便利屋エミヤ   作:晴れときどき曇り

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UA10万記念に急ぎ書き上げた話になります。

本編のゲヘナ学園編のサイドエピソードとなりますので、デザート気分でご覧下さい。


第十五夜 サブエピソード

 

 

①まだ寒いから。

 

そんな理由を口にして一人の少女はマフラーを購入した。

自分にも周囲にも深い意味は無いと言い聞かせ、その色合いが日頃彼女が身に付けている物とは違う事や、つい先日まで教官を務めた男が演習時に纏っていた服と同じ紅色である事には目を瞑るとしても、彼女が何故か部活棟にある便利屋の支部、その中にある誰かが睡眠時に使用していたソファとクッションでマフラーを挟み放置して、回収してからは時折マフラーに顔を埋めて鼻をひくつかせているのは、一体どんな理由があるのだろうか。

 

また、その様子を行政官に動画で撮影され、特定の個人に向けて送信された後、その特定の個人から『妹宛』と書かれた小さな包装紙で腰布も届いたらしいが、さて、一体誰の事なのか……。

 

②より大切に

 

とある給食部員が最近、寝泊まりに自分の部屋では無い場所を利用している事が問題になっている。夜間のパトロールを担当した風紀委員からは該当生徒は部屋の主から許可を得ている事もあり強く言えないが、室内から時折、パトロールを担当した者にとっても恩師である教官の名を呼びながら、悩ましげな声が聞こえて来た事に対しては問題にすべきだろうと報告が上がった。

 

コレに対して該当の給食部員は、

「あまりにもプライバシーの侵害、それに私はあの人から愛の言葉を最後に囁かれている。貴女達とは立ち位置が違う」と、勝ち誇った様子で語っており、それを聞いた取り調べを担当した行政官は「私は乳見られましたけど」と謎のマウントを「貴女は見られましたか?」マウントを取っており、居合わせた記録係の銀髪の隊員から胸部をビンタされたとの事だ。

 

③秘密の逢瀬

 

私がその方と出会ったのは偶然でしたわ。

 

皆の寝静まった時間帯、空腹を感じて起床した私はいつでもご飯が保管されている食堂へとゲヘナ学園の生徒たる自由な精神を胸に侵入しましたの。

 

そこで、彼の方と出会いましたわ。

 

私が懇意にしている給食部の方でも居るのかと、未だに灯りの消えていない調理室の扉を開けたのですが、そこに居たのは見たことのない褐色の肌をした偉丈夫、大きな寸胴を前に何かを調理しているご様子でしたの。

 

私が声を掛けるとその方は優しく「なんだ空腹か?」と微笑んで下さり、手慣れた様子で別の調理を始め、鼻腔を刺激する良い香りとその方のテンポ良い調理の音に心奪われていた私の前には気が付けば回鍋肉が置かれていましたわ。

 

何故でしょうね、常であれば肉じゃがやカレーから感じるという家庭の味、お袋の味と呼ばれるタイプの落ち着いた味わいをまさか回鍋肉から感じる事があるなんて、私も知らない料理の世界がそこにはありましたわ。

 

なにより、あの方が見せた優しげな微笑みと見守りの視線、いつもなら食事中に無粋な視線を投げ掛けて来る者など射撃の的にしか思わない私ですが、あの方のソレは……もっと……。

 

美食……と呼ぶのかは分かりません、いえ、美味しかったのは間違い無いですわ、それは断言出来ます。

 

だけど、アレは美食よりももっと身近な、いえ、身近にあって欲しい何か……とでも表現するべきでしょうか?

 

あの方がどなたなのか、それを懇意にしている給食部員の方に尋ねても「絶対に教えない」としか返して頂けませんでして、もしもご存知の方がいらっしゃいましたら是非、あの方ともう一度会わせて頂きたいのです。

 

何故……ですか?

 

ふふっ、そうですね。

 

私自身、それを知る為でもありますわ。

 

何故私がこんなにもあの方にもう一度会いたいと心惹かれているのか、それを知る為にも、私はあの方に会いたいのです。

 

 

 

④モブ隊員

 

え、レポートですか?

今回の1週間を通してのレポート……ですか、で、でもこうした物を私は仕上げた事が無くて……感想文みたいな物で良い、ですか?

 

それなら、まだ……わかりました。

頑張ってみます!

 

『エミヤ教官を最初見た時、率直に凄く格好良い人だなぁと感じました。だけど、そこまで素直な感想を抱く事が出来たのはエミヤ教官にヘイローが無くて、格好良さにだけしか目が向かなかったからです。

 

だけど、それから1時間後の私の意見は変わっていました。

 

1時間後、私の胸にあったのは感謝です。

私は、いえ、私達は知らず知らずの内に楽をしていました。

 

ヒナ委員長に全てを押し付けて、自分達は安全圏からいつもの仕事をすれば一日が終わるのだと……最低に近い仕事の仕方をしていたのです。

 

ですが、エミヤ教官のお陰で気が付くことが出来て、変わろうと思うことが出来たのです。

 

それからの1週間は天国でもあり地獄でもありました。

それまでの価値観を壊す様な訓練、指示を待っていたら怒られて、指示通りに動いても怒られて、自分の判断で動いても怒られる。

 

最初はその認識でした。

 

でも段々と違いが分かってきて、

何も考えずに指示を待っていたら怒られて、

何をしているか理解せずに指示通りに動いたら怒られて、

周囲の事や連携を度外視に自分を基準とした判断で動いたら怒られているのだと理解した時、私の中で思考や行動という物の重要性が分かり、自分でも動きが良くなっていく実感を得られました。

 

それに……その……。

 

怪我をした時や、ちょっと今日はオシャレしていこうと勇気を出した時、エミヤ教官は必ず気付いて優しい言葉を掛けてくれました。

 

エミヤ教官は恐るべき事に一人一人を見てくれていたのです。

全ての隊員の名前を覚えて、全ての隊員の動作の向上に対して一人一人にアドバイスをして、一人一人に合ったトレーニングメニューやストレッチを教えてくれていました。

 

正直、あの人を超える教官には出会える気がしません。

 

あと、これは恐らく私に限った話なのですが、訓練終わりにエミヤ教官に褒められて、それがとっても嬉しくて、教官にギュッて抱きついちゃった時があったんです。

 

その、気持ちが抑えられなくて、つい……。

 

そうしたら教官は、

「あまり刺激的な事を私の様な男性にしてはいけない」

そう言って私を抱き上げて、腰に添えられた手や肩を抱く力強い腕にドキドキしている私の耳元で、

「より刺激的な事で返してしまいそうになるだろう?」

と、囁かれて。

 

正直、頭が沸騰するかと思いました。

 

今思えば、目元に隈もあってエミヤ教官も疲労が重なっていたのかもしれませんが、あんなに魅力的な返しは卑怯とかを超えて言語化出来ない爆弾みたいでした。

 

最後に、今回エミヤ教官が来てくれて良かったかですが、

 

きっと皆、同じ答えを返すと思います。

 

本当に本当に、ありがとうございました!』




本当にいつもお読み頂き、ありがとうございます!

多分大筋合ってると思うんだけどミレニアムの第3章書いてもいい?

  • いいよ
  • だめだよ
  • やってみろ
  • エロ書け
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