転生菅原道真「うちの梅から女の子が!!」   作:鳩胸な鴨

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抑止力ないと詰む戦力が多すぎる…。


最強への一手

「婆ちゃんからタバコ吸うって聞いてたけど、禁煙席で良かったの?」

 

飛び抜けた高級店でも、はたまたよく見るチェーン店でもない、ひっそりと佇む定食屋にて。

白衣の胸ポケットに鎮座するタバコの箱を指差し、悟が問いかける。

トバリは笑みを崩さぬまま、お冷を口に運んで答えた。

 

「ああ。あくまで嗜好品だからね。

家入くんのように、四六時中吸ってなきゃ口が寂しい…、なんて宣うほどジャンキーではないよ」

「意外。どハマりしてそうな顔だけど」

「1日5本。こういうのは節度を守って楽しむからこそ価値があるんだよ」

「そこかしこでスパスパ吸ってる誰かさんにも聞かせたい言葉だね」

 

遠く離れた東京で、家入硝子が紫煙を纏う姿が思い浮かぶ。

お冷を少し口に含んだ彼女に、悠仁はふと浮かんだ疑問を問いかけた。

 

「トバリさんって、今も呪術師やってんの?」

「やってはいるよ。飛梅様専属だけど。

私は術式と天与呪縛の関係上、その詳細を知っている飛梅様の依頼しかこなせないからね」

「へー。どんな術式?」

「虎杖くん。その質問は『下着の色は?』って聞いてるのと同義だよ」

「そうなの!?!?」

「冗談だよ」

 

よかった。彼女の言うことが本当なら、術式の開示を行なった術師全員が「パンツの色を淡々と説明しながら戦うエキセントリックな変態」と化すところだった。

全術師が殴りかかってきそうな想像をしていると、悟が話を切り出す。

 

「んじゃ、とっとと本題に行こうか。

夜語 トバリ…いや。『最強への対抗策』」

「……へぇ。知ってたんだね」

「いんや、当てずっぽう。

でも、それで正解っぽいね」

 

言って、「マジかぁ」と天を仰ぐ悟。

一方で話の見えない悠仁は困惑をあらわにし、問いかけた。

 

「……どゆこと?」

「僕に対して特攻持ってるんだよ、彼女。

それが何かは知らないけど」

「ああ。私は無下限を貫通して五条悟に攻撃することができる。

まあ、いろいろと制約はあるがね」

 

言って、トバリは指を窓へと向ける。

窓の外は雲一つない快晴だ。

休みの日ということも相まって、かなりの人が行き来している。

そういえば推薦入試が近く、参拝客もかなり多かったっけか。

悠仁がそんなことを思っていると、トバリが口を開いた。

 

「虎杖くん。昼は怖いかな?」

「いや別に」

「じゃあ、夜はどうだい?

今は大丈夫でも、昔は怖かった記憶があるんじゃないかな?」

「まあ、ある」

 

なんの問答なのだろうか。

悠仁が首を傾げていると、トバリは「回りくどくてごめんね」と苦笑を浮かべる。

 

「夜は恐ろしいものだ。

そんな恐ろしいものが敵意を持って襲ってくるとしたら、人は抗えると思うかい?」

「………???」

「おいおい、トバリ。あんまり難しく言っちゃ悠仁が困っちゃうでしょ。

要するに、『トバリの術式が夜に干渉する類のもの』って話がしたいんでしょ?」

「んー…、80点。言葉足らずと言うか、少しスケールを小さくし過ぎてる。

菅原道真公が拵えた術式なんだ。

同じように拵えられた無下限と並ぶくらいにはデタラメでなければね」

「………初耳なんだけど?」

「飛梅様が五条家に伝えてなかっただけじゃない?」

 

菅原道真が監修した術式なのか、これ。

悟はそんなことを思いつつ、「正解は?」とトバリに問いかけた。

 

「『夜を操る術式』。

私はコレを『夜狩呪法』と名付けた。

夜『で』狩るからね」

「………ピンとこないんだけど」

「んー…、ざっくり言うと、夜という概念を自由自在に操ってなんでもできる術式。

剣だって作れるし、その気になれば巨人もドラゴンも作れちゃう」

「最強じゃん」

「夜限定だけどね。私、天与呪縛で日中は呪力使えないから」

「………それ、俺の前で言って大丈夫そ…?

