「激しく動いてテラスを壊したら怒られちゃうからさ、そこの所、理解してよね」
歩み寄りながら敵意を剝き出しにするミカと。
「ダンスの誘いにしては下手くそな文句だね」
怒りを隠しきれていないカヨコ。
「意中の男性に触られて怒っちゃったのかな?意外と乙女なんだね、鬼方カヨコ?」
あくまでゆっくりと、まるで握手を求める様にカヨコの肩に手を伸ばしていき、
「お嬢様なのに異性に許可も取らずに触る礼儀知らずに教育が必要かなと思っただけだよ、聖園ミカ」
その掌の真ん中に人差し指を立てられ、掌を肩へ沈めようとすればカヨコの爪が刺さってしまう。
「ゲヘナの子に礼儀なんて物分かるのかな?」
それならばと人差し指を包む様に掌を拳に変えるが、
「他者が礼儀を知らないと前提に考える事が礼儀知らずなんだけど、分かる?」
人差しをすぐさま折り畳まれ掴み損ねてしまう。
次のアクションには移らず、両者共に視線を逸らさずに互いの眼を見つめ合う。
この時点でミカは技や駆け引きでカヨコに勝てない事を悟り、カヨコもミカが掴みにこだわっている事から力では分が悪い事を悟った。しかし、『ティーパーティー』が問題を起こす訳にはいかないミカと、依頼である以上無用な揉め事を起こす訳にはいかないカヨコ、互いに不快感と怒りを持っていようとも、その一線まで超えようとは思わなかった。
「……成程ね、確かに個人に対して視線を向ければ、なんでか分からないけれど少しだけ嫌悪感も和らぐね」
そしてこのやり取りの中で、ミカは常にカヨコをフルネームで呼ぶ事で所属などを除いたカヨコを見る様に意識していた。それにより、本当に僅かではあるがカヨコに対する認識を変える事が出来たらしい。
「ミカはさ、素直だよね」
それに気が付いていたカヨコはやはり、ミカに対して強い嫌悪感は抱いていなかった。勿論エミヤに対して突然筋肉を触るという行為は許し難い物だったが、それも彼女が興味を抱いたことに素直に動いてしまう性格であることを考えればまだ納得できる物だった。
だが、
「私は……うーん、素直とは少し違うかな……さっきのは――鬼方カヨコと浅黄ムツキとの会話よりも、エミヤさんとお話して気持ちを整理したかったっていうのが大きいかな」
「――そっか、思ったよりも色々ちゃんと考えてるんだ」
「ん?それはどういう事かな☆」
真意を明かされた事でミカが決して浅慮な人間では無い事が証明されるも、カヨコの言葉にピクリと反応する辺り、感情を発露させる事に関しては素直なのかもしれないとエミヤは思い、そしてこのままでは『ティーパーティー』について全く知る事が出来ていないと気が付き二人を仲裁した。
「全く……二人とも元気なのは良いが、既に陽も傾いてきているのだから必要な話に移らないか?」
「あはは、相変わらずエミヤさんは大変そうですね」
「ぶー!今のは私だけが悪い訳じゃ無いもーん!」
「エミヤさんごめん、でもちょっと、我慢できなかった」
口を尖らせながらもしっかりと着席してそれ以上の揉め事を起こす気配が無いミカに安心した所で、エミヤは聞こえてくる声の中に違和感を覚えた。
その違和感を払拭する為、そして話の主導権を握る為に行動に移す。
「総員、点呼!」
「はーい!聖園ミカだよー!」着席しているミカが応え、
「えっ!?あっ!?宇沢レイサです!」次いで慌ててエミヤの隣に居るレイサが手を挙げ、
「何?そういう流れ?鬼方カヨコ」着席しているカヨコも応え、
「はいはーい!浅黄ムツキでーす!」その隣に座っているムツキも応え、
「ふぇ!?あ、阿慈谷ヒフミです」部屋の入口に居たヒフミも応え、
「あらあら、浦和ハナコです」エミヤの隣に居た水着姿の少女も応えた。
「よーし待ってくれ!すまんが待ってくれ!一名予想を超えて来た!」
一度深呼吸し、順番に目を向ける。
椅子に着席し、お嬢様然りといった姿で紅茶を楽しむミカ。
私の隣に立ち、こちらを無垢な瞳で見上げてくるレイサ。
こちらも着席し、トリニティの紅茶を帰りに買おうか悩んでいるカヨコ。
同じく着席し、用意されたお菓子を満面の笑みで食べるムツキ。
いつの間に居たのか、テラス入口に立って苦笑を浮かべるヒフミ。
私の隣に立ち、笑みを浮かべながら首を傾げる……誰だ?
