転生菅原道真「うちの梅から女の子が!!」   作:鳩胸な鴨

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崇徳天皇の術式、何回考えてもマキマさんみたいなことになる。


王手

「死んだ人間って言っても、体が生身なんじゃたいしたことないね」

「いったた…。あ、これ解除されないとこの体から抜けられないんだ…」

 

生前同様、真っ二つに裂かれた灰原が痛みに顔を歪め、苦笑を浮かべる。

無為転変が効かない上、やけにしつこく粘ってきたため、想像以上に手間取ってしまった。

が。こうなれば無力。勝敗は決した。

しかしながら、普通なら死んでいる傷を負ってなお、ピーチクパーチクとこの場で話されるのも鬱陶しい。

顎を切り離そうか、などと思ったその時だった。

 

「おい」

 

黒の閃光が眼前を駆け巡ったのは。

真人がそちらを見ると、全身からバチバチと火花を散らす虎杖悠仁と目が合う。

悠仁は倒れた灰原に歩み寄ると、申し訳なさそうに眉を顰めた。

 

「えっと…。10年前に死んでるし、気にしなくてもいいよ…?」

「……そういう問題じゃねぇよ…。

そういう問題じゃねえんだよ…!」

 

真人に対する彼の怒気に、デリカシー皆無な発言をかました灰原も思わず口をつぐむ。

悠仁は構えを取ると、真人へと向き直った。

 

「殺してやる」

「だぁ、かぁ、らぁ、祓うって言えよ!!」

 

放たれた斬撃が悠仁へと迫る。

身体能力がずば抜けて高い悠仁でも避けることが困難に近い速度で迫るそれに、彼は特に避けるそぶりも見せず、ゆっくりと歩き始める。

死ぬつもりなのか。

灰原が叫ぶよりも先に、悠仁はそのブレードを「掴み取った」。

 

「はぇ…?」

「…ゔぁあああああああッ!!!」

 

握りつぶす動作が、黒の火花を纏う。

バラバラに砕け散ったブレードに真人が困惑する暇も与えず、悠仁は黒を置き去りに駆け出した。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「……えっ?…えっ!?ここどこ!?」

 

遡ること、少し前。

おにぎりを摂取した悠仁は、己を取り囲む空間に戦慄き、叫び声を上げる。

どこまでも広がる青い空。

視界に存在しない地面。

まさしく「空の上」とでも呼ぶべき空間に放り込まれた悠仁を嘲笑うように、快活な笑い声が響いた。

 

「はっはっはっはっ!!

拙者の米を食って爆散しなかった上に、神界に入ってこれるとは!!

ますます気に入ったぞ、虎杖悠仁!!」

「え?爆散???」

 

あのおにぎりそんな危険物だったの?

あとで文句を言いに行こう、と思いつつ、悠仁は突如として響いた声に問いかける。

 

「あのー!!誰ですかー!?!?」

「拙者の名か!?拙者は藤原秀郷!!

かつて平将門を殺した武士よ!!」

「たいらのまさかど…………って、誰?」

「んがっ!?」

 

残念。虎杖悠仁は日本史が苦手であった。

中学時代は一夜漬けでギリギリ赤点を回避するくらいに苦手だった。

勉学に不真面目な学生らしく、彼の記憶から、「平将門」という名前がすっぽり抜け落ちていた。

秀郷は彼の目の前にずっこけて落ちてくるも、即座に咳払いして仕切り直す。

 

「とにかく、すんごい武士だと思え!」

「そ、それはわかったけど…、ここどこ?

宿儺の領域みたいな…?」

 

あれは見てて気が滅入りそうだったが、こちらは随分と爽やかな空間だ。

呪いの王というだけあって精神が不健全なのかな、と宿儺が憤死しそうなことを思っていると、秀郷が首を横に振った。

 

「似たようなものであるが、違う。

ここは神の世界。神として信仰を受けている存在が集う領域だ。

本来なら、拙者の米を食っても入れない。

……十中八九、道真公の差金だろう。度を越した享楽主義に感謝だな」

「……えっと、神様?」

「元は人だ。道真公みたく、死後に神社に祀られることがあるだろ?あれだ」

「……もしかして、体よこせって話っすか?」

 

正直、もう二度と他人に体を使われたくないのだが。

先のことを想起した悠仁が表情を歪めるのを前に、秀郷は笑い声を上げた。

 

「はっはっはっ!言わん言わん!

