転生菅原道真「うちの梅から女の子が!!」   作:鳩胸な鴨

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家庭に生魚無理な人いると食う機会ないよね。


そんなことより寿司食いねぇ!

「…で、ヒメ。えらっそーに悟坊や叱ったくせに見逃したの?」

 

翌日。高専生と教師らが見守る中、こめかみに青筋を浮かべたミコトがヒメを睨む。

一方のヒメは全身から汗を垂れ流し、視線を右往左往させ、彼女の追及から逃れようとした。

 

「……いや、その…、面倒くなって…」

「ここにヒメがやり込んだスプラトゥーンのデータの削除ボタンがあります」

「ごめっ、待って!?待って!?!?」

「嫌だったら追いかけて処理しろボケ」

「どこ行ったかわかんないもん!!」

「はいぽちっとな」

「あぁあああああーーーーーッ!!!!」

 

慟哭し崩れ落ちるヒメに、悠仁が「罰がエグすぎない…?」と声を漏らす。

正直、数百時間やり込んだゲームデータ一つで贖えるような失態ではない。

が。ここにいる誰もがそれを責めることができる立場でもないため、全員が口を噤む。

一方、ミコトはヒメから視線を逸らし、悠仁へと視線を向けた。

 

「虎杖悠仁くん」

「え、なに?俺なんかした?」

 

これからヒメのように怒られるのではなかろうか。

少しばかり鼓動がうるさくなった気がする。

心配そうに顔を歪める悠仁に対し、ミコトは朗らかな笑みを浮かべた。

 

「黒閃の経験。それは術師として成熟するのに必要な要素の一つだ。

ナイスファイト。間違いなく、この場で一番成長したね」

「ど、どもっす…」

「成長した君にプレゼントってわけじゃないんだけど、今日は仲間内で寿司屋に行く予定をしてるんだ。よかったらどう?」

「マジ!?行く行く!!」

「こら、虎杖…!敬語使え、敬語…!!」

 

寿司と聞いて目を輝かせる悠仁を、隣に立っていた伏黒が押さえ込む。

「時間は後で伝えるね」と微笑んでいたミコトだったが、即座にその顔を怒りに歪め、伏黒を睨め付ける。

 

「で、僕らのことをあろうことかドードー呼ばわりした伏黒恵くん。

成長のスピードがゆっくりすぎ。

もう少し焦ろうか。その練度なら領域展開くらいできてもおかしくないから」

「………はい」

「悟坊やじゃ甘い。

直々にシゴいてやるから覚悟してて」

「……………はい」

 

かなりオブラートに包んでるが、言葉の端々に怒りが込められている。

幼少期からミコトの厳しさに触れていた悟は眉を八の字に顰め、伏黒に心の底から同情を向けていた。

 

「んで、あと一言言ってやりたいのは…、純朴役立たず前髪ちゃん」

「……もしかしなくても、私ですか?」

 

豪速球な罵倒が少女…三輪霞の心を抉る。

自覚していたのだろう。

心苦しそうに顔を顰める三輪に、ミコトは冷め切った目を向ける。

 

「名前で呼ばれることすら贅沢だよ。

あっさり呪言食らって2時間ばっちり爆睡かますなんて、何考えてんの?

この業界入ってそこそこ長いよね?

交流会なんだから、情報あったよね?

それで警戒怠るってどゆこと?ん?」

「申し訳ありません…。

以後、気をつけます…」

「わかればよろしい」

 

自分に負い目がありすぎて反論できない。

がっくりと肩を落とす三輪から視線を逸らし、ミコトは再び生徒たちを見やる。

 

「次…は、あとで個別面談にしよう。

この場にいない人もいるし、こんな頭にカビ生えた隠居の意見を長々と聞かせるのも悪いしね」

 

言いたいことを言えた、と満足そうに笑みを浮かべるミコト。

と。これまで腕を組み、ことを静観していた東堂が声を張り上げた。

 

「飛梅様!すまないが俺は…」

「大丈夫大丈夫。高田ちゃんの番組やってる時間は避けるから」

「かたじけない…!!」

 

推し活に理解ある上位存在とか嫌すぎるな。

そんなことを思いつつ、悟はミコトから注目を掻っ攫うように立ち上がった。

 

「ミコト様、そのくらいで。

交流会はまだ2日目が残ってるから」

「わかった。僕らは友だちと約束があるから、ここらでお暇させてもらうよ。

ほら、ヒメ。消えたデータにいつまでも執着してないで、ちゃっちゃと立つ」

「お前が消したんだが!?

お前が消したんだが!?」

 

猛抗議するヒメの首根っこを掴み、「そんじゃまたねー」と小屋から出ていくミコト。

しばらくすると、悠仁と東堂を除く全員が緊張を解き、その場に脱力した。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「うぉおー…!めっちゃ通っぽい店…!」

 

その日の夜。悠仁のテンションは最高潮に達していた。

目の前に聳えるは、テナント募集のビルに囲まれるようにして佇む、小さな寿司屋。

長く続いているのだろう、さがる暖簾はくったりしており、看板もところどころ劣化が見られる。

こう言った「通っぽい店」に憧れは抱いていたものの、幾度となく入る機会を逃してきた。

ミコトの紹介だ。美味いのは確定したと見ていい。

 

「どんなネタあるかなー…」

 

期待に胸を膨らませ、劣化が目立つスライドドアを開ける悠仁。

店は狭く、入るとすぐに角の席に座る鳴花姉妹と目が合った。

 

「おひとりさまで?」

「あ、いえ。待ち合わせで」

「おーい、こっちこっち」

 

店の大将であろう男性の声に負けないよう、声を張り上げるミコト。

悠仁は席に向かうと、空いている黒いパーカーを羽織った少女の隣に座った。

 

