便利屋エミヤ   作:晴れときどき曇り

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第四十四夜 変態です

 

 

「本当にその条件で良いんですね?」

「あぁ」

 エミヤが女生徒五人の前で全裸を披露した翌日、

『葛木なら心配ない』『アコは仲間思いだな』『やはり呼吸するのに必要なのか?』『アイツは己がやると決めた事を途中で投げ捨てる様な者では無い』『いざとなれば私が止める』『もしも葛木が罪を犯せば私がなんでも言う事を聞こう』

 並べ立てたエミヤの言葉により、アコは「それなら……」と渋々ながらもシャーレに対する警戒を解き、むしろイオリにそこまで心配を掛けていた事、この数日で書類仕事が溜まってしまった事、エミヤにまでわざわざ出向いて貰った事に対して申し訳なさを感じていた。

 

「この度は誠にご迷惑を……」

「いいさ、私達の仲だろう?」

「エミヤさん……!」

 にも関わらず軽く許してくれる大人の度量にアコは感動すると同時に、でもそれじゃあ罪悪感だけが残る……と苦し気な表情を見せ、

「いえ、いえ!やはり私が反省する為にも、どうかエミヤさん!私の事を口汚く罵って下さい!」

「流石にそんな事は出来ん!充分反省しているだろう!?」

「いえ!もしもお望みであればこちらもお使い下さい!それと戒めとして録音致します!」

「何故犬のリードが当然の様にポケットから出て来た!?」

「日頃は反省を促す立場におりますが、反省すべき時に反省をしなければ私はこれからどのような表情で

彼女達に言葉を投げかければ良いのか……!」

 そこまで言われてしまえば、アコなりのケジメなのだとエミヤも納得し、本当に渋々ながらもアコのチョーカーにリードを付け、心を鬼にして臨むことにした。

 

「では、本当に叱る……というよりも、躾をするつもりで行くので、覚悟しておくように」

「し、躾……はいっ!」

 俯き、震えるアコを見てエミヤは心が痛んだが、ここはやりきらなければと気持ちを切り替える。

 

 

 

「よく聞け」

 普段よりも低い声で威圧感を強め、先ずはアコの意識を完全にこちらに向ける。

 真っすぐとこちらを見つめて来たアコを睨み返し、

「一体誰が」

 リードを勢いよく引っ張り、前のめりに倒れそうになったアコを受け止め、そのままアコの背に手を回し――アコの後ろ髪を掴み上を向かせる。

「そのままの姿勢で聞いていいと言った?」

 そして耳元に口を近づけて、拒もうとも直接響く様に耳に対して垂直の角度から声を送り込む。

 エミヤの声が持つ深い振動が耳を襲い、ゾクゾクとして不思議な感覚に思わず立っていられなくなったアコは己の意志とは裏腹にその場に尻餅を着いてしまった。

「あぁ、それでいい」

 見下ろす視線、エミヤから向けられるその視線に、思わず自身の体を抱いて尻餅をついてしまった事への恥じらいを誤魔化そうとしたが、

「何を恥じらう、ほら」

 再びグイッとリードを引っ張られ、前に体が倒れて床に倒れ込まない様に手で支えを作った結果、四つん這いの体勢にされてしまった。

「あぁ、その姿で聞くんだ――良いな?」

「は、はい……」

「その姿勢に似合いの返事は?」

「なっ……そ、そこまで……」

 

 四つん這いでリードをした屈辱的な姿に似合いの返事、そう言われればアコはすぐさま意図が理解できた。

 だが、流石にソレは尊厳を捨てる事になる。

 そこまでは……そう口に出来たが、

「返事」

「わ、わぅ……」

 冷たさしかない口調で問われれば、自然と従ってしまった。

 

「良い子だ」

 そして自分の選択が正しい事をすぐに教えて貰い、思わず屈辱的な筈なのに嬉しさがアコの中に生まれた。

 こんなに屈辱的なのに、嬉しいだなんて……頭では苛立ちを覚えなければいけないと分かっているのに、姿勢や発言がそうさせるのか、油断をすれば舌を出して犬になりきってしまいそうだった。

「仲間に心配を掛けた点は、駄犬としか言いようが無いがな」

「くぅっ……」

 アコは言われたくなかった言葉に身を震わせる。

 芯にまで染み込んでくる指摘に悔しさと悲しさと興奮が湧いてきてしまう。

 

