「突然だけど事務所を移転するわよ!」
穏やかな昼下がり、今日は全員が仕事も入っておらずのんびりとしていた中で飛び出した発言。
「本当に……!突然だな……!?」
コユキ提案のレースゲーム大会を開催していた面々は「このタイミングで言う?」と思いながらも耳を傾けながら、
「おわぁあ!?間に合えぇええ!」「あごっ!?」
カーブを曲がる為に体まで傾けるタイプのコユキは身体を傾けた結果頭部でエミヤの顎に強打し、曲がり切れずにコースアウトした。
「もー!またハルカちゃんが一位だー!強過ぎるよー!」
「ご、ご、ご、ごめんなさい!な、何故かレースが始まるとゲームに集中してしまって……あぅ」
「いや、勝っていいからね?凄いよハルカ」
「それよりも誰かコユキの隣を替わってくれないか……」
一位のハルカに二位のムツキ、途中まで順調なのに毎度コユキのカーブ時のダイレクトアタックにより順位を落とすエミヤに最下位のコユキ。
カヨコとアルが物件を探している一方で家族団欒と表現しても差し支えない睦まじさで四人はゲームに興じていた。
「もう!ゲームは終わり!この前受けた依頼で不動産をしている方からのがあったでしょ?あの人からの紹介で昔はオーナーさんが趣味が高じて使用していた場所ですがって格安で物件を紹介されたのよ!」
「ほう?見ても良いか?」
「えぇ!D.U.地区でヴァルキューレ警察学校の近くだから、もしも捕まっても帰りも楽ちんよ!」
「なんてマイナスな想定の下に物件を借りようとしているんだ……」
しかし悪くないと思ったのは、最近の依頼が様々な自治区から舞い込んでくるようになったからだ。
一番多いのはゲヘナ学園なのだが、最近ではブラックマーケットやトリニティ、少し前にはワイルドハント芸術学院からの依頼もあり、一つの依頼で行って帰って来るだけで一日が終わる事も増えて来ていた。
そう思いながらタブレットに表示された物件を見てみると、現段階で設置されている設備や照明や消火設備の配置、家具というよりも什器の置き方からカウンターもありテーブル席もある少し小さなカフェの内装をしていた。
「アル、この立地は近いというよりも……」
問題があるとすれば建物入口からヴァルキューレ警察学校の正門までの距離が二百メートル、直接見えることは無いが少し近過ぎる気もした。
「わ、私の爆弾などを仕入れて来た際に押収とかされないでしょうか……?」
心配事がどうしても出てくる部分ではあったが、ソレを受けてアルは「ふふふふふ」とその反応を待っていたと言わんばかりに笑い出した。
「実はね、この物件は別の物件とセットでの販売となっていてね」
エミヤから受け取ったタブレットを操作し、土地を横から見た断面図を表示した。
「えぇー!?一階にも車庫があって……地下にも車庫があるの!?どういう事アルちゃん!?何コレ面白い!」
「ちょっと待って下さいよぉ……?建物の地下の車庫から車二台分の通路が伸びていて……?」
「建物から離れたガレージハウスに繋がっていますね」
「なんでも、オーナーさんも後ろ暗い商売をしていたらしくて、ガレージハウスとこのカフェの両方を行き来して……えっと、これだ。カフェの地下から真っすぐ進んで、坂を上がって内側からガレージハウスの中に入って、このガレージハウスの中に裏の仕事の道具を保管して、有事の際は準備をしてから出撃……ってな具合に仮面生活を楽しんでいたらしいよ」
説明しながら少しソワソワしているカヨコもだが、話を聞いた便利屋68の面々は誰しもが興味を隠せていない。
それはエミヤも同じで、まるで男の子の夢が形になった様な秘密の通路と秘密基地に早く見に行きたい気持ちが高まっていた。
「だ、だがこれだけの大掛かりな物件、さぞ高いんじゃないか?」
「実はクロノスから多額の送金があって購入費用が丁度手元にあったのよ!」
「――あぁ、そうか」
「エミヤンの眼が死んだ!」「ちょっと社長どこからの送金かは内緒って事前に」「この人でなし!」「と、というよりも既に購入されていたんですね、流石アル様、即断即決即行動、私では真似できない迅速さです!」
一瞬で心の中の男の子が体育座りをしてしまったエミヤだったが、こうした事に活かされるのならば……まだ……と気分を持ち直す。
「それでは、引っ越すか」
こうして、大晦日でも無いのに便利屋の大掃除が始まった。
「それで……こうして皆の荷物が纏まった訳だが」
「なんというか、私達って」
「家具を新しく買うって決めたら一気に荷物が少なくなりましたねぇ」
「ハルカの育ててる植物と、ムツキのゲーム、コユキの電子機器と私のCDラックとスピーカー、社長の訳分からない収集物……エミヤさんって特に私物持って無かったんだ」
