嘘つき   作:てね

6 / 11


投稿が遅くなって申し訳ない……。
約1000文字あります。


エピローグ

 

 

俺はノートを開く。毎日のめぐみんの症状が書かれたノートだ。起床時間、何を食べたか、前日の記憶があるかどうか。ダクネスの筆跡で事細かにめぐみんのことが書かれている。

 

 

俺はページを進める。

 

 

次のページも、更に次のページにも、めぐみんのことが書かれている。だが、途中からノートは白紙だった。もうめぐみんのことは書かれてない。

 

 

あの日から、めぐみんはもう目を覚まさなかった。

 

 

「…………」

 

 

元々、このノートはめぐみんの病気を治すためのものだった。だから、今はもう必要ないはずなのに、俺は捨てることができなかった。

 

ノートの中には、めぐみんのことが書かれている。ノートを開く度にめぐみんに会えた。このノートがなくなれば、俺は本当にめぐみんとお別れになるだろう。

 

 

「カズマ……?」

 

 

ダクネスが、ドアを半開きにして俺の様子を窺っていた。俺はすぐにノートを閉じて、泣き顔を見せないようにする。

 

 

「……はい、カズマだよ」

 

「もう夕食の時間だと伝えに来ただけだ。邪魔してすまない」

 

 

ダクネスは、ノートをチラリと見て、すぐにドアを閉めようとする。が、その手を途中で止めた。

 

 

「……カズマ。一つだけ聞いてもいいだろうか?」

 

 

ダクネスはゆっくりとドアを開ける。

 

 

「あの日……。めぐみんが眠りについた日、最後に何をしたのだ?」

 

 

ダクネスは、俺の様子を気にしながら尋ねた。俺はあの日の出来事を思い出す。めぐみんの笑顔や手の温もりが鮮明に蘇る。

 

 

「ただめぐみんとの()()を果たしただけだぞ」

 

「約束……?」

 

「ああ」

 

 

ダクネスは、約束の内容を聞いてくる。今なら、めぐみんとの出来事を隠さずに言える。

 

 

「俺とめぐみんは結婚したんだ」

 

 

もう俺の言葉は嘘じゃなかった。

 

 

 

 

 

 

目が覚めた。

顔を洗い、口をゆすぎ、箱に入った指輪を眺める。

指輪。俺とめぐみんの婚約指輪だ。

 

婚約(こんやく)指輪は、結婚の約束を交わした証として、女性に贈るもの。 一方の結婚(けっこん)指輪は、結婚の印にふたりで用意するものだ。

 

俺が用意できたのは、婚約(こんやく)指輪だけだ。結婚(けっこん)指輪までは、用意できなかった。

 

 

「…………」

 

 

あの日。もし、あの日で終わりでなければ、俺達は、結婚指輪を買いに行けたのだろうか。もう一日あれば、俺達の時間はもっと進んだのだろうか。

 

 

「カズマさーん。朝ごはんできたわよー」

 

 

呑気なアクアの声が二階に響く。めぐみんのことをどれだけ考えても、もうめぐみんとは話せないだろう。

 

 

「…………」

 

 

もう俺も前に進まなくてはならない。

 

 

「さよならめぐみん」

 

 

俺はめぐみんに小さな別れの言葉を残して、アクアの元へ向かう。もう俺が嘘をつくことはなかった。

 

 

 

【嘘つき・完】





感想など書いてくれたらありがたいです〜
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。