ナンバーズ戦争に巻き込まれたのでOCGのガチデッキで対抗します! 作:黒霧春也
男性ナンバーズハンター(ファイブ)を叩き起こしてから1時間後。
噴水公園ではベンチに座る俺と一条とコンクリートの床に正座させられているナンバーズハンター2人。
彼らを地面に正座させた白い制服姿の夕陽さんは鋭い視線を浮かべていた。
「2人とも何か言いたい事はあるかい?」
「そ、そのだな……。まさかあのガキ共がお前の知り合いだと思ってなかったからすまん!」
「それだけ?」
「ひいぃ!?」
絶対零度レベルの冷たい空間。
夕陽が放つ冷気を受けた女性ナンバーズハンターはガクガクと震えている。
その姿を見た羽川さんと蒼山さんは顔を真っ青にしながらポツリと呟く。
「あんなにブチギレている夕陽さんは初めてですね……」
「あの怒りがウチらに向けられなくてよかったッス」
しれっと隣のベンチに座っている女子2人の意見を聞き、俺も同じことを思ってしまった。
「な、なあ、純斗。鈍いオレでもわかるくらいやばくね?」
「そりゃな……。てか今は余計な事を言わずに動かない方がいいぞ」
「お、おう」
『ナンバーズ持ちの我々が彼女とデュエルした時とは比べ物にならない威圧感だな……』
た、確かに、夕陽さんがナンバーズハントしている時よりも威圧感がエグいのは俺も感じる。
ただ、雰囲気的に今は黙ってベンチに座るしかできない。
(マジで怖いな)
無駄に怒鳴るよりも淡々と冷たい視線や言葉で相手を追い込む。
こっちの方が何倍も恐ろしいと感じていると、夕陽さんの視線がさらに冷たくなった。
「それで純斗をガキ呼ばわりした挙句に有無を言わさずに襲いかかった理由は?」
「え、そ、それはアイツらがナンバーズを持っているからだ!」
「ナンバーズ集めは我々がミスター・グリード様から受けた命令なのはナンバー・ワンも知っているだろ!」
「だから?」
「「ひいいぃ!?!?」」
もはや言い訳も通じない状況。
てかナンバーズハンターの2人はもう戦意喪失している気もするので、俺は夕陽さんの冷気を受けながら立ち上がる。
「このタイミングで来てもらって助かったよ」
「純斗……。いや、ボクの仕事仲間が迷惑をかけたね」
「ま、まあ、それは否定はできないな」
とりあえずナンバーズハンター2人は沈んでもらおう。
彼らの絶望した視線はそそる物があるが、話が進まないので今は置いておく。
「コイツらってお前と同じナンバーズハンターなんだよな」
「そうだけど? てかなんでイチゴ頭がここにいるの?」
「今更!? しかもオレはイチゴ頭じゃなくて一条だ!」
「どっちでも変わらないよ」
スルーしていたんじゃなくて一条に興味がなかったのね。
これは一条に対して気の毒に感じてしまうので、俺は苦笑いを浮かべながら夕陽さんに説明をする。
「ここにいる理由は俺が彼とある取り引きしたんだよ」
「それってどゆこと?」
「ちょっ、なんかめっちゃ食いついてない!?」
(なんか余計な事を言ったか?)
夕陽さんに勢いよく肩を掴まれた。
しかも彼女の目はハイライトが消えており、すごい怖いんだけど……。
「そのある取り引きはボクも聞いていいかい?」
「あ、ああ。単純に言えば一条にデュエルとかを教える代わりに俺は裏方でのんびり暮らす話だな」
「なるほど……。ただ、それがイチゴ頭じゃないといけない理由はあるの?」
その詰め方をされるときついが、ここではぐらかすのは出来ないので俺は正直に理由を口にする。
「一応クラスメイトなのと、学園内の新聞部の目を逸らすのに必要なんだよ」
「なんかさっきからオレの知らない事が言われているような……」
『まあでも、彼のメリットが聞けたのは個人的に嬉しいところだな』
ぶっちゃけ深い理由は考えてなくて、暇つぶしと一条を身代わりにする。シンプルにするとこんな感じでわかりやすいはずだが……。
なんか夕陽さんのハイライトがない目が超怖いんですが!?
