかである。
「…放っておくのもな…」
単純に興味もある。なのでミタマは足元に落ちている黄昏の羽根を拾い上げ、ポケットの中に仕舞った。
…本当に今日は色々な事が起こる日だなとミタマは帰路につきながら思うのだった。
黄昏の羽根って結構使われてるから独自解釈。