テンプレラノベみたいな世界に生きている   作:赤雑魚

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VS斧使い・銃火器使い

 

 

『――――本当に下らんな。人は何度死ねば気が済む?』

 

『ここは何処だ、だと? 貴様の身に起こったことがそのまま答えだ、阿呆め』

 

『安心しろ、死因は手違いも間違いでもない、ただの………そう、暴走トラックだ。そして幸運なことにお前には転生する権利を与える。無論、転生する先で役に立つ権能もくれてやる。俗に言う『チート』というやつだ』

 

『7つだ。『完全言語(ワード)』、『無限機関(リソース)』、『遊戯世界(ステータス)』、あとは………………面倒だ、とにかく好きに使え。よほど生きるのが下手でなければ死にはせん』 

 

『あ? 礼だと? いるかそんなもの』

 

『強いて言うなら、好きに生きろ。そうしているだけで俺の目的は達成される』

 

『俺が誰か、だと? お前達はよく知っているだろう?』

 

 

 

『転生の神だよ』

 

 

 

 何もない空間で、そいつは静かに嗤っていた。

 

 

 

 

 

□□□

 

 

 

 

 学園長にして俺の師匠である雑賀マガネ。

 

 彼女の考えはこうだ。

 

 学園都市【天地】の出場者の質に問題があるならば上げればいい。故に大会の出場候補者に必要な実力の基準を設ける。

 

 まず俺と御影ユイがペアを組み候補者登録をする。

 次に学園から、出場条件に俺達ペアに勝利することを加える。

 

 そうすればあら不思議。

 

 

 実力の要求基準の出来上がりである。

 

 

 これで少なくとも、出場候補者は近接型の剣士を凌げるだけの能力と、防御特化の盾野郎を突破するだけの攻撃力が必要となるわけだ。

 

「雑賀学園長はよく考えておられますね」 

「確かに考えてるかもな」

 

 引き撃ち毒撒きガン盾野郎に加えて、魔術斬りの剣士である。

 学園側の意図としては、高い防御を突破できるだけの実力ないし連携を求めている。

 

 自分で言うのもなんだが、候補者が害悪使いを倒せるのなら明確に合格ラインなのは確かだ。

 

 そういう意味では、師匠の人選は間違ってはいない。

 

「確かに悪くない案だけどな、一つだけ問題がある」

「なんでしょうか、先輩?」

「………俺たちが滅茶苦茶頑張らないといけないってことだ!」

 

 魔力を通して携行盾を構え、放たれた土の砲弾を受けとめる。

 

 ズン、と冗談みたいな衝撃が腕を走るが、身体強化にモノをいわせて強引に抑え込む。

 

「ウソ、耐えられた!?」

「残念だったな!」

  

 どうやら高速で大砲を生成していたらしい女生徒に、懐から取り出した石ころを数個ぶん投げる。

 

 そう、石ころだ。

 

 そこら辺に落ちているモノなので非常に安価なアイテムである。

 ただし肉体が大量の魔力で、アホみたいに強化されている俺が投げるので、ただの投擲もアホみたいな威力になる。

 

 そして投げる時に砕けてやや散弾気味だ。

 

 それがぶち当たる。

 

「ギャアァァアアアアアア!?」

「マユミ!? おのれ詠坂! 彼女の仇は俺がギャアァァアアアアアア!?」

 

 見れば大柄な鎧姿の槍使いが、ユイに斬り伏せられたところだった。

 鎧の隙間から血が出ているので、つまりはそこに剣を刺し込んだという事らしい。エグイ。

 

 とは言え、これで戦闘終了である。

 

「はあ、これで何戦目だっけ」

「丁度10戦目です」

「いや多すぎるだろ………」

 

 どんだけハイペースなんだ。

 学園側も俺達のような『基準』になる生徒を追って用意するとは言っていたが、すぐには決まらないだろうし普通にしんどいぞコレ。

 

 協力すれば報酬を貰えるが、割に合うのか微妙な気がしてきたな。

 

「なんか悪いな、成り行きでペア組んじゃったし。御影も迷惑だったら、今からでも断ろうか?」

「いえ、大丈夫です。身体を動かすのは嫌いじゃないので」

「そっか………」

 

 スポーツ感覚なんだよな、コレ。

 流石は戦うことが当たり前の学園都市、世界観が違いすぎて震えが止まらんぜ。

 

 前世とのギャップを、おもむろに懐から取り出した炭酸飲料と共に飲み下す。

 

「それに、少し憧れていたんです」

「憧れ?」

「はい、学生として、自分のために、こんな風に切磋琢磨するというはあまり経験がありませんでしたから」

 

 御影ユイは言う。

 

 自分は孤児だったのだと。

 

 世界連盟に拾われてからは、戦う術を身につけるために生きてきたのだと。それを苦痛に、不満に感じたことはないけれど、それでも普通の生活というものに、多少の憧れがあったのだと彼女は話した。

 

「…………」

「あっ、すみません。無論、職務をおろそかにするつもりはないのですが」

「帰りに、なんか甘いもん食いにいこっか」

「え? は、はい」

 

 こう………幸せになってくれよな。

 学生っぽい事をもっとしてくれ。もうパフェとかラーメンとか奢っちゃうわ。

 

 あんまり財布に余裕はないけどな!