「どもっす」

「どうも、こんにちは。

あなたが今日来るって言ってたミコトさんのご友人ですか」

「はぇ?」

 

友人。その言葉に素っ頓狂な声を漏らし、ミコトへ視線を向ける悠仁。

それに対し、ミコトは「友だちでしょ?」と言いたげな笑みを返した。

 

「ども。虎杖悠仁です」

「結月ゆかりです。

苗字は呼び慣れてないんで、名前の方で呼んでください」

 

呪術師なのだろうか。

それとも、ただの一般人なのだろうか。

悠仁は差し出された手を握り、軽く握手を交わす。

ストレートな美人だ。

呪術高専の女性陣は、顔立ちはいいのだがいかんせん顔つきが険しいきらいがある。

タイプの違う美人を前に高揚を覚えていると、ヒメが口を開いた。

 

「歳も近いし、1000歳超えたお婆ちゃんに囲まれて寿司食うよりかは嬉しいでしょ」

「1000歳超えたお婆ちゃんはスプラのデータ消えて号泣しないと思う」

「…そういう1000歳もいるんだよ」

 

悠仁の切れ味の鋭い正論に、ふいっ、と視線を逸らすヒメ。

子供っぽいのか、それとも大人びているのか、よくわからない。

そんなことを思いつつ、悠仁は並ぶ札に目を向けた。

 

「あれがここにあるネタってこと?」

「うん。旬の盛り合わせとかあるし、よっぽど『これ食べたい』ってのがなければそれの方がいいよ」

「おぉー…。常連っぽい…」

「本当に常連だけどね。

太宰府からこっちに遊びにきた時は、しょっちゅう食べてるよ」

「フットワーク軽っ!?」

 

太宰府からここまで、どれだけの距離があると思っているんだろうか。

いや。もしかすると、五条先生のように一瞬で移動する術があるのかもしれない。

そんなことを思いつつ、悠仁は隣で茶を啜るゆかりに目を向ける。

 

「えっと…、ゆかりさんは呪術師で?」

「名簿に名前のないモグリですがね」

「え?高専からスカウト来なかったの?」

「授業受けながら肉体労働ってのが嫌すぎて、全力で隠れてました」

「えぇ…?」

 

こんなにやる気のない呪術師は初めて見た。

…実を言うと、これよりもはるかにやる気のないおっさん呪術師が一級にいるのだが、悠仁はそのことを知る由もなかった。

「いいの、それ?」と言いたげな視線をゆかりに送る悠仁に、ミコトが笑みを浮かべる。

 

「隠してたの僕らだよ」

「………はい???」

 

聞いちゃいけないことを聞いた気がする。

愕然と震える悠仁に気を使うことなく、ヒメが口を開く。

 

「あと何人か隠してるよ?」

「えっと…、俺に言っていいの、それ?」

「クソ自己中への牽制だよ。

『昔みたく好き勝手に暴れられると思ったら大間違いだぞ』って意味のね」

「……あんまり実感なかったんだけどさ。

全盛期の宿儺って、めっちゃ強い?」

「道真公と私らを相手にして、痛み分けで済んだくらいには強いよ」

 

無限に術式を作れるバケモノを相手にして痛み分けで済んでる時点で、正しくバケモノである。

もしかすると、即死刑になっていた方がまだマシだったのかもしれない。

悠仁がそんなことを思っていると、ヒメが「安心しなよ」と声をかけた。

 

「悠仁くんは私らのオキニだからね。

クソ自己中がやらかしたことに罪悪感抱いて死にたくならないよう、徹底的に対策してあるのさ」

「具体的には?」

「今ここでそれを言っちゃおしまいだよ。

だって、クソ自己中も君の中で聞いてるんだから」

「あ、そっか」

 

宿儺の舌打ちが聞こえた気がする。

いや、ヘソを曲げているのは確実か。

悠仁が顔を顰める宿儺を想像していると、ふとあることに気づく。

 

「……あれっ?ちょっと待って?

五条先生の手の内バレてたりする…?」

「するね。価値観のアップデートは全然できてないのに、戦闘IQだけは高いから」

「マジかぁ…」

 

思ったより人間側が不利すぎやしないだろうか。

向こうが対策を立ててきていると言えばそれまでだが、ここまで周到だと末恐ろしくなってくる。

なにかしらの目的があって動いてるのは確かなのだろうが、呪術に疎いせいか、だいたいの憶測すらできない。

 

「…ま、考えても仕方ないな!

大将!この旬の盛り合わせ3人前!!」

「あいよっ!!」

「そーだそーだ!寿司食いねぇ寿司!」

 

わからないことはわからない。

そんなことより寿司を食べよう。寿司屋なんだから。

寿司にテンションを上げる悠仁とヒメに、ゆかりは呆れた視線を向けた。

 

「………これが、お気に入り?」

「面白い子でしょ」

「いや、想像してた面白いのベクトルが違いすぎるって言うか…。

普通にノリのいいクラスメイトみたいな面白さじゃないですか、これ?」




両面宿儺…実は飛梅伝説のあとも飛梅と戦った人。菅原道真と飛梅相手に痛み分けで済んだバケモノ。他の三大怨霊とも痛み分けで終われるくらいに強い。すごい。

菅原道真…両面宿儺と痛み分けで済んだバケモノ。お互いにタダでは済まないどころの騒ぎじゃないと判断して、「この勝負は永遠に決着をつけるべきではない」と説得。両面宿儺も珍しくそれに賛同して撤退。

結月ゆかり…現時点で開示できる情報は渋谷住まいという点のみ。普段は動画投稿サイトで収益を得て生活してる。
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