「お前は俺が止める!」
と啖呵を切った所でふと重要な事を思い出す。
そういえばオールマイト遅くない?
おかしい。敵がUSJに侵入して来た時点でオールマイトに持たせた『種子』の制御は手放したハズ。何度確認しても確実に制御を手放している。オールマイトの方で何かトラブルがあったのか?ムムムムム……分からん!
目標を「オールマイトが来るまで耐える」から「脳無を再起不能にする」に変更しよう。
「というわけで全部"葬槍樹"!」
「クルル!?」
ズドドドドドドド!!!
刃引きした"葬槍樹"で脳無を空中で滅多撃ちにし続ける。
実際は動く死体とはいえ今は判明してない!殺したらマズイから再生能力を認識するフェーズを経てから確実に再生を封じる!
「とりあえず四肢置いてけ!」
ズドドドドン!!
「クルッ!!?」
これまでの刃引きした"葬槍樹"の中に殺傷能力高めの鋭利な"葬槍樹"を混ぜ、脳無の四肢を貫いて拘束した。
相澤先生は…右腕が折れてるけど無事!『オロチ』達の支援に回ってる!
死柄木達は個性が使えない中『オロチ』達の攻撃から必死に逃げ回ってるな。
さて、この拘束も長くは持たないだろうし次の策を……。
「脳無!サッサと片付けてこっちに来い!」
「クルルルァァァ!!!」
ハッとして上を見ると…"四肢が捥げた状態の脳無が口を開いたまま落ちて来た"。
咄嗟に左腕で頭を庇う。
ゴリグチャッ…!!
左腕が熱い。
「は?」
「樹木ィ!!」
「やるじゃねえか脳無!」
地面にドチャッと音を立てて落ちた脳無の口元には…俺の左手があった。
「そのまま殺せ!」
「クルルル!!!」
バキッボリッグチャッ……
俺の左手をぐちゃぐちゃに噛み砕きながら四肢を再生して立ち上がる脳無。
ああ…あれじゃあ手を繋げるのは無理だな…と一瞬冷静になった後、凄まじい熱と痛みに襲われる。
「がっ……ああああああ!!?」
「クルルルァァァ!!!」
拳を振りかぶる脳無、咄嗟に腕で急所を守るが………
ゴッッッ!!
視界が明滅する。
「…木くん!!」
腕がめちゃくちゃに熱い。
「…ヒッ!こっち来んじゃねえ!!」
誰かの声が聞こえる。
「…やよ樹木ちゃん!死んじゃ嫌!」
「蛙吹さ…ゲボッ…」
口の中に血の味が…って俺は、脳無と戦ってッ!!
咄嗟に起き上がるが腕で体を支えられずに倒れる。
「ダメよ樹木ちゃん!起きあがっちゃダメ!」
蛙吹さんの声に視界が安定して来る…腕を見るとやはり左手が無い。それどころか恐らく右腕は粉砕骨折…残った左腕は解放骨折、あとアバラとそれ以外も色々折れてるな…。
脳無の方を見やると峰田のもぎもぎに少し手こずっているようだ。
………このままだと皆がやられる。今無理をせずにいつ無理をする…!
「"葬槍樹"……貫け」
ズドンッッ!!
「クルル……!!」
肩を貫いた樹木の槍を意に介さずゆっくりと近寄って来る脳無。
「樹木くん!無理しちゃダメだ!」
「ダメだ樹木!すぐ治っちまう!早く逃げよう!」
「ダメだ!!」
「「「っ!!」」」
ここで逃げても死ぬのが少し遅れるだけ、今ここで仕留めなければ次は無い…!!
「蛙吹さん……ゴボッ…『種子』を…出して」
「…わかったわ樹木ちゃん」
蛙吹さんが俺の懐から残り少ない『種子』を取り出す。
「ゲボッ…"延長樹"…『接続』」
全神経をUSJに張り巡らせた樹木達に集中する。
「"無間業樹"『収束』…!止まれえええええ!!!」
USJの全ての樹木が蠢き、脳無に向かって集まり始めた。
「クルッ!……クルルッ!?……クルルルッ!!」
ブチィッ!!バキバキッ!!ガリッ!