「ちょっと訳分からないって何よ!?ブラックマーケットで購入した朱槍!何かしらの伝説を持つライオンの毛皮!高名な軍師が使用したとされる扇!置いているだけで周辺の人が病に掛かる黒龍の鱗!まだまだあるけれど……どれも由緒ある品物よ!」
「私は調味料や調理器具を購入していたからな……それとアル、幾つか本当に捨てた方が良い物もあるからな」
アルが集めた物はどれもが贋作という訳でも無く一部には本当に神秘を持つ逸品もあり、所有しているだけで危険な品物もあった。
本物に当たる一割の品物、その中でも毛皮や鱗などは持っていても良いのだが、本来であれば読むだけで精神をやられるレベルの書物もありどうやって手に入れたのかが不明なレベルの呪物もあった。
「(一瞬驚いたが流石に朱槍は偽物だったか……とはいえレプリカが作られているのを知ればアイツ喜ぶだろうなぁ)」
『おいおい憧れを形にするなんて可愛い事するじゃねぇか?もしかして造ったのお前か?なんだぁお前アレだけ突っかかって来てたのに俺の事を尊敬してたのかよ!?はっはっはっはっは!素直じゃねぇ奴だなぁ!』
絶対に捨てようと思った。
「引っ越し自体は車に積み込んで移動するだけで終わりそうだし、後は運び込むだけだね!」
「私は少し処理してから向かうから皆は先に車で向かってくれ」
「さっき見て貰った通り家具とかは備え付けの物があるからすぐにでも暮らすのは可能だし、不要な家具に関しては売り払って構わないとの事だから」
「そ、それでは運び出しちゃいますね」
順調に進んで行く引っ越しの作業、エミヤは駄々をこねるアルにチョップをかまして危険物を纏めて、誰にも見られない所で
「む……?コレは……何故持って来たのだろうか、木製の箱……か?造りは丁寧だが、参ったなユダヤ教の何かである事は分かるが……質屋にでも持っていくか」
英霊は
「それにしても、バサーノの花瓶や
そして翌日、無事に合流したエミヤと便利屋一行は近くの商業施設で足りない物の買い出しも済ませ、建物二階の居住区画でおもいっきりだらけていた。
「引っ越しって……こんなハイペースでする物だっけ……」
「いや、ここまでのハイペースは流石に初体験だ……うごっ!?」
「ちょっと!?私そんなに重たくないですよぉ!」
「誰だって飛び掛かられればこうもなる!コユキが重くないのは重々承知だ……重くないのは重々承知というのは何だか言葉遊びの様だな」
エミヤも疲労を隠せない程に一日で動き過ぎた彼等は新しく購入したコの字型のソファーを用いて皆でくつろぎ、エミヤに対してフライングボディプレスを決めたコユキは体重を疑われた。
しかしコユキは軽い、誰とは言わないが重たさの疑惑を掛けられたことも無いので安心だ。
翌日になり、引っ越しをした事を伝えにヴァルキューレ警察学校に訪れたエミヤは驚く事となる。
「なんだか……今日は忙しそうだな?」
「どうもエミヤさん、実はその、いつもであれば私達だけで無く月見会で同席しているニコさん達の所属するSRT学園が出動してくれたり、彼女達の方でも犯人を確保したり拘留して下さるのですが、今日は何故か出動要請を掛けても応答してくれなくて……」
「ふむ、何か向こうで大きな事件を担当していたりするのだろうか?」
「とはいえ、エミヤさんが近くに引っ越してきてくださったのであれば、依頼という形で私達を手伝っていただくことがあるかもしれません、その際は是非」
「あぁ、その時は喜んで力になろう……尤も、私達が世話になる事もあるかもしれないがな」
忙殺されるカンナは目に隈も浮かんでおり、エミヤからしても心配になる様子。
それでもご近所さんとの関係も悪くなく。
これから先の毎日も賑やかになりそうだと笑みも零れた。
こうして無事に引っ越しも完了し、エミヤの日常は新しい段階を迎える事となる。
迫りくる危機に気付く事など出来ずキヴォトスの治安は悪化の一途を辿る事となる。
モモトークに入っていた連絡が、それを告げた。
『それでは、闇の先でまた会いましょう』
――連邦生徒会長失踪まで、あと0日。
――『先生』がキヴォトスに訪れるまで、あと二週間。
多分大筋合ってると思うんだけどミレニアムの第3章書いてもいい?
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いいよ
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だめだよ
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やってみろ
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エロ書け