転生菅原道真「うちの梅から女の子が!!」   作:鳩胸な鴨

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Q.宿儺をメタるにはどうすればいいですか?

A.現代知識で殴れ


菅原道真「宿儺って現代知識とかほぼ仕入れんよな?」

「………むっ?」

 

その頃。宿儺は違和感に眉を顰めていた。

目の前に傅く少女の首を裂こうとしたのだが、5秒経ってもその首が霧散しない。

小僧が争っているのだろうか。

いや、違う。小僧は完全に眠っている。術式の発動に不備が起きるはずがない。

それに加え、駅に線が走らないのも妙だ。

斬撃は確かに放っていた。

ならば、その跡がなければおかしい。

宿儺がそう思考を巡らせるより早く、冷たい声が響く。

 

「『かったるいドラッグ移動』」

 

ふっ、と景色が変わる。

ただの一瞬。『渋谷を破壊することなく』地上へ出た宿儺が困惑するよりも先に、その双眸が二つの影を捉える。

一つは白の異形。腕に剣を携え、方陣を頭上に顕現させるそれから感じるのは、伏黒恵との強い繋がり。

恐らくは、かつて自由を得た自身を前に、顕現を決めた切り札。

強い興味はある。だが、今の時点で注目すべきはそちらだけではない。

 

「…菅原道真…、いや、それだけではない。

平将門、崇徳天皇…か。よもや、飛梅にこんな隠し玉があったとはな」

 

経験、知識、勘。

両面宿儺の持ち得る全てが叫ぶ。

アレは自分を殺すために生まれた者だ、と。

 

「ゴタゴタ宣ってないでとっとと引っ込んでくださいよ、おじいちゃん。

ここは現世。亡霊にいつまでも好き勝手やられるの、はっきり言って迷惑なんです」

「生意気な小娘だ」

 

不可視の斬撃が雨霰と飛ぶ。

宿儺の術式は強者であろうと回避することもままならず、反転術式がなければ致命傷は免れない。

まさしく最強の一撃。

襲いかかるそれに怯えることも、または抗うそぶりも見せず、最適解は指を向けた。

 

「『面倒なコピーアンドペースト』」

 

がががっ、と音が響く。

これまで術式を行使してきて、一度も聞いたことがない音だ。

だが、散る呪力の残穢を前に、何が起きたかは推測できる。

 

(俺の術式に『俺の術式』をぶつけた…?

術式の模倣…いや、散っている呪力が全て『俺のもの』である以上、それはない!

面白い!15本程度では底が見えんな!)

 

残った5本の指を揃えねば。

味わい尽くすにはまだ足りない。

だが、こうしていられないのも事実。

白の異形を通じて感じる伏黒恵の呪力が弱まっていくのを感じる。

おそらくは、この異形を召喚した際にやられたのだろう。

宿儺は1000年ぶりに感じる焦りに、胸を躍らせた。

 

「菅原道真と対峙した時以来だな…。

こんなにも胸がざわめくのは!!」

 

宿儺の叫びに呼応するように、異形がゆかりへと駆ける。

異常に気がついたのか、それとも能力によって適応したのか。

宿儺もそれに便乗し、ゆかりへと駆けた。

 

「……闘技場煙玉縛り2匹同時狩猟とか、クソゲーには変わりませんね。

宿儺じゃない相手に使って申し訳ない気持ちはありますが、もらった物なんで好きに使います。

…『ファイル呼び出し・平将門』」

「…………ケヒッ」

 

ふっ、と音を立て、1人の男が降り立つ。

天に唾を吐き、己が新たなる王になるために反乱を起こした武将であり、最強の呪術師の1人。

その名も、平将門。

無論、これは本人に遠く及ばない劣化品。五条悟ならば難なく倒せる程度の相手だ。

だがしかし、いくら劣化品とは言っても元は「生まれ落ちるべきではない」とまで言われる埒外。魔虚羅を倒す力は有している。

 