宿儺も聞いてんだけど…」

 

静観していた宿儺が領域内で舌打ちする。

余計なことを言うな、小僧。

そんな文句がガンガンと響く中で、悠仁は特に気にすることなくトバリの返答を待った。

 

「んー…。別にそこまで目くじら立てなくてもいい気がするんだけどなぁ。

虎杖くん、パソコン勉強する気ないでしょ」

「ないよ。無理だし」

 

少しはモノを学べ。

生得領域内に宿儺の怒号が響く。

結月ゆかりの術式は、巻き込んだ相手のプログラミング知識が豊富なほどに無力化されていく。

故に、宿儺が彼女に勝つには、ある程度専門的な知識が必要になる。

が。あろうことかこの器、知識を深めるという概念を知らないのか、全くもって机に向かおうとしない。

脳から記憶を読み取っても、テスト前に一夜漬けするくらいで、学生という文字に全力で中指を立てているのかと思うほどに遊び呆けていた。

菅原道真は知っていたのだ。

虎杖悠仁が学生らしく勉学に…、それもプログラミングといった専門知識の勉強に励むことなど、天地がひっくり返ってもないということを。

 

「話を戻すと。私の術式は夜という概念で攻撃するから、無限も機能しない。

概念の世界に法則なんて存在しない。ただそこに在るだけだからね」

「なるほどねぇ。それが、道真公が出した僕への対抗策ってわけか。

…なら、どうして傑を殺さなかった?」

 

「僕を殺せるんだ。できるだろ」と付け足し、お冷を氷ごと口に含む悟。

ごりっ、ごりっ、と彼が氷を噛み砕くのを待ち、トバリは口を開いた。

 

「買い被ってくれるな、五条くん。

私は夏油くんを殺さなかったんじゃなく、殺せなかっただけ。

あの日は君の監視にまわって居たからね。

それから彼に会ったのは日中だけさ」

「傑の所在は把握してなかったのか?」

「なかったね。飛梅様も、夏油傑をあまり危険視していなかった。

それよりも羂索の所在を把握して、確実に無力化するのが先決。

私たちが生まれる前からずーっとそういうスタンスだったと聞いてるよ」

「あの脳みそ、どんだけ婆ちゃんに嫌われてんの?そこまで力入れて潰しに行くって相当じゃない?」

「1000年も追い回してたくらいだからね。相当なことしたんじゃない?」

 

道真を目の前でこき下ろしただけである。

飛梅はその怒りを1000年間一時たりとも忘れておらず、だからこそ「永遠の命」を与えた上で獄門疆に封じ込めた。

可哀想とは思わないが、同情はする。

今頃はどこぞの究極生命体のように思考をぶん投げているであろう羂索のことを振り払うように、悟は首を振った。

 

「んんっ。兎にも角にも、道真公と婆ちゃんは僕を殺す気だったと」

「有体に言えばそうだね。

これまで君や宿儺レベルの怪物が大暴れした記録が殆ど残ってないのは、道真公と飛梅様が事前に殺してたからだ。

今回も同じで、その下手人に私が選ばれて、その必要はもうないと判断された。

これが君が求めてたもう半分の答えだよ」

「なるほどね」

 

言って、コップに水を注ぎ入れる悟。

なんとも言えない空気を前に、悠仁が居た堪れなくなっていると。

横目に見える悟の口元が、幾分か若くなったような気がした。

 

「さ、難しい話はおしまいっ!

ここからは僕の聞くも涙語るも涙の苦労話を聞いてもらいます!」

「ようやく苦労をかける側からかけられる側になったのかい。

夜蛾学長がよく『あの28歳児め』と愚痴を吐いてると聞いたが」

「そりゃ一月前までの話!

今の僕は酸いも甘いも噛み分けたダンディな大人だからね!」

「先生。それ、自分で言うと子供っぽいよ」

「大人だからね!」

「だだだだだだだ!?!?締まってる締まってる!!」

「私が見てるのは大人とは正反対の生き物なんだが」

 

生徒を交えたなんの実りもない雑談は、悟の心を確かに満たした。




夜語トバリ…夜のみ最強の女。日中は蠅頭にすらダメージを与えられないレベルのクソザコと化す。家入硝子と仲がよく、ちょくちょく居酒屋に通ってる。

両面宿儺…現状が詰んでることに気づいて危機感を覚えてる。狙ってる伏黒恵は飛梅付きじゃないと会えないし、なんかやらかした時点で最適解がすっ飛んでくる。最適解をどうにかしようにも器がパソコン勉強する気ないし、自分で学ぼうにも専門用語は多いわ仕組みはややこしいわそもそも学ぶ時間足りんわで匙を投げた。

五条悟…久々に青春を思い出して回復。

転生菅原道真…無下限は晩年に子孫にプレゼントした術式。「もっと使いやすくしてもいいのよ」って言ったのに、当時の五条家が「複雑な方がかっこいい」とかいうから六眼ないとまともに使えなくなった。

虎杖悠仁…ごはんおいしい!!
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