「エミヤさん、今日で出張の最終日なんですよね?」
「んむ……あぁ、今日の夕方には契約を終える予定だ」
「ずずず……ふーん、私に君の中に入りたいなんて言っておいて此処から離れるんですね」
「ぶぅぉふぉっ!?」
早朝の身支度を整え、朝ごはんは食べたとはいえルーティーンを崩すのも良くないと思ったエミヤは食堂へ、待っていましたとニコニコ笑顔でフウカがトレイに自分の食事とエミヤの食事を運んできたので、二人仲良く朝ごはんを食べていたところ、モーニングダイナマイトが炸裂しエミヤは変なむせ方をした。
「ま、待てフウカ、青春の文字が抜けていないか?抜けているよな?」
「どうでしたっけねー、あの夜いっぱい泣かされちゃいましたしー」
嘘ではない、事実、エミヤの胸の中でわんわんと泣いた。
発端はエミヤの言葉なので泣かされたと表現しても嘘ではない。
「ふ、フウカ、分かっていて言っているな?何か私は君の恨みを買ったのか?」
「べっつにー、ただ……」
「ただ、なんだね」
次は何が来ると身構えたエミヤに、
「ただ単純に、寂しいだけですよ」
その言葉は、なかなかのダメージだった。
嬉しくもあった。
離れるのが寂しいと言ってくれることが、自分にそこまでの好感を抱いてくれている事が。
悲しくもあった。
年頃の少女の価値観に、強く影響を与えてしまったのだと自覚して。
だが、それでも――
「実は、部室棟の便利屋68ゲヘナ支部が今度から使えるようになる」
「……?」
フウカはそれが?と言いたげに首を傾げている。
「何かの任務や依頼で帰りが遅くなりそうな時、恐らく私はそこに泊まるだろう」
――もう会えないという訳じゃ無い。
「その時はまた。君の食事を食べに、いや、君に会いに来ても良いかな?」
また会えるのだから、寂しがる必要は無いと、エミヤは伝えたかった。
「はぁーーーー、これだからこの人は、もうズルいですよねエミヤさんって」
「うぐっ、す、すまない」
良い雰囲気でなんとなく話を纏めようと試みたが上手く行かなかった。
最早フウカはエミヤがそういう人なんだと理解しており、それに胸をときめかせてしまう自分が居る事も理解していた。
そしてそれを、嫌いだなんて思っている筈が無く。
「いいですよ、でーも」
「なにかむっ?」
疑問を問おうとした口に、卵焼きが差し込まれた。
「ほかの子より少しは優先してくれないと、拗ねちゃいますからね」
ヒソヒソ話の様に、少し悪戯っ子な雰囲気で伝えたフウカは間違いなく出会った頃よりも元気な姿で、
「約束ですよ?」
最後にウインクして魅せた彼女はとても魅力的だった。
その後、最後の演習を行うべく運動場へやって来たエミヤは風紀委員が全員揃って既に準備運動を始めているのを確認、魔術によりその場で衣服を換装し
今日だけは少し特殊な演習項目にしてあり、エミヤはこれから準備の為にこことは反対の森の演習場へ向かう。
内容は昨日伝えたばかり、至ってシンプルな内容だ。
『私の胸元に割れたら塗料が出てくるペイントボールを付けておく。君達はコレを割るだけで勝利だ』
『逆に君達は体の何処でも良いのでペイントボールを付けておくんだ。同じく割られたら敗北だ』
『場所はこれまで演習を行っていなかった森を使う……理由は言わずとも分かるな』
『私が今回持ち込む武器は三つに限定しよう……そうだな』
『
『馬鹿にするな?巻尺で制圧されないようになってから言ってくれ』
以上の内容で以て森での演習とする。
開始のタイミングはエミヤが森の中に入ってから十分後、かしの木、柳の木、テレビンの木が生い茂る森は全体的に枝葉が厚く。ドローンなどによる空中からの管制指示は難しくなる。
エミヤ曰く「いや、ドローンで常に上空から位置を視認できる事の方が稀だろう?撃ち落されたり妨害電波を出されたりハッキングされたり」とのこと、つまりはアナログな状態での指示も出来ないで何がオペレーターか。
エミヤは森へ移動を開始。
その後ろを気配を殺して数人の隊員が尾行する。
エミヤは勿論の事気が付いていながらも、彼女達が致命的なミスをしなければ指摘しないでおこうと判断。
実際にゲリラの使う手を教える為にも歩きながら即席の草輪のトラップや蔓を張って移動を妨害したり、複数の木の同じ個所に傷を付ける事で方向感覚を狂わせたりと古典的な仕掛けを作りながら移動を続ける。
隊員達は目の前で仕掛けられているから流石に避けられるが、そうした物もあるのかと学びながらこっそりと尾行を続ける。
そのまま五分程歩いていると湖に辿り着き、エミヤは迷いなく飛び込んだ。
「(さて、携行している物が銃器である上に視界の開けた湖、どうするかな?)」
