デビソナ!   作:ニンカタ

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偶に書きたくなる。


業魔殿と仲魔

 

 如何にも上流階級が通っていますよ、と言いたげな雰囲気を醸し出しているホテルの前に自分はポツンと立っていた。余計な記憶のせいで精神年齢やらは高いほうだとは思うが、流石にこのような豪華絢爛なる場所へと足を踏み入れるのには少々気が引けた。

 さて、自分こと赤口ミタマのどうしてこのような場所へと足を運んでいるのか、それは護さんからの紹介が理由であった。ホテル業魔殿。此処のオーナーをしているヴィクトルという男性は、これからの活動に於いてとても役に立つであろうと、昔の縁を伝って交渉をしていたらしい。

 まあ確かに、葛葉ライドウさんも悪魔合体やら何やらで助けられたのは記憶の中の映像から知っている。こと悪魔関連についてはプロフェッショナルな人物だ。性格も知る限りでは問題はない。故に協力を仰ぐのは当然と言えるのだが…

 

 「勇気居るなぁ…」

 

 ホテルの前でたたらを踏む。年齢にしては大人びている方だが、所詮根は小市民だ。なので単純に、自分の住んでいる階級とは違うランクの場所に入るという事そのものに抵抗がある。とは言ってもダラダラとホテルの前で突っ立ていても迷惑だ。此処は勇気を出す時、深呼吸を一回したあとに、自分はホテル業魔殿の扉の中へと入るのだった。

 

 中に入ると、黒いスーツを身に纏った老齢の男性が出迎えてくれた。所作の一つ一つが丁寧でいて、何処か気品がある。取り敢えずその男性に、護さんから予め渡されていた封筒を渡した。初老の男性は一言断りを入れると、中身を出して、同封されていた書物に目を通した。

 内容を見ると少し目を開いた後に、此方を見る。まあ何処まで知らされているかは分からないが、こんな子供がいきなり来たら驚くよな。中身を読み終えたのか、男性は器用に封筒の中へと綺麗に畳んだ書物を再び仕舞い入れると、自分に向かって後に付いてくるようにお願いをした。多分案内された先にヴィクトルさんが居るのだろう。他のお客さん方の視線も気になってきたところだ。

 自分は案内役の人の言葉に頷くと、その後をついて行った。

 

 「此方にて、少々お待ち下さいませ」

 「案内、有難う御座いました」

 

 案内された場所は小さな個室。とは言ってもこのホテルの基準での小さな個室なので、普通の人が想像するよりもとても広かった。それに置いてある家具の一つ一つも、一目で分かるくらいには高級そうだ。

 フカフカのソファへと座ると、なるべく動かないようにした。変に動いて貴重な物品を壊したりしたら、心臓が止まってしまうだろう。なのでヴィクトルさんが来るまでの間、自分は石像のように微動だにしなかったのだ。

 

 そうして少しの間、個室で待っていると、自分が入ってきたドアとは別の、書斎がある方のドアが開いた。

 病的なまでの白い肌、そして特徴的な黒いマント。自分の記憶の中にある人物像ととても似ている。その男性は自分を待たせた事を詫びると、自己紹介をした。

 

 「吾輩の名前は…知っているかもしれぬが。改めてだ。ヴィクトール・フォン・フランケンシュタイン。このホテル業魔殿のオーナー兼悪魔研究をしている」

 

 イメージ通りの姿に内心安堵しつつ、自分からも改めて自己紹介をする。多分護さんから粗方の事は聞いているだろうが、自己紹介には自己紹介で返すのがマナーだ。ヴィクトルさんは自分の自己紹介を聞いた後に、口を開いた。

 

 「さて。大体の事情は聞いているが、矢張り本人から聞きたい事もある。故に何個か質問したい事があるが、構わぬか?」

 「はい」

 「では先ず──」

 

 そうしてヴィクトルさんからの質問に全て答えた後、ヴィクトルさんは顔を俯かせた。そしてブルブルと体を震わせた後…

 

 「素晴らしい!!!実に興味深い現象だ!いや、これまでは異界自体が少なくなり悪魔の研究が滞っていたのだ。まあそれも時代の変化故仕方ないとは思っていたが、矢張り研究者としては物足りぬ日々であった。其処にだ!知覚できない!選ばれた者しか認識する事すら出来ない異界があるときた!!実に興味を唆られる!悪魔を見る機会が減り、吾輩自身不満が溜まっていたのは自覚していたが、此処に来て新たな現象に立ち会えるとは思わなかったぞ!!感謝する赤口ミタマよ!でだが、シャドウというものに関しての個人的な見解ではあるのだが──」

 「あっ……はい…」

 

 研究者にとっては何も調べられない事がストレスであったのだろう。イキイキとして色々な持論を語り始めるヴィクトルを見ながら、これは止めても無理なやつだなと判断したミタマは、適当に相槌を打ちながら、ヴィクトルの長台詞を聞き流すのであった。