「どうした?君が望んだことだろう?」

 見下ろしながら、床に膝を着いて再び顔を近付け、しかし手までは床に着けず。いかに今のアコが人という枠組みから外れているのかを見せつける。

「悦んでいいんだぞ?」

「わ、わぅ……」

 放たれる言葉の鞭に思わず体が震える。

 ここまで容赦なくして貰えると思っていなかったが為に、アコはエミヤに頼んで良かったと歓喜していた。

 

 音もなく立ち上がったエミヤはリードを持ったまま移動を始め、行政官執務室の端、訓練場を見渡せる大きなガラス窓の所まで足を運んだ。

 そして無言でリードを強く引っ張られ、アコは「行かなきゃ」と意識を植え付けられ四足歩行でそちらへ進む。その間も引っ張る角度を上向きにすることでアコの顎を上げさせ、僅かに首に食い込むせいで呼吸がし辛く。アコは思わず口を開き酸素を求め、その姿が正に犬である事を自覚してしまう。

 

 最早体の震えも抑えられず、ガラス窓に辿り着いた時には限界を迎えそうになっていた。

 そこから更に首を掴まれ、痛くは無いが圧迫を受ける程度の力でガラス窓に身体の前面を押し当てられた。

 ただでさえ窮屈な胸元がガラス窓で形を歪ませ、両手を窓について離れようとするが、本来ならば出る筈の力が全く出ず今の状況を受け入れつつある自分に驚く。

「見えるか、訓練をする貴様の仲間達が」

 言われた通り、眼下へ視線を向ければ必死な訓練をする仲間達が居た。

 後ろに体温を感じ、エミヤが体が密着する距離まで近付いたのだと分かり、今の自分の状況では腕を突っ張る事も出来ず背中に感じる強引な体温を受ける事しか出来ない。

「この状態では下からも見えてしまうなぁ」

 くすぐったさを感じる耳元もだが、それ以上に今の置かれた状況にアコは思わず舌を出してしまった。

 己を駄犬として、責任から逃れようとしてしまった。

 そうしなければ、人である自分がガラス窓にへばりついて背後の男性に良い様にされている姿を見られてしまう事に意識が向いてしまうから。

 

「どうした?舌を出して、その舌は引っ込めねばな」

 空いている手を口元に運ばれ、舌を強引に内へと捻じ込まれ、唐突に行われた粘膜への接触にアコは僅かに……。

「ほら、反省をしているというのなら指を舐めて見せろ」

 最早、言う事を聞くのが当然の様に思え、アコは自然と自らの舌でエミヤの指を舐めた。

 ごめんなさいという思いを込めながら、許して許してと謝罪を込めて、その時のアコは完全にエミヤに組み敷かれる力無き女性となっていた。

「普段はよく回る舌にも、こんな使い道があるとしれて嬉しいか?」

 舌の表面を指先で撫でられ、得も言えぬ感覚にアコは身震いする。

「う、うれしいれす」

 上手く喋れない状況で返した言葉、だが、それが不満だったのかエミヤは舌を撫でるのを止めてしまった。

 どうして止めるの?もっともっと!と指を舌で舐めるが、エミヤはソレを再開してはくれない。

「もう一度教えなければならないか?」

 そう問われ、アコは今の自分が何であるかを思い出し、思い出させられた事に興奮を覚えてしまう。

「いっ、犬!犬です!わんっわんっ!」

「あぁ、そうだ良い子だ――ほら、もう一度撫でてやる」

 そう言って撫でられるのは頭では無く舌、このまま口に力を入れれば嚙み切れてしまうのに、その選択を出来ずに受け入れる事で成立する舌を撫でられるという状況。

 

「……その、そろそろ良いか?」

 そこで、今回の反省は終わりとなった。

「やだぁ、もっとぉ」

 なのだが、完全に何かのスイッチが入ったアコはエミヤの指に舌を絡ませ、しゃぶりつき、放そうとしない。

 

 このままではまずいと今更になって気が付いたエミヤは、

「充分に反省したさ」

 と耳元で告げ、アコの後頭部を内側に揺れが生じる様に軽く叩いて気絶させ、デスクにもたれて寝ている姿勢にしてその場を後にした。

 

 

「もしかしてとんでもない事をしてしまったのでは」

 

 

 気付くのが遅い。

 

 

 

「ラーメン……悪くない」

 その頃、葛木は紫関ラーメンに舌鼓を打っていた。

 

 

 

 

 

 

多分大筋合ってると思うんだけどミレニアムの第3章書いてもいい?

  • いいよ
  • だめだよ
  • やってみろ
  • エロ書け
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