「理屈は理解したよ。それならボクもその取り引きに乗ってもいいかい?」
「……へ? それってドユコト?」
「君の目的を手伝う代わりにボクにもいろいろ指導して欲しい」
「いやいや!? ポンコツな一条と違って優秀な夕陽さんは指導しなくても問題ないのでは……」
流石に自分の処理できるレベルを超えた相手に指導は無理。
てか元の世界なら偏差値が真ん中くらいの学校に通う俺が、全国模試でトップレベルの相手に勉強を教えているもんだぞ。
そんなの明らかおかしい気がするが、夕陽さんのハイライトが消えた目がガチすぎるので悩んでしまう。
「ボクだって君と一緒にいたんだよ……」
「あ、はい」
「いま
「ちょっ!?」
この「はい」がOKの「はい」と勘違いされたような。
俺は冷や汗ダラダラになっていると、コチラを見ていた羽川さんと蒼山さんがしれっと手を挙げていた。
「あ、なら私達もお付き合いしますね」
「純斗さんのデュエル指導はウチも受けてみたいと思っていたッス!」
「……ははっ、もうどうにでもなれ」
完全にヤケクソで頷くと、夕陽さんを含む女子3人が嬉しそうに笑みを浮かべた。
その姿にガクガク震えていたナンバーズハンター2人は口を大きく開けている。
「なあシックス。あのワンがあそこまで喜んでいる姿を見た事があるか?」
「少なくともワタシは見た事がない。てか、今のワンがどう見ても主人に構って欲しい子犬に見えるんだが?」
「お、おい……」
その言い方はマズイような。
その予想は正しく、ハイライトが復活した夕陽さんが鋭い視線でナンバーズハンターを睨みつけた。
しかもただ睨みつけるだけじゃなくてさっきよりも凍えるような視線だ。
「お前達はさっきからボクの邪魔ばかりしているよね」
「ひ、ひぃ!?」
「黙らないと半殺&スターライト研究所の玄関ホールにでも飾るよ」
「す、すまない!」
正座どころか土下座しているナンバーズハンターの2人。
今回の展開的に同情は出来るが、巻き込まれたくないので俺は彼らから目を逸らす。
「と、とりあえず! 正座しているナンバーズハンターは夕陽さんに任せるよ!」
「了解。ただ後で構ってね」
「常識の範囲内でな」
「うん!」
なんでここまでラブコメフラグが立っているんだよ!?
俺は内心でドン引いていると夕陽さんが俺の肩から手を離し、ナンバーズハンターの前に移動した。
「さてと、君達はどうされたい?」
「え、あ、で、出来れば無事に帰りたいです」
「そう……。なら向こうでお話ししようね」
「え、あ、きやぁぁ!?」
「夕陽さん、俺達は移動するし後で連絡してね」
このまま噴水公園にいると惨劇に巻き込まれる。
そう思った俺は残りのメンツと共に現場から離れていくのだった。
ーー
ナンバーズハンター2人を夕陽さんに引き取らせた後。
「なし崩し的に今のメンバーになったけど、君達はどこか行きたいところはあるか?」
「では昨日と同じく純斗さんが住んでいるマンションでどうですか?」
「良いッスね!」
「ええ……」
仮にもお嬢様学院に通っている2人が男子高校生の自宅を提案するのはおかしいような。
「純斗の自宅ならオレも問題ないぞ!」
「マジかよ……」
そこは恥ずかしくなって否定するところだろ!
俺は一条に向かって恨めしい視線を送るが、スルーされたので頭を抱えそうになってしまう。
(どうなっているんだこの世界は!)
自分の感覚がおかしいのは百歩譲って良いとして、この世界の常識を知りたくなってきた。
ただ今聞いてもマトモな奴がいないような気もするので……。
「わ、わかった。ただそれならスーパーに寄って行ってもいいか?」
「もちろんです!」
「夜ご飯の食材探しッスね!」
「オレも荷物持ちとか手伝うぜ!」
めっちゃ乗り気じゃん!?
