デビソナ!   作:ニンカタ

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転換点

 

 

 「ハァハァ……」

 「落ち着いたか?人の子よ」

 「ええ…何とか…」

 

 辺り一面、白い空間。其処には倒れ伏すミタマと金色の甲冑を身に着けた人ならざる者が居た。

 右手には宝塔。左手には三叉戟(さんさほこ)。そして見上げる程の巨大な体躯。

 

 「改めて名乗ろう。我は四天王が一人。北の方角を守護する者。毘沙門天である」

 

 赤く染まった顔をミタマに向けながら、毘沙門天はそう自己紹介をした。ただ名乗りを上げるだけでも、年老いて貫禄のあるその姿からは圧倒的な力を感じる。

 

 「むぅ…もう少しか…」

 

 未だに気圧されている様子のミタマを案じてか、毘沙門天は自身から発する威圧的な力を抑え込む。

 

 「済まぬな…我も人の子に会うのは久方振りである故、少々力加減を忘れている」

 「い…いえ…」

 

 洒落にならない。それが最初に出た感想であった。毘沙門天からしたら抑えているつもりだろうが、それでも話すのがやっとだ。

 毘沙門天。ペルソナシリーズでは登場しない方だが、他の作品である女神転生等では良く目にする名前だ。四天王の中では最上位であり、何かと優遇されている。

 ペルソナ世界にも神仏は居るかもしれないと、ミタマは考えていたが本当に存在するとは…

 

 「…私に何の御用でしょうか…?」

 「よい、余り畏まるではない人の子よ」

 

 となると、次に気になるのは何故自分に接触してきたかだ。一応心当たりとしては先日のシャドウ騒ぎだ。後から調べた所毘沙門天を祀っているらしい。

 なのであの時に、神社内で暴れたのが悪かったのかと慎重に言葉を選ぶながら伺いを立てる。

 

 「それにお主の戦も咎めはせん」

 

 …どうやら自分の考えている事は全てお見通しのようだ。

 シャドウとの戦いの件ではない。後、話しやすいように話せ。要約するとこんなところか。

 

 「…分かりました。では此方も改めて、自分に何の用ですか?」

 「うむ。それはお主に聞きたい事があったからだ」

 

 ミタマの和らいだ態度に満足したのか、毘沙門天は本題に入る。自分に聞きたい事とは、とミタマが毘沙門天の言葉を疑問に思っていると…

 

 「お主には他の世界の記憶があるのではないか?」

 「!!…それは…」

 

 ペルソナについてではないとしたら、そうなるであろう。しかし自分の状況までも見透かされたのは予想外だった。

 

 「稀に居るのだ。お主のような混じり者がな」

 「…混じり者?」

 「ああ。混じり者とは─」

 

 難しい言い回しが多かったため。要約すると自分のように異なる世界の知識や記憶を持った魂と、元々其処に居た人物の魂が混ざる事によって生まれる存在を混じり者と云うそうだ。

 

 「そしてお主のような者が現れる時、必ずと言っていい程に何かが起こるのだ。…心当たりはないか?」

 「……あります」

 「矢張りか」

 

 自分が知るこれから起こる異変。それについて毘沙門天は尋ねたいのだろう。

 …これは僥倖だろう。毘沙門天に直接相談を出来る機会等早々ない。故にミタマはこれより来る滅びの月。ニュクスについて知る限りの事を話した。

 

 「………成程。夜な夜な現れる異界はニュクスなる者の仕業と…」

 「はい。影時間と言います」

 

 ニュクスについて、影時間について。思いつく事は話した。全てを話し終わった後、毘沙門天は顎に手を宛て、考え込むような仕草をする。

 

 「…先に言っておく。ニュクスなる者の封印は不可能だ」

 「なっ!?」

 

 四天王達は封印術に長けている。なのでもしかしたら、その技術でニュクスを封印出来るのではとミタマは考えていた。しかしそれは甘い考えであったようだ。

 

 「死の概念とも云える存在(ニュクス)。この者をどうにかする術はない」

 「・・・」

 

 四天王達でも届かない存在。今更であるがニュクスの凄まじさを知り、ミタマは愕然とする。

 自分を圧倒する目の前の存在でも太刀打ち出来ないのかと。

 

 「しかし、その前ならば可能だ」

 「…その前?」

 「ニュクスなる者は分裂しているのだろう?」

 「はい、そうで─!!」

 

 ニュクスに対抗するにはやはり…と考えていると毘沙門天が続きを話す。

 説明している最中にミタマも気づいたのか、ハッと顔を上げる。

 分裂したシャドウ。作中では大型シャドウと呼ばれているニュクスの欠片達。ニュクスにばかり目がいきその存在を忘れていた。

 確かに大型シャドウ達が集まった事によりニュクスが復活するのだ。ならばそもそも復活を阻止すれば良い。

 