こっちの生活で満足しとるのに、そっちにわざわざ降りる莫迦はおらんわ!!」

「……じゃあ、何を話しにきたんすか?」

「んー…、強いて言うなら、これからお前の身に起こるであろう変化の説明だ。

なにせ、拙者は道真公から『全攻撃黒閃まん』などという戯けたあだ名を付けられるくらいに黒閃しか出せん男でな。

その理屈と欠点について、事前に伝えておいた方がいいと思ったのよ」

 

そんな出鱈目の塊みたいな人間いる?

悠仁が半信半疑といった様子で秀郷の顔をまじまじと見つめる。

嘘は言ってない瞳だ。

東堂のように、妄言を揺るぎない現実だと思い込んでるとすれば話は別だが。

いまいち信用できないものの、悠仁は秀郷に向けて「聞かせてく…ださい」と軽く頭を下げた。

 

「おう、時間も惜しい事だ。話してやろう。

まず、今のお前の体に巡る呪力。

これが『お前の皮膚の形にピッタリ重なるようになる』。

放出とかできんからな。皮膚にびっちり付いて離れんから、全部の攻撃が黒閃になる。

皮膚への衝撃も、発生した黒閃が和らげてくれるぞ」

「え、やばっ。最強じゃん」

 

一発で戦況を大きく変える黒閃。

それを通常攻撃として扱えるのは、これ以上ない強みである。

悠仁が感嘆を漏らすと、秀郷は待ってましたと言わんばかりに声を張り上げた。

 

「ところがどっこい!空気が触れるだけでも黒閃が起きるから、全身がすんごく痛い。

お前並みの頑丈さと胆力がなければ痛みで動けんし、普通の人間なら衝撃に耐えきれず、爆散して死ぬ」

「……それ、普通の人ならおにぎり食った瞬間自爆して死ぬってこと?」

「うん」

「ギャグ漫画みたいな死に方だな…」

 

丈夫な体に産んでくれた母よ、ありがとう。

今年死んだばかりの祖父に、なにかと悪いように言われていたが。

その正体が、1000年もの時を生きる呪詛師と知らない悠仁がそんなことを思ったその時。

全身を激痛が駆け巡った。

 

「ぐぉおおっ!?!?」

「痛覚がやっと追いついたか。

…どうだ?痛いだろ?」

「ぃぃいい痛い痛い痛い!!

痛いっ!痛いっ!!すんげぇ痛い!!」

「拙者も慣れるまで切り替えができなかった。

だがまあ、安心しろ。15分もすればそれも収まる。

米による強化は消え失せるがな」

「ぇえっ、え…!?こ、これ…っ、一時的なぁおおうっ!?ぱ、ぱぱぱっ、ぱわっ、パワーアップなななのぉお!?」

「宿儺の指と違って、拙者の屍蝋を食ったわけじゃないだろ」

「そ、それも、そうだけどぉっ!?」

 

痛みでまともに受け答えが出来ない。

慣れるまでは、こんなのが四六時中続いていたのか。

歴史上の人物は悉くが規格外だなぁ、と心の片隅で思っていると。

秀郷が神妙な面持ちで告げた。

 

「お前。あの真人とか言うのを前に、そうやってのたうち回るつもりか?」

「……っ」

 

その言葉に、悠仁は悶えるのをやめる。

静かになった悠仁に向け、秀郷は淡々と続けた。

 

「痛がるな。怯えるな。恐れるな。

仲間が死のうが、街が滅びようが、意味がなかろうが、必ず殺せ。

そうして初めて、お前は呪術師となる」

 

その言葉を最後に、激痛に苛まれる悠仁の体を浮遊感が包む。

 

覚悟はもう、決まっていた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「黒閃」

「ごばばばっ!?」

 

5発の黒閃が、真人の体を穿つ。

皮肉にも、二度の黒閃を経験したことで真人は理解していた。

理解してしまっていた。

 

(こいつ…、『黒閃しか出せない』のか…?)