脳無が体を締め付けて来る樹木を破壊して回るが莫大な物量と樹木の再生に追いつかず…やがて全身が樹木の中に埋もれてしまった。
「普通は…圧死&窒息死だが…ゲボッ…多分死なねえだろ」
「おいおいおいおい……巫山戯るな!生徒にやられてんじゃねえよ脳無!」
ああ…意識がちょっとマズイかも…まあ…それなりに成果はあったかな…。
「…っ!!樹木ちゃん!寝ちゃダメよ!樹木ちゃん!!樹木ち……」
最後に聞こえたのは…USJの扉が吹き飛ばされる音だった。
ピッ……ピッ……ピッ……ピッ……
薄らと意識が浮かび上がるのを感じる。
「先生!樹木くんが意識を取り戻しました!!」
病院…俺は生きてるのか…?結構ガッツリ死んだと思ってたんだが……。
「樹木くん!見えてたら返事をしておくれ!」
「………みんなは」
「え?」
「…みんなは無事ですか」
「え?」
普通は意識が目覚めて早々に話せるようにはならないそうだ。ビビられてちょっとショック。
意識が目覚めて喋れることがわかった数十分後、真っ先に啓悟さんが飛んで来た。
「龍樹ィィィィーーーー!!!生きててくれてありがとぉぉぉぉぉ!!!」
「原型留めてないですよ啓悟さん」
次にオールマイトがやってきた。
「すまない樹木少年…!!全ては君の助けを見逃してしまった私の責任……本当にすまなかった!!」
来てすぐに泣きながら土下座された。
「あー…別に良いっすよオールマイト……あとあなたがそう軽々と土下座とかしないで下さい」
「本当にすまなかった……!!」
そのあと相澤先生と13号先生と根津校長が追加でやってきた。
「最初に行っておくよ樹木くん、今回の事件…君が頑張ったおかげで重傷者は君以外に発生しなかった。君の行動が皆を救った事は確かだよ」
「うう…ズビッ…樹木くんごめんねぇぇぇ……」
「それでだ樹木…お前はヒーロー科を続けられるか?」
「その前に誰か13号先生の鼻水拭いてくれません??」
ヒーロー科続けるって即答したら13号先生がまた号泣した。
「…てか事件からどんくらい経ってるんですか?」
「……今日は雄英体育祭の三日前だ」
「………マジ?」
「マジなのさ!」
そっからプルスウルトラで検査やリハビリを爆速で済ませ、残りの時間で体育祭の準備を終わらせ、休んでいた期間の課題をプルスウルトラされて絶叫し、なんやかんやあって雄英体育祭当日がやってきた。
USJ襲撃事件から2週間後、雄英体育祭の日がやってきた。
昏睡状態の生徒がいるので流石に宣戦布告はやめておいた心操や鉄哲とのいざこざは無くなったが、A組には依然漂うお通夜ムード。
皆が不安な気持ちで選手控え室に向かった先で待ち構えていたのは……。
「よっ!おひさ!」
「「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」」」
昏睡状態のハズの樹木龍樹がピンピンしてストレッチしている姿だった。
「樹木くん!!」「おまえいつ起きたんだよ!?」「樹木おまっ!おまええええええ!!!!」「俺はそれはもう心配したんだぞおおお!!!」「うおおおおお!!お前元気になって良かったなあ!!」「復帰したなら言えよな!?」
「樹木ちゃん!!!」
皆が樹木の復帰に盛り上がりは蛙吹梅雨が感極まって樹木に抱きついた事で一旦落ち着いた。
「え」
「わたしとても怖かったわ。わたしの腕の中で血を吐きながら意識を失った樹木ちゃんに…あなたにもう二度と会えないんじゃないかって。もう二度とあんな無茶はしないでちょうだい…!」
「………み°っ!?」
「「樹木ィィ!!!」」
当然思春期が始まる前から公安で訓練漬けだった樹木に女性への耐性などあるハズもなく…彼は謎の断末魔と共に気絶してしまった。
「樹木がやられた!」
「キキ…コロス…」
「梅雨ちゃん大胆!」
「あ……今のは忘れてちょうだい」
自分がやった事に遅れて気付いた蛙吹梅雨は顔を赤くしながら控え室の端の方に行ってしまった。
「ハッ!皆こんな事をしている場合ではない!もうすぐ開会式が始まってしまうぞ!」
「そうだ!樹木くんを起こさなきゃ!」
「起きろ樹木!」
「……ハッ!とても幸せな事が起きた気がする」
「今回はユルス…次はコロス…!」
笑顔が戻った皆と共に会場に向かう。
視界が開けると共に、凄まじい歓声が俺達を迎えた。
『どうせてめーらアレだろこいつらだろ!!?
敵の襲撃を受けたにも拘わらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!!
ヒーロー科!!一年!!!A組だろぉぉ!!?』
敵side
日本のどこかのバー……突然、何もない空間から黒いモヤが溢れ出し身体中に手を付けた男…死柄木弔が這い出てきた。
「ってえ…帰り際に1発もらった…オールマイトどころか生徒に負けちまった……完敗も完敗だ…!」
痛みで意識が朦朧とする中、今回の襲撃の事を話す死柄木。
「手下共は瞬殺…脳無は誰一人殺せずに封殺されちまった…!木の生徒…あいつがいなければもっと色々やれてたハズなのに…!話が違うぞ先生……!」
『違わないよ。ただ見通しが甘かったね』
『うむ…舐めすぎたな、敵連合なんちうチープな団体名で良かったわい。
ところで…ワシと先生の共作脳無は回収してないのかい?』
「申し訳ありません…位置は把握していたのですが…オールマイトがやってきて逃げるので精一杯でした…」
悔しげにモヤを拳の形にする黒霧にモニターの向こうから落胆の声が聞こえる。
『せっかくオールマイト並みのパワーにしたのに…まァ…仕方ないか…残念』
「先生…何か勘違いしてないか?」
『なんだい弔?』
「脳無はオールマイトにやられたんじゃない…生徒にやられたんだよ!
そいつに手下共もやられた…!そいつのせいで教師も誰一人殺せなかった!」
『……………へえ』
『なんと!そんな子供がおるのか!面白いのう…』
モニターの向こうで梅干し頭の男…AFOは思わず笑みを溢した。
あれだけアンケートしといてめちゃくちゃ申し訳無いんですがヒロインは蛙吹梅雨ちゃんに決定しました。
書いてる途中でコレもう梅雨ちゃんしかいねーじゃねーか!ってなっちゃって止まらないんです。マジでごめんなさい。