 

 

 ヴィクトルの語りが一段落した時、ミタマはここだと思い、バックの中から取り出した小箱を見せる。何かと思ったのか、ヴィクトルは不思議そうな顔をした後、中身を見ると目の色を変えた。

 

 「黄昏の羽根。影時間を生み出した存在から剥がれた欠片です」

 「これが…!」

 

 ヴィクトルはミタマに断りを入れると、箱の中から黄昏の羽根を取り出し、まじまじと見つめた。どうやらお気に召したようだ。前に拾ってからどうしようか悩んでいたアイテムではあったが、餅は餅屋。上手く活かせそうな相手に譲渡した方が良いだろう。あわよくば恩も売れるし一石二鳥だ。

 

 「この黄昏の羽根だか…」

 「勿論、お譲りします」

 「有難い…!」

 

 誕生日プレゼントを貰った少年のように目を輝かせながら、ヴィクトルはミタマが用意した小箱の中に改めて黄昏の羽根を仕舞う。

 

 「…ふむ。貰ってばかりでは気が引ける。故に何か望みはあるか?」

 「あ、それなら」

 

 今度は封魔管を取り出す。これから戦うのに仲魔1人しかストックしておけないのは心許ない。なので封魔管と似た何らかの契約道具がないか尋ねてみると、

 

 「封魔管か。これならば確か…」

 

 どうやら封魔管が置いてある様子。封魔管といえば葛葉しか使わない道具かと思っていたが、別にそうでもないらしい。意外な収穫があり、内心喜んでいると。

 

 「この後、時間は空いているか?」

 「ええ、大丈夫ですけど」

 

 ならば付いて来いとヴィクトルはマントを翻しながら、書斎近くのドアを開ける。その後を付いていくと、地下に降りるエレベーターのようなものがあった。中に入り少し経つと、扉が開き、ホテルの豪華な内装とは違った、質素な研究室が目の中に入った。

 

 「業魔殿にようこそ」

 「此処が…」

 

 初めて見る多種多様な機械に目移りする。どれも悪魔について調べるものなのだろうが、見ただけでは全然分からない。研究者でもないので当たり前だが、不思議そうに辺りを見回した。

 

 「赤口ミタマよ。確か仲魔はまだ居ないのだったな」

 「…あ!はい。異界にはまだ入ってないので」

 「ならば丁度いい。此処で初めての仲魔を与えよう」

 「え?」

 

 

 

 

 

 体の動きを邪魔しない最低限の防具。特に心臓辺りには硬い板のようなものを装備している。手に持っているのは短剣。他にも武器は沢山あったが、今の自分の肉体ではナイフくらいのものしか持てない。単純に重くて扱えないのだ。個人的には扱いやすい鈍器とかが良かったが、持てなかったので断念。そうして準備運動がてら軽く体を動かしていると、

 

 「聞こえているか?」

 「はい。聞こえてます」

 「よし。ではこれから、悪魔を召喚する」

 

 今居る場所は辺り一面白色の四角い部屋。如何にも実験とかで使いそうな場所だ。入ってきた扉が閉まる音がする。基本的に悪魔とはMAG濃度が高い異界のような場所にしか現れない。だがこの部屋はそのMAG濃度を弄れるらしく、一時的にではあるが悪魔が行動出来る環境を再現出来るらしい。なのでこれから現れるのはヴィクトルさんが研究用にストックしておいた、本物の悪魔だ。

 

 与えるとは言ったが、契約する悪魔との上下関係は絶対に付けなければいけない。でなければ、最低限の信頼をおかれず、寝首をかかれる事になるとヴィクトルさんは言った。

 自分からしても有難い話。敵は一体と聞かされている。これから挑む異界にて、一対一の状況が作れるとは限らない。故に此処で、しっかりと悪魔との戦闘を経験しておくのはプラスだ。

 

 「召喚。妖精ジャックフロスト」

 「ヒーホー!」

 

 MAGが形を成して権限したのは、白い雪だるまのような悪魔であった。

 

 「ペルソ──」

 「ヒホ!」

 

 何時も通り先ずはペルソナを召喚する。しかしそれよりも早くジャックフロストは動き、自分の前で白い息を吐いた。召喚は出来なかったが、降魔は出来た。なので生身で受けるよりかはマシではあったのたが…

 

 (う…動けない…!)

 

 氷結属性。それはペルソナイッポンダタラの弱点だ。今まで弱点を突かれるという感覚は良く分かっていなかったが、これは不味い。全身から力が抜けていく。気力で何とか立ち上がろうとしても、体が言う事を聞かないのだ。

 その隙を相手が見逃す筈もなく。ジャックフロストは拳を振り上げた。

 

 「死ねホー!」

 

 冷気を纏った拳が腹に命中する。2発目の弱点攻撃。しかも鳩尾に食らったせいか、今度は視界が安定しなくなる。拳の威力は凄まじく、自分の体は実験室の壁へと叩きつけられた。受け身を取る余裕等無かった。故に壁にぶつかったダメージが諸に来た。

 

 「トドメだホー」

 

 殴り飛ばされたお陰で距離は開いたが、それも直ぐに埋められる距離。体がまだ立ち直っていない状態ではガードすら難しいだろう。

 

 (ペルソナだけなら……!)

