〜イレイザーヘッドside〜
中央広場の敵を倒して回るイレイザーヘッドに本命と思われる敵が襲いかかり、攻防の末…イレイザーヘッドは肘をボロボロにされてしまった。
「無理をするなよイレイザーヘッド…」
「ーーーーっ!!」
肘が崩れた…!そういう個性か…!
「ところでヒーロー…本命は…」
ズドォォォン!!!
「は?」
突如水難エリアに現れた巨木に敵の思考が停止する中、イレイザーヘッドは自分の生徒の個性である事を即座に理解。
背後にいた真の本命と思われる大男…脳無の腕に捕縛布を絡め、腕を脱臼させようとするが……。
ブンッ!!
「ぐっ…!」
無造作に振った脳無の拳に腕を折られてしまった。
「生徒の個性か…?とにかく脳無、イレイ…」
ゴゴゴゴゴ…………!!!
「オイ!なんだアレ!?」「にっ…逃げろ!」「あんなの聞いてねえぞ!!」
「今度は何だよ!」
死柄木の言葉に答えるように見えてきたのは…津波のような樹木の壁。
明らかに殺しに来てる規模の攻撃に動揺する敵達を無視して樹木は全てを飲み込んだ。
「………はぁ」
飲み込まれたと思った直後に樹木の床の上に立っていたイレイザーヘッドが後で樹木(生徒の方)に聞くことが色々あるな…と思った時、近くの樹木が崩れて死柄木達が這い出てきた。
「あー…死ぬかと思った…脳無、黒霧、無事か?」
「申し訳ありません死柄木弔…生徒が一人、逃げてしまいました」
「………お前がワープじゃなかったら殺してたよ、とにかくアレはどうにかしないとマズイな。脳無、あの生徒を殺せ」
「止めっ…」
「おいおいお前はこっちだろ!」
「くっ…!」
さっきの少しの攻防だけでわかる!個性なしでアレならオールマイトじゃ無いと相手にならない!樹木が危ない…!!
「クソッ…少しでも目を離すとその間に樹木の個性を崩される…!」
加勢してきた樹木の個性と共に死柄木達を抑えながら脳無の方に『抹消』を飛ばすマルチタスクを行うイレイザーヘッドだったが、脳無が拘束された四肢を自切して落下し、樹木の左手を噛み千切った事で一瞬、脳無を見失ってしまった。
ゴッ!!
「樹木ィ!!」
緑谷達の方へ殴り飛ばされた樹木に動揺するイレイザーヘッドとこの隙に多くの樹木を破壊しようとする死柄木。
「クソッ…!」
「オイオイ生徒を助けなくて良いのかイレイザーヘッド!」
生徒の命の危機に駆けつける事すらできない自分が情けない…とイレイザーヘッドが自責の念を思い浮かべた次の瞬間、USJ中の樹木が蠢いた。
USJ中から集まった無数の樹木が脳無に群がり体を包み込む光景に死柄木は初めての動揺を見せる。
「おいおい…なんで脳無がやられてんだ!?対オールマイト用の脳無なんだぞ!?」
バァン!!
「もう大丈夫…私が来た」
「クソ…!オールマイトまで来やがった!もうゲームオーバーだ!逃げるぞ黒ぎっ!?」
オールマイトの拳を食らって吹き飛ぶ死柄木。
イレイザーヘッドが少し目を離したその瞬間、樹木達の陰で個性を使われ、死柄木と黒霧に逃げられてしまった。
「クソッ…!」
「Noooooooo!!!!」
オールマイトの慟哭がUSJ中に響き渡った。
樹木龍樹が救急搬送され、警察が到着し、生徒を集めて検査の為病院に送った後…保健室にてイレイザーヘッドと13号、そしてオールマイトの三人は刑事の塚内直正と言葉を交わしていた。
「…生徒達の状態は」
「皆軽傷…樹木くん以外に大きな怪我を負った生徒はいなかったよ。まあ…メンタルケアは急務だがね」
オールマイトが自分の不甲斐なさに拳から血を垂らす。
「……樹木龍樹の容体は」
「…樹木少年は左手の欠損、左腕の解放骨折、右腕の粉砕骨折、肋骨と肩甲骨、後は下顎の骨折、内臓の傷も酷い…そして現在は昏睡状態に陥っている…との事だ」
イレイザーヘッドが折れた右腕を握り締め、血が滲む。
「…そうか」
「…樹木に埋まっている敵の掘り出しもあるし私は失礼させてもらうよ」
塚内刑事がその場を後にして…三人が保健室に残された。
「くそう…自分が情けない…!!」
13号…黒瀬亜南が拳をベッドに叩きつけた。
「黒瀬…その気持ちは俺も同じだ」
「私もさ…」
三人は今回の敵襲撃に対する実質的な敗北を噛み締める事となった。
〜13号side〜
生徒を包んでいた黒いモヤが晴れると、生徒たちの姿が無くなっていた。
「皆は!?いるか!?確認出来るか!?」
「散り散りにはなっているがこの施設内にいる!」
「…………!!」
「物理攻撃無効でワープって…!!最悪の"個性"だぜおい!!」
本当に最悪の個性…!