 「この方法なら!」

 「間接的にではあるが、ニュクスの封印とも言えなくはないな」

 

 光明が見えた。大型シャドウ達を封印する際にも問題点は幾つかあるが、どうしようもない存在だと思っていたニュクスに対抗する術がある。

 それは今まで暗いニュースばかりだったミタマにとっては朗報であった。しかし…

 

 「ふむ。喜んでいるが封印はどうするのだ?」

 「え?それは毘沙門天様が…」

 「協力はせぬぞ」

 「え…」

 

 毘沙門天はあっけらかんとそう言った。協力してくれるとばかり思っていたミタマからしたら、正に青天の霹靂だ。

 

 「な、何で…?」

 「ニュクスなる者は人の手より生まれた。ならばそれに手を貸すのは道理が通らぬ」

 

 毘沙門天は云う。人間達が呼び出した存在ならばそれは人間達が解決する問題だと。

 

 「でも…それじゃ…」

 「その結果。世界が滅ぶ事になれども、我は気にせぬ」

 

 価値観が違う。毘沙門天にとっては世界の滅亡や人間の生き死には、余り頓着するところではないのだ。

 

 「じゃあ…何で…?」

 

 自分に希望を持たせるような事をしたのか、震える声でミタマは毘沙門天に問いかけた。その質問に毘沙門天は…

 

 「興味があったからだ」

 「────」

 

 好奇心。それ以上の感情は無かったらしい。神や悪魔は人とは違う価値観を持つ。それを知ってはいた筈なのに、直に体験するまでミタマは理解してなかったようだ。

 本当の価値観の違いについてを。

 

 「さて、知りたい事は知れた。感謝するぞ人の子よ」

 「待っ─」

 

 どうする?説得するか?でも何を担保にして?自分の知識は先程与えた。毘沙門天が欲しい物?それも思い付かない。思い付いたとしても用意出来るか。

 

 「それでは─」

 

 迷っている暇はない。ここを逃せば二度と毘沙門天とは会えない気がする。ならば…

 

 「──アンタを倒せば言う事を聞くか?」

 「ほう」

 

 その言葉を聞くと毘沙門天は振り返り、ミタマの目を見る。

 

 「ぐっ…!!」

 

 ミタマに重圧がのしかかる。見られているだけなのに体が軋むようだ。しかし耐えなければならない。ここで毘沙門天を逃がせばニュクスへの対処法は無くなるのだから。

 

 「ハァハァ…ぐぅぅ…!!!」

 

 根性。それしか頼るものはない。ペルソナを出そうにも集中出来ないので、召喚体勢に移れない。

 

 「…………」

 

 毘沙門天は見続ける。今では立ってすらいられない哀れなか姿のミタマが藻掻くさまを。そうして暫く経った後…

 

 「フフ…ハハハ!ハハハハハ!!!」

 

 面白そうに毘沙門天は声を上げた。久方ぶりだ。自分に直接挑発を仕掛けてくるような輩は。毘沙門天はその事実が楽しくて仕方なかった。

 策がある訳ではない。力がある訳でもない。ただただ自分を引き止めるためだけの言葉。

 

 「ふぅ…良いだろう。貴様の挑発に乗ってやろうではないか」

 

 一通り笑いあげると毘沙門天はミタマの挑戦を受け入れた。しかし今から戦うような素振りは見せなかった。

 これは単純に毘沙門天の楽しみのためだ。弱者である今のミタマを倒しても、楽しくはないという完全な独りよがり。故に…

 

 「…ふん!」

 

 倒れているミタマの右手を見ると何か力を送る。するとミタマの手の甲には◆の刻印が浮き出てきた。

 

 「その刻印は、我等四天王が保有する異界に通じる証。その手に刻まれた刻印が貴様を導くだろう」

 

 そう言い残すと毘沙門天は今度こそこの場を後にした。その胸中にはあの童が何処まで喰らいついてくるのか、その期待心に満ち溢れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 「ハッ…!」

 

 目を覚ますとベッドの上であった。見える光景からも自室であろう。

 夢の中。毘沙門天はそれを通じて自分に接触してきたらしい。

 

 「ハァハァ……きっつ……」

 

 体中が汗だくで気持ち悪いが、今のミタマに動く気力はない。なので今は疲れを癒やす事に専念するのだった。

 

 (葛葉神社か……)

 

 夢の中で毘沙門天に命じられた、行くべき場所の名を思い浮かべながら。

  




ニュクス本体をどうにかするのは無理。ならばその前に、どうにかしようという考え。
ペルソナ3のリメイクが出る前にこの発想だけは出して行きたかったので急いで書き上げ。
続くかは反響次第。
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