便利屋エミヤ   作:晴れときどき曇り

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※めっちゃ短いです


第四十六夜 それぞれの胎動

 

「アコの件は助かったわ、けほっ、何故だかアビドス周辺を怪しんでいたから私もこほっ、独自に調査をしていたのだけれど、まさか新しく赴任した先生そのものを警戒していたとはね」

 ゲヘナからの去り際、慌てたように駆け寄って来たヒナは何事も無かったかのように口を開いた。

 一先ず呼吸を落ち着ける様に促して一息つき。

「そんなに急いでどうした?何か私に用事でもあったか?」

 尋ねてみれば答えは簡単。

「カイザーコーポレーションに気を付けて、銀行とPMCのどちらも最近動きが多いし……もしもエミヤさんが先生に力添えするなら、アビドスの周辺の土地がカイザーコーポレーションの所有になっているのも知っておいた方が良いと思うの」

「……今の所、私は特にその知識を活かせないが、ふむ、葛木に伝えておこう」

 

 

 

 結果としてエミヤは三名にその情報を共有。

 七神リンは言う。

「……彼等は、馬鹿でしょうか?」

 尾刃カンナは言う。

「調べた所、確かにアビドスの自治区域外となっている場所がありますね、支部のビルも区域外です」

 

 

 葛木は言う。

「……成程、あの車はそういう事か」

 内心でエミヤは結構怒りを抱えていた。

 エミヤの記憶からすればカイザーコーポレーションは仲間を傷だらけにした会社であり、後から調べて知った事だが、不知火カヤが巻き起こした一件にも絡んでいる会社だ。

「何か思い当たる事があるなら良し、それと、もしも奴らが『敵』だと分かれば一報をくれ」

「策か?」

「いや、――――――かもしれないのでな」

 エミヤの言葉は確かに策では無かった。

 だからこそ、葛木の返答は単純明快。

 

「訳が分からん」

 

 せめて聞いてから電話を切るとかして欲しいと思いながら帰路を往くエミヤであった。

 

 

 

 

 

 帰りは昼頃と連絡を受けた便利屋68の面々、彼女達は彼女達で二日前からエミヤが居ないからこそできる事をしていた。

 それは修行、鍛錬、鍛え直し。

 先日の一件で各々が力不足を悟り、もっと強くなろうと精進していた。

 

 そして、そのコーチを務めるのは黒崎コユキ、自覚した自身の能力で以て『どうすれば強くなれるかという問題』として捉える事で、各自にその方法を伝えていた。

 例えばアルならばより精密な神秘の宿し方を、ムツキには彼女の戦い方に合わせた神秘の運用方法を、ハルカには狂気を飼い馴らす術をと、皆に教えながら自身も力のより深い使い方を模索していたのだが、ただ一人、カヨコだけは訓練が上手くいっていなかった。

 

 既に一定の水準を超え、更にはエミヤと共に過ごす中で無意識の内に体の効率的な動かし方を実践していたカヨコはより上のステップに進むのには、技術や神秘の運用以上の事が、己の神秘が持つ特性を開放する必要があった。

 その方法を問いとしてコユキが導き出し、その脳裏を過ぎった映像は『深淵』。

 暗くて光も無くて、周りには誰も居なくて音も無い、孤独を感じながらも無を感じる苦痛。

 

 方法と呼ぶにはあまりにも曖昧であったが、見えた物を伝えられたカヨコは微笑みながらコユキに感謝を述べた。

「大体分かった……確かに、捨てたままじゃダメだよね」

 

 それ以来カヨコは体を動かすでも無く一人で部屋に籠ってしまっている。

 

 事が動くのは、まだ少し先。

 

 

 

 

 

 日常を過ごす者も居れば非日常に繰り出す者も居る。

 つい先日、トリニティ総合学園のセキュリティを突破した自称普通の少女は今日もまた下水道を進んでいた。

 

 しかし流石はトリニティ、あの日下水道に残されていた靴跡から歩哨まで徘徊する様になり、件の少女ヒフミは一筋縄では突破は出来ないと歯噛みしていた。

 

 ――その時、天啓が舞い降りる。

 

『歩哨が歩いた所はセンサーも無い』

 

 その天啓は短くともヒフミが取るべき行動を教えていた。

 生憎ヒフミはローファーで、どうしようとも足音は立ってしまう。

 だがそれは歩哨も同じこと、ヒフミは物陰から出ると歩哨の動きを完全にトレースし、その背後をまるで影の様に付き歩いた。

 

 右腕が前に出されればその右腕の後ろ十五センチ程に己の右腕を、右足が前に出ればその後ろ十五センチ程に己の右足を、一体化したのではと思えるほどの精度による動きの模倣で以て、ヒフミは歩哨の背後を往く。

 目的の方向からずれれば歩哨の歩く速度に合わせて己も歩くことで足音を相殺し、少しでも気付く素振りを見せれば避けたかったが手荒な方法で気を失って貰った。

 

 この、並大抵の精神力では十分と保たない行為を一日続け、ヒフミは遂にトリニティの自治区を脱出、ブラックマーケットへ辿り着くことが出来た。

 

 集中力が途切れそうになれば目的を思い出し、その為と思えば幾らでも体を酷使する。

 それが出来るのが阿慈谷ヒフミだ。

 

 さて、ブラックマーケットに着いてからも一息は付けない。

 その名の通り治安は悪く、マーケットガードという独自の治安維持部隊は存在しているが扱われている品物が品物だけに叩けば埃がわんさか出てくる。

 そんな場所に金持ち学校として有名なトリニティのお嬢様がやって来たのだから埃の方から寄って来る。

 

 しかし既にヒフミにとっては慣れた物、足下に神秘を集中させ走り出せば彼女を捉えられる者など居ない。

 40ヤード走4秒2の脚を持つ彼女からしてみれば後は視界に映る光の(ライン)を走るだけ。

 目的の商品が売っている場所まではもう僅か、彼女の眼に迷いは無かった。

 

 だが――衝突。

 

 そう、彼女の眼に見えていたのは眼前のみ、まさか眼下に人が居るとは、それほどまでに体躯の小さき者がこのブラックマーケットで道の真ん中を歩いているとは思ってもみなかった。

 

「いたたたた、あれぇ~?ごめんねぇ」

 そして更に予想外なのは倒れたのは自分だけという事、結構な速度で走っていたにも関わらずぶつかった相手は微動だにしておらずこちらに手を差し伸べていた。

 

 ヒフミは知らなかった。

 

 この出会いが、己の運命を大きく変える事になるとは。

 

 




※次回予告

第四十七夜 メスガキガス

……なおアンケートの結果対象としてメスガキ化するのは、生徒ではありません。

多分大筋合ってると思うんだけどミレニアムの第3章書いてもいい?

  • いいよ
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  • やってみろ
  • エロ書け
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