「………委員長!」
「は!」
「君に託します。学校まで駆けてこの事を伝えて下さい。
警報鳴らず、そして電話も圏外になっていました。
警報器は赤外線式…、先輩…イレイザーヘッドが下で"個性"を消し回っているにも拘らず無作動なのは…恐らくそれらを妨害可能な"個性"がいて…即座に隠したのでしょう。
とするとそれを見つけ出すより君が駆けた方が早い!」
個性『エンジン』の委員長!
「しかしクラスを置いて行くなど委員長の風上にも…」
「行けって非常口!!外に出れば警報がある!だからこいつらはこん中だけで事を起こしてんだろう!?」
「外にさえ出れりゃ追っちゃこれねえよ!!お前の脚でモヤを振り切れ!!」
「救う為に"個性"を使って下さい!!」
「食堂の時みたく…サポートなら私超出来るから!するから!!お願いね委員長!!」
皆の説得に決意を固めたらしい委員長くん。
「手段がないとはいえ、敵前で策を語る阿呆がいますか」
「バレても問題ないから語ったんでしょうが!!」
黒いモヤをブラックホールに吸い込もうと指を向けた瞬間。
モワッ……!!
目の前にワープゲート!不味い生徒を巻き添えにされる…!!
ギャリバキギャリ……!!
『アギャー……』
「「!?」」
僕の背後から木が粉砕される音と何かの鳴き声が聞こえた。
「仕留め損ねましたか…何!?」
振り返ると僕の個性で半身が消滅している木のトカゲ…助けられた…!
「なんて判断…!」「これって…!」「樹木くん!」
次の瞬間には生徒達の足元に転がっていたどんぐりが樹木の動物に変わり、黒いモヤの敵へ襲いかかる。
『アギャス!!』『グオオオオ!!』『キシャァァァ!!』
「なんですかこれは……!?」
黒モヤの敵が手こずっている!今なら……
「委員長!!」「飯田ァ今だ!走れ!!」「わかった!」
「待ちなさい…!」
『アギャス!!』「邪魔はさせませんよ!」
黒モヤの敵を樹木の動物達と僕のブラックホールで妨害し、なんとか委員長を外に逃がすことができた!
「………応援を呼ばれる……ゲームオー…何!?」
ズドォォォン!!!
突如水難エリアに現れた巨木から、全てのエリアに向かって大量の樹木が広がっていく光景に敵もかなり動揺して中央広場の方向に向かいました。
そこからはずっと樹木くんが場を支配し続けました。
「止まれえええええええ!!!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………!!!
先輩が手も足も出なかった黒い敵に左手を奪われても痛みに負けず拘束し続け、圧倒的な物量で主犯格を含む全ての敵を寄せ付けませんでした。
……オールマイトが駆けつけ全てが終わった後。
僕の個性が有効な黒モヤの敵をみすみす逃し、生徒に庇われて無傷の僕は……。
「くそう…自分が情けない…!!」
「黒瀬…その気持ちは俺も同じだ」
「私もさ…」
普段なかなか見ることのない先輩とオールマイトの悔しげな表情に、僕は教師の責務を全うできなかった自分を恥じ続けました。
〜オールマイトside〜
オールマイトは今朝の活動の影響でヒーロー基礎学の授業に不参加になっていたが…彼は悶々としていた。
「んー…13号くんにも相澤くんにも繋がらない……………いかなる理由であれ勤務時間外の都合で教鞭を放り出す…とても…愚かしい事をしていた。
終わりがけに行って何を語れよう?後10分程なら体ももつだろうし…私が行く!!」
「待ちなよ!!」
USJに向かう事を決めてマッスルフォームになったオールマイトの元にやってきた小動物…その名も!