 

 

「――――――よォ」

 

 

 不意に声を掛けられ、振り向く。

 見れば二人組の男が、試合場に立っていた。

 

 黒髪を後ろに撫でつけた大柄な学生と、刈り込んだ短髪を金に染めた学生だった。

 

 大柄な男が口を開く。

 

「悪ぃな、話の途中だったか?」

「いや、今終わったところ」

「なら、二重戦(デュオ)を頼む。もちろん出場候補としてだ」

 

 どうやら候補ペアだったらしい。

 まばらに観戦に来ていた学生が、わずかに騒めく。

 

『あれ四辻と伍堂じゃね?』

『へぇ、あのチンピラコンビ』

『戦力としては十二分、やるかもしれないな』

 

 どうやら有名なようだ。

 少しは警戒したほうが良いかもしれない。 

 

 まあ気を付けると言っても、気持ち強めに魔力を込める程度しかできないが。

 

「じゃ、俺は詠坂(よみさか)だ。お互い適当に名乗って始める感じでいいか?」

伍堂(ごどう)だ。それで構わねぇ」

 

 大柄の学生………伍堂とやり取りしていると、黙っていた短髪の男が嗤う。

 

「ハッ、名乗らなくてもいいんじゃねぇか! まともに戦う気のねぇ負け犬野郎は有名だろうしなぁ?」

 

 おっと、こいつはなかなかだぞ。

 かなりアレなタイプのアレだ。

 

「………もしかして、どっかで戦ったことある?」

「初見だよ、序列外の雑魚に誰が構うかよ」

「やめろ馬鹿、………アイツは四辻(よつじ)だ。すまねぇな」

 

 伍堂が謝るが、俺のメンタルはすでに萎れてきている。

 

 露骨なヤンキータイプは苦手なのだ。

 見えないところで絶対カツアゲしてるよアイツ。

 

 だめだ、ヤンキーは怖くて精神上よろしくない。さっさと始めよう。

 

「学園序列外 詠坂レンジ」

「同じく学園序列外 御影ユイです」

 

 魔力を身体に巡らせ盾を構える。

 

「序列17位 伍堂ショウゲンだ。勝たしてもらうぜ」

「序列19位 四辻ヨキトキ。さっさとくたばりやがれ!」

 

 序列を聞いた瞬時に身を固める。

 

「遅ェ」

 

 ジャコン、と重苦しい音を響かせ伍堂が武器を持ち上げる。

 大型の黒い銃身が特徴的なリボルバー式グレネードランチャー。擲弾を撃ちだすことで火力を発揮する携行銃火器だ。

 

 爆撃が開始される。

 

「やべ!?」

 

 魔力を盾につぎ込み防御する。

 御影は撃たれる前に離脱したようだが、俺は周囲で手榴弾が炸裂し、動きが制限されてしまう。

 

 危なすぎて動けねぇ。

 

 魔力強化で致命傷にはならないだろうが、無視できないダメージなるのは間違いない。

 だが、爆撃しているという事は、あちらも迂闊には近寄れないという事だ。どうにか離脱する方法を考えて―――

 

 そこまで考えて、とっさに頭を下げる。 

 

 

 斬撃が通過した。

 

 

「あ? 躱しやがったか」

「お前頭おかしいんじゃねぇの!?」

 

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 手には身の丈ほどもある巨大な戦斧が握られている。

 身体に分解して仕込んでいたものを組み上げたのか。あるいは召喚したか、収納魔術か。

 

 どちらにせよヤバい奴だ。

 

「まあいい、次はテメェの首を落としてやるよ」

「なにを―――」

 

 ゴトン、と音がして視線を落とす。

 

 盾の一部が切り落とされて転がっていた。

 

「……………」

 

 冷や汗が伝う。

 

 一応、盾の強化はしっかりしていたのだが。

 

 どうやら想像以上に厄介な相手らしい。

 

「いい声で鳴けよ、負け犬野郎」

「クーン………」

 

 決闘の基本は戦闘不能になるか、降参するかの2択だ。

 こいつらは果たして降参をゆるしてくれる相手なのだろうか。 

 

 

 そんなことを考えながら、俺は面積の減った携行盾を構えるのだった。

 

 

 

 

 

 

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