転生菅原道真「うちの梅から女の子が!!」   作:鳩胸な鴨

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手に負えない自己中を同時に相手しなきゃいけない立場なの可哀想すぎない?


夜蛾正道の苦悩

『夜蛾。今年の交流会見に行くから』

『東京の美味しいスイーツを用意しろー!』

「は???」

 

電話の向こうから聞こえた言葉に、思わず声を漏らす男性…夜蛾正道。

呪術高専東京校の学長を務める彼が言葉を返すより先に通話が切れ、つー、つー、と音が鳴る。

ああ、この振り回される感覚。

いつも味わっているものと全く同じだ。

どこか遠い目でそんなことを考えるも、即座に首を横に振る。

 

「考えろ、夜蛾正道…!!

いつもの気まぐれなのか…!?

それとも何か狙いがあってのことか…!?」

 

顔の皺をより深くし、思考を巡らせる夜蛾。

日々、五条悟という28歳の問題児により鍛え上げられた胃がキリキリと痛む。

昨年、今年はイレギュラーが多かった。

乙骨憂太を中心に巻き起こった騒動に、両面宿儺の受肉。

あの厄介ごとの塊みたいな2人が、交流会に興味を持つのも無理はない。

だがしかし、乙骨は現在アフリカに渡っており留守。

両面宿儺の器であった虎杖悠仁も(表向きは)とっくに死亡しており、残った注目株は十種影法術を有する伏黒恵くらいなもの。

これで「聞いてた話と違う」とか、「つまんない」とか言われて暴れられたら、目も当てられない。

 

────僕らがラスボスだ。一撃でも入れてみろよ、最強。

 

────先に一撃入れた方の勝ち。例年の団体戦よりずっとシンプルでいいでしょ?

 

というか、実際に過去にあった。

 

まだ学生だった五条悟と、その親友である夏油傑が京都校を蹂躙している途中、「ワンサイドゲームすぎてつまんない」と乱入し、交流会を阿鼻叫喚の地獄に変えたのだ。

今年もそうならない保証はない。

というか、これだけ地雷案件が揃っていて誰1人出ないとなれば、絶対になる。

流石は最強の無茶振りに振り回されている苦労人というべきか、夜蛾の経験による憶測は悲しいくらいに当たっていた。

 

「ど、どうする…!?

あの時の大惨事を繰り返…す、わけ…」

 

あれ?これ詰んでね?

夜蛾正道の脳裏に、最近読んだネット小説の一文が浮かび上がる。

注目株は軒並み留守。

残った伏黒恵も、飛梅たちのお眼鏡に適うかどうかでいえば否。

京都校の目立った強者は、加茂家の相伝を継ぐ加茂憲紀と、素晴らしく気持ち悪い変態である東堂葵。

そのどちらかでも飛梅の興味をひけるか。

 

無理である。現実は非情だった。

 

そもそも、乙骨や虎杖のようなイレギュラーがようやく目に留まるくらいなのだ。

求めるハードルがあまりにも高すぎる。

大惨事確定の交流会をどう切り抜けるか。

先の見えない状況を前に、夜蛾は声を震わせながら携帯を操作した。

 

「ま、まずい…、まずいぞ…!!

急ぎ連絡を取らねば…!!」

 

夜蛾正道の明日はどっちだ。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「太宰府天満宮から来賓として来てくださった飛梅の精霊様だ。粗相のないように」

 

なにそれ聞いてない。

口いっぱいにシュークリームを頬張るヒメとミコトを前に、全員の表情が強張る。

その横で、夜蛾と京都校学長…楽巌寺嘉伸はかつてないほどに脱力していた。

「実は死んでませんでしたおっぱっぴー!」という、なんとも不謹慎なサプライズをかました虎杖悠仁の乱入によって最悪の事態は避けたのだ。

多少肩の力を抜いても無理はない。

むしろ、膝から崩れ落ちなかった自分を褒めて欲しいくらいだ。

そんなことを思いつつ、夜蛾は食事に夢中になっているヒメとミコトに声をかける。

 

「飛梅様、お食事のところ失礼します。

生徒たちに向け、一言お願いできますでしょうか?」

「がんば」

「ふぁいと」

「…とのことだ。互いに良き経験となるよう、真剣に取り組むように」

 

面倒くさくなって強引にまとめたな。

多少なりとも不和はあれど、この時ばかりは全員の心が一つとなった。

と。あまり事の深刻さをわかっていない悠仁が、すぐ隣に立つ伏黒恵に耳打ちする。

 

「なぁ、伏黒。なんで学長はヒメちゃんとミコトちゃんのこと、『飛梅様』って一括りにして呼んでんの?」

「なんでって…、飛梅の化身だからだろ」

「だからって一括りにするのはなんか…こう、失礼じゃない?」

 

悠仁の意見を前に、伏黒は考える。

どう説明すればコイツにもわかるのだろうか。

決して知能が低いわけではないのだが、呪術に関してはズブの素人どころの騒ぎではない彼にストレートな説明をしても、理解は得られないだろう。

ならば、どう説明すべきか、と考えたその時。

ふと、先日遊んだゲームが頭をよぎった。

 

「…簡単に言えばドードーみたいなもんだ」

「……つまり?」

「体が飛梅、二つの頭がヒメ様とミコト様って考えたらいい」

「あ、なるほど!」

 

納得する悠仁に反応してか、そもそも最初から聞いていたのか、ヒメとミコトが凄まじい形相で伏黒を見やる。

口はスイーツを貪っているが、「テメェ後で覚えてろよ?」と副音声が聞こえる気がする。

せめて聞こえない場所で話せば良かったか。

伏黒はそんな後悔を抱き、ため息を吐いた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「な、何故、何故、交流会に飛梅が…!?」

 

その頃、花御は震えていた。

高専が保有する呪物の奪取を目的とした姉妹校交流会での襲撃。

その事前準備も済ませ、それぞれが散開して行動する直前のことだった。

花御は気づいた。気づいてしまった。

 

あの全方位に殺意マックスの精霊が、一番居て欲しくない場所に居ることに。

 

あの時削られた部分が疼く。

そんな錯覚すら覚える。

軽く震える花御に対し、真人が軽く肩を叩いた。

 

「飛梅が居たところで、わざわざこっちに干渉してこないでしょ。

夏油の話を鵜呑みにするわけじゃないけど、こっちから飛梅にちょっかいをかけなければいいだけの話だ」

「……それは、そうですが…」

 

果たして、彼女らが動かない保証はあるのだろうか。

そんな一抹の不安を抱え、花御は持ち場へと向かう呪霊、呪詛師たちに続いた。




花御…成功確率がめちゃくちゃ高かった襲撃に特大の不安要素が来てガチ焦り中。

虎杖悠仁…ヒメミコに対してあまり畏敬を抱いてない。脳内でヒメミコのヅラをしたドードーのコラ画像を生成した。

鳴花ヒメ・鳴花ミコト…ドードー呼ばわりされてご立腹。
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