 

思考している間にも、大きく体が抉れる。

殺意の塊。天敵ではない、自分を殺すためだけに存在するバケモノ。

漏れ出た呼吸すら火花を放つ光景を前に、真人は覆われた顔面を大きく歪ませる。

 

「ひ、ひっ…!?」

「黒閃…ッ!!」

 

何連続かもわからない黒が散る。

一発一発が確実に、真人の魂を、真人の存在を消しにきている。

真っ直ぐにぶつけられる殺意ほど、人間が恐れるものはない。

人から生まれた呪いである以上、真人自身も抱いて当然の恐怖を自覚していなかった。

 

「わ、わぁ…。わ、わぁああああ…。

あ、ああああああっ…」

「断末魔はそれでいいんだな」

 

ごっ、と真人の顔面に黒閃が決まる。

遍殺即霊体が解け、真人の体が破壊の痕跡が残る渋谷に転がる。

悠仁は火花を纏いながら、ゆっくりとそれに歩み寄った。

 

「……やっぱりお前、人から生まれた呪いなんだな。渋谷にいる人みんな、そうやって怖がって、死んだ。

お前のことだ。そう言っても『知らねーよバーカ』ってツラしてバカにすんだろ。

そういう不謹慎を面白がる奴も、人間にはいるもんな」

「ぁ、あぁ…」

 

嗚咽を漏らす。喉奥から、ストックは出てこない。

なんで、どうして。まだあったはずなのに。

困惑する真人の視界。その隅に、紫色の髪の少女が映る。

その足元には、真人が溜め込んでいたストックの残骸が転がっていた。

 

「きっと、お前は俺なんだろうな。

醜い感情、見苦しい傲慢、そう言うのが全部ぐっちゃぐちゃに混ざってできたゲボみたいな存在がお前なんだろ?

お前、人間よりも人間らしいよ。

お前に対して、祓うって言葉が出てこない。

殺すって言葉が一番しっくりくるんだ」

 

呪いではなく人間として受け入れられる。

それは真人にとって、最大の侮辱であった。

が。今の真人には、それに怒り狂う余力はなかった。

 

「俺は部品だ。ただ呪いを殺し(祓い)続けるだけの部品。

俺が生きてお前を殺す理由は、それだけで十分だろ」

 

宿儺を殺すためだけに生まれた女がいるように、呪いを殺すためだけに生きる。

悠仁の言葉に恐れをなした真人は、腰を抜かしながらも逃げようと踵を返す。

と。その先に、袈裟を纏う男が姿を見せた。

 

「夏油…!!」

「やぁ。助けてあげようか、真人」

 

運命の時が迫る。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「……そろそろですか。手を分散したことで、王手をかけられてしまいましたな」

「秀郷の介入がなければ済んでいたんだがなぁ。…天元、10連引いてくれ」

「…何故、私に引かせるのです?」

「お前が引くと確率が気持ち6倍くらい違う」

「同じでしょうに。…というか、あなた様なら確率の操作くらいはわけないでしょう」

「そう言うズルはやらない主義だ。微々たる課金はするが」

「…残りは引いておきますから、やるべきことをやってください」

「誰にものを言ってる?

私とて、神として君臨せし一族の者。

1000の時を生き、いまだにその領域にもおらん脳みその術くらい、どうと言うことはないさ」

「それならいいんですが…。

…このキャラは当たりですかな?」

「………狙ってた奴だ。やはりお前に引かせると当たるな」




ソシャゲ微課金神…天元様に敬語を使わせるお偉い方。もうほとんど正体言ってる。やってるソシャゲの運営が思いっきり死滅回游範囲内に入ってるのでやる気満々。

天元様…ガチャを引かされた人。ガチャ引かせとけば限定キャラ一体は出るぞ。自分のはなかなか出ない模様。

結月ゆかり…私が真人からストックを取り上げました。ぶい。

虎杖悠仁…ゆかりんと秀郷公の激励を受けて、部品モード発動。宿儺を殺すために生まれた女がいるから、俺も呪いを殺すためだけの男になるね。

藤原秀郷…やりたいことができて満足。お前のせいでメロンパンに王手かけられたんですが(byガチギレ道真公)
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