エミヤはトリニティに訪れてからの記憶を遡ってみるが、一度も彼女に出会っては居ない。
だがしかし、
「どうされましたか?もしかして、うら若き乙女に囲まれて暴れ出しそうな己の獣を必死に抑えておいでで……!?」
そして同時に、何故真顔でそんな突拍子も無い発想を口に出せるのか、理性が砕けているのか?と思わずにはいられない。
「久しぶりだな、ヒフミ、元気そうで何よりだが……どうして此処に?」
「えっ!?わ、私ですか?えっと、ナギサ様から皆さんに伝言を預かっていて、それを伝えに来ました」
チラチラとヒフミも私の隣に視線を泳がせているが、エミヤは人生経験からスルーを敢行。
こういった手合いは反応するとペースを持っていかれる。だからこそ、スルー!
「成程な、では聞かせて貰っても良いだろうか?」
「あらあら、お二人は既に顔見知りなんですね、かおみしり……どうして言葉にしてみると何だか卑猥な行為にも聞こえるのでしょうか?漢字であれば何も違和感は覚えませんのに」
「……えっと、私、この状況でお伝えして良いんですか?その、凄くエミヤさんに反応して欲しそうに」
ヒフミが言葉を終える前に持ち前の俊敏さを以て肩を抱き、自身の体でヒフミの視界を狭め、自分だけを見える様に正面から見据えた。
「ヒフミ、今は私に集中するんだ」
「は、はい!?わ、分かりました!分かりましたから!」
「レイサちゃん、あ、初めまして、凄いですね肩を抱きましたよ、今頃ヒフミさんはエミヤさんの逞しい手の感触を肩で直接味わってらっしゃるのですよ!なんだかこのまま二人の世界に突入してしまいそうなロマンスを感じませんか?」
「うわぁあ!?私に来たぁああ!」
背後で何かが起きているのを必死にエミヤは無視をして、思わず覗き込もうとするヒフミに自分に集中してもらう為に肩に添えていた手を顔へと移し、余計な声が聞こえない様に耳を抑えた。
「んひゃあっ!?え、エミヤさん!?にゃ、な、なんで耳をっ!?ひゃわぁ!?」
「「!?」」「わーお」
「ちょっとレイサちゃん!エミヤさんってばヒフミちゃんのお顔を掴んで、いえ、あの腕の角度は丁度耳元を!?最早アレは性行為と呼んでも差し支えないのでは!?」
「や、やめて下さい!?私にエッチな同意を求めないで下さいぃ!」
断じてエミヤはヒフミから伝言を聞きたいだけであり、それ以外の狙いは無い。
だが、普段のエミヤならば有り得ない程に衝動的に行動している現在、その行いは少しばかりセンシティブと言われても否定が出来ない程に大胆な物だった。
「な、ナギサ様があと少しで到着するから、ソレを伝えておいて欲しいとの事でした!!!」
バンッ!!!!!
その言葉と同時に、テラスへ続くガラス張りの扉を強く叩く音が響いた。
ヒフミの背、ガラスの向こう。
夜闇の中、灯りを付けていない室内からガラス超しに血走った目をひん剥いてエミヤを凝視する一人の少女の姿がそこにはあった。
「――――――、――――――、――――――、――――――」
ガラス越しにも分かる程に早く口を同じ形に動かして、何かを連呼している。
エミヤは並々ならぬ敵意を感じ、本能的に守らなければいけないとヒフミを抱き寄せた。
「―――――!―――――!―――――!―――――!」
バンバンバンバンッ!
先程よりもより強く。
エミヤの視線の先で怪異が如き形相の少女は強くガラスを叩く。
その口からは最早文字として可視化出来る程の怨嗟が漏れており、決して女性がしてはいけない表情でガラスをしきりに叩き続ける。
そのエミヤの背後でも、バンバンと己の膝を叩いて笑いを堪えようと頑張っているミカがおり、
「ひゃわぁあぁああ!?」
突然抱き寄せられたヒフミは当然の如く大混乱!
「ブフッ……くっ……!」「唾が!私の!顔に!」
普段は絶対にしないであろう吹き出しをしたハナコとソレをモロに顔面に浴びたレイサ!
「「…………」」
そして周囲の温度とは全く違う冷え切った視線を向けるカヨコとムツキ!
そして遂に、耐久限界を迎えるガラス!
割れたガラスからゆっくりと、しかし確実に目的の物を掴むために伸ばされた腕が小指から順にヒフミの肩へと触れていき、背後から聞こえて来た破砕音に驚いた後に自身の肉体へ接触を受けたヒフミは、自身の身に起きている事を理解できずに震えながら顔を後ろへ向け――
「ヒ・フ・ミ・さん」
――割れた箇所から強引に体をねじ込み、ガラス戸の狭いガラスの嵌め込みから上半身だけを向こう側へと送り出した亜麻色の髪をした少女が、狂気を孕んだ笑みを浮かべてヒフミの鼻先まで顔を近づけている姿を目撃した。
「きゃあぁああぁぁあああああああああああああああああ!!!!!!!」
当然の悲鳴だった。
多分大筋合ってると思うんだけどミレニアムの第3章書いてもいい?
-
いいよ
-
だめだよ
-
やってみろ
-
エロ書け