 

 体は動かない。ならばそれは諦める。なので神経を全てペルソナへと集中させた。

 目の前で再びジャックフロストの拳を振り上げる。タイミングを間違えるな。自分自身にそう言い聞かせ、ペルソナへと命令を下した。

 

 (スクンダ…!)

 「ヒホッ!?」

 

 |身体能力低下魔法()()()()。前に考えていた使い方を実行する。ジャックフロストはいきなり変わった自分の体の動きに戸惑い、拳をあらぬ方向へと振り下ろした。

 今度はジャックフロストに隙が生まれる。その隙を逃せば死ぬ。懇親の雄叫びと共に自分のペルソナの名前を叫ぶ。するとイッポンダタラはその叫ぶに応え、思い切りジャックフロストの腹部に、金槌での攻撃を繰り出すのだった。

 

 「ヒーホーーー!!?」

 「ハァ…ハァ…スク…カジャ…!」

 『ウオオ!!』

 

 攻め手に移るのは後。先ずは息を整えるのと、自分に強化魔法を掛けるのが先だ。回復魔法もあるが、回復量も少ないし、一手無駄にするだけだと判断し、此方にした。そのお陰か頭の中が少しクリアになった。集中力も上がり、思考も早くなる。

 

 『フンッ!!』

 「痛いホ!?」

 

 吹き飛ばされた先で立ち上がろうとするジャックフロストに、イッポンダタラが持っていた金槌をぶん投げる。ペルソナの持ち物は一定時間経てば持ち主の元に帰るのは実験済みだ。なので気兼ねなくぶん投げられる。研ぎ澄まされた集中力。それは見事、狙い通りの場所に金槌を当てる事に成功した。

 頭に鈍器での一撃を食らったジャックフロストは、頭を抑えながら地面に這い蹲りジタバタしている。その間に今度は自分から距離を詰めた。

 

 「ヒッ…ホ!?」

 

 距離を詰めた後は頭に一発イッポンダタラの拳を。そして息継ぐ暇もなく拳を叩きつけるように命令した。素早くなったイッポンダタラの拳は、ジャックフロストの体に何度も何度も突き刺さる。極めつけは戻って来た金槌。それを再び頭に振り下ろした。

 

 塵も積もれば山となる。一撃一撃は普通のダメージだが、こうも連続で食らわせられれば、致死量だ。故にジャックフロストは…

 

 「降参!降参だホー!だから殺さないでホ!!」

 「…契約するか?」

 「する!するホ!」

 

 腰に付けてあった封魔管は戦いの中でも壊れてはいなかった。強度は折り紙付きらしい。前に見た、悪魔との契約方法を頭の中で反復すると、ジャックフロストに向けて封魔管を向ける。

 

 「オイラはジャックフロスト。コンゴトモヨロシクだホ〜」

 

 キリキリキリと音を立てながら封魔管が開いていく。自分を取り込もうとする引力に逆らわず、ジャックフロストは挨拶をすると、封魔管の中へと吸い込まれて行くのだった。

 

 「…死ぬかと思った〜〜……」

 

 ジャックフロストが封魔管の中へと封印されたのを確認すると、その場に横たわる。気が抜けたせいかイッポンダタラもミタマの中へと消えていく。

 

 「お見事。では治療室まで運ぼうか」

 

 モニター越しにヴィクトルの労いが聞こえる。上手くいったとはいえ、本当に止めたりはしないのだなと内心ボヤく。結構スパルタなのかと、部屋に入ってきた何人かの使用人に担がれながら思うミタマ。

 

 (あー…生き返る〜…)

 「精神的な疲労感はどうしようもないが、傷に関しては治療は行える。故に暫くは其処でじっとしているのだ」

 

 ポッドのような棺にぶち込まれ、治療を受けた。体から痛みが引いていくのは不思議な感覚だが、何処か心地よい。

 

 (悪魔との戦いは大変だ…)

 

 シャドウと違いなまじ知性があるから面倒である。今回は一対一だから何とかなったが、次も上手くいくとは限らない。

 

 (異界の前に色々と練習しなくちゃな)

 

 実際の戦場では助けが来ない。なのでより一層慎重にならなければだ。今まで何だかんだダメージは負わなかったので、少々油断していた。先ずは基礎を固めてから、これからの計画を頭の中で練りつつ、傷が完治するまで目を閉じておく。

 




裏話。実はこの作品30話くらいまで書いてあったんだ。物語はペルソナ3の終盤まで。だけど何か違うなってなり、消したんだよね。なのでリメイク版に近いんだ。
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