平将門「キッショ。…せっかくやから宿儺メタろうぜ」
崇徳天皇「性癖の開示は草。…どうせだし、私らの加護盛り盛りにしてみようよ」
羂索「マジで勘弁して」
「……ぷぅっ。もう終わりですか?
まだまだ腹ペコですよ?」
渋谷駅構内にて。
成長を終えた陀艮は初めて、自身が飲み込んだ人間が味わった恐怖を思い知っていた。
彼が駆使した、完成された領域展開…『蕩蘊平線』。
南国のような爽やかな風景のソレは、見た目に反した絶死の空間。
陀艮が生み出す魚型の式神の攻撃が必中となり、領域対策がなければまず死ぬ。
純然たる事実を再確認し、陀艮は信じがたい現実を払拭するべく、式神を生み出す。
生み出した瞬間に肉を抉り、血を啜るソレに、目の前の少女は舌なめずりした。
「これまた…、美味しそうな魚ですね。
お刺身で食べられないのが残念です」
ぞっ。肉を削ぐ音が響く。
削がれたのは、艶めく柔肌…ではなく。
陀艮が今しがた生み出した式神たちだった。
(なんて速度…!どんな術式だ…!?)
「実は私、特異体質でして。
端的に言うと、呪力を食べられるんです。
…まあ、術式じゃないんで、呪霊を取り込んで使役するとかは出来ないんですけどね。
早食いはただの特技です」
あり得ない。
陀艮の放つ魚の速度は、現代最速の呪術師である禪院直毘人ですら視認するのがやっと。
それより速く、あれだけの数を食い尽くすことができる人間が存在するわけがない。
愕然とする陀艮に、少女は腹をさすりながら笑みを浮かべる。
「メインディッシュ、いいですか?」
「……っ、がぁっ!!」
式神頼りでは勝ち目がない。
そう判断した陀艮が、領域による強化を受けた速度で少女に迫る。
瞬間。陀艮のすぐ横で、ぞっ、とあの音が鳴った。
「………は???」
「近づいてくれてありがとうございます。
おかげで食べやすくなりました」
数秒遅れ、視界の右端で飛沫が舞う。
右腕を削られた。
痛みすらまだ知覚できていない陀艮がそちらを見るや否や、今度は左から音が響いた。
「いただきまーす」
陀艮が最後に見た光景。
それは少女の大きく開いた口だった。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「……お。前に会った七三と…、宿儺のお気に入りっていうやつ?」
その頃、渋谷駅地下二階にて。
様子見に侵入していた七海と伏黒、二級術師の猪野琢磨を、異形となった真人が捉える。
七海はその声で異形が何者かを察し、声を張り上げた。
「奴の手のひらに触れないでください!!」
(手のひらに触れるな…ってことは、虎杖が言ってたツギハギの…!
呪霊として進化したってのか…!?)
鉈を構え、出方を伺う七海。
伏黒もそれに応えるように、影から玉犬を顕現させる。
肌を撫ぜる呪力と言い、あの変わり果てた容貌と言い、格段に力を増している。
予想はしていた。
していたが、自身の想定以上に大きく成長している。
そのことを察した七海は、猪野に向けて声を張り上げた。
「猪野くん!伏黒くんを連れて引き返し…」
「させるわけないじゃん」
ぶわっ、と、侵入口が壁状に改造された人間によって防がれる。
この分だと、かなりのストックを持っているのだろう。
七海はそれに青筋を浮かべ、サングラス越しに真人を睨め付けた。
「あの時は宿儺に邪魔されたからね。
今度はきっちり殺してやるよ」
「現状において、あなたほど存在されて困る存在はいません。
差し違えてでも祓います…!!」
死んでも勝つ。
その気概を見せる七海に、伏黒もまた気を引き締め、印を結んだ。
「領域展開…!『嵌合暗翳庭』!!」
ぞぶっ、と音を立て、影が広がる。
未完成の領域。だがしかし、これで初手の領域展開による殲滅を防がれた。
そのことを瞬時に悟った真人は、目にも止まらぬ速度で伏黒に襲いかかる。
宿儺のお気に入りであろうが、知ったことではない。
快楽のままに、本能のままに。
伏黒に迫る手は、液状の影となった伏黒を掴んで終わった。
「マジか」
「ナイスです、伏黒くん」
ぞんっ、と、七海の斬撃が真人の伸ばした右腕に直撃する。
強制的に弱点を作り出す術式。
しかし、黒閃を決め、己の本質を理解した真人にとっては恐るるに足らぬ一撃。
真人はそのまま尾で七海を弾き、続け様に斬撃を飛ばす。
瞬時にその斬撃の危険性を察知した七海は、重心をずらした。
「あーあ、避けられちゃった」
(…この強度…、そして行動選択…。
間違いない…!あのブレード以外の変形は『縛られて』いる…!)
