劇場版リブロマンサー・ファイアスターター ~東の果ての儚き御巫~   作:火ノ鷹

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伝承の御巫

「フゥリは私達の友達にして後輩!こんなの許さないんだから!」

 

 ハレが腕を組んで憤慨し、ニニもほぼ同じ様子。友のために怒り、許せないことに立ち向かおうとする姿。

 G・ボーイ達にとっては、心強い援軍だった。

 

「二人でオオヒメの目を惹くって、どうやって」

「お主らはフゥリの舞に負けたろう」

 

 G・ボーイの疑問を遮り女性が口を出す。御巫としての誇りを知っているからこそ言える言葉。

『オオヒメ』になれなかった御巫は価値が劇的に下がる。次代に継げて更に優れる舞を指導する立場というものもあるがそれも極僅か。

 少なくとも半数は、ただ見目麗しい女性として扱われるようになる。神秘が失われれば俗に塗れる。人類の歴史において必然のことだ。

 

 二人も『オオヒメ』になれなかった者。ただ女性とは大きく違いがあった。

 

「久しぶりかな、珠の長さん。そりゃ1人しか選ばれないなら一番はフゥリちゃんだよ」

「私達三人でも頭一つ抜けてましてたし」

 

 ハレ、ニニ、フゥリの三人はライバルだった。筆頭であり、争う仲だった。実力もよく知っている程に。

 しかし──友でもあったのだ。誰が『オオヒメ』になろうと祝福できる程に。

 

 そして、友だからこそできることがある。

 

「なら」

「でもそれは一人で舞った時の話じゃない?」

 

 口をはさんだのはマジガールの声。ミスティガールに変身していない、本当なら怖がりの彼女。

 怖がり、けれどちゃんと芯を持った人だ。怖くても前に進める人なのだ。

 

「マジガール!」

「ごめんね。遅くなっちゃった。

 

 おさ、さんでいいのかな?私たちはリブロマンサー。本、小説、いろんな媒体の中の人と繋がる力を持ってる。だから私は落ち込んでた二人にこう言っただけ。

 

 

──私たちは、一人だけで立ち向かうわけじゃない」

 

 

 

 マジガールの言葉は僕たちからすれば当たり前のもの。僕たちは一人だけでは、立つことしかできないモブみたいなものだ。

 だから誰かに力を借りる(リブロマンスする)。そうして立ち向かってきた。

 

「まじがぁる……でいいんだっけ。この人がヒントを教えてくれたんだ。私たちは競争し合う関係だけれど、それだけじゃない」

「私が外の国を見てきたこと。融和の考え、苦労して分かるような世界だけれど……私たちには苦労しなくても全部理解してずっと繋いできた世界がある」

 

 言わずとも分かる世界。御巫は伝承と伝統に生きる。切磋琢磨した繋がりや環境は決して消えることは無く、自然にすら感じるようになる。

 

 知らない間に頼り頼られ、それが当たり前の世界。ハレとニニはその世界にいるのだ──そして、フゥリも。

 

「フゥリちゃんは余りにも舞が凄すぎて注目を全部集める。それはフゥリちゃんの力だし凄いことだよ。

 

 でもね、私達は練習だと一人ずつで舞うことはあんまり無い。二人以上で舞うことの方が多いの、場所が無いからね」

「代わりに二人以上で舞う舞も加算されて美しく舞えるようになってきてる。それもまた一つの伝統なことに変わりはない」

 

 伝承だからフゥリはそうせざるを得なかった。しかし伝統とは、変わってはいけないものではないのだ。

 

 伝え()けていくものと、伝え統べるもの……ひとすじに繋がるもの。伝統なら、つながるなら変わっていいのだ。

 

「これはフゥリちゃんには出来ない……出来なかった。フゥリちゃん自身分かってなかったけど今なら分かる。あれは、初代『オオヒメ』の舞だから

 

 フゥリちゃんの舞だけど……。……フゥリちゃんがいないから」

 

 哀しく目を伏せるハレとニニ。二人はフゥリの舞を知ってはいたが、誰の舞なのかまでは分からなかった。

 

 日ノ神が初代の姿で現れたから、分かったことだった。

 

「そんなことをしても無駄じゃよ。伝統でないわ」

「分からない?あなたたちは伝承だけど私たちは伝統なの」

 

 ニニが挑発するようにニヤけた顔になる。

 それが怒りを抑え込んでいただけということは、続いた言葉が余りにも感情的だったからよく分かった。 

 

「伝承ならずっと同じであればいいわ。でも伝統を作る私達には『霊獣を通して日ノ神様へ話しかけること』でしかない。

 話し方が1000年前なんて現代に伝わらない。──まして向こうにはフゥリちゃんもいる!。会話を変えないと進めないの!」

 

珍しいニニの声色に女性は目を丸くし……笑った。

 

「カカカッ!ならばやってみるがいい!

 アラヒメ様は『オオヒメ』の力とフゥリの力を合わせ持つ、力を示さねば会話すらならん。

 

 が、『オオヒメ』に力は通じん。さらに言えばフゥリは味方にすらならんよ。

 

 フゥリは──何を魅せようとも『オオヒメ』に従順になるように育ててきたのだからの

「──っ!」

 

 悪意があるわけではない。目的の為にフゥリをよく知ってしまっているからこそ言える言葉。フゥリの努力も経歴も感情も知っている、だから引き返すなど考えもしない。

 

 あるのはただの純粋な御巫が願う想いだけ。善も悪も無く、行き過ぎてるという認識すら無い。御巫が抱く方向なら、正義と呼ぶほかない。

 

 拳を強く握るG・ボーイ。御巫の伝承も伝統もあまり知らない余所者、そう分かっていても口を出したい想いはあった。

 

 それが自分のエゴだとしても。

 

「……そんなことは分かってる。手も足も出なかった事実は変わらない」

 

 手も足も出ない……それが間違いだったと気づけた。ここに来たことで気づけたのだ。

 

「ファイアをバーストさせても届かないなら、ハートを燃やすしかない。

 

 戦うんじゃない。フゥリに届けるために、心を燃やすんだ」

 

 手も足も出さなくていい。向けるのは心だけで十分だった。

 

 

 

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