劇場版リブロマンサー・ファイアスターター ~東の果ての儚き御巫~ 作:火ノ鷹
数年から数十年に一度、神託と共に現れる『
『
受け継がれてきた伝統。神力を授かることが出来れば
だが、だからこそ神にと願う者は多い。数多くいる
そして「最も優れた舞を踊る」という都合上、「優れる」方向性はいくつかに分けられた。
「自分らしい舞こそが最も優れている」という
「より美しき舞こそが最も優れている」という
「初代が踊った舞こそが最も優れている」という
当代のオオヒメの
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「いーだ!フゥリちゃんの意地悪!」
「からかってるだけだよ、ハレちゃん」
「ハレ先輩なら知ってるかなって聞いただけですよー」
三人の
火鼠、猫又、妖狐、どれも並大抵の霊獣ではない。それだけでも筆頭と呼ばれるに値する。
ただそれはそれとして、
「初恋ってどんなものなんですか?なんて知る訳ないじゃん!私たちは
「……私はお父さんに付き添って外交に行ったりするから」
「ニニちゃん!?」
国の外交といった面もあるのだ。外国へ視察に行くこともあり、歳の近い男子と話すこともあった。筆頭のニニであれば猶更だ。
「裏切り者ー!」
「気になる人いなかったから大丈夫だよ」
「あ、そうなの?じゃあいっか」
天然気味のハレはニニやフゥリのいった言葉をそのまま素直に受け取る。騙されやすかったり、フゥリが遊び半分で催眠術をかけたら本当に引っかかったりと純朴な性格なのだ。ニニの言葉をそのまま受け取り裏など考えもしない。
フゥリに対しても、まったく同じ感覚で接していた。
「あ、そろそろ呼ばれてるから行くね」
「うん!じゃあねフゥリ!」
「また明日ね」
時間だと断り、フゥリは手を振って二人と別れる。歩いていく足は快活だが、二人から見えなくなった表情は暗かった。
「フゥリ……」
ニニの心配そうな声が、聞こえないほどに。
■■■
フゥリは珠の派閥、熾烈なエリート争いを行う派閥だ。自身の時間も何もかも厳格に定められた世界に生きている。
「ごめんね、ハレ先輩、ニニ先輩」
呼ばれてるなんて嘘……ではないけど今すぐじゃない。
本家のお屋敷に呼ばれてはいる。けれど呼ばれてるのはもう少し日が落ちてから。だから、実際には少しだけ時間が空く。
私には時間がない。厳格極まりない球の派閥は舞踊の踊り方や仕草、儀礼や態度といった細かなことまで教えられる。そこに自分自身という存在はいらない、必要なのは初代の舞踊を初代らしく踊ることだけ。
それだけでもものすごく時間がかかる。
それでも
最も優れてるのは初代の舞踊でいい。でも私の舞踊が無い理由にはならない。でも天戸開きで踊る舞踊は最も優れたものを踊らなければならない……だから、こんなことは慰めでしかない。
考えながら目的地まで走る。伝統と使命から外れた自分自身だけの舞踊を求めるなんて馬鹿な真似をするならどうやってでも時間を作るしかない。例え尊敬するハレ先輩やニニ先輩に嘘を吐いてでも。
「はぁっ!」
秘密の練習場所。ニニ先輩やハレ先輩、本家の人すら知らない場所で心のままに踊る。
初代の
じゃあ抜け出せば?抜け出したらその先の舞は……どうやって舞えばいいの?子供の頃から踊りたい舞踊を、風のような舞を舞いたいのに。
「今はもう、分からない……なぁ」
自棄だった。踊りも舞踊の形になってすらいないものだった。頭の中を空っぽにしたかった。
初代の舞踊が身体に染み付いて離れない。それでも今吹いている風のように身を任せて、感情のままにフゥリは舞う。
頭も体も空っぽになって、身体が風になったかのような感覚に身を任せて、このまま風になれたなら悩みも何もかも無くなるのかな──
「「きれい……」」
「え?」
──瞳に情熱を秘めたヒーローが、そこにいた。