「神の模倣品すら生み出すか、女…!!」

「生み出してませんが」

「惚けずともよい。アレは完全に…」

「……虎杖くんの『普通の高校生』っぷりに感謝しますよ。

エロサイトを覗くくらいにしか使わないイメージがあるだけのことはあります」

 

言って、ゆかりはほくそ笑む。

宿儺は気づいていないが、「現時点で勝負は終わっている」。

彼女の領域展開は、デフォルトとして搭載されている必中必殺の効果を持たない。

しかしながら、相手によっては展開した時点で勝ちが決まる、究極の一手であったのだ。

 

それが現代知識皆無な両面宿儺ともなれば。

 

「私の術式は『仮想世界』。

現実世界とは違う、『独自言語による別世界の構築』に加え、その操作を行う術式です。

要するに、世界をパソコン化するんですよ。

私たちは渋谷に立っているようで、実際には『現実に被さるように顕現した、渋谷を再現した別世界』に立ってるんです」

 

動画編集、及びに画像編集を行なった者ならば一発で理解できる仕組みである。

要するに、宿儺とゆかりが立っている渋谷は「別のレイヤー」なのだ。

仮に現実の渋谷をAとし、ゆかりの術式はそこに重なるように「渋谷B」を作り出す。

渋谷Bはまさに彼女の世界。

パソコンで出来ることは大体できる。

改造人間の首を切り取ったのも、重面の存在を消したのも、全ては渋谷Bでの出来事なのだ。

 

だからこそ、両面宿儺はあの双子を殺せず、漏瑚と戯れることもできなかった。

 

「ま、その強力さの代わりに誰でもいじれるんですけど…。

複雑怪奇な電子の世界を、普通の高校生の脳みそが理解できると思います?」

 

無論、この術式にも弱点はある。

渋谷B内の者は、誰でも仮想世界を構築する独自言語に介入できるのだ。

…しかし、介入には条件がある。

『意味を成す独自言語』。それが介入の条件である。

もうお分かりだろう。無理である。

それがパソコンに対して全くの無知たる宿儺である以上、絶対に無理なのである。

 

「……無理だな。完敗だ。

もう少し利口な器であれば、話は違ったのだろうが」

「資格持ちとは言えアマチュアですし、天才プログラマーとかだと普通に負けますよ」

「そうか。…だが、このままやられっぱなしというのも癪に障る。

時が来るまで戯れていようではないか、結月ゆかり!!」

「えぇ…。なんかわけわからん理論でゴリ押しで突破してきそうなやつ相手にするのめんどくさいんですよね…。

『ファイル呼び出し・特級呪具〈ゆかりんチェンソー〉』」

 

言って、ゆかりはどこからかチェンソーを取り出し、エンジンをかける。

宿儺は聞こえてきたクソみたいな文言に表情を無くし、問いかけた。

 

「……なんだその名前は?」

「知りませんよ。作ったやつに言ってください」

 

最適解と最強がぶつかれど、渋谷に破壊の波は広がらなかった。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「な、何をしておる…!?」

 

漏瑚は目の前の存在に困惑していた。

幾度焼いても死なないどころか、そもそも傷ついたそぶりを見せないのも原因の一つだが、問題はそこではない。

目の前に立ちはだかるは、見覚えがあるどころでは済まされないほどに見飽きた顔。

だが、その瞳は驚くほどに違う。

薄暗く、しかし沸々と沸き上がる怒りと侮蔑が漏瑚の肌を撫でる。

 

「呪霊が人間の真似をするな」

 

聞き飽きた声。

しかし、どこか若々しさを孕んだそれに違和感を覚えながらも、漏瑚は叫ぶ。

 

「貴様が何か思惑があって接触してきたのは知っていた…!

だが、何故だ!何故、今になって儂を…」

「お前が言ってるのは、『頭に縫い目のある夏油傑』のことだろう?