「OH!校長先生!!」
「Yes!ネズミなのか犬なのか熊なのか、かくしてその正体はーー校長さ!」
根津校長である。
「本日も大変整った毛並でいらっしゃる!」
「秘ケツはケラチンさ!人間にこの色艶は出せやしないのさ!
その話は後にして君コレ!!」
「ムム!!」
「"君"が来たというのに未だこの街で罪を犯す輩も大概だが……」
今朝のヒーロー活動に関しての根津校長からのお小言にトゥルーフォームに戻るオールマイト。
「それならいっそここで私の教師論を聞いて今後の糧としたまえよ」
お茶を淹れだした根津校長に話が長くなる事を確信するオールマイト。
根津校長が話し始めようとした時…。
「あ!」
「どうしました根津校長?」
「一応君にも聞いておくのさ!これなんだけど…」
「ッッ!!?」
そう言って根津校長が懐から取り出した物を見て、オールマイトは戦慄した。
「この"どんぐり"が職員室に落ち…あれ?芽が出て…」
こんな重要な物を職員室で落とすとは私はなんて………どんぐりに芽?
オールマイトの脳裏に浮かぶ生徒の言葉。
『俺たち生徒に何かあった場合、これの制御を手放します。その時は…助けに来てください』
ゾワッ!!
不味い!不味いぞ既に事が起こってからどれだけ時間が経っている!?とにかく……!
「校長!USJに敵が!」
「え?…何ッ!!?」
「事態は一刻を争う!私は行かねば!」
ドカァン!!
時短の為壁を殴り壊して外に出る。USJは…あっちか!
ズドォン!!
「急がねば…ってあれは飯田少年!」
ズガァン!!
「飯田少年!状況は!」
「オールマイト!実は…!」
飯田少年の話で状況は分かった!
目的は私の殺害!まさかここまで内に入ってくる敵がいるとは!
バァン!!
「もう大丈夫…私が来た」
USJの扉を殴り飛ばす。皆を安心させる為にも私が胸を張らねば!
「何ッ!」
USJ中に樹木少年の個性が…ほとんど一人で仕留めたのか!
そして不味い…樹木少年が洒落にならない傷を負っている!
「13号!状況は!」
「オールマイト殺害用の敵はあの中に封じられています!能力は恐らく超パワーと超再生!樹木くんが強めに攻撃を喰らったのでかなり不味い状態です!」
「了解!」
シュバッ!!
相澤くんと戦っていた主犯格と見られる敵を殴り飛ばしながら樹木少年と緑谷少年、蛙吹少女と峰田少年を13号の元へ瞬時に運ぶ。
左手が無い…くそう!私がどんぐりを落としたばっかりに…!!
「麗日さん!樹木くんを浮かして外へ!」
「うっぷ…樹木くんの腕が…!」
「……樹木少年の左手は?」
「遠目だったので確かとは言えませんが…恐らく敵に破壊されました」
………生徒を傷付けられた怒りを込めて敵を睨………ん?なんだあの地面に広がる黒いモヤは…
「いけない!逃げられます!」
「何っ!?そいっ!」
ゴオッ!!
「がっ!?」
地面に沿うように広がる黒いモヤに落ちていった手の敵の頭を殴り飛ばそうとするがあと一歩届かず、風圧で脳を揺らすのみとなってしまった。
一瞬で黒いモヤと共に消えてしまった主犯格に思わず叫ぶ。
「Noooooooo!!!!」
教師として、ヒーローとして、なにより一人の大人として生徒の助けに応えられなかったこの事件は、オールマイトの中に深い傷を残すこととなった。