劇場版リブロマンサー・ファイアスターター ~東の果ての儚き御巫~   作:火ノ鷹

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リブロマンサーサイド


ボーイ・ミーツ・ガール

 G(ギーグ)・ボーイはアメリカで生まれ育った、サブカルチャーが好きな少年だ。ファイアスターターというコミックに出てくるキャラクターが特に好きであり、イベントには必ず参加する程。

 

 そんな彼は半年以上前のイベントの帰り道、見たことのある──コミックで見たことのある怪物と遭遇した。ファイアスターターと戦う怪物だ、知らない訳が無かった。

 

 暴れる怪物を前に逃げ回るしかできなかったG(ギーグ)・ボーイ。近くに同級生のマジガールがいなければ、そのまま逃げていたことだろう。

 怪物がマジガールを襲った時、G(ギーグ)・ボーイは間に庇う様に立ち塞がった──その時だ。G(ギーグ)・ボーイが間に挟まる瞬間に落としたコミックから光が溢れた。

 

 リブロマンス。本・コミック・小説といった媒体のキャラクターを現実に侵食させ召喚する、さらにはその力を自らに宿す能力。広大なアメリカでも滅多に見ない能力であり、その力を持つ者をリブロマンサーと呼ぶ。G(ギーグ)・ボーイに目覚めた力だった。

 

 ファイアスターターの力を宿したG(ギーグ)・ボーイは怪物を倒しマジガールを助けた。

 

 その後ファイアスターター本人が現実に現れファイアと名乗ったり、マジガールもリブロマンサーとなりミスティガールの力を宿したり、デスブローカーと呼ばれる裏で暗躍するキャラクターをリブロマンスする(エージェント)と出会ったりと、G(ギーグ)・ボーイの生活は一変した。

 

 当時アメリカでは怪物が無作為に召還される事件が発生していた。G・ボーイ達は解決しなければと動き、怪物を召還するフィクサーを探し、デスブローカーがフィクサーの情報を手にした。デスブローカーが瀕死に陥ったものの、フィクサーをG(ギーグ)・ボーイの前に連れ出すことに成功した。

 そしてファイアスターターと心を完全に合わせたG(ギーグ)・ボーイはファイアと力を掛け合わせることでファイアスターターの力を十全に引き出したリブロマンス──ファイアバーストの力でフィクサーを打倒。平和を取り戻すことに成功したのだった。

 

 

 そして今……G(ギーグ)・ボーイとマジガールは極東の島国にいた。

 

 

 ■■■

 

 G(ギーグ)・ボーイとマジガールがいるのはとある山の登山道。しかし整備されているのは最低限であり、観光客が来るとは想定されていない山の中だった。

 

 マジガールは街中で観光予定だと思っていたため、非常に不満な顔をしていた……どころか、口調まで変わる程に激怒している状態が続いていた。普段のおっとりとした様子はどこへやら、姉御肌のような人格かと思わせるものだ。

 

「宝くじに当たったからってどうしてここなの?」

「ここがどこだか知ってる?あのファイアスターターが戦ったところなんだよ!聖地ってやつ!」

「ああ……」

「劇場版だからね。知らないのは仕方ないっていうか」

「長くなるでしょ、そこでストップ。簡単にお願い」

 

 リブロマンスには並々ならない想いが大切となる。ファイアスターターというキャラクターがコミック上であれど活躍した場所が現実にあるともなれば、G(ギーグ)・ボーイは観光など放り投げて想いのままに行動するのは必然だった。

 

「劇場版作った時、極東の島国の風習をちゃんと取材してるってあったんだ」

「劇場版でやってることがそのままこの国にあるってこと?何よ……ヒロイン誰?」

 

 巻き込まれたマジガールからすればたまったものではない。難癖付けたくなるのも当然だった。

 

「その時はみこ……ええと」

「巫女?」

「プリーストに近いのかな。ここの国で神様に近い女性って感じ」

「ふぅーん」

 

 マジガールはファイアスターターへの興味は薄い。助けてくれたG(ギーグ)・ボーイが好きなキャラ、くらいの認識だ。

 話は合わせど始まりの興味は薄く──しかし自らのリブロマンスと近しいものがあると思いつつあった。

 

「神秘的な舞で神様さえも魅了するって話らしいよ」

 

 マジガールのリブロマンスは絵本の魔術師・妖精がモチーフだ。極東と西洋という違いはあれど、神秘的な存在と問われればイエスと答えられる存在だ。

 

 ほんの少しだけ興味が湧きつつも……小言を口にする程には現実に不満はあった。

 

「神秘……だからこんな山奥に行ってるのね」

「ギクっ」

 

 G(ギーグ)・ボーイはスポーツをするわけでもなければ身体を鍛えているわけでもない。いきなりの登山ともなれば体力もそこまで保っていなかった。

 マジガールも似たようなものであり、休憩しながら歩いているのだ。日はまだ落ちていないものの、あと1、2時間もあれば帰らなければマズい時間だった。

 

「ついでに、迷ってないかしら?」

「そ、んなことは……あれ?」

 

 二人がスマホを確認すると、マップには明らかに道から外れていると示されていた。マジガールの口からため息が出るのも仕方ない。

 

「はぁ……スマホが届く場所だからいいものの」

 

 G(ギーグ)・ボーイがスマホから顔を上げてマジガールへと視線を向けようとし──背後へ視界が一瞬だけ入る。

 

「ごめ……ん…………」

「どうしたの?」

 

 G(ギーグ)・ボーイの瞳にはマジガールの姿は映っていなかった。

 

 ふらふらと何かに惹かれたように歩いていく G(ギーグ)・ボーイ。マジガールもG(ギーグ)・ボーイが歩いていく方へ視線を向けると、瞳に入った神秘に身体が疼き、歩みが早くなっていた。

 

 森を抜けた先、少しだけ開けた場所だった。

 

「「きれい……」」

 

 風のように舞い踊る御巫に、出会った。

 

 




年内に終わらせる
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