私はお前のことなんて知らないよ」

 

拳…否。黒の火花が三度、漏瑚を穿つ。

漏瑚は傷に悶えながらも、印を結ぼうとした。

 

「随分と弱ってるみたいだけど、このまま放っておくと美々子と菜々子に八つ当たりしかねないからね。

屈辱的な最期をプレゼントしよう」

 

その言葉を皮切りに、印を結びかけた手が解ける。

それだけではない。体全てが解けていくような感覚が漏瑚を襲う。

漏瑚はそれにもがきながら、口を開いた。

 

「夏油ォオオオオオオオッ!!!」

「呪霊が気安く呼ぶな」

 

そこに立つ夏油傑の頭には、縫い目がなかった。

 

「……選民思想が激しすぎるだけで、呪術師としては一流なんですのよねぇ。

まぁ、経緯を考えたら仕方ないことだとは思いますけど」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「…あの式神がどこに行ったのかはわかんないけど…、これはチャンスだよね」

 

時は少し遡り、魔虚羅がゆかりに転移させられた直後。

突如消えた強者の気配に疑問を抱きながらも、真人は隠れた瞳で伏黒を捉える。

「自分ごと祓う」と言ったのだ。

伏黒が確実に勝てると思うだけの何かが、あの式神にはある。

であれば、伏黒の魂を術式が使えないほどにぐちゃぐちゃにしてしまえば、術式は解けるのではないか。

なんにせよ、危険分子は排除するに限る。

 

「出来れば、虎杖の目の前でやりたかったね」

 

真人の手が伏黒に迫る。

伏黒は今、仮死状態にある。

意識はとうになく、術式がなんとかその命を繋ぎ止めているだけの肉の塊。

抵抗などできるはずもなく、明確な死が迫る。

執着している宿儺も、現在は真人に関われない状況にある。

既に伏黒恵の死は確定した。

 

ぱぁん、と、音が響くまでは。

 

「……あ?」

 

ふっ、と、真人の手が伏黒がもたれかかっていた壁につく。

べったりと血がついた手のひらを一瞥し、真人は音が鳴った方向を向いた。

 

「お前がツギハギの呪霊だな?

超親友に代わって、お前を殴りにきた」

「東堂くん、まずは撤退が先決ですからね?」

 

そこには致命的に気持ち悪い変態こと東堂葵と、瀕死の伏黒を抱えた七海がいた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「……は、ははっ…。これは、僥倖というべきかな…」

 

傷だらけの体を引きずり、夏油が呟く。

正直、この体は既に終わったものだと思っていた。

だがしかし。飛梅は「優先すべき神託が降りた」とかで自分を見逃した。

 

「一か八か、呪力が尽きたフリをしていてよかったな…」

 

幸運を喜びながら、夏油は獄門疆を手に地上へと向かう。

あとは真人を取り込むだけ。

そのためには飛梅の戦力をぶつけるか、器として産んだ息子をぶつけるか。

どちらにせよ、真人は既に詰んでいる。

 

反転術式で傷を癒しながら、夏油はこれからの展望に笑みを漏らした。

 

おにぎりという名の起爆剤投下まで、あと少し。




縫い目のない人…イタコさんに降ろされた人2人目。一般人を殺せない縛りを設けられているのでイライラしてる。この後、ミミナナにめちゃくちゃ絡まれた。

仮想世界…まんまパソコン。プログラミングにおいてディープな専門知識ないと詰むクソ仕様。領域展開の性質は日車に近い。羂索だったら普通に勝てる。尚、高確率でセットで付いてくるグレート・エレキ・ファイアーに焼き殺される。

まこーら…適応が追いつかないくらいの飽和攻撃で消し飛ばされた。劣化版でも強かったよ…。尚、現代の将門公ならワンパンできる模様。

宿儺…敗因は器共々プログラミングを知らなかったこと。虎杖が脳を溶かしてネット漁るのに使ってただけだったのが幸いした。
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