七海の経験による予測は当たっている。
彼にダメージを与えるには、最低でも悠仁並みの圧倒的な攻撃力に加え、魂を知覚した一撃が必要になる。
この場にそれを満たす人間は、いない。
このままでは勝ち目がない。
そう悟った七海は受け身を取り、叫ぶ。
「壁を破壊してください!!」
「っ、させるか!!」
逃げ道を作るなら、そこに実体がなければならない。
真人の予測は正しく、猪野が動き、広がった影が蠢く。
横薙ぎに放たれた斬撃を猪野が伏せ、伏黒は影に再び沈むことで避ける。
察知能力も格段に上がっている。
変身前とはまるで格が違う。
この場で最も経験のある自分ですら足手纏い。完全に遊ばれている。
続け様に迫る手のひらを弾き飛ばし、胴体に斬撃を放つ。
が。確実に弱点を突いたにも関わらず、真人は怯むことなく七海へと手を伸ばした。
「七海さん!!」
が。その手は、影から幾つも飛び出たカエルの舌により止められる。
七海がその隙に距離を取った次の瞬間、ぶちっ、ぶちっ、と音を立て、舌が千切れた。
「……ふぅん。こんなもんか。
なんで宿儺はこんなのに執着してるんだか」
隙を晒した真人に、猪野が放った瑞獣…獬豸が迫る。
が。真人はそれを容易くブレードで裂き、手で印を結ぼうとする。
獣と人。それほどまでの絶対的な差がある。
それを悟った伏黒は領域を解き、両腕を前に突き出した。
「七海さん、猪野さん。
こいつは俺ごと仕留めます」
────布留部由良由良…!!
その覚悟を無下にするほど、呪術師は愚かではない。
その場から離れようとする七海と猪野に、真人のブレードが迫る。
それより先に、伏黒の唇がその名を呼んだ。
────八握剣異戒神将『魔虚羅』!!
刹那。伏黒の視界が暗転した。
♦︎♦︎♦︎♦︎
ずっと疑問だった。
どうして学問の神様とまで呼ばれる人が、母の腹の中で死んでいくだけだった自分を生かしたのか。
どうして現世において持て余すどころの騒ぎではない力を授けたのか。
神様が自分を産み落としたと知った時から、自分という存在がなんなのか、よくわからなかった。
「……ようやくですか。
存外、クソゲー感は薄いですね」
地下から漏れ出す、莫大な「二つの呪力」。
それを浴びた時、結月ゆかりは己の存在意義を悟る。
歴史上における絶対強者。
究極の自分勝手。殺戮という概念。
自分はこれを止めるために、世界に産み落とされたのだ。
「ちゃっちゃとクリアして打ち上げです。領域展開」
────
神が産み落とした両面宿儺への最適解。
それが今、二つの埒外を飲み込んだ。
腹ペコちゃん…呪力で構築されたものならなんでも食える。本人曰く、等級が上がるほど美味しいらしい。「呪霊操術で食べる呪霊玉がゲロマズだったのは、呪力をより多く生成するためにストレスを溜め込むためなんじゃないか」と本気で思ってる。ンなことはない。
両面宿儺…原作通りの流れで一時解放。ミミナナの首を飛ばす直前で領域に飲み込まれた。
まこーら…原作と違って重面との相打ち用ではなく、真人に対する最適解として召喚。直後、ゆかりに「ほっといたらまずい」と判断されて領域に。地獄のデスマッチ開幕。まこーらの明日はどっちだ。
結月ゆかり…『現在編集中』