尾行していた隊員達は互いにアイコンタクトを取った後、ハンドサインで湖の左右に半々で別れて茂みに隠れながら湖面の波紋を観察し尾行を続ける。
「(無言で……隊員だけでここまで出来る様になったか、良いぞ)」
湖に入れば音も立つ上に水が銃器に入り不慮の事故や火薬がダメになる可能性もある。
そこをしっかりと意識して行動出来ている事にエミヤは賞賛を送った。
対岸に出た所で一息に加速、隊員達に悪いなと思いつつも一気に突き放し樹上へと移動。
周囲を見回し、木々の高さを確認――そこで十分が経った。
――演習の開始だ。
『皆さん詳細は頭に入っていますね、一応確認いたします』
風紀委員会の待機所、その最上階にてアコはテーブル上に地図を開いてインカムを使用して確認を取る。
『森の演習場を三十分割し、縦にライン分けをして北西から北東に掛けてをA・B・C・D・E・Fそれぞれの1の地点として、南西をA-5として呼称を統一化します』
『今回は風紀委員全体の参加の為、総員を十の分隊に分けて色で呼称を割り振りました。独立分隊である黒からの報告によると、C-3に存在する湖でエミヤ教官を見失ったとの事です』
地図上のC-3地点に紅い旗を建て、その地点に黒いおはじきを置く。
『見失ったという事は追跡に気付かれている可能性が高いです。なので黒は最大限の警戒を、各色は森に侵入したラインからC-3へ、赤、青、緑、黄色はイオリの指示の下で、紫、橙、金、銀はチナツの指示で、第二独立分隊の白は黒と合流を目標に行動して下さい』
各色を配置し、最後にゲヘナのマークをした駒を動かす。
『ヒナ委員長は――黒の隊員を守る為に急行してください、可能であれば樹上を移動してエミヤ教官の居場所の把握を、ただし、くれぐれも単騎で交戦には入らないで下さい』
一息吐いて、最後にアコは締める。
『それでは、状況開始です』
『『『了解!』』』
指示された通りに動く各隊員、だが、ただ移動するだけでは無くエミヤの通った痕や音に注意して各々がしっかりと考えながら動いている。
現在エミヤが居るのはD-2地点、風紀委員会側のインカムでの通信内容を知る由も無いエミヤは一先ず接敵が行われるまで樹上での待機をしていた。
そこへ、遠距離から高速で接近してくる何者か。
「ヒナか」
片眼を開け、口角を思わず上げてしまう。
『アコ、現在C-4地点、距離的に……D-2地点樹上にエミヤ教官を発見、こちらも見つかっているわ』
即座にヒナはアコへと連絡。
エミヤはヒナとの接敵に備えてフラフープを構える。
だが、
「ほう」
一当てもせずに森の中へと消えて行ったヒナを見て、エミヤは成長を実感する。
以前であれば迷いなく攻撃をしてきただろうに、アコから何か指示を受け取って一度隠れる選択を取ったのだと理解した。
「それでは私も此処にじっとしている訳にはいかんな」
今回の演習においてエミヤはある状況を想定し仮想敵を演じていた。
それは、森の中に逃走した計画的な犯人。
故に本来のエミヤであれば各個撃破の為に動き出すところだが、今回はより森の奥へと身を隠す。
『ありがとうございますヒナ委員長、あと三十秒程待機した後、再度樹上に出てみて下さい――それで、ある程度エミヤ教官の動きが掴めます』
『……分かったわ』
対してアコも、今回の演習が森になった理由、そしてエミヤという個人がこれまでの演習では強力かつ好戦的な犯人を演じていたにも関わらず――今はヒナを襲わなかった。
『(つまり、今回もまた何かを演じている筈、その方向性さえ分かれば……つまり、どのような性格の犯人かを行動から推測出来れば……!)』
そこまで考えて、アコは自分の思考の展開の仕方に驚いた。
これまでであれば、相手の行動に合わせて対応するばかりだったが、今のアコは相手の性格を行動から理解し次の行動まで読もうとしている。
『(そういう事ですか……プロファイルに無い犯人を相手にした場合の対応方法、気付かない間にそこに思考が至るように訓練されていたなんて……)』
『アコ?エミヤ教官は樹上に居なかったわ、ただ……C-1方面で鳥が飛び立った。だから恐らくは……』
ヒナからの報告に我に返り、丁度良かったと思いながら胸の内の想いをそのまま言葉にする。
『
C-1地点に辿り着いたエミヤは、D方面から聞こえてくる足音に「ふむ」と思考。
「(流石はアコだな、私の演じる犯人像に気が付いたか……成長したな)」
その成長が確認できたのであれば、そろそろ動こうか。
演習は次の段階へと動き出す。
多分大筋合ってると思うんだけどミレニアムの第3章書いてもいい?
-
いいよ
-
だめだよ
-
やってみろ
-
エロ書け