俺が逆の立場なら萎縮するのにコイツらのフットワークの軽さがヤベェ。
(こ、これが元社畜の俺と異世界の高校生の差か……)
心に刺さる痛みとモヤモヤ感。
その気持ちの整理はしたいが、今は目を逸らすように彼らと共にスーパーに向かうのだった。
ーー
自宅マンションに戻り、米を洗って炊飯器にぶち込んだりオカズの下準備を蒼山さんとしているとリビングの方から叫び声が聞こえた。
「天使さん、そのめちゃくちゃな動きはやめてください!」
「お前こそ! ピンクの悪魔の吸い込みばかりで叩き落とそうとするなよ!」
『この乱闘ゲームはやはり興味深いな……』
「「……」」
メンツは違うが昨日と似た叫び声。
時間帯的に深夜じゃないのでまだマシだが、そろそろ近所迷惑だと苦情が来そうな……。
「昨日、今日とすみませんッス」
「い、いや。蒼山さんは特に悪くないから頭を下げなくていいぞ」
「そう言っていただいて助かるッス……」
蒼山さんがマトモ寄りなのはこっちとしても助かるんだよな。
俺は鍋に入っている味噌汁をお玉で混ぜつつ、鶏肉を一口サイズで切っている蒼山さんの方を見て癒される。
「まあ、それはそれとして。昨日も手伝ってくれてありがとう」
「いやいや、ウチはこれくらいしか出来ないッスから……」
「うーん、俺はすごい良いと思うけどな」
「へ?」
鶏肉を切り終わった蒼山さんが驚いた目でコチラを見てくる。
その姿に俺は心を落ち着かせながら出来る限り真面目に返答していく。
「俺の目線になるけど、話が通じていろいろ助け合える女性は会話していて楽しいんだよ」
「で、でも、ウチよりもスペックが高くてお金持ちもいっぱいいるッスよ」
「確かにスペックやお金はすごい大切だけどさ。それって見栄えはともかく、相手と一緒にいて楽しいと思えるか?」
「!」
元の世界でも金持ち高スペックは優遇されていた。もちろん優遇される理由はわかるし個人的に嫉妬もする。
ただそれはそれとして、相手と楽しく話したり遊んだりするのは気持ちも入ってくると思う。
「個人的にこの相手と一緒にいたいと思えれば、相当な問題がない限りは別に良いと思うんだよな」
「……」
「え、ちょ!?」
ポロポロと涙を流し始めた蒼山さん。
その姿にアタフタとしていると、彼女はブレザーの袖で涙を拭いつつぎこちない笑みを浮かべた。
「そんな優しい言葉は初めて聞いたッス……」
「いやいや!? 俺の中では当たり前だと感じているだけだぞ」
「そうッスか……。ちなみに純斗さんはウチの事をどう思っているッスか?」
「どうって。比較的マトモで話していて楽しいと思っているけど……」
「!」
なんか蒼山さんの好感度が上がったような音がしたぞ?
てかさっきまでジメッとしていた空気感がいきなり爽やかになったような……。
「それは嬉しいッス! あ、純斗さん、ウチの事は美里と呼んで欲しいッス!」
「え、いや……」
「夕陽様だけ名前呼びなのはウチの中ではずるいと感じるんスよね」
ウルウルと子犬みたいな目線を向けてきたので若干後ずさるが、蒼山さんの嬉しそうな視線から身が逸らさない。
「わ、わかった。ただあくまで美里さん呼びで良いか?」
「本当は呼び捨ての方が良いッスけど今は許すッス」
「お、おう……」
ヤベェ、フラグが立ったような……。
冷や汗ダラダラになってワイシャツが背中に引っ付く中、嬉しそうにしている美里さんと共に夜ご飯作りを再開するのだった。
大体の投稿時間は何時頃がいいかを知りたいのでアンケートをやらせていただきます。(あくまで目安です)プラス、締め切りは1月26日の18時です。
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1番、12時頃
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2番、15時頃
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3番、16時頃
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4番、17時頃
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5番、18時頃
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6番、19時頃
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7番、20時頃
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8番、21時以降