転生菅原道真「うちの梅から女の子が!!」   作:鳩胸な鴨

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こういう友だちが1番付き合い長いんだよね。


たまにメシを食いに行く仲くらいがちょうどいい

「は???」

「夜語トバリという人間は、呪術高専に居なかった。…そういうことだ」

 

その日。珍しく任務を早く終えて帰ってきたばかりの悟が聞かされた話は、「夜語トバリが消えた」という信じがたいものだった。

なんで、どうして。

そんな疑問が巡る中、悟は呆然と口を開く。

 

「んなわけ、ねぇだろ…?

だって、アイツ、交流会に出て…」

「……『そういうことにしてくれ』と本人が書き置きを残していた。

彼女が飛梅様が有する私兵の1人だ、とも。

呪術高専を去るのも、飛梅様の指示があってのことだ…とも」

「………ぁんのッ…、クソババアッ!!」

 

飛梅。五条家を1000年に渡り見守る神樹であり、神話を体現する精霊。

呪術界の中でも神格化されている存在相手に、悟は思わず暴言を吐き捨てた。

傑の時ほどではないにしろ、激情を露わにする悟に、夜蛾は遠慮がちに声をかける。

 

「……仲が良かったのか?」

「……たまに飯食いに行くくらい」

「そうか」

 

口に出して、そこまで仲が深いわけではなかったことに気づく。

今思えば、あの距離感に甘えていたのかもしれない。

近くて遠い、心地よい距離感。

他人でも友人でもない、気楽な関係。

無二の親友と離れてしまった五条悟にとって、突如として消えてもおかしくないトバリとの関係は、捨てるに捨てきれないものだった。

 

その日のうちに、悟は飛梅の下へと訪れた。

文句を言うためではない。

トバリの行方を知るためでもない。

ただ、己の中にある確信が現実であると確信したいだけ。

境内に足を踏み入れると、いつものように飛梅に腰掛けた2人がこちらに視線を向けた。

 

「おや、悟坊や。

どうしたんだい、そんなに怖い顔して」

「……なぁ、婆ちゃん。

夜語 トバリについて話があるんだけど」

「行方についてかい?それは教えられな…」

「違ぇよ、ババア。アイツが呪術高専に通ってた理由だ」

 

不遜な物言いに、ミコトたちの笑みが悪辣なものへと変わった。

 

「へぇ。聞かせて?」

「アイツ、俺の監視だろ。

俺が傑の手を取って、最強最悪の呪詛師になる未来を潰すための」

「……その根拠は?」

「距離感だよ。俺はアイツのことを知ってたようで、何も知らない。

京都校に通ってること、美味い店を知ってること、同級生であること。

知ってることなんて、そのくらいなんだよ」

 

その違和感に気づけば、あとは気づくだけ。

五条悟という人間は、そこに辿り着けないほど愚かではない。

ニマニマと笑みを浮かべるヒメとミコトをサングラス越しに睨め付けながら、悟は話を続ける。

 

「アイツは自然に自分のことを話さないで済むような立ち回りをしてた。

つまり、自分のことを俺に知られると不都合があるってことだ。

それにだ。アイツは灰原が死んだ少し後から俺に絡んできた。

婆ちゃんはわかってたんだろ。傑が離反するって。だから、アイツを送り込んだ。

そんで、俺は大丈夫だってわかったから下がらせたんだろ」

 

死ぬほどムカつく。

傑の葛藤に気づいておきながら何もしなかったこともそうだが、自分に対してだけ手を打っていたのがなにより許せない。

そんな悟の怒りを意に介することなく、2人はパチパチと拍手を送った。

 

「おめでとう。半分正解だ。

これ以上は言わないけどね」

「……なんで、俺にだけトバリを寄越したんだよ」

 

もう半分の答えが気になるところだが、2人の性格上、絶対に口を割らないだろう。

悟は浮かんだ疑問を胸にしまい、もう一つの疑問をぶつける。

トバリが居たら、傑もあんな選択をしなかったかもしれないのに。

そんなことを思っていると、2人は嘲るように告げた。

 

「いいや、彼にも寄越してたさ。

君が認める実力者だけど、どうにも危うい部分があったからね」

「でも、それじゃどうにも出来なかった。ただそれだけだよ」

「…………そっか」

 

青い春は終わる。拭えない後悔を残して。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「……とまぁ、こんな感じ」

「先生って一人称『俺』だったんだ」

「え?気になるのそこ???」

 

一通り過去を話し終えた悟は、悠仁のズレた感想にツッコミを入れる。

なんにせよ、悟が青春に対して強い思い入れがあるのは理解した。

悠仁はペットボトルの茶を呷り、悟に問いかける。

 

「…今日来た理由って、もしかしなくても『もう半分』の答え合わせ?」

「そゆこと。もう全部終わったことだし、会えるかなって」

「あの脳みそ?」

「そ。婆ちゃんは1000年もの間、あの脳みそをどうにかすることを考えてた。

トバリもまた、その策の一つとして雲隠れしたんじゃないかって今になって思うんだ」

 

言って、ペットボトルに入ったオレンジジュースをちびちびと飲む悟。

と。悟は何かに気づいたように、ある一角へと目を向けた。

 

「……やっ。久しぶりにメシでもどう?」

「おや、君から誘ってくれるのかい?

珍しいこともあるのだねぇ」

 

夜色の髪。猫背気味な姿勢。

グラマラスな肉体美を誇る長身の女性が、悟に笑みを向ける。

実に十数年。2人はつい最近も会っていたかのように言葉を交わす。

彼女が夜語トバリか。

どことなく家入硝子に似た雰囲気の女性だな、と悠仁が思っていると、悟がその肩を掴んだ。

 

「コレ、僕の生徒。ほら、自己紹介」

「あーっ、と。虎杖悠仁です」

「初めまして、夜語トバリだ。

…彼も相席させるのかい?」

「まーね。彼の死刑撤回祝いも兼ねてるし、いい店選んどいたよ」

「五条の当主が言うんだ。期待しておくよ」

「……ご、ゴチになりまーす」

 

りっぱ寿司みたいなチェーン店だったりしないよな?

そんな不安を抱えつつ、悠仁は2人の後に続いた。




夜語 トバリ…五条悟本人は気づいていないが、実は一年の頃からひっそりと監視してた。夏油にも接触してメンタルケアをしていたが、あえなく離反。悟の離反がないと分かった時点で監視を切り上げ、メロンパン対策に回された。

虎杖悠仁…母親があの脳みそということは知ってる。キッショいラスボスだなぁ、としか思ってない。

五条悟…実は原作時空より少し大人。それでも問題児なことには変わりない。
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